片羽の妖精｜『エースコンバット ZERO ザ・ベルカン・ウォー』｜tonbori堂『ACE COMBAT』語り

ACE COMBAT7 PIXYスキンF-15C/#PS4Share/©バンダイナムコ/PROJECT ACES

片羽の妖精

あいつのことか？　ああ　知ってる　話せば長い　古い話だ
Oh him? 　Yeah. I know him.It's going to take a while. 　It happened years ago.
｜ACE COMBAT ZERO OPムービーより

　これはトレーラーでも使われている印象的な台詞です。これを語っている人物こそウスティオ空軍第6航空師団第66飛行隊、ガルム隊の2番機コールサイン「ガルム２」だった男です。名前はラリー・フォルク、傭兵です。彼は、乗機であるF-15Cの片翼がもがれたにも関わらず基地に帰還した事から「片羽の妖精」という二つ名で呼ばれており、TACネームはピクシー（妖精）。単に片羽とよばれることもある凄腕パイロットで、サイファーとともに各地を転戦。B7R、ベルカの絶対防空圏にある対空レーザー砲、エクスキャリバー攻略などの作戦に参加しました。

　しかし次第にベルカへ侵攻していく連合軍に対しこの戦争の意味に疑問を抱き、以前から知り合いであったオーシア空軍のブリストー大尉の誘いにのって部隊を離脱。再びサイファーの前に姿を現した時はベルカの核兵器V２を接収したクーデター軍「国境なき世界」の一員としてでした。南ベルカ国営兵器産業廠が試作した戦闘機、ADFX-02モルガンに搭乗し、V2のコントロール機能を使い世界をやり直すためにサイファーと戦います。

あれは　雪の降る寒い日だった

 　「It was a cold and snowy day. 」この台詞の後からミッションが始まります。既にベテラン然としたピクシーとともにミッションに挑むのですが、彼は片翼を失いながらも基地に帰還した凄腕パイロット。そして「相棒」と呼んでくれる頼もしい男。この関係性は一種のブロマンスさも感じさせるものです。その後クロウ隊のPJという若手パイロットがサポートに入ってきて嫉妬したピクシーは出奔。PJと仲良くやってるサイファーを見て、PJを血祭りに…なんて穿った見方も出来ちゃう。そんな感じでバディとしてはピクシー、ゲーム的にはともかくストーリー的にはいい相棒だったと思います。

　そのピクシーことラリー・フォルクはサイファーとの対決後、流れついた先がユージア大陸で、飛行機にこそ乗っていないけれど国境線近くで今もその意味を考えるために戦っているという描写があります。そしてこの台詞を言うのです。

よう　相棒 　まだ生きてるか？　ありがとう　戦友　またな
Yo buddy. Still alive?　And thanks, friend.　See you again.｜ACE COMBAT ZEROより

　「よう相棒、まだ生きているか？/Yo buddy Still alive?」はそれほど多用されている訳ではないんですがミッション後にこのゲームを象徴する台詞として発せられるので、脳裏に刻まれています。多分プレイした人は殆どそうじゃないかなと思います。あとスタート画面からそのままにしておくとOPトレーラーが流れるんですが、そこで使われているのも大きいと思います。ゲームプレイではミッション３でこの台詞が出てきます。こういう「まだ生きているか？」生き延びる、サバイブってのが『エリア88』っぽさをまた刺激してくれるんですよね(笑)

F-15Cイーグル

　『エースコンバットZERO』のイメージリーダー機体はF-15Cイーグルです。ジャケットにサイファー仕様とピクシー仕様のイーグルが描かれていますが、サイファーは両翼に青が入ったデザインですがガルム２、ピクシー機は片翼のみが赤くペイントされたものになっています。

画像はACE COMBAT INFNTYゲーム画面より｜F-15C PIXY（ピクシーのイーグルを模した特別機体） ｜(c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

　これは彼が片翼を失いながらも基地に帰還した事からという設定があるんですが、この片翼を失いながらも基地にというのは元ネタがあって実際にあったことなんだそうです。そもそもF-15は当時最強の戦闘機として生まれた東西冷戦時の戦闘機です。

