醐津鎖無から来た仮面の忍者|ニンジャバットマン|感想【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

醐津鎖無から来た仮面の忍者|ニンジャバットマン|感想【ネタバレ注意!】

2018年6月27日水曜日

anime dc movie 時代劇

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 去年に突如アナウンスされた『ニンジャバットマン』、とうとう公開の運びとなりまして、観てきました。タイムスリップしてやってきたバットマンと仲間たちが、同じく時を越えてやってきたヴィランズと死闘を繰り返す。戦国時代を舞台に時代考証などはぶっ飛ばしたエンターテイメント爆裂アメコミアニメ映画でした。

動画はYouTubeより|映画『ニンジャバットマン』 日本用トレーラー|ワーナー ブラザース 公式チャンネル

狂乱の第六天魔王vs漆黒の仮面忍者

 ゴッサム・シティにある精神病院アーカム・アサイラム。そこで遺伝子改造を受けたゴリラ・グロッドは狂気の実験を始めようとしていた。集めたゴッサムを騒がす最恐ヴィランたちを巻き込み機械のスイッチをいれたその時に飛び込んできたのはゴッサムの闇の守護者、バットマンだった。しかしグロッドの機械を止めようとするバットマンもグロッドの企みをキャッチしてお宝を奪取にきたキャットウーマンとともに閃光に包み込まれてしまう。

動画はYouTubeより|『ニンジャバットマン』冒頭映像特別公開|ワーナー ブラザース 公式チャンネル

 バットマンが気が付いた時には全く見慣れない風景。ゴッサムの高層ビルではなく屋根の低い、まるで西部開拓時代のような。だが周りの人々も屋根の形も違う。どうも東洋の昔の意匠のようだ。そしてそれを裏付けるかのように甲冑に身を包んだサムライたちが周りを取り囲む。主である「お館様」の命により怪し気な蝙蝠の風体をした異人を殺せ。それがお館様の命だと答えるサムライ。煙幕を使いその場を脱するバットマンは、お館様と称する人間がいる城郭へ潜入する。


 ここが過去の東洋の国、日本のしかも戦国時代であると認識したが一体何が起こっているのか?城郭の天守閣には見慣れたヴィランの顔が!ジョーカーであった。がそのジョーカーはハーレイ・クインが化けた替え玉。本物はバットマンが出現したと分かり手ぐすね引いて待ち構えていたのであった。ジョーカーは今の自分は尾張と呼ばれるこの地の大名となり第六天魔王ジョーカーとして君臨しているという。はげしく切り結ぶ2人だったが勝負がつかず一時撤退するバットマン。そこに現れたキャットウーマンはバットマンより2年も前にこの時代に到着したと告げる。そして一足先にこの地には甲斐の国にはペンギンが。越後の国にはポイズン・アイビーが。奥州にはデスストローク。そして近江の国にはトゥーフェイスが大名として収まっているという。

動画はYouTubeより|『ニンジャバットマン』本編映像(悪党紹介部分)特別公開
|ワーナー ブラザース 公式チャンネル

 ゴリラ・グロッドの発明は時空震動装置、その力が発動されたためあの場にいたものは過去に飛ばされた。到着時期がずれたのは機械の近くにいたバットマンはグロッドと戦い弾き飛ばされたためちょっとのズレが2年の差につながったようだ。先に到着してバットマン=ブルース・ウェインの到着をバットモービルとともにまっていたアルフレッドとともにジョーカーの暴走を止めるべくアーカム城への侵入を試みるが果たせず未来の近代兵器は全て失ったバットマン。絶体絶命な危機を救ったのは自分と同じ姿をした忍者たちだった。先に過去に来ていたナイトウィング、レッドロビン、ロビンたちと合流し助けてくれた飛騨の忍者、蝙蝠衆とともにジョーカーへの反抗の時を伺うことに。そんなときにゴリラ・グロッドからバットマンに手紙が届く。この誘いは罠かはたまた何かの兆しなのか?そしてジョーカーたちを捕え、未来に戻る事は出来るのか?一大決戦、ここに開幕。

スーパーヒーロー大戦。

 まさにそういう感じですよ。DC本家のジャスティスリーグとはまた違う感じで、戦隊ヒーロー映画や平成仮面ライダーの映画のような。だからといってバットマンのコアははずしていない、ちゃんと分かってリスペクトや大事な部分は外さない。そんな映画でした。


 バットマン側のサイドキック勢ぞろい、そしてキャットウーマン=セリーナ・カイル。アルフレッドと。チーム・バットマンvsヴィランズ。もっともヴィランたちはそれぞれ敵同士。利害が一致すれば組むことがあっても寝首を書く連中ですがヒーローたちの前に立ちはだかる一騎当千のツワモノども。基本的にはバットマンvsジョーカーの図式で進み、『ダークナイト』『スーサイド・スクワッド』でみせた狂気をにも勝るとも劣らない戦いを繰り広げます。バットマンを当てた山ちゃんこと山寺宏一にジョーカーを当てた高木渉。高木渉は最近顔出しのお仕事も多いですが、引き出しの多い方ですのでこの難役ジョーカーも素晴らしい。バットマンの山寺宏一とガッツリ組んだ声の演技合戦もこの作品の大きな見どころといってもいいと思います。


