フジテレビ系の土曜プレミアムで2週連続(2020.6.20、6.27)モンスターバースシリーズをやるというので、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のエントリがちょこちょこと上がったんですが肝心のギャレゴジ、またはレジェゴジのエントリを上げていなかったようなので(Twitterでは幾つかツイートをしているんですけれど)改めてレジェゴジ(当エントリではレジェゴジという事で統一したいと思います)について書いてみる事にしたいと思います。『GODZILLA ゴジラ』はレジェンダリー・ピクチャーズが東宝のゴジラを使ってハリウッドで制作したのはその前の『GODZILLA』(エメゴジ、ローランド・エメリッヒが監督したことからごく一部でそう呼ばれる事があります。)今回の監督はギャレス・エドワーズ。今作を監督する前に撮った『モンスターズ/地球外生命体』で注目を集めた新鋭でした。それが製作陣の目に留まり今回の抜擢と相成った訳です。今回は『GODZILLA ゴジラ』とはなんだったのか?モンスターバースシリーズなどなど思った事を含めて書いてみようかなと思います。
『GODZILLA ゴジラ』/STORY
物語は1999年フィリピンの鉱山で大規模な陥没事故が起こり何かの骨格と何かの生物の繭がその地下から何かが這い出た後があったことから始まります。そして日本の雀路羅(ジャンジラ)市にある原子力発電所近辺で異常な地震が頻発。原子炉の管理を任されているブロディ博士(ブライアン・クランストン)は妻で技師をしているサンドラ(ジュリエット・ビノシュ)に原子炉の確認を頼みますが震源が移動してきて原子炉が損傷。発電所のロックアウトでサンドラが犠牲になります。
15年後ブロディ博士の息子フォード(アーロン・テイラー=ジョンソン)は海軍で爆弾処理に従事していました。戦地での任務を終え久しぶりにサンフランシスコの自宅に戻るフォード、妻で看護師のエル(エリザベス・オルセン)と息子のサムとひと時の休暇を楽しみますがそこに日本の米大使館から電話が入ります。父のブロディ博士がジャンジラの立ち入り禁止区域に入り逮捕されたというのです。身元引受のため急きょ日本へ飛ぶフォードは久しぶりに父と対面します。父はなんとしてもジャンジラの原子力発電所で起こった事象を解明しようと、英語教師やアルバイトなどでずっとジャンジラの近くで研究を続けていたのでした。そしてつい最近あの時観測された同じ音波の波形を拾ったというのです。頑な父親に根負けしたフォードは共にジャンジラの放棄された自宅へと向かいます。
当時の音波データを回収した2人でしたがパトロール隊に発見され原子力発電所跡地に連行されます。原子炉のあった場所には謎の物体がありどうやらそれは原子炉に寄生し胎動しているようでした。秘密機関モナークの芹沢博士(渡辺謙)とグレアム博士(サリー・ホーキンス)たちはフィリピンから日本へと移動したこの怪物を秘密裏に研究しこの区域を封鎖していたのです。しかし突然胎動が早まり施設全体が危険に陥ったため高圧電流で生物の殺処分を指示する芹沢博士。一旦は胎動が収まったものの殻を破って生命体が出現しました。辺りの放射線もゼロとなり完全に放射性物質を吸収した怪物は施設を破壊し翼を広げ何処かへ飛び立ちました。ブロディ博士はその倒壊に巻き込まれフォードに家に帰って妻子を守れと言い残し息を引き取ります。
事がおおやけになりモナークから米軍へと事態の収拾が委ねられ空母サラトガで芹沢博士から謎の生物ムートーのあらましとモナークが1950年代からずっと追っている巨大生物ゴジラについてフォードは話を聞く。ムートーはゴジラの天敵のような存在でもあり獲物でもある。ムートーを追えばゴジラも出現するだろうと芹沢博士は予測していました。知っている情報を教えたフォードはハワイ近辺まで来た時にヘリでホノルルへ。そこから民間機でサンフランシスコへ戻るつもりでしたが原子力潜水艦の捕食したムートー、そして芹沢の予測した通りにゴジラがハワイに向かっていたのでした…
そこから決着はサンフランシスコへ持ち越される訳ですが、一度は回収されていた繭は解剖された状態から目覚め納められていたネバダの核管理施設を破壊してラスベガスを蹂躙してサンフランシスコへ。飛ぶムートーは雄で翼の無いネバダのムートーは雌。産卵のために音波を使って交信していたのです。そこに互いの天敵であるゴジラがムートーを狩りだすためにやってきたわけです。まさのサンフランシスコで繰り広げられる地獄絵図。人間側はどちらも放射性物質を吸収するため囮としてそして最強の威力を持つメガトン級核爆弾での殺処分を試みますが失敗事態は悪化してしまいます。はたしてサンフランシスコはどうなる?ムートーとゴジラの決着は?というお話です。
