『時の彼方へ』|ファイブスター物語/FSS「ショウメ争奪戦~大君主バフォメートのまなざし」月刊NT2020.11月号連載分:感想/考察|【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

『時の彼方へ』|ファイブスター物語/FSS「ショウメ争奪戦~大君主バフォメートのまなざし」月刊NT2020.11月号連載分:感想/考察|【ネタバレ注意!】

2020年10月15日木曜日

FSS manga

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 えー、前回月刊ニュータイプ2020年11月号の感想が読み返すとめちゃくちゃあっさりしているなと思ったので再度書き足す格好でこの『大君主バフォメートのまなざし』について考察も交えてエンディングを迎え思ったことなどを書いていこうかと思います。なんといってもCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大による緊急事態宣言からの2カ月間の休載を挟んでの長きに渡る物語の結末ですから。本筋としては前半のポイントはダイ・グとクリスティンがラキシスと邂逅しダイ・グとラキシスの会話が重要ポイントになると思うのですが、後半、マドラが(まだスパークだったけど)やって来てからは怒涛の展開。それは『五つの星の物語』としていくら中身スカスカと作者が言おうとも長らく前から準備された『ショウメ争奪戦』は最重要度エピソードであったはず。それはヴィーキュルとラキシス、そして神々とのマジェスティック・スタンドでは無かったのか?と思う訳です。(もちろん作者の新規デザインを放出してえよ!ってのもあると思います。実際DESIGNSでも新規繰り出してきていますがそれ以上に本編にてというのは作者であるクリス(永野護)が一番大事にしているところなのですから。)当然連載中の『ファイブスター物語/FSS』連載本編の内容に触れておりますので【ネタバレ注意】です。何卒よしなに😌

月刊ニュータイプ(NT)2020.11月号/tonbori堂撮影/KADOKAWA刊
月刊ニュータイプ(NT)2020.11月号(リンクはAmazon)/tonbori堂撮影/KADOKAWA刊

神々の遊戯

 ルシファーはとにかくアマテラスと大御神となった状態ではないラキシス姫の力を試したかった。それは彼がまだ闇華の大権史であった頃の心残りのようなもの。彼らの宇宙はタイカ宇宙にジョーカー宇宙のアマテラスが干渉した。その根本の中にあるラキシスというのは一体何なのか。それもまたバランシェと同じような知りたいものを知りたいという「欲求」であり神らしからぬもの。それを知りたいという欲求があの世界を産みだした。あくまでも彼女の持つ力を見極めるために。もしそれで世界線が代わっても神々の調律が成されるとしてもそいせざるを得なかった。それは神々に列する前の彼の「想い」でそれはシルヴィスがタイカの平安を望んだ「想い」と通じるものではないかと思うのですよね。

想いは色々あっても想うという行為が同質なものである。それが『五つ星の物語』の本質ではないかなとこのエンディングを読んで思うのです。それは3女神エピソードでもある『運命のラキシス』が名付けられたというのにも繋がっています。モラードに語った言葉がここまで五つの星の物語の骨格になっているという部分で色々あったけど根本は変わっていないんだなと。


 クリスはよくこのファイブスター物語/F.S.Sはおとぎ話、なんでもありだと言っていますがその中で一つの枷をつくった。それが年表というのは初期のインタビューで本人が語っていますがその年表もいつの間にか消えた項目や追加されたイベントがあります。元からあったのかそれとも矛盾が生じてきたので削除されたのか、多分両方な気がするんですけれど、主人公であるラキシスの発した言葉は変えないところにこだわりを凄く感じます。それだけに主人公であるラキシスとアマテラスの物語をここに挟んできたのは2人が主人公なんだよという強い意思表示ではなかったかと。それともう一つ、これはTwitterの星団民(F.S.Sファン)の間で時々浮上する『花の詩女 ゴティックメード』の次のアニメ作品が用意されている。または手掛けるのではないかという話です。で、tonbori堂は今回のネタばらし的なエピソード展開は以前の『五つの星の物語』的なものを感じつつも、そのお膳立てとしてこの神々の遊戯を描いたのではないかと少し思っています。具体的に言えば3159大侵攻という話もありますが可能性が高いのは3239年のフィルモア崩壊かその前の3225スタント遊星攻防戦のどちらかではないかと実は思っているのです。どちらもA.K.Dのミラージュ全力出撃ですし、J型も投入されるであろう戦いはアニメーションでもし観れたらとんでもないことになりそうです。もっとも作画はとんでもない事になりそうですが(^^;

システム・カリギュラとボスヤスフォート

 カリギュラの名前でローマ皇帝を思い出す人もある年代の人には多いかもしれません。実はtonbori堂もそうでした。カリギュラはローマ帝国の皇帝でヤマザキマリ、とり・みき共著の『プリニウス』でも描かれています。まあだいたい酒池肉林や、放蕩三昧で国を傾けたとかマイナスイメージで語られる事が多い人物ではありますよね。実は晩年は精神的に不安定になり放蕩というよりは執政放棄のような事をしていたが初期はそうでもなかったという話が出ている人物でもあります。最終的には暗殺によってこの世を去った訳ですが、カリギュラというイメージはマイナスイメージが付いて回ります。それを敢えてネーミングに採用したという部分でこのカリギュラという組織も一筋縄ではいかぬものだろうなとは思っていましたがまさかファロスディー・カナーンの血統を別の意味で残そうとしたというのが超帝国の業の深さをまざまざと感じさせます。


