レジェンダリーが放つモンスターバースシリーズ。第3作目再び戻ったゴジラが怪獣たちと戦う『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。監督は前作のギャレス・エドワーズからマイケル・ドハティにバトンタッチしてまたカラーの違う怪獣大激突をスクリーンに叩きつけてきました。
今回はゴジラのライバル怪獣「キングギドラ」、ゴジラを唯一倒した怪獣「モスラ」、空飛ぶ大怪獣「ラドン」が登場。他にも17体(モナーク機関が確認している怪獣)もの怪獣がいる世界で未曾有の大怪獣の激突が描かれた今作。まさに日本の特撮リスペクトに溢れた映画でした。ということでクリティカルネタバレはしていませんがよく読むとネタバレ全開ですのでご注意ください。
画像はAmazonより|ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(オリジナル・サウンドトラック)|Bear McCreary|©2019東宝|©2019Warner Bros.|©2019Legendary Pictures |
彼らが目覚めた世界
物語は前作『GODZIILA』から5年後の世界。世界各地でモナークの調査が進み17体の存在が確認されています。明確な主人公はいませんがあえて言えば前作にも登場したモナークの芹沢博士、怪獣と交信できるシステム『オルカ』を開発したエマ・ラッセルの娘、マディソン。そして狂言回しとしてエマの別れた夫、マークでしょうか。最初に出てくる怪獣は前作でも真打ちは後と言わんばかりにムートーが先に現れましたが、今回はモスラが先に登場です。そこに現れる謎の集団から話がはじまります。
承前~ロサンゼルス2014
ゴジラとムートーの戦いで廃墟となったロサンゼルス。その中で息子の名を叫ぶ、マーク・ラッセル。妻のエマは娘のマディソンを抱いて立ち尽くしていた。そしてゴジラはムートーを倒した後、再び海中へと消えていく。彼らに消えない傷跡を残して。
承前~中国雲南省第61モナーク前進基地
あれから5年の歳月が過ぎた。エマはモナーク機関の研究員として怪獣と交信できるシステムを開発していた。母とともに娘のマディソンも前進基地に来ていたが、母ののめり込み具合に父へメールを送ろうとしていたが、そこに警報が鳴り響き2人はモニタールームに急ぐ。第61前進基地では新たに発見された怪獣の卵を監視していた。それが今まさに孵化しようとしていたのだ。孵化したその怪獣はまるで昆虫の幼虫のようでもあった。しかし怪獣を拘束するシステムに異常が。とっさにエマは自らが開発した怪獣の生体音を採取し怪獣と交信できるシステム「オルカ」を起動する。性能が発揮されれば怪獣と交信できるはずだ。しかし荒ぶる怪獣はエマに襲い掛かろうとする。たまらず飛び出たマディソンとともに危機一髪に陥るが間一髪で装置は作動し怪獣は大人しくなる。そこに謎の武装集団が現れエマとマディソン以外のモナークの要員を射殺し彼女たちを連れ去ってしまった。
承前~米公聴会
モナーク機関の芹沢博士は同僚のグラハム博士と技官のコールマンとともにモナークの活動と成果を明らかにし、怪獣への対策を問いただすための公聴会に出席していた。議員の他には米海軍のステンツ提督も出席していた重要な公聴会であったがそこに雲南省の件の連絡が入る。すぐさま対策をとるために芹沢博士はある人物の元へ向かう事に。コロラドで狼の生態を観察するフィールドワーク中のマークは突如モナークの訪問を受ける。元々「オルカ」は彼が研究していたものだったがロスで息子を亡くして以来すさんだ生活を送り妻とも別れやっと普通の生活に戻れたところだったが、共同研究者であった妻がその後もオルカの開発をすすめていたことに驚きを隠せなかった。
承前~キャッスル・ブラボー モナーク第54前進基地
マーク達はモナークの前進基地の中でもゴジラの追跡、監視のための前進基地キャッスル・ブラボーで対策を練る事に。雲南省の基地を襲ったのは元英国軍大佐、アラン・ジョナ。環境テロリストとして過激な闘争を仕掛けている人物だった。彼の狙いはまだ分かっていないが地球環境回復のため怪獣を暴れされる事ではないかと推察する芹沢博士たち。怪獣、特にゴジラを憎むマークだったが娘の追跡のため芹沢博士とともに「オルカ」の音波を追う事にするがそこにここ暫くは静かだったゴジラが接近してくる。対ゴジラのための武装チームGチームが警戒態勢に入るがマークはシャッターを上げて警戒を解くように言う。果たしてゴジラはそのまま転身し何処かへ去っていく。そしてマークは気が付いた。オルカの音波は餌であり、ジョナたちの狙いは大物ではないかと。そこ頃南極の第32前進基地との連絡が途絶えた。芹沢たちはモナークの巨大空中司令船、アルゴで急きょ南極へ向かう。
偽の王の目覚め
