『時効警察』が『時効警察はじめました』スペシャルと連ドラで復活、Amazonプライムでも『時効警察』シリーズが会員特典で見放題になってるらしいのでおさらいしようかと検索してみると『熱海の捜査官』もまた特典になってたのです。確かAmazonプライムに入った頃もプライム特典だったけど…ずっとそうだったのか、停止してたけど復活したのかは定かではないのですが、実は『時効警察』よりもこっちが好きなのでつい1話を観たら全部観てしまったのです(笑)ということで今回は『熱海の捜査官』の話をネタバレを交えてつつ、色々考察したいと思います(笑)
追記20240116:Amazonプライム会員特典見放題終了しておりますが不定期で見放題になるのでまたなるかもしれません。
『熱海の捜査官』とは
テレビ朝日のナイトドラマ枠で放送された連続ドラマで9回放送されました。監督、脚本は三木聡。主演はオダギリジョーと栗山千明。助演には岩松了にふせえり、松重豊など三木作品に所縁の深い人が集められ、また行方不明となりたった一人生還した少女に三吉彩花、その学友に山崎賢人、二階堂ふみ、染谷将太など。謎が謎を呼ぶ作りで米ドラマ『Xーファイル』を彷彿させる男女2人組の捜査官が主人公で、南熱海で起こったスクールバス失踪事件からたった一人生還した少女が3年後に目覚め、事件が動き出すという設定でした。特段何かが起こるようで起こらないけど起こるみたいな不思議なドラマでシリアスな『時効警察』但しオチなしという風合いもありました。
放送当時めちゃくちゃはまってて、やり始めたTwitterでも幾つかツイートしてましたね。今となると随分とアホな事をつぶやいていましたが(笑)あと星崎(オダギリジョー)の口癖、「あー、だいたい分かりましたよ」は未だにツイートで使っています(笑)いや本当に「だいたい分かりましたよ」汎用性が高いんですよ(笑)
— tonbori堂@さらにいくつもの片隅に待機中&エンドゲームはいいぞ。 (@tonbori) September 3, 2010
さてさて過去ログ読んでも積み残して終わりそうだけど、三木さんの作風としてはちょっとダークにふってみたというところか。今までにもそれはあったけど抑え気味にしていたし。 #atami— tonbori堂@さらにいくつもの片隅に待機中&エンドゲームはいいぞ。 (@tonbori) September 17, 2010
三木さんの作品としてはダークにとか言ってますけれど、そもそも三木さん平穏の中になる違和感とか、ちょっとしたところをグサッとついてくるので(『時効警察』シリーズもそういう所があります。)オフビートな緩さに騙されてるとそういうところを見逃してしまうというか…いや見逃してましたね当時の私(笑)
広域捜査庁
このドラマの中に出てくる架空の警察組織の名称です。番組のナレーション(伊武雅刀さん!)では「新政権は広域化する刑事事件の抜本的な解決を図るため 警察庁とは別の機関として新たに広域捜査庁と呼ばれる組織を設立した これは米国のFBIに類似する組織である」と説明されていました。ようするに都道府県を跨ぐ捜査権を有し凶悪化、広域化する犯罪に対処するため設立された日本版FBIという設定。このためデヴィット・リンチ監督が製作したドラマ『ツイン・ピークス』(リンク先はAmazon)っぽいと最初設定を聞いた時に思いました。
『ツイン・ピークス』はツイン・ピークスという田舎町でローラ・パーマーという少女の死体が発見された事により起こる不可解な事件の数々。それを捜査するために中央から派遣されたFBI捜査官クーパーとツイン・ピークスの保安官ハリーが、ツイン・ピークス潜む闇や不可思議な出来事と対峙するアメリカのドラマです。ある意味、一線を超えるという部分では『熱海の捜査官』と『ツイン・ピークス』は近いところがあるように思いますが、多分似て非なるものだと思います。それでも『熱海の捜査官』が『ツイン・ピークス』から影響を受けているのは間違いないと思います。