 そして前半はバットマンの秘密兵器がことごとく効かずにどんどん手数が奪われていき、窮地を脱してもまたグロッドにしてやられ、その時に姿を消したジョーカーをヒーローとして見つけても狂気のない記憶を失った状態ではと見逃してしまう甘さ。いやヒーローの矜持は守るバットマン。狂気をもってして立ちふさがる時のみ痛撃をもって打ちのめし捕える。まさに闇の騎士。一方のジョーカーもバットマンを楽しく遊ぶ(殺し合う)事を心底楽しんでいる。そして初手から出し惜しみはしない。何時でもマックスパワー。相手を引っ掛ける、騙すのもお手の物。そしてそのためならなんでもやる。さすが狂乱の道化師の面目躍如です。バットマンのお約束はしっかり守った上での豪華絢爛爆裂の戦国絵巻。これはけれんみあるけどしっかりとした『バットマン』の作品として成立していましたね。非常に満足度の高い映画に仕上がっていました。

神風動画

 今回の制作スタジオである神風動画はtonbori堂、『ポプテピピック』を観るまでその名は知りませんでした。なにせ90年代初頭でアニメ脳が止まっているので、その後もちょこちょこアニメは観ていてもIGであったとか既に名を知っているところばかりで、新しいスタジオでも監督、脚本、コンテなどでスタジオにはあまり注意を払っていなかった不明を恥じるばかりです。アメコミタッチなバタ臭さにほどよくブレンドされた和風感覚。そして場面により変わる画法。キャラクターのデフォルメも過剰に持ってきたりなど緩急の付け所がまさにツボにはまった感じ。こういった部分がしっかりしていると画に説得力が産まれるんですよね。普通に考えるとオイオイってなっても無理を通せば道理が引っ込む(笑)みたいなね。そこらへんは脚本の中島かずきと組んだトリガーっぽさもありますがCGによるセルアニメライクな手法を提唱している辺りやっと時代はここまで来たかと感じました。

中島かずき

 脚本は劇団 新感線の座付き作家であり脚本家の中島かずき。『仮面ライダーフォーゼ』の脚本など熱い物語を紡げる人で、熱血ロボットアニメ『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』などは記憶に新しいところです。アニメ、特撮にも造詣が深いだけではなく、さらにはアメコミにも詳しい中島かずきのアメコミ愛もさることながら、和洋の折衷具合のすばらしさは、際も際、スレスレ具合がまた凄い。バットマンvsジョーカーの対決の構図を軸に据え、これまでのバットマンvsジョーカーの流れもちゃんと汲んだ上でのニンジャというお題の入れ方。赤影かーって。いやナイトウィングとかレッドロビンの顔を見ればそこにリスペクトしているの丸わかり何ですけど、そのキャラクターデザインも多分脚本に「飛騨の忍者、蝙蝠衆」って飛騨と言えば…そう仮面の忍者ですよ。(下の動画でも飛影蝙蝠狭って赤影入ってますよね(笑)狭は武侠?香港映画の血も確かに確認できます。)

動画はYouTubeより|【これがニンジャだ!】『ニンジャバットマン』|ワーナー ブラザース 公式チャンネル

 この作品では木下藤吉郎がゴリラ・グロッドだった頃ですけどね(笑)琵琶湖のほとりには怪しい宗教が流行っていたんですよ(笑)そこはさすがにぶちこんでなかったけど。でも『赤影』リスペクトは良かったですね。それと城がロボットになるっていうのはある意味戦隊からのフィードバックかなとかそこも凄く楽しく観れましたね。大風呂敷とガチンコ対決。でもちゃんとバットマンvsジョーカーの則は保っている(ここ重要)これはかなり高水準じゃないでしょうか。そこは中島かずきの本来持っている持ち味と、アメコミに対するリスペクトのなせる業でしょう。

ニンジャバットマン

 あくまでも別バースでのバットマンの活躍をまとめた一篇という感じですが、その舞台仕掛けなど、これっきりで終わらせるにはもったいないくらいのアイデアと熱量が込められた、アメコミアニメでありながら、忍者映画としても楽しめる。いわゆる一粒で二度楽しめる作品に仕上がっています。もちろんペンギンファンやポイズン・アイビーファンや他のヴィランズのファンには出オチすれすれやんかという方もいらっしゃいますでしょうが、バットマン最大のヴィランで宿命の敵はジョーカー。それに絞ったのは正解だと思います。アメコミファンも中島かずきのファンもアニメファンも楽しめる一篇ですので是非ご覧いただきたいですね。

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