たった一つの冴えたやりかた/『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』感想【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

たった一つの冴えたやりかた/『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』感想【ネタバレ】

2021年3月11日木曜日

anime movie ROBOT

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 いやあ、終わりましたね『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』。すっきり終わった大団円。終劇ではなく大団円かセンターに「終」って出しても良かった。ともかく25年前の落とし前を付けなくちゃって事だったんですよね。で、それでいいと思います。ちなみに私、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(以下『序』)の時は劇場に行ってなくて、まあベタに言えば『終わったものに何を言ってんだよ』と粋がってたんですね。今はもう過ぎ去った事は光陰矢の如しって感じなんですが、そんな感じに言ってたと思います。


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 そん時にまあ書いたのが上のリンクです。(恥ずかしいので読まなくてもいいです😅タイトルとスニペット表示からそういう感じをくみ取っていただければ。ちなみにリンク先はtonbori堂が最初にやっていたエキサイトブログです。)

上から目線で痛すぎるけどもう既に成人どころかおっさんでしたから余計に痛い(苦笑)しかも『序』はTVが初見だったんですよ。どんだけだよと思われますけど、もうね旧劇(っていうらしいのも『序』以降らしいですが)のエヴァの劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が2部構成でイデオンか!とつっこんだり、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(英語題にちなみEOEと呼ばれているやつです)で、うわぁってなりながらもこれは庵野さん、腹くくったなとへんな得心をしたりとかでまあ自分の中ではエヴァは既に決着はついてたんですね。だから「ロバが旅に出ても馬にはならない」と高を括っていたんですよ。


 なので金曜ロードショーでやっと『序』を観て、なるほど今の技術でTV版の『新世紀エヴァンゲリオン』をやり直したのねと思ったんですけれど(まだ粋がってた)何故かウルトラの匂いを感じて(それはTV版でもなんですが)ならばこの高密度な情報をまた浴びようかと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(以下『破』)を観に行ったんですよね。でも今考えるとエキブロのエントリでウルトラやってくれーとか書いててビビります😱まさか本人企画・脚本の『シン・ウルトラマン』来るとは。もっともその前に『シン・ゴジラ』がありましたけどね(笑)あ、これでシン・3部作?まあそれは置いといてちょっと観終えての感想を書いてみます。ちなみに内容というよりは想いのたけを書いたみたいな感じなんで誰がどうのこうなってこうとかはまでは書いてませんので悪しからず。でもそれはネタバレって言われそうなんで(実際何かをポロっと書いてしまうかもしれない)だから【ネタバレ】としておきます。※追記したので読み返したんですがやはり内容【ネタバレ】しておりますので何卒、作品を観てからご拝読願いますよう、お願い申し上げます。

たった一つの冴えたやりかた

 で『破』はロードショー中にシネコンにちゃんと観に行った訳です。その時にがっつりハートを鷲掴みまでならなかったけどエヴァの持つ不穏さというのは確実に増していて、それは何かといえば惣流でなく「式波」となったアスカの存在とラストシーンでのマリの活躍でした。彼女だけが何故オリジナルキャラクターとして差し込まれたのか?そこが気になったからです。そして『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(以下『Q』)となった訳ですがまだ核心は全然語られていないけれど、そこに本質を置いていると思わせまだ状況だけしか提示してなくてのあの幕切れ。そうそうこれがエヴァンゲリオンだよなと思えば、そりゃ続く『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を観ないと収まらないとなりました。ですがその『Q』を作った事で庵野監督疲弊しちゃったんですよね。それはカラーの「おおきなカブ(株)」でも描かれているけど、その回復に時間を擁したという事が語られています。でもそれがよかったのかもしれません。

(14) よい子のれきしアニメ おおきなカブ(株) - YouTube 

すくなくとも最終作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』を観て思った事はこれはやっぱり馬にはならなかったけど、25年前のあのTV最終話を飲み込んだ上できっちりと落とし前を付けたのが分ったのです。なのでこれで良かったと思います。映画というものはやっぱりエンドマークがついてナンボです。エヴァの場合は終劇ですけれどちゃんとお話が終わった訳です。


