2018夏クールドラマのファースインプレッションエントリにこのドラマの事を書かなかったのは内容がよく分っていなかったので視聴リストに載せていなかったからです。でもその後にTwitterでウォッチしているドラマクラスタのRTからこの作品に『SP警視庁警備部警護課第四係』『CIRSIS公安機動捜査隊特捜班』や『BORDER』の金城一紀が脚本を担当しているという事でこれは観ないと!となりました。
dele(ディーリー)/ロゴはイメージです |
既に1話を放送後に気が付いたため民放ポータルサイト『TVer』で見逃視聴(放送後1週間)したところ…多分今期の最高傑作ドラマではないかと思うくらいのクオリティの高さだったのです。では最終回を金曜日に迎えたところで各話毎の雑感をまとめたいと思います。
dele.LIFE
主人公の真柴祐太郎(菅田将暉)が児童誘拐(に見せかけて少年をDVから引き剥がすために行った行為。)で弁護を担当した弁護士、坂上舞(麻生久美子)に弁護代の代わりに働くように紹介されたのが弁護事務所の地下にある「dele.LIFE」でした。deleとはdelete(デリート)消去するという意味です。舞の弟でプログラマーであるもう一人の主人公、坂上圭司(山田孝之)が設立したこの会社は一風変わった仕事をしています。依頼を受けた依頼人のデジタルデバイスから指定されたデータをその人物の死後に消去するというものでした。
祐太郎はなぜ圭司がそういう仕事を始めたのか?まったく理解できないままに、依頼人の死亡確認を取る仕事を手伝う事になります。平気でうそを付くけれど何故か人の懐にするっと入り込む祐太郎。彼の過去は実は壮絶なものでした。また圭司も若い頃に原因不明の難病に侵され下半身が麻痺というハンディがあります。そんな2人が反発しながらも依頼人の削除依頼に対してその人生の裏側を辿る事になっていくドラマです。
第1話
何でも屋をしていた祐太郎は児童虐待を受けていた子どもをその母親の依頼で連れ出したことにより逮捕されるといういきなりなOPでしたが、その後、舞から圭司を紹介されdeleの仕事を手伝う事になりますが、初仕事が週刊誌に記事を売り込むいわゆるトップ屋(ちょっと古いですかね)のデータ消去に関わる話でした。
彼は住居の裏で死んでおり事故、自殺の線で片付きそうでしたが、死亡確認のために別れた妻子と接触した祐太郎はその記者が息子の誕生日にプレゼントを贈るという約束を聞いてひっかかりを覚えてデータの中身を確認しようと言い出すところから話が転がり始めます。
圭司はこれまで死亡確認がとれればあっさりとデータを削除してきました。ですが祐太郎は何故?という事に強く拘りをもって人付き合いの下手な圭司にずかずかと踏み込んできます。まるで水と油な2人が何を引き起こすのか?テンポも良くぐいぐい引き込まれていきました。また、削除依頼された真のデータは、彼が殺される事になる原因となったものではなく蓋をしたい、息子には見せたくないやらせの証拠であるなど一筋縄ではいかぬラストもビターなドラマとなりそうだなと予感させるものでした。
第2話
つづく第2話は若い女性の依頼人が急死。しかし死の直前にデータを消さないでという走り書きがあった事から、彼女の人となりと周囲の人間、両親とそれぞれに関わる事になっていきます。ピアニストだった詩織は高名な指揮者だった父から期待されながらもその重圧に耐えかね家を出、それでも音楽を捨てきれず、同じく音楽の道に迷っていた沙也加とグループを組んで覆面ユニットとしてコアなファンもいる人気グループに。そして生前葬を行っていた動画データを収録しておりそれを消去して欲しいと依頼していたのでした。でも結局は消去をしないで欲しいというのは今の自分を両親に知って欲しいからという事を、圭司はそれが「復讐」ではないかと言います。第3話
