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燃える男|『タイラー・レイク-命の奪還-』/感想/tonbori堂Netflix鑑賞記【ネタバレ注意】

2020年8月31日月曜日

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 NETFLIXに再び舞い戻ったのは『オールド・ガード』とともにこれを観たかったというのもありまして観ましたよ超絶アクション映画『タイラー・レイク-命の奪還-』さすがスタントマン出身のサム・ハーグレイブ監督です。とんでもないシーンのつるべ打ちとはこのことでしたね。という事で今回は『タイラー・レイク-命の奪還-』について感想とかを書いてみようと思います。 

 

『タイラー・レイク -命の奪還-』予告編 - Netflix/動画はYouTubeより
  

麻薬王の息子を奪還せよ/STORY

 インドの麻薬王オヴィ・マハジャンには同じ名前の息子が一人いた。収監されているマハジャンは特殊部隊上がりの屈強なボディーガード、サジュをつけていたがオヴィは息のつまる毎日で、夜な夜な抜け出しては友人たちと遊んでいた。しかし警察に化けたバングラデシュの麻薬王でマハジャンのライバル、アミール・アシフの手下に誘拐されてしまう。


 激怒したマハジャンはサジュに身代金は払わない、救出せよとサジュに命令する。息子を奪還出来ない場合はその代償はサジュに払わせると言い放った。このままではサジュどころか家族の身まで危険になる。苦悩したサジュは闇の仕事を請け負う傭兵を雇う事にした。

 タイラー・レイクはオーストラリアの元特殊部隊隊員。闇の仕事を専門に請け負うニック・カーンからオヴィの奪還の依頼を受けバングラデシュの首都ダッカに潜入する。身代金の交渉に赴いたと思わせ敵地に潜入。オヴィの救出を成功させる。タイラーたちは脱出させるチームとの合流点に急ぐがそこに金は一切支払はないマハジャンのため救出してきたオヴィを横取りしようとしたサジュが脱出チームを襲い全滅させていた。サジュと交戦し辛くも逃げ切るタイラーだったがアミールはダッカの警察、軍をも金で支配する男。しかもタイラーの写真をばらまき街中のチンピラが彼らを襲う。アミールの手下になって成り上がろうとする少年ギャング、ファラドたちに襲われピンチを迎えるが馴染みの元傭兵ギャスパーの手引きで窮地を脱するのであった。


 しかしギャスパーは街を支配する帝王でもあるアミールに寝返っておりオヴィを殺そうとするのをタイラーに止められ部屋で争う。そしてタイラーを殺そうとするが銃を拾ったオヴィに射殺される。 完全に四面楚歌に陥ったタイラーだったが同じく街にまだ潜伏していたサジュに連絡しオヴィを助けるために手を貸せと持ち掛ける。完全に封鎖された街には救出部隊は辿り着けない。ピックアップポイントに向かうには橋を渡らないと行けない3人は完全包囲の中果たして辿り着けるのだろうか?

燃える男、タイラー・レイク

 正直、お話はどこかで観たような話なんですよ。それが何かといったら『燃える男』の映画化作品で『マイ・ボディーガード』っていうデンゼル・ワシントンの映画なんですが元軍人でやさぐれている男がっていう点が一致しちゃってて脚本と製作担当のルッソ兄弟もやっぱりそっちを参考にしたのではと思う位換骨奪胎しているなという感じです。


『燃える男』自体はA・J・クィネルの小説で元軍人でボディーガードだった男が対象の少女を誘拐されてしまい、惨殺されてしまったところから復讐するという『ランボー ラスト・ブラッド』なお話なんですが、その映画版『マイ・ボディーガード』は少女を救出するため自分の身を投げだすというストーリーになっています。同じなのは主人公やキャラの名前ぐらいなんですが、ある種の雛形的な展開ですよね。


 ようはタイラーのようなプロがどうやって危地を脱するか?その連続を映像化するために説得力のあるストーリーを組み立てるために設定を考えたら似てきたぞって感じでしょうか。なので当然海外の評論家筋ではアクションシーンは素晴らしいけど中身に難ありと評されてしまっています。また主人公が白人でインドとパキスタンが主な舞台(ロケはそれ以外でもされている)でインド人の少年を救うということで「白人の救世主」というハリウッドの定型スタイルと見做されている事も影響しているようです。


 いわゆるステレオタイプの定型スタイルでもある「白人の救世主」ですがインドは今や世界に冠たるIT大国でありボリウッドやナートゥなどの独自の映画文化もある映画大国です。確かに貧富の格差は激しいけれど非白人ってことだけでそう断じてしまうのもなってのもありますが、(しかもお隣のバングラデシュも関わってくるというか、中盤以降殆どバングラデシュでお話が展開)貧富の差が南米諸国と同じくはっきり目に見えるだけにポリティカルコレクトネスが気になる欧米ではそう見えてしまうのかも。しかし明らかに劣った者たちを文明人世界からドロップアウトしたものが救うというものではなく単純なアクションを求め物語の深みはキャラクターが醸しだす事を選択した結果、こうなったんじゃないかなと思っています。(当然そこには製作陣と売り込み先がってのもあるでしょうけど)とは言えタイラーを演じたクリス・ヘムズワースはおバカなヒーローからマッチョなヒーローまで器用に演じられるし今回彼を主演にチョイスしたのは正解だと思います。身体能力も高いし、アクションに説得力が出ます。

今回の作品にはルッソ兄弟が関わっているのは先に触れましたけど脚本は弟のジョーが担当。元になったのは兄弟が製作に関わったグラフィックノベル「Ciudad」。内容はAmazonのあらすじ紹介によると誘拐された女性を救出する物語のようです。