南極にはモンスター・ZEROと呼ばれる怪獣が氷の中に閉じ込められていた。太古の昔、クレバスの中で氷漬けにされたのだ。ジョナたちはこの最大、最強の怪獣を目覚めさせようとしていたのだ。マークはたまらずGチームとともに基地へマディソンとエマを探しに行くが、彼女たちは自らの意思でジョナと行動をともにしていたのだった。かくして最強最悪の怪獣が目覚める。モンスター・ZEROは巨大な翼と二対の尾、そして三つ首竜という巨大な怪獣で逃げる途中にグラハム博士が下敷きになってしまう。そして着陸機も大破し絶体絶命のピンチに現れたのは怪獣王ゴジラだった。ゴジラとモンスターZEROは激しく戦うが決着はつかずモンスター・ZEROは何処かへ飛び去ってしまいゴジラもそれを追って海中へ没した。
邪神降臨
アルゴではエマがジョナに協力している事に皆がショックを受けるが、そこに彼女から通信が入る。彼女がこれを始めたのは、このままでは地球が人間によって滅亡してしまう。そのために太古の支配者であった怪獣を蘇らせ地球環境を一度リセットする事を決意したのだという。しかしそれは怪獣によって亡くした息子への鎮魂にはならないとマークは指摘するが彼女はオルカのスイッチを入れる。それはメキシコのイスラ・デ・マーラの第56前進基地に眠っていたラドンを呼び起こした。町を破壊して飛び立つラドンはイスラ・デ・マーラに近づく暴風圏に吸い寄せられるように近づいていく。その渦の中にはモンスター・ZEROが。ギドラという古き名をもつ怪獣はモナークの戦闘機を蹴散らしアルゴを追い詰めたラドンをあっさりと一蹴する。そこにゴジラが海中から現れギドラの首を食いちぎりギドラを海へ引きずり込もうとする。しかし米軍は秘密裏に開発していたオキシジェンデストロイヤーを搭載したミサイルを発射。半径3キロの酸素を破壊する兵器だ。果たして生き残るのはゴジラか?ギドラか?そして人類の命運は?運命の大激突が今始まる。
画像はAmazonより|【チラシ付き、映画パンフレット】ゴジラ キング・オブ・モンスターズ (豪華版) |©2019東宝|©2019Warner Bros.|©2019Legendary Pictures |
東宝ゴジラシリーズの系譜と日本の特撮の系譜
レジェンダリーのモンスターバースシリーズのゴジラはレジェゴジとネットでは言われており、その中でも1作目のゴジラはギャレス監督の作だからギャレゴジ。今回のゴジラはドハティ監督だからドハゴジと言われています。このドハゴジ。かなり東宝のゴジラシリーズと日本の怪獣特撮作品を研究しているなと思わせます。まずのっけからモスラでかましてくるお手並みもなんですが、急に押し入ってくる謎の武装集団。『ゴジラ対ビオランテ』では某国のスパイ(ターミネーター並みに強いスーパーエージェント)がG細胞を自衛隊を全滅させ奪取するところを思い出しますし、怪獣と交信するというのも『ゴジラ対ビオランテ』のテレパシー少女三枝未希や平成ガメラシリーズでゴジラと通じることが出来た少女、草薙浅黄を連想します。もっともマディソンにはそういう力はなく(事前情報では怪獣と交信できるという話もあったようですが)『オルカ』という機械を使っての話になりましたが。このゴジラや怪獣を音波で誘導というのはゴジラシリーズでも何度か使われているネタです。その他にも怪獣映画好きにはこれは?とかひょっとして?というネタが頻出しますが一番のベースは2つの邦画の怪獣映画があるのではと思っています。
ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃
そのうちの1本がこの『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(GMK)です。ブログタイトルもそのもじりです(笑)今作ではこの怪獣たちはタイタン(ティターン/巨人/古き神々/ギリシャ神話)と呼ばれいわゆる一般的なモンスターという扱いではありません。それはドハティ監督も明言していてパンフレットでは自然を象徴する力として一種の精霊(古の神)として捉えているようなのです。となれば平成ガメラシリーズ3部作を撮った金子修介監督が撮ったゴジラである、このGMKな訳です。この作品では第1作目のゴジラから久しく怪獣が現れていない世界となっていますが、突如蘇り首都を目指して日本を縦断していく中で数体の怪獣がそれに呼応して蘇り護国聖獣として日本を守ろうとする。そういう筋立てになっています。
ここではゴジラが完全に悪役で白目のままであり、その本体は先の大戦で命を散らした英霊たちの魂の怨嗟の集合体とされています。実体のない幽霊のような存在でもありますが、生命体である以上、傷もつけば血も流す存在。それに対抗するは自然の守り神でもある3体の怪獣、バラゴン、モスラ、ギドラな訳です。キング・オブ・モンスターズ(KOM)のギドラとゴジラの立ち位置を入れ替えるとぴったりくるとは思いませんか?
