『ファイブスター物語/FSS』解説|ガーランドのネーミングについて。Vol.3 GTM編-Web-tonbori堂アネックス

『ファイブスター物語/FSS』解説|ガーランドのネーミングについて。Vol.3 GTM編

2018年5月19日土曜日

FSS Gun manga ROBOT

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 今回のファイブスター物語/FSSに登場するGTMガーランドのネーミング元ネタ探訪は、前回はマウザー教授、シャープス博士、スターム公の3人の名前の元ネタを探ってみましたが、モータヘッドマイトから、GTMガーランドになった際に設定が変わったり、名前が多少変わったりしています。ここでは基本的に『DESIGNS4覇者の贈り物』のガーランドの項に記載しているGTMガーランドの名前から元ネタをさぐるようにしています。


『DESIGNS4覇者の贈り物』|永野護 著|KADOKAWA刊
|『DESIGNS4覇者の贈り物』|永野護 著|KADOKAWA刊

 もともとモータヘッドマイト→GTMガーランドの名前は銃火器メーカーの名前が当てられていると作者である永野護が語っている事から、ぬるいGunマニアであるtonbori堂が薄い知識でそのルーツをご紹介しているわけですが、未だにルミラン・クロスビンだけは分かりません(^^;

謎のガーランド(名前のルーツが)

 彼だけはもしかすると別格で何か特別なのかもしれません。なぜなら黒騎士の共同開発者であるモラード博士はカーバイトというファティマガーランドは鉱物系、元素名というお約束にはちかいけどカーバイドではなくカーバイトという誤用な名前がついており、そのうえカーバイドは炭化物の総称ということから、黒騎士に関わる人たちは特殊なんではないかというのがtonbori堂の見立てです。


 実際DESIGNS2にあるクロスビン博士のキャラクター画も原作者である永野護が歳をとって、富野由悠季っぽくなった感ありますし(笑)、ダッカスの前のデザインであるバッシュはエルガイムの企画時に最初に出来たヘビーメタルということでその辺りの影響もあるのかなと…これは推論でしかないですが。また新ネタが掘り起こせれば枕にルミラン・クロスビンの話はしてみたいと思います。ということで今回はその他のGTMガーランドの元ネタを探っていきたいと思います。

カリギュラとダリ・キア

 ガーランドの系統があり全ての元にはナ・イ・ンこと炎の女皇帝がいることはFSSファンならご存知の方も多いはずです。そこから幾つかの系統が産まれ大きなものではシステム・カリギュラからの系列。そしてその次に天照家ともつながりの深い、ヘンシェル・アナミー・クルップ(この名称も非常に調べてみると面白い元ネタがあります。)そして、シオの門番ことシステム・カリギュラ。星団屈指のガーランドを2人も擁するこの組織もDESIGNS4にガーランド組織、というよりそもそもGTMを製造する組織をガーランドと呼んでいたその頃の組織が母体になっていると解説されました。

システム・カリギュラの系譜

 カリギュラのガーランドには前回その名前の元ネタを解説したユーゴ・マウザー教授はVol.1で解説した(その後に追加で考察した)ストーイ・ワーナー(別名エルディアイ・ツバンツヒ)が在籍。ほぼ星団中のGTMにかかわっているともいわれるマウザー教授に、クバルカンの星団3大GTMである、破裂の人形の開発者であり、また数多くのGTMの設計を行っているストーイ博士がいるカリギュラの系統にはヘッケラー・バシントンがいます。これも前回取り上げたスターム公の系統上に位置しており彼の師匠筋にあたる人物として設定されたようです。(これまではそういう話は出ていなかったように思います。)このラインはキーヤ・ノーティガ系列と言われる系統で、マウザー、ヘッケラー、そしてパラベラムと全てドイツの銃器関係でまとめられているのが特徴です。

ヘッケラー・バシントン

 マウザー教授の弟子筋で、もしかすると彼もカリギュラの関係者?かもしれません。(DESIGNS4ではカリギュラの枠ではなくキーヤ・ノーティガ系列という括りになっています。)この名前は実は古くクリス(永野護)がメインデザイナーを務めた『重戦機エルガイム』の登場人物にもヘッケラーと名を持つ人物がいました。13人衆ギワザの部下で13人衆候補という立場。で下の名前はマウザー。そうヘッケラーだけではなくマウザーもエルガイムから既に使われていたのです。


