そもそもこんなエントリを書こうと思ったのは、時々「アーマードトルーパーvsナイトメアフレーム」というエントリに時々PVがあるんですが、アーマードトルーパーのクリック数などを調べると表示回数にくらべクリックが異常に低かったからです(苦笑)でアーマードトルーパー解説エントリでも書いたほうがPVあがるかなという不純な動機です(笑)
タカラトミー・アクティックギア・ATM-09STスコープドッグ|tonbori堂所蔵/撮影も |
もっともそんなエントリどっかでやってるだろうし、いやそもそもそれはWikipediaの担当では?とも思ったんですが、tonbori堂はメカ好きだしボトムズ好きだし、ATも好きだし、そう思い直し書いてみる事にしました。ということでアニメ語りではなくアニメカ(アニメのメカ)語りいってみたいと思います。
アーマードトルーパー(AT)とは?
遥か彼方の宇宙にある銀河系。その名もアストラギウス銀河と呼ばれるその銀河系には2つの文化圏が存在しました。ギルガメスとバララント。その2大勢力の100年以上も続く戦争の中で産み出された、歩兵用のワンマンタンクと言うべき兵器です。いやタンクというにはあまりにも脆弱な鉄の棺桶とも言うべき白兵戦用一人乗り機動兵器。手足を駆動するマッスルシリンダーはポリマーリンゲル液(PR液)に満たされた人工筋肉というハイテクですが、一方、外部モニターはレンズ式のカメラアイだったり、ボディを覆う装甲板はボルト止めだったりとローテクが混在したまさにハイロ―ミックスな兵器です。こう書くと帯に短したすきに長しなアーマードトルーパーですが、市街地での掃討戦には無類の威力を発揮します。入り組んだ市街地では歩兵のような集団戦闘で敵の歩兵よりも強力な火力で蹂躙する事が出来、また戦車が苦手な遮蔽物からの襲撃も易々とこなせます。
そして鋼鉄の歩兵というべき一種のパワードスーツと言えるその特性は、その汎用性の高さからオプションのパラシュートザックを使えば空挺作戦。各部の簡単な改修及び追加装備で湿地戦、砂漠戦、宇宙戦闘までにも対応でき。また武装もオプションが豊富に用意され、当初の想定されていた市街地戦闘から、そのカバーできる範囲の広さにより瞬く間にギルガメスの主力兵器となりました。歩行だけでなく足裏にローラーダッシュというモーターと方向転換用や銃撃時にアイゼンとして使用できるターンピックという杭打機を装備しているところも見逃せません。このローラーダッシュはガンダムのモビルスーツ、ドムのようなホバー走行と同じく歩行シーンを描く手間を省きスピード感を表現するのに一役買っています。この足下から火花を散らして走行するシーンに痺れたファンも多いと思います。火力増強型は最近のロボットアニメでも行きつくところまで言ってる感ありますがその初期グループにあたるのもこのボトムズだと思います。
1クール目ウド編の終盤でイスクイ署長率いる軍警との衝突に際してゴウトが用意したスコープドック(メルキア軍のスタンダードAT、物語の最初から汎用機として登場、ATM-09-STスコープドックが正式名称)にミサイルランチャー、バルカン砲とそのコントロールボックスを取り付けたスコープドッグはまさに現場での火力増強改装として、正規軍でも使用されていたことを伺わせる描写もさることながら、おまけにメルキア軍で恐れられた特殊部隊レッドショルダーに似せてバニラが肩を赤く塗ってキリコが間違いを指摘し、彼が元レッドショルダーと分かるなどメカとキャラがすごく馴染んでいるシークエンスでした。
タカラトミー・アクティックギア・ATM-09RSC スコープドッグレッドショルダーカスタム |tonbori堂所蔵/撮影 |
この時のスコープドッグは肩部にミサイルランチャー、腕にグレネードランチャー、腰部にバルカン砲と2連装ミサイルランチャーとまさに重装備。この押し出しの強さには未だに根強いファンがいます。またその後に続くターボカスタムなどにも繋がっていきます。
アーマードトルーパー(AT)の顔
