昨日(2019年2月1日)日本テレビ系『金曜ロードショー』で放送された『ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー』公開された時に観たんですけれど、この年2016年に日本で公開され観た映画は『ボーダーライン』や『この世界の片隅に』など傑作が揃っていました。ああ『シンゴジラ』もですね。
中でもこの『ローグ・ワン』。なんというか裏スターウォーズ、エピソードⅣというべきな感じがひしひしと突き刺さります。『スターウォーズ フォースの覚醒』より琴線に触れまくりで、こみ上げてくるものがありました。という事でエキサイトブログで書いたエントリに追記して今回はお送りしたいと思います。
元エントリ|2016年に観た映画『ローグ・ワン スターウォーズストーリー』の話。 : web-tonbori堂ブログ
スターウォーズ・カノンとレジェンズ
この『ローグ・ワン』は『スターウォーズ・ストーリー』とつけられているのですがそれはメインストーリーに対してサイドストーリーという事だからです。ガンダムで言えば『0080ポケットの中の戦争』や『0083STARDUST MEMORY』のようなものです。ちなみにスターウォーズはそれまで長い歴史を重ねてファンダムの2次創作やそこから産まれたスピンオフ作品(コミックス、小説)が数多くあります。しかしディズニーの傘下に入ったことで新作の制作がスタート。そこで『フォースの覚醒』に連なるように世界観を一度整理し、いわば正史のタイムラインをカノンと呼び、それ以外のスピンオフ作品を正史ではないレジェンズと呼ぶようにしたとか。同じディズニー傘下のマーベル、マーベルスタジオが製作する映画がコミックスとは違うバース(世界)、マーベル・シネマティック・ユニバースとして各作品の齟齬がそれほど生じないようにした事に通じますね。(とTwitterで知りました)
そんな中、初のスピンオフ作品である『ローグ・ワン』は当然『フォースの覚醒』に連なるように作られたいわば正統(カノン)に連なる話として最初の『スターウォーズ』(エピソードⅣ新たなる希望)の開始10分前までが描かれるとされています。でもお話としては完全に『スターウォーズ・EPⅣ新たなる希望』の鏡像のような構造を持っていると感じました。
スターウォーズEP4の鏡
まず最初に鬱屈した主人公が登場。主人公は大きな秘密を担う系譜を持ち、途中で導師と呼べる存在を無くします。また猥雑な町で仲間を得たり、大きなピンチを切り抜けたり、最後には大きな戦闘などなど、EPⅣとの相似点が散見されます。なのでスターウォーズEPⅣの、あのオープニングロールでほんの少しだけ触れられた帝国軍の秘密兵器の奪取、それは数多くの犠牲を払ったものだったというのが、こういう形で現れるとは思ってもみませんでした。
リブートというか新世代のスターウォーズとしてのエピソードⅦ『フォースの覚醒』もスターウォーズEPⅣへのリスペクトや相似点が幾多もありましたが、旧3部作ととばれた最初のスターウォーズをリアルタイムで経験した自分にとっては『ローグ・ワン』は『フォースの覚醒』には無かった視点というのを強く感じるのです。
そもそも最初のスターウォーズもEPⅥ『ジェダイの帰還』でこれはスカイウォーカーの物語であるということが分かる仕掛けになっていたのですが、最初の1作目が熱狂を持って迎えられたのは思うに辺境の何者でもない若い青年が、ある日君は重大な使命を担っているのだと告げられ自らその渦中に飛び込む。いわば立身出世物語でもあったからだと思うのです。ですが『フォースの覚醒』はすでにそういう大きなストリームがあってスカイウォーカーの一族とレイというこれまた神秘的なシャーマンの邂逅を描いたものでなんとも神話めいています。
それがダメとは思いませんが自分の観たかったスターウォーズは若者(ヒロインでもヒーローでもどちらもかまわないけど)が己の未熟さを噛みしめ徒手空拳で戦う物語であってほしいと思うのです。だから新3部作も実は、うーんって感じでした。ただダースベーダー誕生ストーリー、いわゆるヒーローの闇落ちストーリーとして観ればむちゃくちゃ腑に落ちて好きな3部作ではあります。
特攻大作戦