オダギリジョーが演じる星崎はこの広域捜査庁の捜査官で階級は警視。警察官と同じ階級を与えられており、各地の警察に介入して捜査をするため捜査官に警視という高い階級を与えているのではないだろうかと思われます。それは星崎の相棒でもある北島が、南熱海警察の助手(この助手という呼び名や署長の拾坂を始め何故かアメリカンポリスな茶色の制服にテンガロンハットな南熱海警察署も随分と変です。)犬塚君に地方警察は広域捜査庁の指揮下に入る事になると説明しています。その北島(栗山千明)は星崎より上で警視正。基本的には星崎の上司という事になりますが、星崎が年長者であることから敬語で接しています。もっとも彼の浮世離れしたところや直感を使った捜査方法にはいささか疑念を抱きつつも彼には一定の信頼を寄せているという部分はこれまたアメリカのドラマ『X-ファイル』(リンク先はAmazon)のモルダーとスカリーを思い出させるところです。そしてこの2人は『東京(本線)の事件』からは外されているという描写が度々話に出てきます。この「東京の事件」はドラマ本編には全く関係ないのですが、概要として広域捜査庁が全力で解明にあたっている。そして事件が起きたのはどうやら東京のようで、しかも街は戦場のような状態になっており犠牲者も「多数」出ている事が登場人物から断片的に語られています。そして広域捜査庁は上に下にの大騒動になっているとも。
そしてその広域捜査庁には星崎と北島の上司だった女性がおり、星崎はヘッドセットや携帯で広域捜査庁にいると思われる彼女としばしば連絡を取って情報を送ってもらっています。彼女の名はモトコ。漢字で書くとどうやら「素子」のようです。実は最終回で分かるのですがなんらかの事件(星崎たちが南熱海に来る前の事件、または本線の事件)で命の危機に晒された事が語られています。
南熱海
第1話、星崎たちが南熱海に向かう道すがらにある看板にはこうあります『南熱海は天国かも ようこそ南熱海へ』看板には日本髪を結った女性がビキニにレイをつけて踊っている絵と夫婦岩に松の絵。まあある程度ここに書かれているんですが放送当時は後から…ああそうかあってなった案件です。まあそれはおいおい書いていきますが。
基本的には熱海のようで熱海ではない不思議な場所です。地域を担当しているのは南熱海警察署で、拾坂署長以下3人で回しています。大規模な事件や重大事案では近隣や県警から応援が来るのか普通の警察官がモブシーンなどで登場することがありますが、南熱海での常勤は拾坂、桂東、犬塚の3人。上でも触れましたが桂東、犬塚は「助手」という風に紹介されています。どういう勤務形態なのか実は色々不思議な警察署なんですよね。番外地的な雰囲気をもっているというか(笑)
バス行方不明事件に大きく関わっていると思われる倒れていた老人、蛇川方庵は熱海の小さな劇場でマジックをみせる座長兼マジシャンだし。星崎と北島が街に来た時に前を横切ったおばさん、チュッパチャプスをなめているのでチュッパチャップスさんと呼ばれる老婆など強烈な人物が続々と出てきます。
南熱海市の甘利市長は事件から3年後も市長を務めており、街の裏も表も知っている古狸然とした人物で、地回りヤクザ南熱海興行の組長、朱印頭と組んで良からぬ事に手を染めていたりする複雑な人物。その組んでる朱印は裏社会の住人イメージを大事にするちょっと変わったヤクザです。甘利市長は新政権の発足のどさくさで決定した南熱海縦貫道路の建設を推進しようとしています。
その道路建設に反対しているのがNPO団体「空と海と虹の会」。代表の平坂は道路建設の予定地に居を構え、色々な調査をしている胡散臭い人物。但し人当たりはよく、北島も好印象を抱いてしまうほど。
永遠の森学園
名前もそうなんですがミッション系の中高一貫で各学年一クラスのみの寄宿舎スタイル。かなりのお嬢様学校と思いきや実は事件の前に共学になったと説明がありクラス22人のうち男子生徒は2名という…。ラブコメな設定ですが…実際にはそうでもなさそうな…。学校のエントランスから2階への階段上がったところに複製のゴーギャンの絵画が飾られています。そのタイトルはコレです。→ソース|我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか - Wikipedia
意味深ですよね。実際意味深なのです(笑)
行方不明になった3人の名前、「椹木みこ(さわらぎ)」、「月代美波(つくよみなみ)」、「萌黄泉(もえぎいずみ)」の名前もこれまた意味深、特に萌黄は下の名前が泉…黄泉…意味深すぎます。彼女たちは秘密の写生クラブを作っており、一人生還した「東雲麻衣(しののめまい)」とともに行方不明になる前日、四十万新也のヌードを写生していたということから始まり、椹木にはとてつもない天才的頭脳をもち謎の数式を残していましたがそこに記された解は「2」。星崎が事件資料を直感的に並べて解決のヒントになる何かを導きだした時も「2」が。月代は幼い頃に大きな飛行機事故に合いただ一人生還し、その後その死生観をもって新興宗教の教祖となったりなど皆秘密を抱えています。