 ヘッケラーの元ネタはドイツの銃器メーカー、ヘッケラー&コッホ(Heckler & Koch)からです。H&Kと略される事が多く、旧西ドイツ時代からのメーカーでモーゼル(マウザー)の元技術者が立ち上げた会社として有名です。設立当初はミシンなどを製造していましたが、やがて軍用の火器の製造をはじめ、その高性能は世界の軍隊や法執行機関が採用するほどでした。ハリウッド製のアクション映画で一時期出てくるSWATや特殊部隊はほぼこのヘッケラー&コックのMP5というサブマシンガンを使用してた事がありました。

Heckler & Koch MP5-2.jpg
By Heckler_&_Koch_MP5.jpg: Samuli Silvennoinen derivative work: Regi51 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link画像はWikipediaより|ヘッケラー&コッホ MP5|

 ちなみにお値段が高い事でも有名ですが、他にもヘッケラー&コッホ社はポリゴナルバレルの採用やシステムとして銃器を体系化するなど進んだ開発をしています。あまりにも進み過ぎて無薬莢ライフルというのにも挑んでいます。残念ながら成功を収めたとは言い難いですが。

ソース|H&K G11 - Wikipedia

 ポリゴナルバレルはバスターランチャーでも使われている用語ですが、どういうものかというと普通の銃の銃身または砲身には銃弾、砲弾を安定させるためにライフリングという螺旋の溝が内側に切ってあります。当然弾丸が発射されると摩擦でその溝が減っていくわけですがポリゴナルバレルははっきりした溝ではなく銃身を六角など多角形にして接地面で銃弾を回転させる銃身で接地面が多く燃焼ガスのロスが少なく初速が上がり、溝が切っていない分銃身の寿命が延びるというものです。無茶苦茶良いものに聞こえますがそれなりにデメリットもあり、ここでは詳しく説明はしませんが多数が採用している方法ではありません。

HK P9S PDRM.jpg
By Rizuan (talk) - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link画像はWikipediaより
|ポリゴナルバレルを採用しているH&K PS9S|

 F.S.Sではウモスの青騎士の設計改修を手掛けていたというのがMH時代のヘッケラーの設定でしたがDESIGNSではインカーセンというGTMの設計をしていたというのが示されています。ということでマウザー教授の関係でヘッケラーも実はカリギュラのメンバーってことはあり得るかもしれません。

ソース|ヘッケラー&コッホ - Wikipedia

バルター(ヴァルター)・ヒュードラー

 マウザー教授が開発に手を貸しているコーネラ帝国のGTM、MH時代にはK・A・N、カナルコード・エリア・ナインだったSBB-1、デモールと称するゴティックメードの開発者バルタ―博士は非ファティマ搭載型でエトラルム搭載GTMのフォーマットを今後確立する重要人物です。つまりシステム・カリギュラはそこにも影響しているわけですが、そんな彼女の名前の元ネタはワルサー(Walther)です。ドイツ語読みのヴァルターが元になったバルタ―。ドイツつながりですね。


 ルパン三世の愛用している拳銃、ワルサーP38で有名なワルサー社は戦前から続く名門銃器メーカーですが現在は創業者からは離れウマレックスという玩具を主体とするメーカーの傘下となっています。それでも、それ相応の年代の人間がワルサーと聞くと、ワルサーP38を思い浮かべるのは『ルパン三世』と大藪春彦の『凶銃ワルサーP38』で知られているからではないでしょうか。ちなみにワルサーP38はそれまでは遊底を動作させ薬室に実包(銃弾)を装填してから発砲するオートマチックピストルの中で安全装置をかけることが出来、ダブルアクションで発砲できるため安全な状態で持ち運べる優れた銃として知られていました。

Walther P38 (6971798779).jpg
By Askild Antonsen - Walther P38, CC 表示 2.0, Link画像はWikipediaより|ワルサーP38|

 また007が愛用している拳銃もワルサーの小型拳銃のベストセラーと言われるPPKやそれのアップスケール版であるPPを製造。戦後も幾つかの銃を製造していますがスイスのヘンメリー社と2分する協議射撃用のGSPや新世代セミオートマチックのP99が有名です。

