「黒騎士バッシュとダッカスの覚え書き」|ファイブスター物語/FSS解説|【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

「黒騎士バッシュとダッカスの覚え書き」|ファイブスター物語/FSS解説|【ネタバレ注意】

2020年8月30日日曜日

FSS manga ROBOT toy

X f B! P L

 ボークスのファイブスター物語/FSS、ゴティックメード第2弾(これがアブソメックになるかどうかはまだ確定ではないそうですが)黒騎士ダッカスに決まったとボークスのショップニュースにて発表があったようです。現物を貰っていないので(ボークスで何かを購入すると無料で配布されるそうです。)詳しい事は分かりませんがいい機会なので、ここで黒騎士についておさらいしておこうかと思います。

※このエントリは既刊のDESIGNSやファイブスター物語/FSS連載中及び単行本の本編についての内容が書かれているので【ネタバレ】にご注意ください。

GTMダッカス/ガレージキット/ボークス/ボークス大阪店にて撮影
GTMダッカス/ガレージキット/ボークス/ボークス大阪店にて撮影


黒騎士バッシュ≠黒騎士ダッカス

 見出しはノットイコールにしてますけどモーターヘッドとしてはバッシュ、ゴティックメードとしてはダッカスであるという事でその名前の元になったヤーン王女の名前はそのままでミドルネームが変更になったという経緯があります。分かりづらいですね(苦笑)書いててtonbori堂もなんのこっちゃとなっていますが、物語で名前は違うけど同じ人という。黒騎士の名を冠した王女。ヤーンのミドルネームがバッシュからダッカスになったという事です。黒騎士の名を冠するロボットの名前は超帝國王女であり茜の星カーマインを収めていた人物の名前から来ているというのはファイブスター物語リブート後のMHからGTMへの設定変更後も変わっていません。

バッシュ・ザ・ブラックナイト

 モーターヘッド時代にバッシュと呼ばれていた黒騎士のデザイン、元を辿るとTVアニメ『重戦機エルガイム』に登場したA級ヘビーメタル「バッシュ」に行き当たります。バッシュは古いデザインだそうで初期のデザインボードを掲載しているムックでも既にその姿を見せており、完成稿での注釈に装甲の換装をすれば主人公騎であるエルガイム(これもジュノ―ン、エンゲージの大元になっています)の装甲を付けることもできるとあります。主人公ダバ・マイロードのライバルであったギャブレット・ギャブレーを初め多くの人物が搭乗することになった機体ですが、元々デザイナーのクリス(永野護)は思い入れがあったようでバスター・ランチャーを構えた画稿もバッシュが先に世に出たように記憶しています。(ちなみにそのバスター・ランチャーは仮デザインであったのにそのまま決定稿扱いで映像に出てしまいバッシュ専用バスター・ランチャーになってしまったという経緯があります。)野武士を思わせるマスクと兜のような角飾りから人気の高いメカで今も完成品のトイが発売されていますが、そこからモーターヘッドへとブラッシュアップされて生まれ変わった、もう一方の主人公騎体(真の主人公騎体はナイト・オブ・ゴールド、そして人間側の主人公騎としてエンドレスがあるにしても、物語をずっと支えていくもう一方の主人公騎)がバッシュ・ザ・ブラックナイトです。エルガイムの時のバッシュは赤と青の配色でしたがモーターヘッドのバッシュは黒一色にオレンジの三つ巴紋が映える騎体です。

HI-METAL R 重戦機エルガイム バッシュ 約225mm ABS&ダイキャスト&PVC製 塗装済み可動フィギュア/BANDAI SPIRITS/Amazonより


