ヘンゼルとグレーテル、その後どうなったのか?誰もが子供の頃に聞いた、または読んだことがあるグリム童話の一篇、「ヘンゼルとグレーテル」tonbori堂は兄妹が森で迷子になり、お菓子で出来た家を見つけて、そこで家を食べていると実はその家は子供をおびき寄せるエサで、悪い魔女の家だった。2人は捕まるけれど知恵を働かして魔女を退治して魔女の宝物を持ち帰り幸せに暮らしたというぐらいしか覚えていませんでした。
この映画はその後の話なのです。2人は家族に迫る危機により森に置き去りにされ、迷い込んだ末にお菓子の家を見つけ、魔女に捕まるものの魔女を焼き殺し、その後生きていくために魔女狩り専門の賞金稼ぎになった…という破天荒な物語です。一度は観ておきたかったんですがつい見逃していてAmazonプライムビデオでプライム特典になったのでさっそく鑑賞しました。
90分を切るというタイトな時間でテンポよく、ビッグバジェットな映画でないものの勢いとヴィジュアルで押し切るちとゴアながらも軽快なポップコーンムービーでした。
ヘンゼル&グレーテル (4K ULTRA HD + Blu-rayセット)[4K ULTRA HD + Blu-ray]/Amazonより/(C) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved. (C) 2013, 2018 Paramount Pictures. |
ストーリー
承前
ヘンゼルとグレーテルは優しい父と母に育てられた仲の良い兄妹。しかしある日の夜の事、2人は父親に起こされて森の深いところに連れていかれ、ここで待つように言われる。しかし何時まで待っても両親は迎えに来なかった。2人は森を彷徨いある家を見つけた。その家はお菓子で出来ていた。空腹だった2人はお菓子を食べて空腹を満たし、好奇心から家を覗くが、中には恐ろしい魔女がいた。2人を捕えた魔女はグレーテルを小間使いにし、ヘンゼルにはお菓子を与え続け丸々と太ったところを食べようとしていた。しかし機転を利かして、オーブンに火をつけた魔女をその中に閉じ込め焼き殺した。そして命からがら逃げだした。その後何故か魔女の攻撃が効かない体質の2人は魔女を専門に狩る賞金稼ぎになっていた。
魔女に狙われた街
ドイツの片田舎、アウグスブルグでは子供が誘拐されるという痛ましい事件が頻発していた。おりしも町では保安官であるベリンジャーはミーナという若い女性がこの事件を引き起こした魔女と弾劾し、火あぶりにかけようとしていた。そこに成長したヘンゼルとグレーテルが現れ、ベリンジャーとその取り巻きを押さえ、ミーナは魔女ではないと助け出す。魔女は魔女の黒い印や魔術のせいで肌が黒くなるのだがミーナにはその印はなかった。治まらないベリンジャーだったが、2人は市長であるイングルマンが町の外の森を跋扈し子供を誘拐した魔女を発見するために雇ったのだ。
さっそく市長の部下でガイドのジャクソンとともに町の外の郊外にある怪しいあずまやに棲んでいる魔女を退治するが残念ながら追っている魔女ではなかった。しかし棲み家にあった怪しげな書物から血の月が関係している事を知る。一方ベリンジャーは別の賞金稼ぎたちに、子供を誘拐した魔女を兄妹より先に捕まえるべく夜の森に送り出す。しかし強大な力を持つ魔女のミリュエルは賞金稼ぎたちをあっという間に惨殺、一人は生かしたまま町に帰し、兄妹の前で吹き飛ぶ魔術をかけた。男は警告を発して吹き飛んだ。
ヘンゼルは町で助けたミーナに声をかけられる。お礼を言われるヘンゼルは突如座り込んでしまう。彼は子供の頃に魔女にお菓子をたらふく食べさせられたせいで糖尿病を患っていたのだった。定期的に注射をしないと意識不明になってしまう弱点を抱えていた。町はずれで罠をかけて捕えたミリュエルの角の魔女を保安官の事務所で尋問する2人。アジトを吐かない魔女だったがもうすぐ大願が成就する、12の月と血の月そして最後の血が揃えば我らは無敵になると2人に告げる。これまで誘拐した子供が11人。12人の子どもの血と最後の一つを手に入れなにかの儀式を行うと知った兄妹はヘンゼルは最後の一人を護りに、グレーテルは魔女を見張る事にした。
その時ミリュエルは手下の赤毛の魔女とともに既に町にやってきていた。魔法で家を焼き注意がそれた隙に母親を殺し、子供を連れ去る。ヘンゼルは逃げ去る赤毛の魔女の空飛ぶ杖を掴むが振り落とされてしまった。ミリュエルはグレーテルを知っている風だった。そして最後の一つはお前だという。そしてその圧倒できな強さでグレーテルを圧倒する。そして魔法でジャクソンを自ら撃たせて殺害。そのどさくさでグレーテルを見失いその場を退く。気を失ったグレーテルを助けたのはウィッチハンターに憧れる少年ベンだった。すでにベリンジャーによって町が焼かれ子供が連れ去られたのは兄妹のせいと触れ回られこのままだと捕まると思いかくまったのだ。