そういったマニアックな描写がガンダムから始まったリアルメカ路線を突き詰めたものとして強固なファンを産んだのはあながち間違いではないと思います。でもさらに凄いのはATには個性的なヒーローの記号としての顔がないという事。これは前番組であった『太陽の牙ダグラム』(ボトムズの前に放送されたリアルロボットアニメ)の主力メカ、コンバットアーマー(CB)はヒーロー顔がないという部分を引き継いだ事です。
『装甲騎兵ボトムズ』の前に放映された『太陽の牙ダグラム』の主力メカCBには所謂ロボット顔がありません。顔の代わりにパイロットが搭乗するコクピットがあり、そのキャノピー(ガラスなどで覆われた部分)があるロボットを登場させ、ATがパワードスーツより少し大きめの歩兵用機動兵器とすれば、CBは歩行装甲車、もしくは歩く戦闘ヘリといった位置づけをしていました。ロボットアニメのヒーローロボットの命ともいえる顔が無いという冒険をこの『ダグラム』でしたのですが、キャノピーの形で個性を出して顔に見えるようにしつつ着地点を探っていった大河原邦男も凄いです。ですが後番組『装甲騎兵ボトムズ』ではさらに冒険をします。それがAT(スコープドッグ)のフェイスでした。
タカラトミー・アクティックギア・ATM-09STスコープドッグ|tonbori堂所蔵/撮影も |
ザクでは単眼(モノアイ)を、ダグラムでは顔の無いロボットを出してきましたが、今回はカメラのレンズのようなカメラアイ、しかもTV局のTVカメラのようなターレットに3つのカメラが装着された3連ターレット。この顔はさすがにファンの間でも、賛否両論でした。ダグラムではまだ主人公機がターボザックなどの装備やカラーリング、そしてワンオフのカスタム機で同型機がないという部分がありました。もっとも第1話から次の登場までは暫く間が開くなど従来のロボットアニメの則は敢えて無視された部分はありました。
ボトムズはそれは反省されたのか1話目からスコープドッグがわんさか出てきましたが、その使われ方に度肝を抜かれたのです。というのも小惑星リドに設置された秘密研究所襲撃に参加したキリコは味方から殺されかけて救助されたと思ったら襲撃犯の一味と思われ拷問を受けてしまいますが僅かな隙を突いて脱走。キリコって設定年齢確か18歳なんですけれど、特殊部隊の隊員みたいな大活躍で(実際そうだったんですが)その戦争しかしらない感も衝撃でしたが、登場したスコープドッグは武骨なのに兵器としての存在感が半端ない上に1個小隊が出てきて主人公はどの機体にのっているのか?分からないという徹底ぶり。そして1話のATの出番はそこまでで、2話以降も殆どバトリングの道具としてしか扱われていませんでした。
この描写にリアルロボット路線の更に上を見たいと思ってた人々は、このアーマードトルーパー(AT)にやられてしまいが熱狂的なファンが続出。特に3連ターレットレンズがカシャンという音とともに回転するのは兵器としては脆弱なのに何故かリアルに見える。こういった外連味がATを唯一無二のメカにしたてていると思います。
タカラトミー・アクティックギア・ATM-09GCブルーティッシュドッグ |tonbori堂所蔵/撮影もファンタムレディー専用機(PS専用)スコープドッグのカスタムバージョン |
最初の舞台であるウドの町で行われていた軍の余剰品や放出品であるATで行う地下格闘技、バトリングだけではなく続くクメンでは傭兵の乗る兵器としてスコープドッグはもはや旧式でダイビングビートルやスタンディングタートルというH級の新型を登場させながらも兵器としての描写は外さない。そういうラインをしっかり引いていたことがボトムズの世界観を補強していったと思います。またバージョン違いのスコープドッグ(ストロングバックスやパープルベアーといったバリエーション)などストーリー中に出てきたバリエーションも豊富でありそこがガンプラから来たモデラーたちも腕を振るう余地がどんどんと作られたわけです。そうしてロボットアニメに必要な顔がないといわれたATはこうやって多くのファンをとりこにしていったのでした。
実際にアーマードトルーパー(AT)があったとしたら?