ソース｜ネゲヴ空中衝突事故 (1983年) - Wikipedia

　F-15イーグルは双発の強力なエンジンを装備しエンジンの力で飛んでいるといっても過言ではないともというのはtonbori堂の友人の言ですが、双発のエンジンというのはこの時代のトレンドでした。世界最速（当時の）の戦闘機であるミグ25も双発のエンジンを搭載しエアインテークは機体の両側に配置されていました。シルエットは違うけれどF-14トムキャット、F-111アードバーグ、ミグ23フロッガー、スホーイ24フェンサーも同じレイアウトですよね。

　そして左右非対称なピクシーの乗機のカラーレイアウトもまた印象に残るカラーリングとして人気がありました。シリーズファンとしてはラプター派とフランカー派に分かれる印象もありますがイーグルもまたシリーズのイメージリーダー機体だと思います。

ベルカ騎士団

　ベルカ公国はオーシア大陸の北ベルカ地方を発祥の地とする歴史のある国家ですが強力な騎士団を有し拡張主義を掲げ隣国に度々攻め入っていたと設定されています。現代に入ってのベルカ空軍はその末裔と捉える事も出来ます。これはゲーム内でインディゴ隊（ベルカ空軍第7航空師団第51戦闘飛行隊）の隊長、デミトリ・ハインリッヒがそう語るムービーがミッション終了後に挿入されるのです。

　そして個性的なエース部隊が敵として登場します。前回はtonbori堂が好きなエース部隊のみをご紹介しましたが、作中、３つのスタイルによって出現する敵エース部隊は変化します。（変化しない絶対に相対するエース部隊もあります。）例えば「Mission03 THE ROUND TABLE 円卓」の場合、インディゴ隊はナイトスタイル時に出現しますし、ソルジャースタイルの時はグリューン。そしてマーセナリーはロト隊という具合です。

　大筋が変わるわけではないんですが、それぞれの証言や「Mission06 DIAPASON 解放への鐘鳴」のように登場する敵エース部隊ゲルプ隊の2番機ライナー・アルトマンの証言内容と「Mission15 THE TALON OF RUIN くろがねの巨鳥 」に搭乗する「国境なき世界」に参加しているサピン空軍のエスパーダ隊の2番機エスパーダ２マルセラ・バスケスの証言がエーススタイルによって変化するので全てをコンプリートするのもやり込み要素の一つです。特にベルカ空軍はプライドの高いエースたちが揃っていて（そうじゃないエースもいますが）それぞれ人気があります。以下にその部隊と終盤に搭乗する「国境なき世界」のエース部隊を挙げておきます。

ベルカ空軍

ベルカ公国軍 第2航空師団第52戦闘飛行隊

ロト隊隊長： デトレフ・フレイジャー中佐

使用機体：Typhoon

プライド高きベルカ空軍のエース。戦後は大学で学究の徒となった。

画像はゲーム画面より｜TyphoonROTスキン装備時｜ACE COMBAT INFNTY｜ (c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

※インタビューでは眼鏡をかけた優男風で、一見理知的で冷静な人物に見えますが心の奥底には熱く燃えるものがある人物です。

ベルカ公国軍 第10航空師団第8戦闘飛行隊

グリューン隊隊長： ベルンハルト・シュミッド大尉

使用機体：F/A-18スーパーホーネット

少年時、ストリートギャングだった頃に瞬時に状況を見極める眼を鍛え、軍に入隊後、エースとなる。終戦後は雇われバーのマスター。

画像はゲーム画面より｜F/A-18スーパーホーネットグリューンスキン装備時｜ACE COMBAT INFNTY ｜(c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

※戦後はまた街場に戻ってらしい生活をしているようです。案外常識人？したたかでもあるし引くときは退く。そういう嗅覚を持つ人物ですね。

ベルカ公国軍 第7航空師団第51戦闘飛行隊

インディゴ隊隊長： デミトリ・ハインリッヒ中佐

使用機体：サーブ39グリペン

ベルカの名家の出身でその優雅な飛行技術は周囲から一目置かれていた。ベルカ空軍のトップエース。ガルム１に撃墜されたあと昏睡状態に陥るものの回復。戦後は父親より受け継いだ貿易会社の社長を務めている。