アウトロー戦争映画にスターウォーズフォーマットを置いて見せた、そういう作品だったように思います。あまり多くを語らずロードムービーのようにシーンを重ねていくスタイルのギャレス監督ならではのアプローチも琴線に触れたといっていいでしょう。キャプテン・キャシアンとK-2SO、そしてジン・アーソが衛星ジェダに向かうあたりは第二次世界大戦で、敵地に乗り込むコマンド部隊とレジスタンスの闘士のような雰囲気がありますし、謎の盲目の僧侶チアルートにごろつき然としたベイズが加わるのは西部劇の趣が。そういったアウトローが集まってきて生還が期待できないスーサイドミッションに挑むというのは『特攻大作戦』をも想起させます。
『フォースは我と共にあり』
中でもドニー・イェンが演じたチアルートはジェダの寺院の守護者でありながら帝国軍に寺院を破壊され町でも持て余された厄介者。ですがフォースを信仰し(彼はジェダイではありません)「フォースは我と共にあり」と念仏か聖書の言葉のように繰り返します。これはもう『スターウォーズ』の精神を体現しているといってもいいじゃないですか。このチアルートをドニー・イェンが演じて、その頼れる重火器で武装したベイズを中国の俳優チアン・ウェンが演じているのも時代だなと思います。
アジア系の主要キャラクターはそれまで『スターウォーズ』では大きな役割をもっていませんでしたからね。とくにチアルートは盲目でありながらも武術の達人で音で飛んでくる戦闘機を撃ち落とすことさえできる人物として、また洞察力に富んだ人物として描かれています。
WARS
監督のギャレス・エドワーズは戦争映画のエッセンスを色濃くだしたかったようで、スカリフの戦いのシーンはビーチで行われるのはノルマンディー上陸作戦とベトナム戦争(スカリフの保管庫がある場所は熱帯性のヤシがある)がミックスされたシーンであったり(そのせいか随分とトーンが暗くなり別の人物による撮り直しがあったとか。担当したのは本作脚本のトニー・ギルロイ)
ソース|トニー・ギルロイ、悪名高い『ローグ・ワン』の録り直しについて語る - Star Wars [2013]
もっともこの件について監督のエドワーズからも発言があるのですが、まあ大変だったことには間違いないようです。
そして完成したものもなお暗いトーンを保ったものでしたが、実はスターウォーズって暗いトーンも持ち合わせた映画です。現在エピソード4と知られている最初の『スターウォーズ』のラストがデス・スターが破壊されルークたちが表彰されるシーンで終わっているので気が付かない人も多いでしょうが、犠牲者も多数出てるし割合悲惨なシーンもあります。それにシリーズ最高傑作とされる『帝国の逆襲』これ公開時には戸惑った人も多いと思うんですがルーカスの新3部作(プリクエル)が始まったころにはこれが最高作になっててこれもある意味衝撃の1本です。でもイメージとは恐ろしいもので『スターウォーズ』は過度に暗いものは拒否反応が起こるんですよね。ですがこの作品は高評価を得ています。それはやはりエピソード4へのブリッジが完璧だった事。レイアの父であるベイル・オーガナやモン・モスマが登場しラストはエピソード4へつながるあのシーン。これはもう問答無用に盛り上がるしかありません。出来たらそのまま『スターウォーズ』を観たいくらいになります。
でもそれだけじゃ良いとは言えません。あくまでもそれぞれの立場があって「でもやるんだよ」で一見勝ち目が無くても希望につながる戦いに臨む。スカリフの戦いで一人また一人と倒れていくけれど、スカリフのシールドゲートに集まった艦隊にデス・スターのデータをなんとしても送ろうと奮闘したローグ・ワンの兵士たち。何度観てもぐっときてしまいますね。またその仲間を見捨てないでやってきた同盟軍の艦隊も含めてこの映画は『スターウォーズ』、『ローグ・ワン』は紛れもないスターウォーズユニバースの一挿話だけれど、輝けるコードネームとしてその名を記憶したい映画となったと思うのです。まあ確かにCGレイアは…まあもうちょっとなんとかならなかったんかなとは思いましたけど。ただグランド・モフ・ターキンはまだいけましたね。いや全然大丈夫でした。
ちなみにレイアはキャリー・フィッシャーが演じた『スターウォーズ』のヒロイン。当時まだ20代を役者の顔にCGで再現。モフ・ターキンもピーター・カッシング(故人)の顔をCGで再現し似た顔と背格好の役者に貼り付けたとか。『スターウォーズ』(EP4)を観た後、観る前。どちらでもかまわないのでよろしければ一度観て欲しい作品です。
※『STAR WARS』所謂エピソードⅣ、この物語の前日譚としてこの物語は作られました。
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