兄妹の秘密
ベンに助けられたグレーテルはヘンゼルを探しに森に入るが、待ち伏せしていたベリンジャーたちに捕まってしまう。ベリンジャーは全ての責任を兄妹に押し付けようとしていたのだ。しかし突如現れた異形の大男によりベリンジャーたちは殺されてしまう。グレーテルを助けた異形の大男は魔女の使役するトロールだった。名前はエドワードといい、優しい心をもっているのだがトロールは魔女の手下ということで、泉にグレーテルを置いて立ち去った。
ヘンゼルは木にひっかかっていたところをミーナに見つかる。木から落ちたヘンゼルを治療していくれるミーナ。徐々に惹かれ合っていく2人。手当てが済んだところでミーナと別れ町に戻ろうとするヘンゼルだったが見覚えのあるあばら家を見つける。中には先に来ていたグレーテルが。侵入者と間違え飛び掛かったグレーテルとともに床が抜けて地下室に落ちる2人。何かの呪いをしていたような、秘密の小部屋だった。そして2階の子ども部屋は見覚えが。そう、ここは兄妹の生まれ育った家だったのだ。そこに魔女ミリュエルが現れる。そして兄妹の隠された秘密を語り始める。12人の子どもたちを攫った理由は?そして最後の一つがグレーテルなのはなぜか?兄妹の母親の秘密とは?血の満月が上がる時、魔女饗宴が始まり忌まわしい儀式が行われる。ヘンゼルとグレーテルはミリュエルを倒すことが出来るのだろうか?
ウィッチハンター
「本当は怖いグリム童話」なんてネタ本が昔ありました。そもそものグリム童話って割と酷薄で幸薄い感があり残酷であるという話はよく聞きます。まあ半分正解で半分間違っているというか。実際には「本当に怖いグリム童話」が真実のと考えれおられる方は少ないとは思いますが、あれは初版にちかい話をさらに潤色しているとか。時代的に夜の森や奥には危険な動物がいたり、危険だから一人で出かけるなとか、食べ物が無くて子を捨てたりとかそういう悲しい話がベースになっていたりするので、説話めいていたり、教訓があったりするのでそういう理解が広まったのでしょう(それは日本の昔話も同様です)
この『ヘンゼル&グレーテル』もそれに倣った脚色された『ヘンゼルとグレーテル』が承前で語られます。(もっともこの後に重大なネタバレになる部分があるのでもうちょっと後にそれは書きます。)そして命からがら魔女の罠を脱した2人はその後、魔物(主に魔女)を退治するウィッチハンターとなったというお話です。この辺りはファンタジー小説や有名小説の登場人物をクロスオーバーさせたり別の活躍をさせる二次創作な感じがありますよね。
これと同じようなネタで『ヴァン・ヘルシング』という映画がありました。これは『X-MEN』シリーズで永らくウルヴァリンを演じていたヒュー・ジャックマンの主演で魔物退治のプロであるヘルシングがカトリック教会の総本山バチカンの命を受け吸血鬼ドラキュラと対決するというお話でした。ヘルシングというのはブラム・ストーカーの傑作『吸血鬼ドラキュラ』に出てくるドラキュラと対決する大学の教授の名前です。童話や小説からネタをとって実は彼ら彼女らは魔物退治のプロでしたというのはよくあって、この「ヘンゼルとグレーテル」のグリム童話を出したグリム兄弟も実はという『ブラザーズ・グリム』や、その子孫が世界にいる魔物を見抜くことが出来、様々な怪事件に遭遇する海外ドラマ『GRIMM』もその範疇です。
『ヘンゼル&グレーテル』は『ヴァン・ヘルシング』に近いテイストでクラシックだけど剣や弓だけでなく銃やボウガン、または爆弾などを使って派手に退治する作品です。アメコミヒーローみたいなといえばいいのでしょうか。そこに中世のダークファンタジーやゴシックファンタジーのような部分も加わっているのもいい味になっています。黒革のコートに編み上げブーツ。ボンデージルックなグレーテルに、年季の入ったアウトロー感のあるヘンゼル。そういった部分も心にある中二魂を揺さぶります(笑)
わるい魔女といい魔女
魔女と言えば、怪しげな術を使い、子供を生贄にしてこれまた怪しげな薬などを調合し、不死であったり超常の力を得たりなどなど。魔界の悪魔と契約し魔の力を使うものというイメージがありますが、一方ではヒーラー、呪いをもって病を取り除き、加持祈祷をして平安を祈る巫女というイメージもあります。海外でも基本的には悪い魔女イメージが先行していますが、そういったいい魔女、もしくは魔法をもって王に仕える賢者というのも喧伝されています。この『ヘンゼル&グレーテル』でも同じく魔界の住人であり火を恐れる黒い魔女と、静かに暮らし癒しを施す白い魔女がいるという設定になっています。