画像はゲーム画面より｜サーブJ39グリペン/インディゴスキン装備時｜ACE COMBAT INFNTY｜(c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

※恰幅の良い紳士。ベルカ騎士の末裔ということに誇りを持つ人物です。器も感じさせる人物でしたね。

ベルカ公国空軍　第5航空師団第23戦闘飛行隊

ゲルプ隊二番機　ライナー・アルトマン中尉

使用機体：Su-37テルミナートル

ベルカが占領したウスティオの首都、ディレクタスに置いて解放作戦を阻止するべくガルム隊と交戦し撃墜された。1番機のイエーガー少佐は戦死。彼はそのままディレクタスにとどまり助けてくれた戦災未亡人と結婚。今もそこにいる。

※戦後はディレクタスで文筆を書いてるようです。何故自分は助かったのか？それを自問自答している日々を過ごしているとのこと。

ベルカ公国空軍　第13夜間戦闘航空団第6戦闘飛行隊

シュヴァルツェ隊隊長 ドミニク・ズボフ大尉

使用機体：Mig-31フォックスハウンド

傭兵として督戦隊であるシュヴァルツェ隊を率いていた。いわゆるエスケープキラー（脱走兵殺し）周囲からも鼻つまみ者だったが終戦後は戦犯を逃れるため逃亡。密輸業者をしているとのこと。

画像はゲーム画面より｜フォックスハウンド/シュヴァルツェスキン装備時｜ACE COMBAT INFNTY ｜(c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

※挙動不審な人物ですが無線ではそれなりの手練れという感じを醸していました。でもインタビューではヤバいおっさんです(笑)

ベルカ公国空軍　第22航空師団第4戦闘飛行隊

シュネー隊隊長　エリッヒ・ヒレンベランド中尉

使用機体：F-14Dスーパートムキャット

ベルカのトップエースで万年中尉。そして非撃墜回数も7回を数える「死なない男」ガルム隊にB7Rで撃墜されたもののこの時も付近の基地まで徒歩で生還している。純粋に空を自由に飛び戦う事を望んだ生粋のファイターパイロット。戦後は民間飛行学校の教官をしている。吹替え音声での6AAM発射時に発する「槍を放て」は名台詞としてファンの間で語り継がれている。

※声を当てた（日本語音声）の安原義人さんの演技も相まって戦争ではなく純粋に空を飛び、相手と相まみえることに喜びを感じていたという事が伝わる人でした。まさに旧時代のファイターパイロットです。

ベルカ公国空軍　第51航空師団第126戦闘飛行隊

ズィルバー隊隊長　ディトリッヒ・ケラーマン中佐

使用機体：F-4ファントム（部隊員はF-16ファイティングファルコン）

戦前は飛行教官を務めていたベテランパイロット。教え子たちからはボスと慕われ彼の部下はケラーマン教室の生徒と呼ばれていた。戦後、オーシア空軍から誘いがあったが、老兵の出番は終わったと田舎で牧場を営んでいる。

※今ではすっかり隠遁した人物といった感じですね。後悔も何もすべて飲み込んだ老兵といった人物です。

国境なき世界

サピン空軍第9航空陸戦旅団第11戦闘飛行隊

エスパーダ隊2番機　マルセラ・バスケス中尉

使用機体：ラファール

エスパーダ１のチェック６（後方）を守る、エスパーダ２。そしてエスパーダ１ロペズ大尉の恋人でもあった。戦後は祖国に戻りダンサーとして生計を立てている。

エスパーダ隊1番機　アルベルト・ロペズ大尉

使用機体：サーブJ35ドラケン

画像はゲーム画面より｜サーブJ35ドラケン/エスパーダ1スキン装備時｜ACE COMBAT INFNTY ｜(c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