これは切ない話でした。何の変哲もない、時が止まった町で、ずっと見ていた男とすっど佇んでいな女の切ない物語。しかもハードボイルド。まったく違う話だし関連も何もないんですが『友よ、静かに瞑れ』を何故か思い出しました。ゲストキャストたちが抑制効いているからかもしれません。作家の高橋源一郎に余貴美子という異色な取り合わせで、しかもそんなに登場人物が多いという訳ではないですがまるで映画のような贅沢な作品に仕上がっていました。あえて多くは語りませんが時が止まったかのような町で起こるさざ波が心にしみる回でした。
第4話
依頼人が昔の圭司のアイドル、元超能力少年、サイコメトラーとして失踪人を見つけたり、その力を発揮していたものの、ある時やらせが発覚して世間から追われた人物。彼が最後の事件を透視したものの秘した秘密と彼自身の悲しい想い出が交錯する詩的でもありながら、これまたビターな真相やら『dele』のクオリティが半端ないなと思った回でした。途中で祐太郎が突然スプーン曲げたり、それに焦る圭司や、元超能力少年の残した絵を手掛かりに彷徨うところは押井守の感覚があり印象深い回でした。
第5話
橋本愛と菅田将暉ががっつり組むのも凄いし同時並行で柴咲コウと山田孝之がという、対比が凄くよいストーリーでした。依頼人は橋本愛演じる百合子の幼馴染、聡志。友人の翔とスポーツバーで飲んだ帰りにトラックに轢かれて意識不明の重体に。死亡確認にきた祐太郎が幼馴染を語ったことでdeleの人間と見抜いた百合子がデータの削除を取り消して欲しいと頼んだ事から始まるストーリーはどんでん返しというには切ない秘密が隠されていました。また圭司が年に1回会うという明奈との会話が徐々にリンクしていく様は非常に贅沢な作りでした。
第6話
OPは雪深い山間部を捜索中の警官が行方不明の少女を発見するというサスペンスドラマのような始まりで、削除するのが生業のdeleにその死んでいた少女のノートPCにかかったロックを解除して欲しいという事から、ネットの、いや世の中の闇、澱んだ澱のようなものを暴き出す回でした。探偵回のようでもあり、サスペンス回でもありかなり内容が深い回です。重層になった真相が真実を覆い隠していく。人間だれしも裏の顔を持つ、その現実に直視できるか?そういった疑問を投げかける回でもありました。普段は秘密を削除するかどうかで人間の裏に迫る2人が、データを復活させる事により裏を覗くという変則回でしたが彼ら2人の相棒感がもっともよく出た回ではないでしょうか。
第7話
これまた凄い話でどうしても和歌山カレー事件を思い出させるあるごく普通の郊外の住宅地で起こったバザーでの毒物混入事件(事件をそのままなぞってはいない)の、その犯人の息子が死後、データを削除しているように依頼していたのが、その依頼人の名前が舞の目に留まり、弁護士として放置できないとデータの開示を圭司に要求するというもの。その内容は犯人と目された人物が犯人とは言えないという証拠になる映像データ。そこからの展開は、一見普通の郊外の住宅地に見えた町にある人間模様の闇。
第6話が自らの抱え込んだ闇をネットに晒し、そこに潜む闇に魅入られてしまった人の話であれば、今回は普通に見えてもその裏で蠢く人の闇が干渉しあい、結局よそ者であった(犯人は保険金詐欺を企み従業員に毒を飲ませ殺人未遂に問われ、住んでいた町を追われてその町に来た。)その男がスケープゴートにさせられた?ともとれるし、やっぱり犯人はその男(疎外されていた事による報復)とか?ともかく人間の嫌な面を煮詰めたような回でした。実はこの回、『刑事7人』で実際にあった連続射殺事件を下敷きにしたストーリーを書いた脚本家さんのホンでそういう意味でも凄いなと思った回でもありました。でも祐太郎の最後に発した台詞『すっげえ気持ち悪い』がこの回を言い表している回でもあります。
第8話