フォードの地獄めぐり
ギャレスの前作『モンスターズ/地球外生命体』は地球外生命体のサンプルを積んだNASAの探査機がメキシコ上空で墜落。そのサンプルから生命体が増殖しメキシコ一帯は封鎖。多くの人が難民となりメキシコの半分は完全に隔離地区に。6年の歳月が流れたあとメキシコで取材をしていた主人公のカメラマンは米に帰国するはずだった社長令嬢をアメリカの国境まで送り届けて欲しいと依頼され彼女と共に危険な禁止区域へ足を踏み入れるのですが…というお話です。
かなりミニマムな態勢で作られたモキュメンタリー(ドキュメンタリースタイルの作品フェイクドキュメンタリー)映画です。ドキュメンタリーというには主人公2人に寄せているので完全なモキュメンタリーではないんですが地球外生命体でも人の営みは変らない。ただ異質なものが入り込んだことにより歪な部分がさらに浮かび上がる。そういう2人が煉獄を彷徨うようなお話でした。そして『GODZILLA ゴジラ』はさらにそれを推し進めてフォードの地獄めぐりとでも言うような作品になっています。これはギャレスも言ってたと思うんですが(ソースは失念してしまいましたが)フォードは軍人なんですけれど発砲は1度もしていません。彼が能動的に動いたのはムートーの卵を焼き払う時だけ。これは母親の復讐とも思えます。自分の母の命を奪ったムートーに対してこの行動は理解できますがそれ以外では他の隊員は発砲しても彼は全く撃たないのです。雌ムートーが迫ってきたときでさえも。
思えば母を奪われてから彼は父親が妄執に捕らわれ(事実は彼が正しいかったのですが)そして今度は目の前で父が亡くなり、ハワイでは危うく死にかけたのに事の顛末を見届けるつもりもあったのか、それともムートーの息の根を自分の手で止めるためなのか弾道弾にムートーの電子パルス攻撃の影響を受けないために旧式のアナログ式タイマーをセット出来る事を(爆弾の専門家なので)ねじ込んで部隊と同道しながらも輸送列車がムートーに襲われ部隊は壊滅。危うく助けられたものの、ムートーが産卵した幼生の餌として置いた弾道ミサイルを回収する任務に再度志願しHALO降下する。このHALO降下のシーンなんかは完全に地獄へ向かう感じですよね。そしてゴジラはどうみても荒ぶる神です。この作品は偶然とはいえムートーにより運命を狂わされたフォードの視点による地獄めぐりではなかったかと思っています。
キャスト
主人公フォード・ブロディにはアーロン・テイラー=ジョンソン、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でクィックシルバー/ピエトロ・マキシモフを演じた若手俳優です。その妻エルに同じく『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフを演じたエリザベス・オルセン。あの時は妹でしたが今回は妻という立場で共演。そしてその父でジャンジラの原子力発電所の事故を独力で調査している父にジョー・ブロディ博士をドラマ『ブレイキング・バッド』でブレイクしたブライアン・クランストン。正直ブロディ博士の退場は早過ぎた感じがあります。一緒に地獄めぐりをして欲しかったんですけれどもね。
巨大生命体を追う秘密機関モナークの芹沢猪四郎博士には渡辺謙。この役名には『ゴジラ』1954のオキシジェンデストロイヤー発明者である芹沢博士と監督であった本多猪四郎の2人の名前からとられているのは有名なトリビアです。そしてその同僚であるヴィヴィアン・グレアム博士には『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞に輝いたサリー・ホーキンス。他にムートーに対処するための派遣された米海軍のステンツ提督に『グッドナイト&グッドラック』で伝説のジャーナリスト、エドワード・R・マローを演じたデヴィッド・ストラザーン。ジョーの妻サンドラには『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞を受賞したジュリエット・ビノシュ。そうなんです、実はキャストが無茶苦茶豪華なんですよ。そこも見どころに一つです。
平成ガメラとゴジラ・モスラ・キングギドラ怪獣総攻撃