tonbori堂は軍事評論家でもないし、ただのアニメ好き、迂闊なミリタリーマニアでしかないですが、正面衝突ではATは戦車には敵わないでしょう。何しろ戦車の主力砲を防ぐことはATでは不可能です。とは言え数をそろえ、遮蔽物を利用し肉薄すれば戦車と渡り合う事は不可能ではないと見ます。もっともそれはある程度の損害を織り込み済みというまったくもって損耗ありきの歩兵なみの扱い。だからこそボトムズ(最低野郎)というタイトルという話もありますが、ATはもともと歩兵的な運用を考えて作られた兵器とすれば間違いはないでしょう。
敵歩兵の小銃クラスならば遮蔽物に身を隠さずとも相手を蹂躙することが出来る鋼鉄の軍勢。限られた戦場ではかなりの力を発揮することが出来る反面、大掛かりな戦闘ではまさにすりつぶし合いとなる代物。OVAではそういった戦場での戦いも描写されていましたけど正直、こういうのはATには似合わないんだなあと。ただ戦場によってはそういう運用はあり得ると思いましたが、やはりATの主戦場というのは市街地や複雑な地形での掃討戦にあると思います。
アーマードトルーパー(AT)の武装
またATの利点は武装を変更出来る事にあります。多目的につかえるマニュピレーターを人間と同じく2対持ち、人間の扱う武器をスケールアップした兵器を扱うことが出来る。例えば自動小銃です。自動小銃は現代兵士の基本的な武器ですが、その火力は、車載の重機関銃やヘリコプターに搭載されるミニガン(バルカン砲)には及びません。ですがATはその自動小銃を大型し、威力を車載機銃やミニガンなみに強力にしたものを扱える訳です。その他にバズーカ砲、無反動砲クラスの兵器は歩兵なら分隊に1器ないしは2器というところでしょうがオプションを使えばATは1個小隊全機が搭載可能。分隊支援火器なみの火力を持つだけでも相当な戦力増強です。つまりその火力は絶大なものになるわけです。歩兵の火力増強ともいうべき兵器という側面をもつ、ATの運用形態からも考えてそう言ってもいいかもしれません。もっともそのATも歩兵の無反動砲やアンチマテリアルライフルなどで攻撃を受けると沈む可能性はありますが、数でカバー出来れば対処できるので歩兵に代わるとまでは言わないけれど歩兵と共に市街地での種戦力として十分活用できる兵器ではないかと考えられます。
先にも書いたレッドショルダーカスタムのような火力増強タイプは歩兵で言うところの分隊支援火器銃手の役割として対戦車ミサイルなども装備すれば正面対決ではなくとも後方やトップアタックで敵戦車とも渡り合う事が可能になり戦車の穴を埋めたり突破力も上げる事が出来ます。そのレッドショルダーカスタムの元になったともいえるメルキア方面軍第24戦略機甲歩兵団特殊任務班X-1が使用した脚部にジェットローラーダッシュという一種の加速装置をもち自動車のターボチャージャーのように加速を得るシステムを搭載した高機動型スコープドッグも、それに合わせてミッションパックと増加火力を搭載していました。これにより長時間の威力偵察任務や敵地への潜入任務でも威力を発揮する事が出来ます。
タカラトミー・アクティックギア・ATM-09STTCスコープドッグ・ターボカスタム |tonbori堂所蔵/撮影も |
その他のヘビー級ATも肩部にロケットランチャー、ミサイルランチャーやザイルスパイド(射出機)などを搭載など、武装のアタッチメント化は兵器としての冗長性を持たせた優れた設計は歩兵に代わる市街地戦用の兵器がその機能を極限に絞り込んだため却って万能兵器になり得たという気も。もっとも完全な万能兵器ではないですが全領域で使用可能という優れた汎用性を勝ち得たと思います。
アーマードトルーパー(AT)の魅力。
これらの設定はアニメではなく副読本からの孫引きではありますが、TVで語られた設定だけでいうと、あくまでもギルガメス連合メルキア軍の主力兵器であり、指揮官から一般兵までほぼ同じ様式の小型ロボットで、手持ちの兵器は人が持つものをスケールアップしたものを使用。小銃、ピストル、バズーカ砲などなどで、ヘリコプターのようにハードポイントを設けて固定武装(ロケットランチャー、バルカン砲など)も搭載できる、これはミリタリーマニアやプラモデルを作るモデラ―たちへの訴求が高く、明らかにボトムズのいやAT魅力の一つです。