ガメラ3邪神(イリス)覚醒
もう1本はガメラ3です。ここでは平成ガメラ1作目で両親を亡くした少女が出てきます。彼女はふとしたことからある生命体と交信をします。それは1作目でも登場したギャオスの変異体であり、山奥に封印されていた禍々しい怪物でした。しかしガメラ憎しのあまり彼女はそれを守ります。実は幼生もそういう人間の感情を餌に大きくなり生命を滅ぼすために産まれた生命体でした。
一方のガメラは地球の(人間ではない)守り神として地球を構成するマナという物質を基に古代に創造された地球のフェイルセーフ。兵器として産み出されたけれどそれ以上の言わば地球の意思のようなものに突き動かされている。イリスはギドラ、ガメラはゴジラと置き換えると腑に落ちる部分もあります。またギドラはその出自が他の怪獣と比べてでたらめで(もっとも他の怪獣も十分規格外なんですが)その規格外さ加減は『ガメラ2レギオン襲来』のレギオンを思い出せるところがあります。そしてレギオンは音波(周波数)に誘導されるところも設定が引用されている気がします。
総天然色怪獣絵巻
そういう怪獣映画の美味しいエッセンスと西洋らしい考え方とアジア的なものの見方が融合した怪獣絵巻がこの作品ではなかったかなと思います。なんせ南極で戦う2体の怪獣のなんと神々しい事か。そしてイスラ・デ・マーラで戦闘機を一蹴するラドンの雄々しい事。火を纏い飛ぶさまはまさにサラマンダーをも取り込んだ姿です(元ネタは『ゴジラVSメカゴジラ』の時のファイヤーラドンだと思います。)もっともそのあとあっさりギドラの軍門に降っていましたが(^^;そしてマディソンを探しに行こうとするマークの前に雲を割って雲南省から飛来したモスラはまさに神の使いとでも言うべき登場の仕方。それらが決戦の地ボストンでぶつかる様は『ゴジラ・ファイナルウォーズ』の最終決戦カイザーギドラvsゴジラが着ぐるみでなくもっと潤沢に予算があればそうだったんじゃないかというくらいのクライマックス。まさに夢の大激突でした。
ただし人間ドラマはその分酷評されています。有名な映画レビューサイト、ロッテントマトではトマトメーター(その映画のレビュアーの採点)が40%、正しオーディエンススコアは86%と高評価ですが…。それも分からないでもないです。
ソース|Godzilla: King of the Monsters (2019) - Rotten Tomatoes
何と言っても人が地球を滅ぼす元凶になっちゃうエマの動機がこのままでは人間によって地球が滅んでしまうから怪獣を蘇らせて地球の再生力を高めようというのはいささか無理があります。マークが言ったように子供の事でこんな世の中滅んでしまえってのもですが。
それに力を貸すジョナもサノスの安い版、いやダメなサノスですよね。「神々に地球を帰すのだ」みたいな?にしてもどんな地獄を見てきたのか、ついてきた連中は狂信者なのか、分かり辛い。そしてモナークメンバーも大概怪獣馬鹿とか軍人キャラとか類型的な造形なキャラクターが殆どなんですが、それでも渡辺謙演じる芹沢博士はあるシーンで「さらば、友よ」(友よの部分はオールドフレンドと英語字幕がでていました。)と凄くいい場面を持っていったと思います。芹沢という名前が示すその意味を全うしたという点では(その最後には)万感の想いがこみあげてくるものがありました。でもそれ以外は割とテンプレートな感じで何と言ってもステンツ提督の『オキシジェンデストロイヤー』はびっくり仰天でしたね。あれの副作用とか妄想はしてしまうけどなんか’54ゴジラと比べてその威力どうなの?って感じがしました。また残念だったのはヴィヴィアン・グラハム博士(演じるはサリー・ホーキンス)あっさり退場したこと。でもこれはしょうがないかなと思っています。往々にして怪獣が暴れる時、人は無力である。そういう感傷さえ味わう暇もないという。そして次作へヒキか、チャン・ツィイーの演じるチェン博士の双子の妹、リン博士(二役)が思わせぶりに出てきたものの出番なしという(^^;いろいろ人間ドラマ部分はあとあと考えると弱点多いですよね。