 バッシュがその姿を現したのは実に連載開始当初の「エピローグ」からで4代目黒騎士グラード・シドミアン(登場時、モーターヘッドの名前もバッシュではなく黒騎士グラードでした)が駆る黒騎士vsミラージュ騎士(ナイト)カーレル・クリサリスの駆るL.E.Dミラージュの一騎打ちでした。今となってはこの組み合わせは凄い事だったんだなと改めて思うんですが当時はそれを抜いても主役ロボがいきなりって感じでやっぱり高揚しましたね。対決はグラードの敗北で終わり、エストは新たなマスターを探さずグラードとともにそこに眠るという流れもなんと寂寥感のある始まり方だと思ったものです。そこから『運命の3女神』ラキシスのエピソードが始まる訳ですがアニメ映画『ファイブスター物語』ではそこは描かれずジュノーでのコーラスの戦に参加したであろうと思われるバッシュの画(あまり動きはない)で処理されていました。エストと2代目黒騎士ロードス・ドラクーン卿が映像化されたのは嬉しいんですけど、動いている黒騎士とL.E.Dは観たかった気も…と脱線しましたね(^^;

IMS 1/100 バッシュ・ザ・ブラックナイト/©永野護/EDIT/ボークス/Amazonより
IMS 1/100 バッシュ・ザ・ブラックナイト/©永野護/EDIT/ボークス/Amazonより


 バッシュはその後エストのDESIGNSでの解説で、より詳しい設定が起こされました。それによると元々エストはバッシュとペアで創られた特殊なファティマであり、彼女がマスターと呼ぶ騎士がすなわち黒騎士となるという設定です。エストが選ぶのはバッシュの能力をフルに引き出せる騎士であるというざっくりとした情報はあったものの『トラフィックス』の黒き死の女神、ヨーンとバーシャの物語でも一部語られてはいたのですが、ファティマ・マイト(ガーランド)、モラードとバッシュのマイト(ガーランド)であるルミラン・クロスビンが協力して作り上げた専任ファティマをもつモータヘッドであり、そのシンクロナイズド・フラッター・システムは通常の騎士とファティマの組み合わせよりもそのパワーや運動性能を2ランクも引き上げるため多くの王侯、騎士がその力を求めました。しかしエストはその特性からバッシュと一番相性のいい騎士を得ようとするため何度お披露目をしてもなかなか並み居る騎士をマスターと呼べず、黒騎士の座を巡って手合いや暗闘が起こり、クロスビンが死去した時はバッシュの専任騎士が決まらない事とそのプレッシャーからくる心労やいや実は暗殺されたのだという噂さえも飛び交ったとあります。モラードはこのままではエストの精神が持たないと考え「ファンタム・プログラム」シークモードというマスターを探している時はバーシャという別人格ファティマとして過ごし、黒騎士に値する騎士の前でエストとして目覚めるというシステムを彼女にプログラムしたのです。それはエストという人格を護るためのものだけどバーシャとしての人格は?とかこれ考えると凄く残酷な処置ですよね…。そしてそれがヨーンとバーシャ(エスト)とデコーズとの縁を作ったのです。これらはまだ黒騎士がバッシュの時代に語られたことですがGTMダッカスとなった今でもその設定はそのまま引き継がれているようです。


 またバッシュはジャスタカーク公国のアイオ・レーンが使用しているグルーン・エグダクラインとパーツの70%が共通という設定もあります。そしてこれが重要なんですが実はグルーンはフィルモアからの依頼を受けてサイレンの軽量化モデルという設定がありました。(M型)この辺りも形を変えてダッカスの設定に残っています。

ダッカス・ザ・ブラックナイト

 映画『花の詩女 ゴティックメード』公開後に『ファイブスター物語/F.S.S』が連載再開されたそのエピソードでいきなり登場したのがこのGTMダッカスでした。アリシア・セパレートをまとったオートマチック・フラワーズ(ファティマ)なども『花の詩女 ゴティックメード』でお披露目済みではありましたがロボットデザイン変更は度肝を抜かれたし名前まで変えちゃうのもクリス(永野護)らしいやと思いましたね。tonbori堂は度肝は抜かれたけれどどっちかというと面白がっていましたが、何せ全くの新規デザインを旧メカで楽しめるとかあり得ません。いうなればマジンガーZが全く違うロボットだけどマジンガーですみたいな、そんな事はまず無いですからね。主人公機が替わるってのはクリスの師匠筋、富野由悠季監督がザブングルから始めた手法(主にスポンサーの要請で)ですがエルガイムの頃にMk2の登場には反発したという話も。しかも変形はいやだとダダをこねたとか(笑)でも主人公機体が交代とかそんなもんじゃなく世界観の一端を担っていたロボットのデザインを一切合切変えてしまうという。そこにどんな事があったのかは分かりませんが(事情通という人の話も風の便りに聞いたこともあります)クリスはいつもシンプル。「だってゴティックメードにしたかったんだもん」でしょうね(笑)