最終的にゴジラはムートーを撃滅して海に帰っていくあたり、金子修介監督の平成ガメラ感ありましたが(あれもガメラは最初に出ては来ますけど自衛隊や政府はガメラよりギャオスを重要視しておりガメラは単に危険な生命体と認識していました。)それとともに同じく金子監督の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ怪獣総攻撃』のエッセンスも感じました。GMKゴジラは荒ぶる神であり戦争で散っていった英霊の怨念でした。ハリウッド版はそうではなく太古の地球に君臨していたものたちという扱いの違いがありますが、やはり人智を超える存在としての扱い方がそう思わせるのです。また移動する震源とかはGMKからの引用のように思えてなりません。しかしこの時にはまだモンスターバースシリーズもどうなるか分かっていなかったので単純に太古より地球に君臨していた守護神的な部分がクローズアップされていたような気がします。
あと後年『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(K.O.M)が公開された時はモナークが一種の地球防衛軍な存在(とは言え怪獣専門の防御救援が専門のようですが)になっていたのは驚きました。モンスターバースに連なる『キングコング 髑髏島の巨神』でのモナークはまだまだ大きな組織ではない(髑髏島での事でいろいろ変ったようですが)ただの未確認生物監視団体でしかなかったのでこれは大きな展開ですよね。そのため『GODZILLA ゴジラ』はまだ世界が怪獣を認識していなかった世界として観る事が出来ます。そのため『キング・オブ・モンスターズ』もある種のGMKっぽさが強く出ているとも言えます。GMKではゴジラが1954年に出現した世界として描かれており、「ゴジラ」がいると認識されている世界です。またギドラは護国聖獣として登場していますがK.O.Mのギドラは悪役で昭和のゴジラシリーズから考えると正統に戻ったともとれます。そういう意味でいろいろ温故知新も出来る面白いシリーズだと思います。
モンスターバース
レジェンダリー・ピクチャーズはゴジラとコングが地球を舞台に大暴れする作品群をモンスターバースというひと繋ぎのシェアードワールドとし『GODZILLA ゴジラ』も『キングコング 髑髏島の巨神』もその中での出来事とされ最新作は『ゴジラvsコング』となるとされています。COVID-19感染による新型コロナ禍で公開日が遅れに遅れとうとう来年になってしまいましたが、東宝が米より権利を取得して製作された『キングコング対ゴジラ』のような両雄それぞれに相討ちみたいなものではなく決着をつけるとアナウンスされています。これ本当に出来るのか?という疑問もあります。一応どちらかが折れた感じで勝敗が決するみたいな感じになるとそれはそれでついてないじゃないかとなりはしないか?かなりハードルを上げてきているなと感じました。
またモンスターバースでは彼ら(怪獣)は太古の時代の地球の支配者たちでティターン(巨神)と呼ばれていることが『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で明言されてきたことで一気に神話の世界へとの融合が図られています。前作で芹沢博士が命を賭してゴジラを復活させるために向かった海底神殿は明らかに海の沈んだ先史文明(ムー大陸やアトランティス)と思われます。そういった部分への謎と衛星には写らない髑髏島などモンスターバースも謎が深まりつつありますがそれが次作ではっきりと決着つくのか?も気になる所ですね。
次は『コング』
ということで今週はコングです。日本ではタイトルにキングが入っていますが原題では「KONG」でKINGは入っておらず、対ゴジラ戦を経てキングコングになるのではないかとも言われてします。(その場合ゴジラは倒されるという事になるんですが…)この作品はこの作品で好きな作品なんで是非とも観て欲しいですね。ということでtonbori堂ももちろん観ます(*´ω`*)(感想は辛口めに書いたけど『地獄の黙示録』と怪獣映画の幸せな邂逅な作品だと思っています。)
以前に書いたエントリ|南海の大決闘。もしくは「闇の奥」へ『キングコング:髑髏島の巨神』【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス
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