といっても複雑なものではなく黒魔術=悪者、白魔術=いい者という単純明快な分け方で、双方ともにビジュアルも分かりやすい(笑)いやそれぐらいがいいと思います。見た目変わらない服ぐらいだと、「で、どっちがいい者なのよ」ってなりますからね(ヲイ)ですが黒魔女に使役されているトロールのエドワード、彼も作中で見せる行動には善き部分があります。そしてそれは目に現れています。アニメなどでも敵役が途中でいい人になる場合、目が変化する、もしくは目のデザインによって分けるという事があります。目は口ほどにものを言うといいますが、ともかくビジュアルで分かりやすくしているのもアクション映画として優れているなと思いました。
白魔女についてはヘンゼルとグレーテルに関しても大きく関わってくる設定も良かったと思います。原本では貧乏だったために森へ置き去りにするようにしたのは母親という設定がありますが、それを換骨奪胎した上手いやり方でしたし、人間の醜さとそれに付け込む魔女たちの恐ろしさも描けていて一石二鳥。そしてくどくど言わない。そこも好感がもてました。
ウィッチハンターウェポンズ
この作品、欧州の歴史と装束に疎いので中世っぽい感じもありますがざっくりと読むならば18世紀から19世紀にかけてのドイツの辺境(登場人物が全員英語喋ってますけど)なのではと思っています、ざっくりとですが。なので武器が明らかにオーバースペック(笑)ベリンジャーの手下も全員リボルバーを腰に下げてるし、ショットガンは水平2連の古式をつかっていますが中にはレバーアクションのウィンチェスターのようなものを持っている者も。そもそもリボルバーが欧州の片田舎で使われていたのか?などなど冷静に考えると不思議なところもありますが、一応ベリンジャーのリボルバーはレ・マットっぽい感じでした。
レ・マットリボルバーは、フランス人のル・マットが考案した回転式拳銃で南北戦争の頃米軍に採用されましたが欧州で生産されていました。そのため欧州でも使われていたとしてもおかしくありません。このレ・マットリボルバーは普通の回転式拳銃でありながらリボルバーのシリンダー(回転式弾倉)の心棒部分も銃身になっており、散弾が発射できるというもので、好き者なら知っている銃です。
パブリック・ドメイン, Link画像はWikipediaより|レ・マット リボルバー |
ヘンゼルが四六時中もっている長物は変わった形をしていましたが、先台をポンプアクションしていたのでショットガンのようです。この辺りはエンディングロールにタイトルロールCGで各々の武器が紹介されるんですが、グレーテルはヘッパーボックス風味のリボルバー。ヘンゼルが背部に隠し持っている拳銃はターレットピストルという、リボルバーが今の形になる前に試行錯誤されたうちの一つでその姿もエンディングにしっかりと出てきています。このタイプの銃は実際にあったもので、ドラム型の弾倉に弾が周りにささっている、一風変わった形をしており、暴発もおおかったとか。当然劇中ではそんなことはありませんが(笑)
またヘンゼルがベンに渡す折り畳み式レバーアクションライフルは隠し武器好きにはたまらないでしょう(笑)ですがなんといっても超反則なのなバルカン砲です。この時代ならガトリング砲なんでしょうけど、もう完全にバルカン砲でした(笑)でも多勢を相手にするならこういう武器は必要ですよね。マカロニウエスタンでも大人数相手に絶体絶命を逆転するアイテムとしてこういう機関銃はしばしば用いられていたりします。
ソース|Hansel & Gretel: Witch Hunters - Internet Movie Firearms Database - Guns in Movies, TV and Video Gamesグレーテルのメインウェポンはボウガンですがこのボウガンも左右にも展開して撃てるし連発も効くという優れもの。ただ威力はヘンゼルのショットガンには劣ります。ただ牽制や、相手の動きを止めて一撃必殺するのは強力な武器です。また雑魚相手なら急所に当てれば十分倒せるようです。
レッドバンド版ですので刺激に弱い方もしくは血など残虐なシーンが苦手な方はご遠慮ください。いろんな武器が出ています(ちなみに本編とはちょっと違うものも)
風味はいろいろあれど
とにかくヘンゼルとグレーテルは魔女を見敵必殺。そういった部分も含めてビッグバジェットなハリウッドアクションじゃないけれど小気味いいアクション映画に仕上がっています。とくに2人がむちゃくちゃ無敵、無双ではないっていうのもいいんですよね。(ラストは勢いがありますけれど)知恵と火力で倒す部分もナイスです。それぞれの押さえるべき部分はしっかりと押さえつつも、それは味付けとして(中には隠し味もあります)本筋は、ヘンゼルとグレーテルがウィッチハンターとなって悪い魔女をやっつけるという単純明確な股旅ものとして仕上げているこの作品。ポップコーンムービーとしてとても最適な1本でした。
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