 ダッカスの造形はまるで鬼瓦のようだとも評されますけれどシーサーのような顔つきに狛犬のような模様。そして黒というよりはガンメタルのような色合い(これはNT表紙の時にそう思ったんですが迫力のある面構えです。そんなダッカス。本誌登場時から痺れましたねえ。ハスハントの防衛線があるノウランのAP騎士団スキーン隊本陣への強襲。名刺代わりの1枚!みたいな感じでこっからはゴティックメードだぜという決意が現れたページになってました。またDESIGNS4でも「現時点での永野デザインの最高峰」と書かれています。よく最強のデザインを口にするクリスですがそれは時代と共に変っていきます。まるでバランシェのように最高を描くとまたその次を目指す。バランシェ=永野護ってところあると思うんですが…それは脱線ですね。


 ダッカスはその型式からフィルモアのホルダ(MHサイレン)との結びつきがさらに強化された設定になっています。(ダッカスの型式はケ-holda-DTN31)GTMホルダはメロウラやカイゼリンをはじめとするブラウニー・ライド博士の傑作フレーム、ライオン・フレームを使用しているという事なんですがそれを少々短くし小回りの利くフレームとしたものがライオン・デトニクス・フレームという設定となっています。(アイオ・レーンのGTMオスカードも同様)ブラウニー・ライドの系譜を持ちつつそれを改良したルミラン・クロスビンの傑作GTM(流れとしてはサイレンM型と同じく開発途中で計画が破棄されたもののそのライオン・デトニクス・フレームを使用して2騎のGTMを開発はそのまま)として今後も活躍…いやデコースvsヨーンはどう決着するのかな?流れで言うと騎士同士のタイマン(手合い)なのか、でもバーシャやアイシャのいうGTMを駆るものこそが騎士となれば…そこも気になる話です。

 そうそう型式の話ですがGTMになってから星団認識型式、騎体、型式、発動機が設定されるようになり、それに合わせてDESIGNSでもそれぞれの(MHでも設定はされたものの本格的になったのはGTMから)フレーム設定も整理された事によりより兵器体系としてはっきりしてきたなと思います。いや相変わらずライオン・フレームじゃなくてあれはレオパルド・フレームじゃないっすか?とか今後もまだ混乱はありそうですけどね(笑)しかしより兵器感が高まったと思います。

黒騎士の行方

 今後どういう展開になるかは分からないんですがヨーンはミラージュ騎士になるというのはほぼ連載当初から決まっていて(叩き上げ騎士として)もなお、デコースとの対決の決着がそこでつくのかどうかも未定です。(マドラとデコースの息子はミラージュ入りするのは決まっています。その息子と思われる人物、ベルベット・ワイズメルは既に一度登場しています。)そこから5代目グラードになる前に4代目バントライン・ゴールとなるんですが3代目デコースから4代目バントラインまでは間があるし、『花の詩女ゴティックメード』エンディングのカーテンコールでご存知でしょうけどエストは仮のマスターとしてレーダー9の元に行っています。DESIGNS2でも天照の星団大侵攻時には黒騎士でない人物がマスターにという記述もあったので黒騎士でない人物がダッカスを操る事もあるかもしれません。もしくはエストはそうでない騎体を駆る事は既に発表されていますが本編では未だそのシーンはありません。それに物語がそこまで描かれるかどうかは分からないけれど、まだまだダッカスは目が離せない騎体です。それは当然黒騎士の行方にもつながることなのでデコースの行く末や彼の迎える結末。そして4代目、5代目へ受け継がれていくものなど今後も黒騎士は『ファイブスター物語/FSS』の中で重要な位置を占めると思います。

月刊ニュータイプ2015年3月号/KADOKAWA刊/Amazonより


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