あとあそこに出てきた黒人のモナーク機関メンバー、演じるはジョー・モートンという事でそこもネタ化されていますが説明がなく唐突感が。(モートンはターミネーターではサイバーダイン社でスカイネットの元になるCPUをターミネーターの残骸から開発。DCEUでは『ジャスティスリーグ』で我が子を助けるためサイボーグを産み出す博士を演じています。)彼こそが『髑髏島の巨神』の登場人物の一人という話を後で聞き、そうだったのかと。今回は顔見せなのでそこは次に持ち越しのようです。
しかし拾い物もあって司令船アルゴなんかは良かった。移動母機としてはかなり活躍したんじゃないでしょうか。スタートレックのエンタープライズなみには(コラッ)観てる間中、ああヘリキャリアもエンドゲームでこれくらい活躍してくれればなあ…出てないけどと思いましたよ(笑)まあどちらかといえば『エージェント・オブ・シールド』のゼファーに近い乗り物です。それと怪獣もだいたいいい見せ場を貰っているんだけども王の臨席に際して割を喰ってるのがいまして…まあいわゆる『ゴマすりクソバード』さんことラドン。いやロダン(米でのラドンの呼び名、KOMでは基本ロダンです。)なんであれはラドンさんやないという人もいますが…。でもネタとして最近は定着している気が(笑)でもそれらを補って余りある怪獣絵巻にはもう打ちのめされましたね。『シン・ゴジラ』にはなかった怪獣同士の肉弾戦をたっぷりと十分に味わせてもらった。そういう作品でした。是非怪獣たちの豪華絢爛絵巻をご堪能して欲しいそういう映画です。
サントラ
ところどころで伊福部サウンドが鳴り響く、リスペクトにあふれたサントラは時にぶっ飛んだ音作りをしています。音楽はベア・マクナリー。『10クローバーフィールド・レーン』やドラマ『ウォーキングデッド』のスコアを手掛けています。またゲーム音楽も担当していて、『ゴッド・オブ・ウォー』などが彼の音楽だそうですが、日本の掛け声(ソイヤとかセイヤとか)も入れてきたオリエンタルなものに。ちょっと面喰いましたけど、なかなか面白い試みでした。すこし『AKIRA』の芸能山城組っぽさを感じましたね。また古関祐而氏の『モスラ』の歌も使われ音楽もゴジラシリーズのリスペクトに溢れた仕上がりになっています。
最後に
ギドラという切り札を切ってきたのは、その後にキングコングという真打ちがいるからなんですが、ポストクレジットを見るにまだもう一波乱ありそうです。モンスターバースシリーズ次作の『ゴジラvsキングコング』では東宝の『キングコング対ゴジラ』のような引き分けではなくきっちり決着を付けるとアダム・ウィンガード監督が明言しています。今作のマイケル・ドハティも脚本で参加しており、今作のモナークのメンバーも登場することがアナウンスされています。また日本からは新たに小栗旬が出演。どういった役柄かは不明ですが芹沢博士の遺志を継ぐとベタですが燃える展開になるかなと思います。まだどういう話になるかは不明なれど来年公開予定ですのでそちらを楽しみにしつつ今はこの怪獣絵巻を十分堪能したいと思います。
追記:20190613 いわゆる『ゴマすりクソバード』さんの事を付け加えました。
0 件のコメント:
コメントを投稿
お読みいただきありがとうございました。ご意見、ご感想などございましたら、コメントをよろしくお願いいたします。【なおコメント出来る方をGoogleアカウントをお持ちの方に現在限定させて頂いております。】