ソース|https://www.amazon.co.jp/Ciudad-Joe-Russo/dp/1620101467


 シウダー・デル・エステはパラグアイの都市だそうで南米が舞台でもいいじゃないのという気がしないでもないですが、相手が麻薬王となると中米メキシコが舞台の『ボーダーライン』やNETFLIXオリジナルで言えば南米コロムビアが舞台の『ナルコス』もあり、敢えてはずしてきたのかな?と思っているのですが。 とは言え主人公の造詣に幼い子どもが病魔に侵されていて死に瀕しているのにそれに背を向けて戦場へ向かってしまったタイラーという人物や、父親が麻薬王で収監されていてもその財でいい学校に通わせてもらっているけれど籠の鳥である自分に息が詰まる思いをしていたオヴィ。オヴィを誘拐された事で窮地に追いやられ妻子を護るために鬼になるサジュ。サジュは普通に考えるとタイラーたちを罠にかけた漁夫の利を得ようとした男なんですがその鬼神のような追跡っぷりやタイラーと互角に戦う戦闘能力、そして妻子を思う心、そこからの後半の展開がまた熱い。


 そしてクールで物事を理路整然と進めながらも情にほだされたタイラーを見捨てず救出に駆けつける傭兵たちを束ねるニック。オヴィを誘拐し街の帝王として君臨しているが目をかけた少年ファウドに忠告を与える麻薬王アミール。引退しタイラーへの恩と生きていく事を天秤にかけるギャスパーなど他ちょい役までキャラが出番が少ない者でもよく描かれていてジョーの脚本はなかなかよいホンだと思いました。なんせアミールの協力者の大佐ってそこまでは使えない指揮官って感じがクライマックスで凄い見せ場があるんですよ。それにはびっくり。でその働きがさらに傭兵チームのリーダー、ニックの見せ場へと繋がっていくという。そうですね、「マイ・ボディーガード」ミーツ「シティ・オブ・ゴッド」という感じで。あとちょい「ワイルドギース」入ってますかね。

キャスト

 タイラーにはクリス・ヘムズワース、オヴィにはルドラクシャ・ジェイスワル、サジュには ランディープ・フーダー、インドの俳優さんですがタイラー/クリスとの一騎打ちや家族に見せる眼差し、後半の展開など無茶苦茶印象深いところを残していきました。ギャスパーにはデヴィット・ハーパー、ハーパーは公開待機中のMCU作品『ブラックウィドウ』でレッド・ガーディアンで出演しますね。そしてニックには ゴルシフテ・ファラハニ。彼女はイランの女優さんです。近年はハリウッドの作品にも出ておられるようでパリに在住しているようです。サジュのフーダーもですが彼女もすごくいいですね。最初は後方支援のキャラかなと思っていたらクライマックスにはチームを率いてピックアップにやってきてRPGにスナイプ対決。めちゃくちゃ見せ場あります。また雰囲気が凄いいいんですよ。あまり無駄口叩かないのも美点だし、ハーグレイブお主やるなって思いました(*´ω`*)ちょっと坂本浩一監督と同じ匂いがしますね(笑)(分かる人には分かる)ちなみに監督のハーグレイブも傭兵チームのスナイパー、「G」役で出演。Gってやっぱりあれかな…?と思ったんですが別にそうじゃないみたいです(残念でも密かにトリビュートはしてるかも?)

監督サム・ハーグレイブ

 近年、『ジョン・ウィック』の監督でもあるチャド・スタエルスキ、『アトミック・ブロンド』のデヴィッド・リーチなどスタントマンから監督というのが多いように思いますがこの系譜は昔からあって『トランザム7000激突パトカー軍団』のハル・ニーダムという先達がいます。ハーグレイブはルッソ兄弟の出世作となった『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』にスタントマンとして参加。そこからコーディネーターとして『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』や『アベンジャーズ/インフィニティウォー』とルッソ兄弟と立て続けに仕事をし今回の抜擢。とにかく凄いの一言につきますね。


 オヴィを救出後、サジュにピックアップチームを全滅させられて車で逃げるタイラーと追跡する警察とサジュの三つ巴シーン。ワンカットで繋いでいくこのシークエンスだけでも木戸銭払ってもお釣りが来ます。でも本音を言えばスクリーンで観たらもっと凄かっただろうなとも。どうやって撮ったかはフッテージが出ているのでそれに譲りますがスタントマンだったからと、そしてカメラマンではこれは無理だからと、じゃあ自分がって(^^;めちゃくちゃヤバいですよ。カメラを抱えてボンネットから一旦止まった車両に乗り込みそしてまた撮影車両とか、タイミングのリハーサルはしたでしょうけどCGシーンもあるにはあるけどやっぱり生の凄さってそういうところから出てきますよね。


クリス・ヘムズワースらが大迫力アクションの裏側を語る!Netflix映画『タイラー・レイク -命の奪還-』メイキング特別映像|シネマトゥデイch/動画はYouTubeより

総評

物語としては繰り返しますがテンプレではあります。絶対絶命な封鎖地区からの脱出行。味方は少なく敵は多勢。無茶苦茶ありがちな設定、しかしそれを補ってあまりあるアクションと魅力的なキャラクターたちのアンサンブル。特にアクションだけでお釣りの来る出来なのでこのタイプの映画大好きな人には超おススメできる1本です。続編も決まったと風の便りに聞いていますのでそちらも楽しみですね。
※クリス・ヘムズワースが米軍の特殊部隊員を演じた『ホース・ソルジャー』当ブログでも以前エントリをアップしています。

※ルッソ兄弟がハーグレイブ監督の関係性はこの映画を抜きにしては語れない。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』ハーグレイブ監督はクリス・エヴァンスのボディダブルとして参加したそうです。その後のルッソ兄弟のMCU作品にはなくてはならないスタントコーディネーターとして参加だとか。

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