随分前からウォッチリストには入れておいたんですが最近、Amazonプライム会員特典で観れるようになっていたのに気が付いて早速鑑賞することにしたのがこのキアヌ・リーヴス主演、監督デヴィット・エアーの『フェイク シティ ある男のルール』です。デヴィット・エアーがその出世作でもある脚本の『トレーニングデイ』と同じくロス市警を舞台にしたハードでダークな警察モノの映画です。気になっていたのは、デヴィット・エアーが監督というだけではなく脚本を手掛けたのが『L.Aコンフィデンシャル』のジェイムズ・エルロイというのも大きかったのですが結局今の今まで観て無かった作品でした。
Street Kings Trailer/SearchlightPictures ch/YouTube/サムネイル画像は殺し屋カシアス/コモンですが主演はキアヌです。そういえば「ジョン・ウィック2」でも殺し合っていましたね。
狂犬の掟/STORY
LAPDのトム・ラドロー(キアヌ・リーヴス)は潜入捜査専門の風紀取締課(バイス)の特別捜査班の一員。武器密売や人身売買の組織を荒っぽいやり方で壊滅させるのが彼の仕事。今回もアジア系の少女の行方不明に関わっている組織を突き止めアジトを一人で急襲、無抵抗を含むギャングを全員射殺する。そして相手が撃ってきたように見せかけ応援を呼んだ。
ワンダー警部(フォレスト・ウィテカー)は特別捜査班のボスでラドローを見出したいわば恩人とでもいうべき人物。今回の件も彼が矢面に立ちラドローを帰そうとするがそこに元相棒で今はパトロール警官に異動させられたワシントン(テリー・クルーズ)が現場の状況に異を唱えるがワンダーはそれを一蹴する。負傷していたラドローは病院に直行するがそこに現れたのは内務調査部のビッグス警部(ヒュー・ローリー)だった。自分の仕事は保険のようなものでラドローに君を守れるのは私だけだと名刺を渡す。
翌日警察官の勇退パーティで特別捜査班のメンバーにワンダーは自身の警視への昇進を告げる。メンバーから祝福を受けるがラドローはその時にビッグスから訪問を受けた事をワンダーに報告するのだがワンダーはワシントンとビッグスが秘密裏に会ってラドローの違法捜査を報告していると告げる。元相棒であったワシントンが内務調査部に自分を売った事が許せないラドローはワシントンを尾行しコンビニで2人は諍いを始めるがそこに賊が侵入し店主とワシントンを射殺してしまう。
現場に駆け付けたワンダーはこのままではお前が殺した、もしくは犯人たちに殺させたと疑われるぞと言われ、自分が守ってやるから監視カメラの録画データを持ち出すようにラドローに命じる。監視カメラには強盗に応戦する時に発砲した銃弾がワシントンに命中したところが映っており言われるままにデータを持ち出したが、事件現場に居合わせた事と犯人を取り逃がした事で一時的に苦情処理係へ異動になるラドロー。事件を捜査している殺人課の刑事ディスコに進展を尋ねるが何故かよそよそしい。検視局の報告書が届いていないことをしったラドローは先回りするがディスコからこの事件は迷宮入りが望まれていると告げられ、自らの手で犯人を裁くべくディスコの協力を得て事件を秘密裏に捜査することにしたラドロー。現場の遺留品から凶悪な麻薬の密売人フリーモントとコーツの名前が浮かび上がる。特捜班の同僚コスモとダンテが以前逮捕した男たちだったが証拠不十分で釈放されてしまっていた。
フリーモントとコーツの手がかりを追って行きついたオープンカーで流している老密売人スクリブルに彼らのアジトと思われる場所へ案内させたラドローとディスコはそこで殺しがあった形跡と庭に埋められた2人を発見する。誰かが2人になりすましてワシントンを殺害した。事件はワシントンの妻や警察内部の菓子箱に寄付という名の恐喝と裏金作りが絡み合い危険な領域に近づいていく。果たしてラドローは真犯人を捕らえる事が出来るのか?