次はサイズ感でしょうか。全高4メートルほどしかないロボット。そして外観は武骨そのもの。頭部はターレットに3連カメラ。通信用アンテナ。などリアルな感じを醸しだす装備とともに外観もリベットなどで留められた装甲板、同スケールのジープのプラモデルと並べたときに遜色のないスタイルです。そして紙のような装甲。相手が強力な火力で押せばATはボロ雑巾のようにあっという間に破壊されてしまいます。そういう「棺桶」感。戦闘機でもそういう感覚があるんですが、ATは特に地べたをはい回るという感じから「棺桶」感が高いと思います。よく日本軍の戦車は棺桶と言われましたが、それは連合軍の戦車に対して火力も装甲も貧弱だったからです。ATもいわばそういった系譜の兵器に近いものがあります。
完全無欠ではない、いやむしろ歩く棺桶のような兵器だからこそ生まれるリアリティ。そしてそれを道具として使いきる主人公。そういったリアリティ。当時のサンライズのロボットはそういった戦争の兵器であるロボットとヒーローとして悪役と対決するロボットに分かれていて戦争の兵器としてカテコライズされているロボットはリアルロボットと言われています。これはバンプレストのゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズで広まった呼び方だと思うのですが、そういった「宇宙の戦士」のようなSF感、『地獄の黙示録』『プラトーン』のような泥沼のベトナム戦争のような世界観がトゥーマッチした結果がこのボトムズの魅力であり、ひいてはアーマードトルーパーの魅力ではないかとtonbori堂は考えています。
ストーリーは主人公キリコ・キュービィーという一人の兵士が謎の女性ファンタム・レディーと出会い、戦争終結後に市井の仲間たちを出会う事により徐々に人間性を回復していくものの、最後にはその超人的な能力はどこから来たのか?という一種のヒーローへの回答までしてみせるという大河的なストーリーを、『ブレードランナー』、『マッドマックス』、『地獄の黙示録』や『エイリアン』などいろんな映画のエッセンスを取り入れ、ファンタム・レディー=フィアナとのラブロマンスまで盛り込んだ贅沢な物語でした。今では設定を含めてそこまで骨太な作品はあまり見かける事は出来ません。1年を通しての作品が一部を除いてめっきり減ったせいもあります。2クール24話ほどでも長いこの状況下ではガンダムやボトムズのような作品は生まれにくくなっている。そんな気がします。(それはアニメのビジネスモデルにも問題がある気がしますが)またボトムズのようなほろ苦い、ブラックコーヒーのような作品を味わいたいものですね。
最後に
今回はアーマードトルーパーというよりスコープドッグを中心に話をしてみましたが、最後はちょっとボトムズの印象を書きました。スコープドッグはスコタコ(蛸の頭のようということでスコタコです。)と言われてモビルスーツやバルキリーとともに長年愛されるロボットとして地位を確立しました。今後もその地位は揺るがないと思います。さて次はボトムズの大きな舞台となった5つのフィールドを一つ一つ解説しても面白いかなと思っています。何時になるか分かりませんが(笑)また外伝のメロウリンクという機甲猟兵と主人公にした一風変わった作品もありますのでそれらもまた何時かご紹介したいと思っています。そしてスコープドッグだけの話になってしまったので他のATの話も続き是非やりたいと思います。その時はまたお付き合いのほどを何卒よしなに。
20180803追記:
ATの顔に関しての記述を一部修正いたしました。
20180830追記:
レッドショルダーカスタムのあたり文章を改稿しました。
20230917追記:
全体的に文章の見直しを行いました。一部増補追記していますが全体的な文意は変更していません。
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参考文献:みのり書房『VOTOMS ODYSSEY』:徳間書店/ロマンアルバム『装甲騎兵ボトムズ』:樹想社刊『ボトムズバイブル―装甲騎兵ボトムズ 全記録集〈1〉』/ボトムズアーカイヴ―装甲騎兵ボトムズ 全記録集〈2〉:ホビージャパン刊『青の騎士ベルゼルガ物語 BLUE KNIGHT』:朝日ソノラマ刊『青の騎士ベルゼルガ物語』※リンク先はAmazonです。
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