初回から祐太郎が背負っているものが露わになったとともに実は圭司(それは舞が祐太郎を連れてきた、その理由は「少し優しくなれるから」でした。)の亡くなった父と、その過去にも、そして圭司がこの仕事を始めたきっかけにもつながるでした。祐太郎が第5話で語ったかつて妹がいたという話。病弱だった彼女はある新薬の治験に参加。副作用で死んでしまうのですが、製薬会社側は使われたのはプラセボをみるために使われたブドウ糖だとして、新薬とは関係ないと賠償を拒否。国がかかわり新薬治験の旗を振っていたことから国を相手取り訴訟を起こそうとしたら根も葉もない賠償金狙いの訴訟と噂を立てられ弁護士は逃げ出し、祐太郎の家族は壊れました。
その時製薬会社の代理人を務めた弁護士辰巳(大塚明夫)がdele.LIFEに死後のデータ削除依頼を頼んでいたのです。実は厚労大臣を務めた事もある厚労族の大物、仲村毅が新薬開発に多大な遅れが出ることを嫌い事実を隠ぺいした、その証拠が収められていました。そのデータの公表を迫る祐太郎に圭司はそんな巨大な権力に逆らうならもっとしっかりした手を考えないとと言いますが激情に駆られた祐太郎はそのデータをハッキングしようとした会社に乗り込みひと暴れします。
しかし事件はもみ消され、dele.LIFEには仲村の手のものが。データは破壊されてしまいました。しかし圭司の死んだ父、坂本弁護士は仲村のために贈収賄の証拠を消していた過去がありその証拠を圭司はもっていたのです。しかしその証拠を受け取らず一人で決着をつけようとする祐太郎。圭司は舞に「迷惑をかける」と一言。いったいどういう決着を2人はつけるつもりなのか?というストーリーでした。
それまでの7回があってこのラストは(実際には初回、原作というか原案小説を書いた本多孝好がこの回を含め第1話(パイロット版)と第5話を担当し後は全て別の脚本家が担当し当初から企画に関わっている金城一紀は第6話を担当)きれいな着地を決めたと思います。舞が最初に圭司に祐太郎を引き合わせたとき、明らかに祐太郎を鬱陶しいと思っていましたが、「ちょっとだけ優しくさせる」祐太郎がその過去と向き合う時、圭司もまた一緒に自らの過去というか追憶と対峙したのです。鮮やかな結末に、いやこれはしてやられたなと思うし、バディモノとしても良くできていたし、ほぼパーフェクトに近いと思います。8話なのがもったいないと思いましたが、そこまでタイトに作ったからこそこのクオリティだったのかも。でもこの先の2人もちょっと観てみたい。そんな最終回でした。
最後に
現在、『BORDER』の金城一紀がKADOKAWAと組んで作家と映像をつなぐ企画『PAGE-TURNER』を回していて企画を誰に頼むとなって友人もありライバルでもある本田孝好に白羽の矢が立ち今回の作品に繋がっていったそうです。
ソース|公式サイト金曜ナイトドラマ|dele(ディーリー)|テレビ朝日
キャストに関しては誰にしようという話から本多孝好が思い浮かんだのが主人公コンビの菅田将暉と山田孝之だったそうです。この2人が演じる事によりさらに物語に深みがましたと思いますが、実は舞役の麻生久美子も素晴らしい。2人を掌で転がしている感がとてもいいのです。ラストも圭司のしたある事で事務所が打撃を受けているのに、嬉しそうなのですよね。この姉弟、本当に最強ですが、ほんのちょっと優しくなれる祐太郎を自然に演じている菅田将暉がいてこそかな…。いや『仮面ライダーW』のフィリップから彼を観ていますが、本当に「ゾクゾクするねぇ」という芝居でした(ゾクゾクするねえはフィリップの口癖)
毎回のゲストも豪華かつ絶妙なキャスティング。これは結構話題にもなったので詳しくは公式サイトにて確認していただきたいと思います。個人的には声優の大塚明夫さんの渾身の演技がまさか最終回で観れるとはと感慨深いものがありました。そのまま『dele』が続編という事で戻ってくるかは分かりません。もしかすると『BORDER』のようにスペシャルになるかもしれないし、それは分からない。でもこのコンビは本当にいいコンビでした。それとともに金城一紀と『PAGE-TURNER』の今後の動きにも注視したいですね。
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