煉獄の戦士たち|『オールド・ガード』感想/tonbori堂Netflix鑑賞記【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

煉獄の戦士たち|『オールド・ガード』感想/tonbori堂Netflix鑑賞記【ネタバレ注意!】

2020年7月28日火曜日

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 NETFLIX、期間限定でまたアカウントを復活させたのは『オールド・ガード』を観たかったからなんですが(シャーリーズ・セロンが『アトミック・ブロンド』に続いて大暴れってのに惹かれたから)、けっこう内省的な内容でもありましたね。不死者というのはフィクションでは度々取り上げられていますが、tonbori堂が思い出すのはヒーリングファクターを持つウルヴァリン。漫画『ヘルシング』のアンデルセン神父でしょうか。今回シャーリーズ姐さんが演じるアンディは不死者の傭兵を束ねるリーダー。その目的とは?なぜ不死者なのか?などいろいろ引き付ける要素が盛りだくさんな作品でした。ということで今回は『オールド・ガード』についてあれこれ書いてみようと思います。※内容に触れているので【ネタバレ注意】とさせていただきます。

動画はYouTubeより/NETFLIX JAPAN/『オールド・ガード』予告編

不死者の傭兵/STORY

 アンディをリーダーとする4人の傭兵は一風変わったチーム。彼らは人知れず歴史の裏で戦いを通じて弱者を助けていた。戦士だった4人は戦う事で人を助ける事をずっと続けていたのだ。しかし世の中の情報化、ネットワーク、SNSで姿を隠して行動するのも一苦労な時代となってきたためアンディは俗世間と縁を切ることを考えていた。しかし不死者も腹は減る。仲間の一人ブッカーがもってきた仕事は人質救出。しかし以前と同じ顧客とは仕事をしないというルールを破っての同じ依頼者の仕事だった。ブッカーのルール破りに渋るアンディだったが南スーダンで誘拐された子どもたちのために引き受ける事にした。南スーダンに潜入し、敵の拠点に近づくアンディたち。しかし依頼者から提供された情報は罠だった。地下室には捕らわれた子どもたちは居らず待ち構えた兵士にハチの巣にされる4人。しかし彼らは不死者、傷の再生、そして復活で兵士たちを屠りその場を脱出する。


 脱出行の途中4人は新たな不死者の誕生を知る。不死者は新たな不死者が誕生すると感応するのであった。新たな不死者は米軍アフガニスタン派遣部隊の兵士、ナイル。彼女らの分隊は潜伏中のテロリストの探索にあたっていたが、発見したテロリストを銃撃。倒れた彼を救護しようとして彼に喉を切り裂かれた時に覚醒したのであった。あらたな不死者をピックアップするためブッカーたちは先にセーフハウスへ向かうように指示しアンディはアフガニスタンへ向かう。その頃依頼者である元CIAのコプリーはこの映像を製薬会社のCEOメリックに見せていた。メリックは彼らを捕らえるようにコプリーと部下のキーンに命ずる。


 一方ナイルと接触したアンディだったが彼女は蘇った事から後送され実験施設に移される寸前だった。しかし事態に混乱しているナイルはアンディに反発する。麻薬密輸業者の飛行機に便乗してパリにあるセーフハウスへ向かうアンディとナイルは激しくぶつかり合う。その中で変わってしまった自分に衝撃を受けるナイル。そして圧倒的なスキルをみせるアンディ。そしてセーフハウスへ到着する。そこでメンバーと出会い不死者は死んでも蘇る事が出来るが完全な不死ではない。ある日突然不死は失われる事を知る。また加齢による老化がない無いのでいつまでも容姿が変わることが無いため周りの人から切り離されるとも。ナイルは酷く動揺する。そしてアンディの心のしこりになっているクインの話をブッカーから聞かされる。クインはアンディと共に古くから戦っていたアンディの最初の仲間だったが捕らえられ鉄の棺桶に入れられ海中に投げ入れられた。以来500年間彼女は永遠に溺死を繰り返している。


 そこにメリックの部下とコプリーたちが急襲をかけてくる。腹を吹き飛ばされたブッカー以外の2人ニッキーとジョーは連れ去られてしまう。さらに彼女らを捕獲しようと部隊が襲い掛かるが1人で全員を倒したアンディの前に彼らは退却する。しかしアンディは肩に突き立てられたナイフの刺傷からの出血が止まらない事から自らの不死性が失われつつある事に気が付く。ブッカーの情報収集によってコプリーのアジトがわかった3人だったが、どうしても家族を失う事に耐えられないナイルはアンディに別れを告げる。それをアンディは引き留めなかった。だが分かれたナイルはアンディから護身用にと渡された彼女の銃を処理しようと弾倉を引き抜いたときに空だったことからブッカーの裏切りに気が付く。果たしてナイルはアンディを助けられるのか?そして捕らわれた2人は?