 ナ・イ・ンというかユニオ3もある程度この事は了承済みでしょうけれど彼らがファロスディー・カナーン・トライブのコピーだとすればボスヤスフォートは総帝に連なるヒフツェンなのか?という問いには、彼もまたファロスディー・カナーン・トライブの遺したコピーであったというしかないのではないでしょうか。ただカリギュラとはまた違う遺され方をしたコピー体。思い返せばミコト様の玉座に乗り込みアマテラスに一度、次元回廊で滅されたものの幾人の魔導士の精神の片隅でその精神を繋いできた禁断の秘術「人格憑依」で時を待っていたと。有機生命体として重合人間という人ではない人工生命に精神をコピーしたのではなく。精神そのものをコピーし別の人間へと。そして最終的にセントリーの「命の水」を使い超帝国時の肉体を取り戻す。それがボスヤスフォートの正体なんでしょう。それでは一体誰のコピーなのか?という話が出てきますがそれに関してはあまり重要ではない気がしています。ただ超帝国の残滓であることは間違いなくだからこそ「詩女」が決着を付けないといけない。マグダルに課せられた使命といってもいい。ジョーカー星団の記憶の継承なのかそれとも超帝国のかつての支配者としての欲望を成し遂げるため精神体としても抗うのか?ボスヤスフォートとの決着の始まりは次の章から本格的に始まります。

ヴィーキュルとヴィクトリー

 タイトルが『大君主バフォメートのまなざし』という意味がエンディングで明かされる。確かにそれまでバフォメート出てないし、とすればポーターが先月号(2020.10月号)で語った、「あの気配は霊体だ」しかない訳でして。その上DESIGNSで明かされたビーネンクリーガン・アスタローテなどで既にヴィクトリーではないかと推理されていたチークさんの想像通りであったわけですがヴィクトリーやレディ・スペクターは星団出てからのミラージュなんですよね。とは言え今回の一件で実はラキシスに忠誠を誓ってアマテラスの元にいるという非常に面白い状況ですがレディ・スペクターについてはベストラル星系で云々とありましたがF2ファティマ、マータ―・マーターと出会ってとなっています。この辺りも前から設定されてて意図的に伏せられていたのがここでドバっと大放出なのはやっぱりスタント遊星攻防戦やカラミティ崩壊時にまたいろいろ表に出てないイベントがあるのではないかと考えています。じっさいスタント遊星攻防戦ではマキシがその命を落し、泰華宇宙へと転生し後にファーンドームの星王となる訳ですからね。実は『大君主バフォメートのまなざし』はプロローグでもあったという見立ても出来ます。それについてはマジェスティック・スタンドが奇蹟の44分間を経て決着つかないとなんとも言えないのですが。

CHARACTERS/MIRAGE|COLUS|トイズプレス刊
CHARACTERS/MIRAGE&COLUS|トイズプレス刊/COLUSの表紙にはヴィクトリーとレディ・スペクターが描かれている。


ザ・ウィル・スペンサードと記録

 DESIGNSでの説明でマータ―・マータ―が作り出しってのは知っててもジョーカー星団に来てたと書いてあっても…そんなに早く出てくるとは夢にも思わない訳ですよ。でも出てきたわけで。でも実は今劇場で公開されているクリストファー・ノーラン監督の映画『TENET テネット』と通じる部分がある事に気が付きました。といっても同じ理屈とかそうじゃなくて、スペンサードが時を逆行してやってこれるのはウィルの次元航行記録を元に(それには星団での記録もあるんでしょう)遡ってやってきたとマーター・マーターはいいます。『TENET テネット』でも記録が重要とされます。何故なら「起こってしまった事」が記録されるからなのです。それを手がかりに主人公たちは「逆行」する。図らずも「記録」という部分でつながったのは一種のシンクロニシティなのかもなと。(ちなみに7月号でのマーター・マーターのテキストに既に書いてある事なんですよね。これを書くために確認してちょっと声をあげてしまいました。いやまあただの偶然というかこじつけと言われると「ですよね」としかいいようがないし、そもそもスペンサードは「自由に」行き来出来るようですからね。ただおおっぴらな干渉は出来ないのはタイムパラドックスがあるのでってことなんでしょうね。おとぎ話ではあるけれど「年表」という記録の枷があるファイブスター物語/F.S.Sならではのエンディングでした。


 ちなみに欄外にノズルの話がありましたけど(「みらいのうちゅーせんにふんしゃのずるなんてないでし」とタワー語で(笑))スタートレックのエンタープライズもあの船体後部の部分あれノズルじゃないですし(ワープナセルという超空間航行ワープエンジンを搭載した機関でノズルはない)『トップをねらえ』でもヱルトリウムという宇宙戦艦にはノズルはありません(確か単一の素粒子で船殻がつくられているという設定)そう!みらいのうちゅーせんはのずるはないのはじょーしきなのでし(笑)

時の詩女

 ということで『時の詩女』も次からが佳境だと思います。本筋である「マジェスティック・スタンド」。魔導大戦の終わりの始まりなので。その前に久し振りにファイブスター物語っておとぎ話だし、長い時間軸の中の一瞬のきらめきを切り取っているんだな。活写しているんだなと改めて思いました。次はどんな花を咲かせてくれるのか…。来月が待ち遠しいです。

※ここまでは第16巻に入るとかで。それまでは第15巻を味わい尽くすという事で

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