 それは「さようなら全てのエヴァンゲリオン」のキャッチコピーは伊達じゃないって事です。当然あのラストシーンをもって終わったとは思えないという人もいるだろうしそれはそれでいい、すくなくともTVの第26話『世界の中心でアイを叫んだけもの』のもやっとした感じを強制シャットダウンした『Air/まごころを、君に』を経て庵野監督自身の「たった一つの冴えたやりかた」を見つけたんだなと。(『たった一つの冴えたやりかた』はTVの最終話の候補案と伝えられているタイトル。『世界の中心でアイを叫んだけもの』と同じくSF小説の題名からきている。)


 すくなくともTVの最終話でも殆どあの心象風景である(実際には心象風景ではないんだけれど心象風景という訳がわからないですよね。でもいいんですフィーリングですから、敢えて言えば精神の対話とでも。)電車の中での対話がちゃんと腑に落ちる形で提示された事に、ああ25年の時を経てたどり着いたのだと感慨深くなりました。そして色々なものを掬っていく、それはエヴァンゲリオンが産み出したもの残滓とでも言うべきものであったり庵野さん心の汗だったりしたものかもしれません。長い旅路の果てに失ったもの、残ったものそれぞれに想いを馳せるラストだったと思います。今は本当にお疲れ様、ありがとうございますとお伝えしたい気持ちです。まあこんな場末のネタブログではありますが。

この世界の片隅に

 第3村パートを観た時に思ったのは「この世界の片隅に」でした。いや似ているとか(農村風景や共同体描写は確かに似通っているともいえるけれど)そういうものではないですがニアサードインパクトでも人は数少ないながらも生き残っている。まさに「世界の片隅」で日々の営みを築いている。そういう描写をアバンのパリへのカチコミ後に描写をするのは、人はずっと戦っているだけではなく心を休めるには時間薬が必要という事と作劇的にも世界は片隅にでも残っている。それを引き起こしたシンジはどう決着(落とし前をつける)という問いになっていたと思います。静から動へそういう転換点になったよいパートでしたね。


 それとともにいろいろ序制作時にエヴァを越える作品は出てこなかったという一文がありましたが、その後いろいろ作品が出てきました。例えば新海誠の『君の名は。』片渕須直の『この世界の片隅』。当然庵野監督もその両作品は知っているしなんとなれば観ているかもしれません。(観たという話は寡聞にして知らないのでもしかするとコメント残してらっしゃるかもしれないけれど)でもそれらもあってこそのこの着地点ではないかなと凄く感じました。それらを内包しつつみずからの落としどころを探った。それは自ら出演した宮崎駿の『風立ちぬ』をも抱えて全てを滋養として完成したんではないかなと、そう思えます。(※追記2021.03.13:コメント欄で教えて頂きましたがあの村のロケーションは庵野監督の出身地、山口県だとか。やはり慣れ親しむ場所か、自分のルーツかという話からしてもこの第3村パートは必要不可欠な要素だったんですね。)

真希波・マリ・イラストリアス

 『序』に乗り遅れたオタクが何故また『破』で乗り込んだのはひとえに彼女の存在に拠ります。坂本真綾が声をあてているというのもゼロではないんですが冒頭部分公開でそれまでの既存キャラとはちがうデウスエクスマキナな存在、同じく似たような存在でありながら使徒であり運命を仕組まれた少年、渚カヲルとは違う埒外さが気になり最後まで付き合う事になった訳ですが、結果これが25年越しの最終回に立ち会えることになろうとは…。何時でも出会いは埒外からなんですよね。だから彼女でしか引けない幕だったと今では強く思います。あの時TVで『序』だけ観て放置していたら…。そう思うとあの時これは気になるなと思ったのは良い選択をしたなと思います。多分そういう選択が縁を形作るんでしょうね。だから唐突な展開も何故か納得出来ました。『イスカリオテのマリア』と冬月がマリに語りかけるのもまさにそんな感じであり、TV版にはおらずでも、ゲンドウ、ユイ、冬月をつなぐキャラクターそれがマリでした。

調律

 ちなみにラストシーンを観て思い出した事があります。それはある小説のラストシーンで、これは庵野監督が拾ったのかなと思ったけど、多分そうではなくそのシーンを観て何故か自分が思い出しだけだと後で思いました。これはゲンドウの調律された世界がとかピアノが好きだとかという台詞とともに、宇宙戦艦ヤマトを通じてメカデザイナーでアニメ監督の出渕裕と古い友人である事から(ヤマト2199ではOPコンテを庵野監督が、元々宇宙戦艦ヤマトのファンでありヤマトリメイクを庵野監督が希望していたという話もありました)そう思い込んだのかもしれません。ちなみにそのシーンは全く似ても似つかない状況です。でも何故かその出渕裕が監督したアニメのシェアワールドノベライズのラストの一節が浮かび上がってきました。


