真の王者は誰だ?『ゴジラVSコング』|感想【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

真の王者は誰だ?『ゴジラVSコング』|感想【ネタバレ】

2021年7月15日木曜日

GODZILLA movie

X f B! P L

 ということで初日には出遅れましたが観てきました。モンスターバースシリーズ最新作で怪獣王と髑髏島の巨神がガチの真剣勝負『ゴジラVSコング』「決着」は付くという監督の言葉に噂に違わぬマッチメイクでした。もっとも人間ドラマに重きを置かず怪獣バトルに全精力を振り向けるという方向性は確かに成功している部分もありながらもヲイヲイなところもありました。ということで『ゴジラVSコング』についての感想いってみましょうか。


Godzilla vs. Kong – Official Trailer|Warner Bros. Pictures ch./YouTube

荒ぶる神と髑髏島の巨神/STORY

 ゴジラがギドラを倒したあの戦いから5年の月日が流れた。怪獣たちは一部を除いて眠りにつきモナークはその監視体制を継続していたが何故か怪獣王ゴジラがフロリダ州ペンサコーラにある先進科学で巨万の富を得ている企業体エイペックスの研究所を襲う。陰謀論者のバーニーはエイペックスへ臨時の技術者として入り込みエイペックスの陰謀の証拠を探していたところゴジラの襲撃に巻き込まれ、破壊された倉庫にある巨大な装置を目撃する。


 一方、エイペックスを率いるシモンズと研究主任のレン・芹沢はネイサン・リンドを尋ねる。ネイサンはコングの住む髑髏島が地球内部の空洞と繋がっておりその入り口を求め兄と南極にその入り口を見つけたものの重力反転により兄を失い、研究調査は打ち切られ不遇の日々を囲っていた。シモンズはそんなネイサンにエイペックスの技術力で作られた重力場を突破できる探査艇ヒーブでその探査を依頼する。怪獣(ティターン)達の故郷であろうと考えられる空洞内には未知のエネルギーがありそれがゴジラなどの力の源であるというネイサンの学説を証明し彼らに対抗する力を手に入れる事が目的だった。


 ネイサンは古巣のモナークでコングを保護しているアイリーンを尋ね彼女にコングを空洞への先導者とする案を打ち明ける。アイリーンは髑髏島でゴジラと共に過ごしていた原住民の娘ジアを引き取っていたのだった。髑髏島を嵐が直撃しジアは両親を亡くしておりアイリーンが保護者として養育していたのだった。コングとゴジラはずっと戦ってきており、ティターンの王としてそれぞれがライバルとして一歩も引かぬ戦いを古代から続けていた。モナークでは不要な戦いが起こらないように、またコングをゴジラから保護するために髑髏島に設置したモナークの監視保護施設に収容していたが巨大化していったコングに主要施設は既に限界に近づいていた。アイリーンはネイサンのプランにのる事にした。


 コングを輸送船に拘束しモナークの護衛艦隊とともに南極に向かう中、目前のタスマン海にてゴジラがコングの気配を嗅ぎつけ艦隊を襲撃する。しかし護衛艦隊がゴジラにかなうはずもなくコングとの一騎打ちが始まるが海中ではゴジラが有利、コングはついに追い詰められてしまう。艦隊は壊滅状態に陥るがネイサンの機転で全動力を停止し息も絶え絶えなコングを見てゴジラはその場を引き揚げてしまうのであった。もはや艦隊で南極に向かう事は不可能になった中、ネイサンはヘリによる空中輸送でコングを南極へ運ぶ作戦を提案するが…


 その頃5年前の戦いでゴジラを間近で目撃し母のエマを亡くしたマディソンは突然暴れ出したゴジラは何かを察知したのではと最初に襲撃されたエイペックスを告発しているバーニーに同級生のジャスティンとともに会いに行く。バーニーはマディソンの母であるエマの信奉者でもあり協力してエイペックスの陰謀を暴こうと動き出すが…

ゴジラか?コングか?エイペックスの陰謀とは?そして最強の巨神が決まる闘いの火ぶたが今切って落とされようとしている。

巨神の王者

 元より『キング・オブ・モンスターズ』(以下K.O.M)を観た後では今後は平成ゴジラVSシリーズのように大味になっていくのは避けられんだろうなと思っていましたが、そうなると本当に地獄めぐりだったギャレス・エドワーズの『ゴジラ』がストーリーこそ違えど初代1954『ゴジラ』を精神的に引き継ごうとしていた事が今更ながらに伺えます。


 言うなれば今回の作品は『三大怪獣 地球最大の決戦』を引き継ぐはずだったK.O.Mから一足飛びに平成シリーズを俯瞰するかの如く昭和の『キングコング対ゴジラ』ではない作品を作り上げたと言ってもいいでしょう。しかもきっちり決着も付けましたし。その決着については作品をご覧いただくとしてやっぱり思うのは漫画『刃牙』のような力ある者の風格、そしてオーラを感じさせる頂上決戦でした。ゴジラが勝つか?コングが勝つか?という格闘系漫画のような展開。ヤンキーイズム(どっちが強いか、このこぶしで決めようぜというような一種野蛮な、昔の漫画ではよくある展開。いや今もジャンプ系やマガジン系の漫画に濃く流れている血脈)みたいなものを強く感じました。そのためゴジラが序盤で街を襲うヴィラン的な立ち回りと言いコングにフォーカスが当てられた(生まれ故郷というかコングの起源が地球内部の空洞にあったという部分)そして少女との交流などなど基本線はきっちり抑えた出来上がりはなっていると思います。当然ウィンガード監督のこだわりのゴジラとコングの対決シーンは洋上でのゴジラの暴れっぷりやコングが生まれ故郷での玉座への凱旋。何かを感じたゴジラの放射熱線が空洞まで貫通とかドラゴンボール世代などにはめちゃくちゃ好評なのでは?