ソース|ワルサー - Wikipedia

ダリ・キア

 ダリ・キアは聖宮ラーンのガーランド組織で創立者は3大ガーランドの一人。ブラウニー(ブローニング)・ライド博士です。ここにはバーガ・ハリのゼビア・コーター公もかかわっているようで孫のマギーはダリ・キアの所属で旧ハスハにはここから出向しているという事になっているそうです。コーターがコルトというのは既にVol.1で解説しましたが、DESIGNS4にはダリ・キア所属のGTMガーランドが2名記されており、その直上にはもう1人のGTMガーランドの名前があります。

ノイス・グリオノフ

 後にラーンを守護するラーン支隊アイル・フェルノアが使用するGTMアトラの開発者ノイス・グリオノフ。このグリオノフはゴリューノフとも呼ばれるソ連時代の銃器設計者で重機関銃SG-43を開発した人だと思われます。古い文献だと英語読みでグリオノフと呼ばれていたようです。ソ連の機関銃と言うとデグチャレフが一般的によく知られていますが、彼の手による仕事はこのSG-43くらいしか見当たりません。かなりマニアックなところから名前引っ張ってきたなという印象です。マキシム機関銃を改良しSG-34を開発したとありますがアトラもそういった系譜を持つのでしょうか?(バーガ・ハリのフレームを使った新型?とか)今後の情報が待たれます。

SG-43重機関銃 - Wikipedia

マーナス・レミントン

 ダリ・キアの括りにもう1人いるガーランド、レミントンはアメリカの有名銃器メーカーですが、米国最大手だったものの今年(2018年)所有していた投資ファンドが保有権を手放し連邦倒産法の適用を受け経営破たんとなりました。(現在経営再建中です)アメリカ西部開拓時代には拳銃とライフル銃、その後はライフルに軸足を移しつつショットガンなども製造、弾薬も手掛けていたのですが、昨今の銃撃事件の影響や、そもそも銃の売れ行きも伸び悩みこのような次第になったとか。


 レミントンで有名なのはSWATや海兵隊のスナイパーが使用するM40や米陸軍の狙撃銃M24SWS、市販品はM700ボルトアクションライフルはアメリカでもポピュラーなボルトアクションライフル銃です。また西部劇でたまに見られるダブルバレルデリンジャーもレミントンが製造していたものでこちらも有名です。そしてM870ポンプアクションショットガンはアメリカの警察ではスタンダードなライオット(暴徒鎮圧)用ウェポンとして用いられています。

M24 SWS.jpg
参考画像|Public Domain, Link|画像はWikipediaより|M24SWS|

 コルト、S&W、ウィンチェスターと並んで西部開拓時代の立役者とも言うべきメーカーであり世紀をまたいで有名な銃器メーカーであるレミントンはGTMガーランドとしてもスミロ・フレームを開発したキルス・レミントンという人物がAD世紀末期のガーランドとして記載されておりピンクの破線が伸びている事から血縁関係が示唆されているので時代をまたぐ名跡の一つと考えてもいいのかもしれません。マーナスは今後エピキュラというGTMを開発するようですがどこの国が使用するのか興味は尽きません。

レミントン・アームズ - Wikipedia

次回は

 今回この4人をご紹介したのは、マウザー教授が本編に出てきた事とウモスが14巻で再びフィーチャされたこと。(ハルシュカやボルドックスになった青騎士など)それでヘッケラーを。その流れで現在マウザー教授が関わってると見られるバルター博士は元ネタでもドイツ関係ということで取り上げました。ダリ・キアは今後関係してくるでしょうがこの2人は名前のみで終わるかもしれないけれど気になったので取り上げました。もっともノイスはアトラの開発者ですからでてくるかも。そしてマーナスはその血筋にスミロフレームのキルスがいますのでスミロフレームはモルフォでつかわれていますからやはり気になります。


 そろそろDESIGNS4のGTMガーランドもあとわずかになってきましたがまだあと2回くらいはいけそうです。次はAD世紀末期のGTMガーランドたち。ボウチャードとルガー、そしてカリギュラの枠にいたDr.村田。そして最後はヘンシェル・クルップとコーラスのミドルネーム南部も触れられればと思っています。ではまた次回もよろしくお願いいたします。

※本編未登場のガーランドの名前も掲載されているDESIGNS4は重宝します。

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