そして彼女たちの担任である敷島澪(演じるは藤谷文子)。色々な事を知っているけれど、急に激情にかられたり、物語が進むにつれ最初は謎を秘めた美女から、少々情緒不安定な人に。行方不明になったバスの運転手、新宮寺有朋(山中聡)。リーゼントが特徴的な運転手で彼もまた秘密を抱えた謎の男の側面が…とにかく端役から全員怪しく見えてくるのがこの『熱海の捜査官』でした。
この世とあの世
ドラマの最終回。バス行方不明事件の黒幕が明らかになり逮捕されるのですが、それですんなりと終わらなかったのですよね。なんと黒幕には協力者がおり、それは東雲麻衣だった。そして全てが分かった星崎は、スクールバスに乗っている(運転しているのはその前の回で、大怪魚で天然記念物「人引き」に引きずられ溺死したはずの新宮寺!)東雲とともにラインを越したのでした。その時のラインを含め色々な考察がネット上に駆け巡りました。
割と定説だったのが実は登場人物たちは実はもう既に死亡しているというもの。でもこれだと広域捜査庁からやってきた鑑識官の坂善チーフやその他の人物も既に死んでいるのか?という話になってしまいます。でも南熱海がラインの近くにある境界線上の街であり、一種の幽世みたいなものと思えば、生きているのか死んでいるのかはっきりしない登場人物たちがいてもおかしくはないのではと思うのです。それにしては俗っぽい世界ではありますが(笑)
これが正解というのはあえてぼんやりとして、はっきりと描写はしないようにしているけれど最初から「トンネルを超えてきたときに分かった」だのチュッパチャプスさんを見てマーブルから「混じり合わない」だの。いやそもそもの蛇川が登場したときにここは死後の世界かと言わせたり、4人は(主に3人でしたが)何が寮の前で死んでいたらとか、上げればきりがないないんですが平坂=風間が死についての研究をしていて、東雲と話である事を知り、ならば自分はもう死んでいるのでは?など。
ますます南熱海は幽世、もしくは煉獄のような場所ではないかと思った次第です。そもそも黄泉がえりの研究をしている人物、風間の偽名は平坂。黄泉比良坂ですからね。そしてバスが行方不明になったのも坂。星崎がバスを待ち構えていたのも坂でした。あの世とこの世を隔てるものは案外と虚ろいやすく認知されにくいものだった。そういう世界で役割を果たして退場していくものと残される者を描いたドラマだったのかなと今になって思います。
でも放送当時はあれは黄泉平坂だ!とかポニョと結び付けてましたね(笑)いや今も同じことを書いていますけど(笑)となれば『天気の子』も同じ穴の…いやこれくらいにしておきましょう(笑)
2つの坂の向こうに「熱海の捜査官」 : web-tonbori堂ブログポニョにも同じメタファーがあって、だから実はリサとかひまわりの家のおばあちゃんたちは一度死んだけど、地母神たるグランマンマーレの奇跡により常世から現世に返って来たと。まあ黄泉比良坂のあれですわね。 #atami— tonbori堂@さらにいくつもの片隅に待機中&エンドゲームはいいぞ。 (@tonbori) September 17, 2010
でも結局2なんですよね。全てはそこの行きつく。そういうドラマでした。というか実は主題歌「天国にようこそ」が既にそこを突いていたという恐ろしさ。椎名林檎恐るべしですね。歌詞が英語なんで雰囲気重視と思ってた当時、全然注意を払っていませんでした…。いや歌詞は本当に重要なのは分かっていたのに…。ぐぬぬ。
天国へようこそ - Wikipediaあ、そうそう公式というか公認アカウントもあります。販売元:松竹さんが開設したDVD販促アカウントですが謎解きヒントがあります。
「熱海の捜査官」公認(@ataminosousakan)さん / Twitterでは最期に私のこのツイートで〆にしたいと思います。
天地陰陽、五分と五分。 #atami— tonbori堂@さらにいくつもの片隅に待機中&エンドゲームはいいぞ。 (@tonbori) September 18, 2010
※TVerで「時効警察はじめました」放送記念で12月まで配信中だそうです。(リンクはトップページです):終了済
※Blu-ray-BOX出ています。
|Amazon.co.jp: 熱海の捜査官 Blu-ray BOX : オダギリ ジョー, 栗山 千明, 松重 豊, ふせえり, 田中 哲司, 岩松 了, 松尾 スズキ, 萩原 聖人, 三木 聡: DVD
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