キアヌ・リーヴスmeetL.A.コンフィデンシャル
主人公トム・ラドローは腕利きですが一匹狼で危険な任務を進んでやる危険な男でしかもアルコール依存症かというくらい酒をあおり(ウォッカのミニボトルを運転中にもあおるほど)悪党は問答無用に射殺するちょっと行き過ぎたヴィジランテ(自警団)な刑事ですが、不思議とキアヌがやってるとヤバいな?ではなく、なんかあったのかい?ってなるのが不思議です(笑)とは言えこの作品でのキアヌは殺し屋でもないし、マトリックスの救世主でもないしボンクラオタクでもない。LAPDのバイスの特捜刑事なんですよね。いわゆるマイアミバイスのクロケットの立ち位置にいる役どころなんですが、ヤバい捜査を続けて転落してしまう話なのかと思ったらそうじゃなくて彼の元相棒が内務調査部に特捜班のヤバいネタをリークしようとしていると聞いてブン殴りにいこうとしたらその相棒がハチの巣にされてしまうという展開ぶり。どこに行くんだこの話?と思ったら左遷先で裏金の噂を思い出すかのような苦情を聞きつけそれが妙に頭に引っかかり、また殺人課の生真面目なルーキーと元相棒の殺した犯人を追っかけるとそれが実はという展開は確かにエルロイっぽいなと(笑)
『L.Aコンフィデンシャル』はエルロイのLA四部作と呼ばれている小説の第三部にあたるお話であるカフェで起こった大量殺人に端を発する一連の事件の蠢く闇の話です。映画は1997年に公開されアカデミー賞にもノミネートされたサスペンス、刑事もの映画好きなら外せない1本でした。エルロイのこのLA四部作では通底しているのがLAPDの腐敗です。この『フェイクシティ』も内務調査部が出てきた時点でLAPDの腐臭が漂ってきましたが、さらに上回る展開になっています。
監督/デヴィット・エアー
監督は『トレーニングデイ』『ワイルドスピード』の脚本を担当し『フューリー』『スーサイドスクワッド』を監督したデヴィット・エアー。LAのサウスセントラルで10代を過ごし、その後海軍に入ったという経歴の持ち主です。『トレーニングデイ』の脚本を書いた彼が監督でエルロイが脚本って夢のコラボレーション!って感じがしないでもないですが、ここが映画製作の難しいところで、だと言って傑作が生まれるわけではないってことです(苦笑)
でもtonbori堂は演出自体は嫌いじゃないというか、らしいところが出てくるエアー節とでも言うべきシーンの数々は好きですね。如何にもごろつきのように振る舞うラドローを疑わないコリアン・マフィアや彼らのアジトでの仕草や、ワシントンを殺した売人を捕まえるために彼らのヤサの周りでわざと銃を見せて威嚇して知っていると思う人間をあぶりだすなどなど。刑事の方も程よくごろつき感を出していてさすが御厄介になってた側としてよく観察しているなとか(笑)エルロイのベース脚本もあっただろうしもう2人シナリオライターが関わっていますが(1人は『リベリオン』のカート・ウィマー!)多分エアーも現場でシナリオに足しているのは間違いないかと思われます。
キャスト
実は今見ると味わい深いキャスティングなんですよ。主人公トム・ラドローのキアヌ・リーヴスはもちろんの事、ラドローの上司ワンダー警部にはアメリカの鶴瓶師匠ことフォレスト・ウィテカー。ウィテカーは善玉も悪玉も出来るのでいい人なのか悪い人なのか分からないんですよね。でもこの映画、出てくる警察官はほぼほぼグレーゾーンなのでちょうどいい塩梅でした(笑)その警察官の中でもまともな新米(ルーキー)でまた青臭いディスカント(ディスコ)をキャプテン・アメリカでお馴染みのクリス・エヴァンス(若い!といってもキアヌも若いので当然なんですが)が演じているのはこれまた味わい深いという(笑)
ワンダーのライバルで内務調査部のビッグスを『Dr.HOUSE』のヒュー・ローリーが演じています。ハウスほどではないけどくせ者警部役でぴったりでした。ワシントンには『エクスペンダブルズ』のテリー・クルーズ、その妻リンダにはナオミ・ハリス。『プリズン・ブレイク』のスクレ役アマウリー・ノラスコや密売人コーツに、『ジョン・ウィック2』でキアヌとやり合う殺し屋カシアス役のコモンなど何時も観る顔もいれば、ええっ結構豪華な配役じゃんってなる面白いキャスティングでした。
Street Kings
原題名はストリートキングス、街の王達という意味を考えると、警察がまるで王侯貴族のように振る舞い街を牛耳っている姿が浮き彫りになってきます。ラドローはその貴族のために働く番犬でしかない。彼は普通に正義を(行き過ぎたヴィジランテズムに支えられたものですが)行えれば良かった。というより半ば妻に浮気をされてその浮気相手と情交中に心臓発作を起こして病院に置き去りされて亡くなったというかなり重いものを背負って半ば捨て鉢なんですよね。そういう男が刑事というよりは自警活動のはての誇り、矜持だけで事件を追い、結末はまさに砂を噛むようなラストになってもなお彼にはそれしかないというのはエルロイっぽさもありエアーの描く世界にも通じます。ただラドローがそこまでの過去を背負ってるのに何故か看護師といい仲だったりとか伏線めいたものの回収が雑だったりとか難点もあるんですがエアーのフィルモグラフィを追っかけたい人やLAPDモノが好きな人にはおススメできるかも。あ、キアヌファンは多分チェックはしていると思います(笑)tonbori堂的には良かったけど…惜しい1本かな。もう少し磨けは玉になったのに…という感じでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿
お読みいただきありがとうございました。ご意見、ご感想などございましたら、コメントをよろしくお願いいたします。【なおコメント出来る方をGoogleアカウントをお持ちの方に現在限定させて頂いております。】