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東宝特撮・変身人間シリーズ『美女と液体人間』|感想|tonbori堂特撮映画語り【ネタバレ注意】

2020年5月25日月曜日

movie 特撮

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 東宝特撮ゴジラシリーズをこの前ご紹介した時に他の特撮作品もプライム特典になれば嬉しいですねと書きましたが、プライム特典ラインナップに東宝特撮でも異色のシリーズ作品『変身人間シリーズ』と呼ばれる3部作が加わりました。どのくらいまでプライム特典かは(現在2020.5.25)定かではないのですが東宝特撮シリーズに興味のある方や懐かしい方はこの機にご覧になってはいかかでしょうか?この『変身人間シリーズ』は戦争の色がまだ濃く残っていた1950年末から60年にかけて作られたシリーズでヒットはしたものの3作だけに終わった作品群です。どれもが現代にも通じるテーマを持った作品として評価を受けた映画です。その中でも今回は美女と液体人間をご紹介しましょう。

公開時ポスター/Wikipediaより/『美女と液体人間』佐原健二 (出演), 白川由美 (出演), 本多猪四郎 (監督) /©東宝/
公開時ポスター/Wikipediaより/『美女と液体人間』佐原健二 (出演), 白川由美 (出演), 本多猪四郎 (監督) /©東宝/



※2021.10.02タイトルを変更『|感想|byAmazonprimeVideo』から『|感想|tonbori堂特撮映画語り』にしました。

美女と液体人間

 シリーズの1作目として制作された作品で言わば人が『ゴジラ』のようになったら?という作品とも言えます。(当時はそこまで考えられていたかどうかは分かりませんが)企画時に怪奇空想特撮とも銘打たれていたそうで、後年円谷プロダクションが制作することになる『怪奇大作戦』にも通じる雰囲気があります。


ストーリー

 東京の日本橋で男が衣服と大量の麻薬を残して忽然と姿を消したことから始まります。警察は麻薬密売の疑いで姿を消したギャングを追い、男の情婦であったキャバレーの歌手、千加子を監視し不審な男を逮捕するが男は捜査一課長富永の友人である政田だった。彼は姿を消した男が放射能を含んだ灰のまじった雨を浴びたため液体人間と化してしまったのではないかと調べていたのだった。太平洋で操業中の漁船の乗組員が死の灰を浴びて液体人間化したことや強い放射線を浴びせたカエルが液状化する実験を見せるが富永たちは信じずボーイの島崎が関係していると踏んだことからキャバレーを一斉摘発することに。しかしそこに液体人間が現れ踊り子や島崎を液体化してしまう。混乱のさ中、ギャングの相棒であった内田は逃げられてしまう。しかし液体人間の脅威に対し警察も早急に対応を迫られ下水道に潜む液体人間を退治するため唯一の対抗策である火で焼き払う作戦を決行する事になった。しかし麻薬の隠し場所に向かう内田に千加子が人質にとられてしまう。作戦の決行が迫る中、政田は千加子を無事に救出出来るのか?というお話です。

キャスト

 物語の発端はまさに怪奇映画のように人体が融解して溶けてしまうシーンから始まるんですが、ギャング映画の趣もあります。とくにギャング内田を演じた佐藤允はその風貌から和製ウィドマーク(リチャード・ウィドマーク)や和製ブロンソン(チャールズ・ブロンソン)と呼ばれアクの強い役柄を演じていました。この作品のように悪玉も演じれば岡本喜八監督『独立愚連隊』の主人公、荒木など硬軟とりまぜた演技を見せる魅力のある俳優さんでした。またその内田を追う富永捜査一課長には平田昭彦。『ゴジラ』では命を賭してオキシジェンデストロイヤーの秘密を守り、ゴジラを倒した芹沢博士を演じた平田昭彦はここではエリートでスマートな刑事を好演。そして主人公政田には『空の大怪獣ラドン』『地球防衛軍』の佐原健二。『ウルトラQ』の主人公、万城目役でもお馴染みですよね。ヒロイン千加子には白川由美。佐原健二とは『空の大怪獣ラドン』や『地球防衛軍』でも共演済みで東宝の看板女優でもあります。ちなみに平田昭彦もラドンと地球防衛軍に出演していましたね。

液体人間はゴジラだ。

 tonbori堂がこの作品を最初に観たときはテレビで、もうたたただ怖いとしか覚えていませんでした。あと辛気臭い。それは多分に地味なシーンが多いからです。でも後から考えれば当時の基準で言えばけっこう女性のシーンも多くアダルトな雰囲気もあったのですがやっぱり子どもは怪獣が出てきてドッカンする方が喜びます。あとそんなに放送が無かったのも多分そういうシーンが子どもが観るのに相応しくないっていう配慮でしょうね。その割に『怪奇コケミドロ』と『マタンゴ』は割とあったような記憶が…?で、長じてから幾度か観る機会があったものの、ゴジラ生誕50周年や60周年などの記念に合わせ東宝特撮をCSなどの専門chで放送されることがあり『美女と液体人間』もその時に再見したんですが…いやこれゴジラを人間に置き換えたものじゃないのとなったわけです。


 政田が説明する第2竜神丸の事件もこれは1954の『ゴジラ』の公開前にあった第五福竜丸がビキニ環礁での核実験で死の灰で被曝した事件がありました。東京が怪獣に襲われる話にリアリティを持たせるために冷戦下の米ソ核実験が行われその中で産み出されたという設定に行きついたのは時代がもたらしたものだと思いますが、この液体人間もいわば冷戦と核実験の被害者とも言える訳です。最期は退治されてしまうシーンに悲哀さえも感じるのはそういったバックボーンがあるからかもしれません。下水に流されたガソリンに点火、ゆらゆらと燃える人影がまさにカゲロウのようにゆらゆらと悲しげに燃え尽きていく。このあたりは『怪奇大作戦』での氷の死刑台をも思い出させるシーンでもあります。行き過ぎた科学の果ての歪によって産み出された異形の者たち。この変身人間シリーズはこのあと2作でそれを複線として物語の底流に流れることになります。そしてまた液体人間の最期は『ゴジラ』のラストも想起させるのです。冷戦が続き核実験が続けば第2、第3の液体人間が産み出されることになるだろうということです。


 これも当時の世相、経済は復興期に入ったものの世界は新たな戦争へと踏み出していました。世界は東西ブロックに分かれベルリンは封鎖され日本は朝鮮半島での戦争特需に湧いたもののそれは冷戦の代理戦争の様相もありました。核の脅威は今よりも切実だったはずです。(現代もまた別の意味で危険な時代ですが)物語自体は空想怪奇な話ですがその背景にあるものは確かな現実という点でもゴジラとの共通点があるなと思いながら鑑賞しました。普通に観ているとただ恐怖映画のように得体のしれない怪物が人を襲いそれを退治する人間側のドラマってだけですがやはりその映画作られた時代背景などに想いを馳せるとその時代が反映されるものだなと映画の見方が深くなった事でより楽しめた作品でした。是非一度そう言った事を念頭にまたご覧くださると見方が変わるかもしれません。

次回は

 『電送人間』です。こちらは液体人間よりもさらにサスペンス度と人間の暗い情念、復讐心などが軸になった作品です。こちらのビジュアルがめちゃくちゃ怖かったんですがこれは何故かビジュアルだけはめちゃくちゃ観てるのに本編は実はゴジラ50周年記念などで特撮映画がCS専門chでよく放送された時にやっと観たという作品でした。詳しくはまた次回に書きますが日活ならもっとアクションよりにしたり東映ならと思うとある意味東宝らしい作品かもしれません。ではまた次回にて😌

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