煉獄の戦士アンドロマケ

 永遠に思える時を生きてきた彼女。仲間は殆ど彼女より年下。ずっと孤独に暮らしていたものの最初の仲間を見つけた時に喜びはそれは本当に心が救われるものだったのでは。作品にも拠るんですがだいたい悠久の時を生きているキャラクターを扱う場合、問題になるのはその時間をどう過ごすのか?神ではない「人」がとなれば色々問題が生じるはず。当然それを超越する事で神へと至る(解脱や覚醒などなど)という物語もあります。まあ最初から神様がっていう話もありますが(^^;アンドロマケ、アンディは古代の部族の戦士だったようです。ネットでしらべてみるとスキタイという名前が後についているようで、ユーラシア大陸の中央部、中央アジアで活動していた中で彼女は生まれやがて不死になったと。そして長い年月を1人で過ごしたとあります。


 もうそれだけで人生に倦んでいる感じです。が、仲間を得た後は困っている弱者を助ける活動をしていたようで中世では仲間と共に魔女狩りにあっている人を助けていたようです。当然彼女らも「魔女」として見られていたでしょうし結果そのために捕らえられた時にクインを助ける事が出来なかった。必ず助けると約束し500年間探し回ったにも関わらず…その事で臆病にもなっている。世界との関わりを最小限にして依頼を受けてそれが世のためになるとアンディが思った仕事だけを受けるというのもそういう経験から産み出されていったものなんではないでしょうか。


 普通の人間の一生ではなく、ましてや善人と悪人の彼岸にたつアンディはまさに煉獄の炎にずっと身を焼かれているようなもの。だからナイフでの出血が止まらない時は一瞬安堵しながらも「仲間」は助けるという強い信念から仲間には黙って傷の手当てをする。その時に薬局のアルバイト?の女性が助けてくれるわけですが彼女は何にも言わずに助けてくれる。何故と問うと困っている人を助けるだけであなたはまた別の困っている人を助けてあげてと返される。それは彼女が千年を越える時間の中でずっと行って来た事出もあった訳です。なので最後も自分の不死が消えても戦いに赴く矜持がまたいいんですよね。

孤独なブッカー

 ブッカーは4人の中で一番の若手です。といっても不死になったのがナポレオン戦争の頃ってだけなんですが。そんな彼も家族との辛い別れ…これは回想でふれられているんですが息子を病気になってしまい結局何もできずしかも何時までも変わらない容姿に罵声を浴びせられる。これはキツい。そのため不死者は他者と過ごすことを忌避するというのは他作品でも描かれることがあります。で、出てきた時には達観しているのかと思ったブッカーは実は一番孤独を感じています。ニッキーとジョーは互いが十字軍とイスラム教徒として別れて殺し合っていた時に不死者になったんですが互いを真のパートナーとしています。だからこそ孤独を乗り越えられる。人は1人では生きられないというよく言われる話ではあるんですが、同じくソロのアンディはクインの事で関わりを必要を持たなくなっています。でもブッカーは彼女が1人な事を敏感に感じ取っているために暴走してしまうんですよね…。切ないキャラクターです。

ニッキーとジョー

 この2人男性カップルなんですがニッキーは十字軍遠征でエルサレム奪還に向かい、ジョーはイスラム教徒としてエルサレムを守護していた側として殺し合った仲。そして互いにその戦いで不死者となった後、かけがえのないパートナーとなりました。これは幸運だったかもしれません。何故なら悠久の時を生きるのにザイルパートナーは必要だからです。決してお一人様を否定するわけではないですが、永遠の孤独に耐えうる人間はいません。お一人様でも何かしらのつながりはあるのです。そういう意味では最強のパートナーかもしれません。(作品ではあっさりと捕まっていたけれど)

ナイル

 新人の不死者ナイルは完全に自分の立場を理解する前に戦いに放り込まれました。その彼女が不死が薄れたアンディの盾になる。そういうことでクインという唯一と思われたパートナーを失った彼女の目に生気が宿るクライマックスは良かった。でも軍は彼女の存在を知っているし、自らの存在を消したとしても(死亡したと擬装していても)誰かがってのは今後続編で描かれるかもしれませんね。あと家族。どうしてもそこがウィークポイントになる。ナイルは新人なので今回は覚悟の物語であれば次は試練の物語となるのではないかと。

総評と続編

 これは続編できるでしょう。NETFLIXでも好調らしいし(なんでも『アイリッシュマン』をも越えて好調な視聴数だそうで)それにポストクレジットシーンもありましたし。シャーリーズ姐さんの新たなヒットシリーズになりそうです。実際今のシーンにぴったりすぎるんんですよ。多様性という意味では監督から主演からキャラクターから。ぴったりとハマっている。続編の要望が多いだろうとも思います。tonbori堂も実際続き観たいですからね。でも初見時はえらい内省的だなと思ったんですよね。ようするにベイのような露悪的なヒャッハー(シナリオ的には一応それなりの背景はあったとしても)ではなく悩む主人公に一筋縄ではいかぬ脇役たち。まあ唯一メリック周りだけが分かりやすい敵役でしたけどもね。もう少し虚無的な悪党や、同じく不死者の一団(アンディとはまた違うラインというか出自というか流れの違う)が出てきてもいいんだけどと。そこは続編に期待です。もっとも原作がある(グラフィックノベル)のでそこからまたって感じかな。しかし相変わらず美しい上によく動くシャーリーズ姐さんの魅力がたっぷりな佳作でした。割とおススメです(*´ω`*)

※シャーリーズ姐さんのスパイアクション。これもNETFLIXで続編企画との噂が。

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