シド・ミード没後1周年追悼企画トークライブを見て。-Web-tonbori堂アネックス

シド・ミード没後1周年追悼企画トークライブを見て。

2020年12月31日木曜日

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 SYD MEAD、シド・ミードといえばまず思い出されるのは『ブレードランナー』のポリススピナーではないでしょうか。少なくともtonbori堂はそうです。去年の12月30日に逝去されたシド・ミードは同じく去年の春に開催されたシド・ミード展でその仕事の数々が日本でも見れたそうなんですがtonbori堂は残念ながら遠出することなく終わってしまいました。そんな中、そのシド・ミード展にキュレーターとして関わったシド・ミードコレクターの方が奈良で回顧展を小規模ながらも行うということで行ってきたのです。で複製原画やターンXデザイン画原本コピーなどに直に触れてみてやっぱり凄い人だなと思いました。そこで没後1周年追悼企画としてシド・ミード展主催の株式会社スカイフォール企画によるトークライブの配信チケットを購入したのです。


シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019 【CM】|YouTube|SYD MEAD 2020ch

第1部シド・ミードの想い出とその発想力、画力

 すごいものを拝見させていただきました…。1部はモデレーターに映画評論家の清水節、出演者はイラストレーターの加藤直之、漫画家、映画監督の大友克洋、映画監督、特撮監督の樋口真嗣、株式会社スカイフォール専務取締役でシド・ミード展のプロデューサーを務められた渡辺繁という面々。この凄い面子とシド・ミードをつないでいるのは渡辺繁さん。渡辺さんは元ポピーの社員にしてその後バンダイ・フロンティア事業部異動。数々の映像企画に携わり、加藤さんとは『王立宇宙軍オネアミスの翼』がまだ『王立宇宙軍リイクニの翼』であった頃に宣伝ポスターを発注し、大友さんとは『MEMORYS』や『スチームボーイ』の製作。樋口監督とはウルトラマンパワードの製作、そしてシド・ミードさん本人とも仕事を挟み30年近くに渡る親交をもって日本のクリエイターとの橋渡しもしてきた方です。


実際このトークライブも清水さんが渡辺さんをファシリテーター(議論を進める人)としてということをおっしゃっていましたけど、それぞれの人との間にいる方が渡辺さんでした。まさに「振り返れば彼がいる」状態。そんな面子がミードさんとの出会いやミードさんの想い出。代表的な作品を囲んでの論評、画の構成力などを鋭く解説。含蓄のある話を2時間に渡ってたっぷりと。これはアーカイブ配信はミードさんの命日の30日23時59分までなのですがなんらかの形でテキストか特典映像かなにかで残してほしい濃さの内容でした。でも話はそこで終わりません。怒涛の第2部が待ち受けていたのです。

第2部コンセプチュアルとデザインとスタイリング

 第2部は「大人の時間」とフランクにという事でしたがどうしてどうしてメカニカルデザインとは何ぞや?とかコンセプチュアル・デザイン、スタイリング、ビジュアル・フューチャーリストにまで多岐に渡る、時々脱線もしながらもこれまた濃い話になっていました。

スカイフォール代表取締役でシド・ミード展主催者でもある元サンライズ、そして元アニプレックス社長でもある植田益朗をモデレーターにメカニカルデザイナーの肩書を持つ3人、出渕裕、河森正治、宮武一貴。出渕さんはアニメーション監督、河森さんはビジョンクリエイターという事でしたが、同じメカニカルデザインに携わる3人の視点は非常に面白いものでした。3人の視点で紐解くミードさんの画の真髄。またそれは同時に3人のメカニカルデザイン歴、業界歴を振り返る話にもなり、当然『∀ガンダム』を手がけた植田さんがいるからこその∀ガンダム話にもなっていきますし、アニメ業界の話にもなっていきます。この∀ガンダムについてもなるほどと唸らされる知見がありました。

 圧巻なのは河森さんがポリススピナーとブガッティタイプ57SCつながり。パクリとインスパイアは凄い話でした。これを聞けただけでも値打ちがありました。自分もクルマは好きだしいろいろなものを見てきて時々、これは!っていう発見があるときはありますがそこまで細かいデザイン眼ってのは凄いなと感心しました。正直tonbori堂は∀ガンダムのデザインを最初見た時は変なガンダム?理解しづらいものだと思ったんですがこれもデザインではなくスタイリングという話も腑に落ちるものがあります。事実河森さんはガンダム0083の時のGP02についてはメカニカルデザインではなくスタイリングと称したし、ガンダム0080を手がけた出渕さんもガンダム原案に大河原邦男の名を入れて欲しいとお願いしたと。結局ガンダムってトリコロールカラーとガンダムを構成するライン、例えばツノ(∀ではヒゲ)など完成されたもので、ただ新規のモビルスーツならばそこは「デザイン」なんではないかという話で河森さんがスモーが通ればこれはデザインだよねという事は思わず頷いてしまいましたね。

 ミードさんの世界をつくる、コンセプチュアルデザインという部分が現れている画稿や∀やヤマト2520とオリジナル作品との違いを考察することにより改めてミードさんの凄さもまたそれで浮かび上がってくるというところもあり植田さんとともに出渕さんがよいファシリテーターとして機能していた2部も素晴らしいものでした。本当に凄いものを年末に見れて(聞けて)今年の締めとしてはこの上ない素晴らしい体験ができました。植田益朗氏と渡辺繁氏のお二人とトークライブに参加されたお歴々の方々には本当に感謝です。

シド・ミード没後一周年 特設サイト|Syd Mead 1st Anniversary

※シド・ミード映画関係のデザイン集

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