 その小説のタイトルは『ラーゼフォン時間調律師』、ラーゼフォンは先にも書いた出渕裕が監督を務めたTVアニメでポスト・エヴァンゲリオンの一つと目されていたロボットアニメです。メカデザイナーとしては既にアニメファンでは有名だった出渕裕が監督というのも大きな話題になりました。そのイメージには明らかにライディーンがあるもののストーリーは別の時空の人類と時間を扱った大胆なものでした。そのノヴェライズがSF小説家である神林長平の手によって新たな物語として生まれ変わったのが本作です。一般的なノヴェライズは別にありましたがこちらはコラボレーション・ノベルとで帯に銘打たれたほぼ同名キャラクターを使ったオリジナルの小説で、徳間デュアル文庫というライトノベルの2年目の作品群の一つでした。裏カバーには「シェアワールド・ノベル」と書かれていましたね。その最終シーンを一節だけ引用したいと思います。

「手すりを握って、太陽を見上げる。春の光だ。恵みの季節。でもちょっともの悲しい。〈中略〉はるか高空を飛行機雲が伸びていく」/ラーゼフォン時間調律師/神林長平著/原作BONES・出渕裕/徳間デュアル文庫 

そう見終わった後、深夜にも関わらずそういう感慨に浸ったそんなラストシーンでした。なのであの頃エヴァを観ていた人たちはもれなく見たほうがいいかもしれません。25年前の思い出の総決算。繰り返されたものがここにエンドマークをつけたんですから。

ラーゼフォン時間調律師/神林長平著/原作BONES・出渕裕/徳間デュアル文庫(Amazon)

ポエトリー

 そういえば小沢健二の新曲「彗星」の歌詞がシン・エヴァンゲリオン劇場版の内容にシンクロしているとネットで目にしましたけれど、それで言えば宇多田ヒカルの主題歌はずっとシンクロしているし、歌詞というのは時代を写すポエトリーのようなものだと思っています。だから歌詞をじっくりと読み込んでもいいんじゃないかと思います。


 「時代を写すポエトリー」これはもうtonbori堂が敬愛するシンガーソングライターの佐野元春からの受け売りでEテレ『佐野元春のザ・ソングライターズ』で元春がOPナレーションで言う「ポップソングは時代の表現であり時代を超えたポエトリー」からインスパイアされたものです。それが映像作品でも同じだしその内容に合う楽曲が提供されているというのは幸運な事だしtonbori堂は宇多田ヒカルのファンでもないのにこの序破Qからの彼女の提供楽曲やこのシン・エヴァンゲリオンの主題歌『One Last Kiss』は心に響く曲だと思っています。


宇多田ヒカル『One Last Kiss』|Hikaru Utada|YouTubeより/庵野監督監修のMV

それに小沢健二の曲を引くまでもなく、TV版の主題歌「残酷な天使のテーゼ」なんかめちゃくちゃピッタリです。作詞家の及川眠子さんは打ち合わせと概略だけでそこまでシンクロさせた歌詞を書いちゃうってのもやっぱり時代がそうさせたのか。

 それに別のところから引っ張るのならそれこそ佐野元春の「彼女」なんかめちゃくちゃシンクロしてると思いますね。この「彼女」って曲はあまり言われないけど実写ドラマでポスト・エヴァを狙ってたんじゃないかと思っている『SPEC』の映画版の締めに使われた曲でまあ歌詞を読んで見てください。まさエヴァにドンピシャリ。でも作品としてシン・エヴァンゲリオンと対を成しているというのならやはりOne Last Kiss以外には考えられない。そしてクライマックスでかかるあの曲。それが何かは記さないけれど(ネタバレと銘打ってても割らないのはやっぱりスクリーンで観て、聴いて欲しいから。)それを持ってしても幸せな作品ではないかなとそう思うのです。

One Last Kiss (通常盤:ジュエルケース)(ジャケットビジュアルステッカーー付)(Amazon)

※ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序


※ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破


※ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q


※全てはここから。新世紀エヴァンゲリオン(TVシリーズ)



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