※エスパーダ１のチェック６を守るためだけに空にいたバスケス。彼女のインタビューでロペズの結末は若干の変化を見せますが彼の死後は彼のいない空に上がることはもうないと地上にいる人でした。

オーシア国防空軍第8航空団第32戦闘飛行隊

ウィザード隊隊長　ジョシュア・ブリストー大尉

使用機体：YF-23ブラック・ウィドウ

「国境なき世界」の創設メンバーと目された男。XB-Oフレスベルグ撃墜からV2発射の阻止をうけクーデターが失敗した後地下に潜伏しテロを起こしたが逮捕される。現在は刑務所に収監中。

※中二病な言動の人ですが…案外エースコンバット7の世界でも暗躍してそうな気配を感じます（ヲイヲイ。

オーシア国防空軍第8航空団第32戦闘飛行隊

ソーサラー隊隊長　アンソニー・パーマー中尉

使用機体：F-15S/MTD

ブリストー大尉とともに「国境なき世界」に参加したとされるがクーデター失敗後は組織を抜けオーシアの首都オーレッドにて保険会社勤務。

画像はゲーム画面より｜F-15S/MTD/ソーサラースキン装備時｜ACE COMBAT INFNTY ｜(c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

※威勢のいい無線音声な人でしたが戦後はすっかり、それは過去の事と。鬼神に墜とされ毒気が抜けたかのような感じが印象的でした。

ベルカ空軍第18航空師団第5戦闘飛行隊

ゴルド隊隊長　アントン・カプチェンコ中佐

使用機体：Su-47ベルクート

ベルカ空軍側の「国境なき世界」の創設メンバーと目された人物。ベルカのトップエースであり、また技術者だった。戦前は弾道ミサイルV2の開発にも関わっていたとの事。開戦後再度、戦闘機隊へパイロットとして配属されるものの指揮する部隊ごと失踪し行方不明となる。戦後国境付近にて遺体で発見されるが詳細は今もって不明。

画像はゲーム画面より｜ベルクート/ゴルドスキン装備時｜ACE COMBAT INFNTY｜ (c)バンダイナムコエンターテインメント/PROJECT ACES

※台詞は無線音声のみ。それだけに一番印象に残っています。「彼らの好きな殺し合いで正義を決める… 」

エースの生き様

　それぞれのエーススタイルにより対峙するエースは変わりますが、それぞれのインタビューはオーシアの放送局、OBCが制作したものという体裁をとっており、インタビューアであり（彼はナレーションを担当している）ブレッド・トンプソンがプロデューサーとしてあつめたものとなっています。それぞれのスタイルで出会うエースたちの生き様を垣間見るため全てのスタイルを制覇したと言っても過言ではありません。

PJ

　そうそうピクシーがウスティオを去った後にガルム２となった彼にも言及しておきましょう。同じくウスティオの第6航空師団に所属、クロウ隊の3番機だったPJ、パトリック・ジェームズ・ベケット。F-16ファイティングファルコンに搭乗していたパイロットです。ピクシーが去った後のサイファーの相棒となり、彼とともに戦い抜きましたが、最終決着が付くアヴァロンダムの上空で分かりやすいフラグを立てて（「 実は俺、基地に恋人がいるんすよ 」「戻ったらプロポーズしようと」「花束も買ってあったりして」）撃墜されてしまいますが、「まぁいいや、サァ行くか」などの名台詞やピクシーがいなくなった後にガルム２として（エンブレムはクロウのまんまですが）飛んだ彼もまたエースの一人です。

では最後に

知ってるか？
Did you know
エースは３つに分けられる
there are three kind of aces?
強さを求める奴
Those who seek strength,
プライドに生きる奴
those who live for pride,
戦況を読める奴
and those who can read the tide of battle.
この３つだ
Those are the three.
奴は―
And him -
確かにエースだった
He was a true ace.
『片羽』の言葉で物語の幕は上がる
with the words of "Solo Wing", the curtain rises.
あれは　雪の降る寒い日だった
It was a cold and snowy day./ACE COMBAT ZEROより

※本当にエースコンバットZEROもなんらかの形でまたプレイしたいですね。