 では?という書き方で分かると思いますが実はtonbori堂凄いし興奮はしたんだけど…ちょっと乗れなかったですね。というかはっきりわかったんですけれど怪獣対怪獣なら確かにこの映画最高に盛り上がるんですけど、だったらこれ人間パートいらないし、それなりに描き込もうとした痕があるだけに…なんかつらいなっていう。

巨神と対峙する者、寄り添う者

 個人的には相手が神の如く超巨大でどうしようもない力をもった者でも人として対峙するっていう(苦悩したりそれぞれの立場で奮闘する)っていうお話が好きなんだなと。だから平成ガメラ3部作はそこがあるので全作品好きだしやっぱり観ると燃えるんですが…これはそれが薄すぎるという気がするのです。


 もちろん監督の意図は間違っていなくて単純にこれは好みの問題でしかないんですが、例えばエイペックスの陰謀を探るバーニーについても妻の死が何かのきっかけのようなんですけれどほぼ劇中で匂わせただけだし、それならマディソンの友人のジャスティンの兄貴が(ジャスティンの持ってきたクルマは兄貴のものらしい)実はエイペックスの関係者でキーを持ってきたぐらいのご都合主義でも良かった気がします。絡んでくる人間多いけどそれぞれ濃い感じに味付けしないと怪獣は存在だけで圧倒できる分、人は薄くなってしまう。KOMのエマなんか地上波放送の時に「サノスおばさん」ですよ。ティターン(怪獣)によって人を減らして地球を護るって無茶苦茶ですが行き過ぎた環境保護ってそうなる感じはあります。そう思うとバーニーはエマの信奉者っていう設定もあんまし活きてない気がするし…。


 もともと人間側のドラマには期待していないっていう層も多いとは思うんですがこれはあまりにも薄っぺらすぎて上げ底どころかダダ漏れです。小栗旬の演じる芹沢も大幅に出番カットというか設定変更もあって彼自身も忸怩たる思いがあるという事をメディアのインタビューで語っているしウィンガード監督のインタビューで製作期間中にこれは人間側より純粋にティターン(怪獣)同士にフォーカスした方が良いと判断しそうなったという事でも明らかなんですが芹沢レンについてはあの芹沢博士の息子設定って無茶苦茶膨らませる事が出来るのに出番がないままってのはね…うーんってなります。とここまで書いて思ったんですがギャレス・エドワーズのレジェンダリー・ゴジラの1作目『GODZILLA』がtonbori堂には一番良かったかなと。主人公は怪獣に対峙も寄り添いもしていないんですけれど(どちらかというと翻弄される人)対峙する人たちや寄り添おうとする人が過不足なく、そして怪獣が人智を越えたものとしてがっつりと描かれていたように思うのです。

機械仕掛けの神

 ということで決着付けてもそこで終わるとやっぱりなんなので幕引きを託されたのが機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)でもあるメカゴジラな訳です。しかもご丁寧に前作のギドラの首を使い遠隔操作が出来るという設定を持ってきて機龍の方にも目くばせ。当然暴走も込み(これは設定変更によるものだけど結果オーライみたいな感じになっています。)ということで大暴れ。あれです、「拳」で語り合ったライバルに別のライバルが漁夫の利を得ようとドーンと出てくる感。そしてリングに立っている王者にドロップキックをかます。ピーンチ!もう一方は息も絶え絶えでほぼ臨死状態。そこに愛する者の声が届く!(実際にはセコンドによるAEDによる電気ショック)で「まてやぁーおらー!」っていう(笑)いや本当にそういう感じなんですよ。でもそいつもめっぽう強い。だが両者ともに最後の一撃を決める!みたいなね(笑)そこはもう良かったですよ。結末が分かっていたとしても。でもやっぱり雑だなとは思うところがあってメカゴジラで戦うっていう意味があんまり見出せなかった。武器としても対ティターン用であるってのはなんとなく分かりましたけど。


 ただ最終決戦が香港であるというのはレジェンダリーの出資者と大陸への目くばせもあるんでしょうけどこの状況下では色々思うところありましたね。でも多分『パシフィックリム』でも香港対決やったしっていうだけの理由な気がしないでもないですが…。あの頃とは現実世界が変わり過ぎてしまった。そこに機械仕掛けの神が降り立ち幕引きをするというのもなんか一周回って示唆するものがあるなと感じます。

モンスターバースシリーズ

 と、tonbori堂はのれなかったものの『ゴジラVSコング』としては観たいものは全部あった訳だし、興行的にHBOmaxで配信同時だとは言えアジア圏では上映のみで好成績を収め全米でも公開時1位をとりこれで一旦は打ち止めだったモンスターバースシリーズの続編への道を切り開きました。次の作品がtonbori堂の好きな感じな映画になるかどうかは別として怪獣映画として今後も大暴れしてほしいなと思います。


ソース|

『ゴジラvsコング』小栗旬演じる芹沢蓮の初期設定、恐ろしいものだった|シネマトゥデイ 

小栗旬、米映画「ゴジラvsコング」出演で実感した“日本映画との大きな違い” : 映画ニュース - 映画.com 

小栗旬、ハリウッド進出は「ほろ苦デビューでしょうね」:朝日新聞デジタル 

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