頂上決戦|『パシフィック・リム:アップライジング』【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

頂上決戦|『パシフィック・リム:アップライジング』【ネタバレ】

2018年4月17日火曜日

movie ROBOT

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5年越し、待望の『パシフィック・リム』続編『アップライジング』観てきました。前作、海底からやってくる怪獣に対して人類がロボットで対抗するとか、モンスターと呼ばずにあえて怪獣(カイジュウ)と呼ぶとか、ギレルモ・デル・トロの怪獣愛、特撮愛に溢れた映画になっていました。今回は『新世代』を前面に押し出した宣伝を展開していましたが果たしてどうなっていたのでしょう?

動画はYouTubeより|Pacific Rim Uprising - Official Trailer 2 [HD]|Legendary

今回、前回仲間を守るために勇敢に散ったペントコスト司令官の息子、ジェイクが主人公となり、宣伝通り新世代を前面に押し出した展開となっています。前回のカイジュウ、イェーガー、環太平洋防衛軍などはそのままに怪獣の攻撃が止まってから10年後の世界を舞台となりました。

スピードアップしたイェーガーのアクションと言われていますが、tonbori堂が観たところ重厚さは変わりませんでした。どちらかというと登場人物の一人がジャンクパーツからくみ上げたミニサイズのイェーガー、スクラッパーがその部分を印象付けているのかも。ちょこちょこ動くさまはまるでトランスフォーマーのバンブルビーのようにも。

ともかくちょっとだけあらすじを紐解いてみましょう。

画像はAmazonより|プライムビデオ|『パシフィック・リム/アップライジング』|提供 Universal Pictures
画像はAmazonより|プライムビデオ|『パシフィック・リム/アップライジング』|提供 Universal Pictures

帰ってきたイェーガー!(STORY)

前作から10年、地球には平和が戻ったかのように見えた。しかし怪獣の残した爪痕は深く、地域により格差は拡がったが、人類はたくましく生きていた。

環太平洋防衛軍(PPDC)は戦後も存続し、異次元生命体の生物兵器である怪獣を退けたものの何時また彼らが次元の裂け目を開いて襲うかもしれない危機に備え、新型イェーガーをもって警戒していた。しかし、現在その仕事の殆どは怪獣の青い血液カイジュウブルーによる汚染地域の警戒と、廃棄されたイェーガーを漁りに来る強盗まがいのジャンク屋の取り締まりだった。

ジェイクは汚染地域に住む青年。怪獣に破壊された空き家の豪邸にすみ、ちょっとした知識で廃棄イェーガーの廃品を回収(違法に)する仕事で日々をしのいでた。しかし目的とするバッテリーを目の前で盗み出され軍に追われるはめになる。

バッテリーを盗んだ相手の突き止めてアジトに踏み入ると小さなイェーガーが鎮座していた。そのイェーガー『スクラッパー』はバッテリー泥棒の少女、アマーラが独力で組み立てたという。しかし軍に居場所をかぎつけられた2人はスクラッパーで逃亡を計るが、包囲され逮捕される。

ジェイクは先の怪獣戦争の英雄、スタッカー・ペントコストの息子であり、不祥事で軍を放逐された後、荒んだ生活を送っていたのだ。そこに義理の姉でもある森マコから軍籍への復帰を打診される。かわりに刑務所に送られるか2者択一。嫌々ながらも軍の教官と、同じく教官で同期のネイト・ランバートの相棒としてジプシー・アベンジャーのパイロットとなることに。そしてアマーラは独力で小型とは言えイェーガーを組み立てたことにより特例でイェーガーパイロット候補生として同じ基地へ送られることになった。

おりしもPPDCでは新興の企業であるシャオ産業の新型の無人イェーガーの導入が検討されていた。10年前の戦いで功績をあげたニュートン博士はシャオ産業に移籍しており、PPDCに残ったゴッドリープとひさびさに旧交を暖めるが、ゴッドリープの提案するカイジュウブルーを使った新型推進剤には全く興味を示さなかった。

シャオ産業は新興の重産業グループ、科学者でもあるリーウェン・シャオが率いている。この無人イェーガーは新型の量子通信機を使用して世界各地でリアルタイムで稼働させることが出来る無人イェーガーに興味を示す司令官たちだったがマコだけは、まだ実用性に疑問があるとジェイクに告げる。

数日後オーストラリアで開催されるPPDCの評議会で無人機導入の会議が行われることになりジェイクはネイトとともにジプシーで護衛に付くことになったが。その時国籍不明の謎の黒いイェーガー現れた!謎のイェーガーは一体何の目的があるのか?

そして無人イェーガーにかくされた謎とは?隠された陰謀。そして地球存亡の危機にジェイクたちはどう立ち向かうのか?事態は急展開していく。やつらがまた裂け目を開いてやってくるのか?ジェイクたちの運命はいかに?

監督変更

今回はギレルモ・デル・トロは監督から退き、その後を引き継いだのがスティーブン・S・デナイト。ネットフリックスオリジナルの『マーベル・デアデビル』シーズン1のショーランナーを務めた人です。

この『デアデビル』は高い評価を得ており、期待した人も多かったと思います。で先ごろ(2108年4月13日)に公開の運びとなったのですが、旧作ファンからは厳しい評価を得ているようです。tonbori堂は楽しめましたが旧作ファンの人たちが憤慨しているのも分かるような気がします。

元々デナイトはTVシリーズを中心に功績を上げてきた人。だから悪いとは言いません。何故ならTV出身で映画で成功している監督は沢山います。例を挙げると『アベンジャーズ』のジョス・ウェドンや『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のルッソ兄弟もTVの出身です。

またデナイトはトランスフォーマーの脚本家チームに参加もしていたとか。ざっくりかつスピード感のあるストーリーはそこからかもしれませんが、実はそれだけではないように思います。というのも今回のストーリー幾つかのシナリオ案の要素をミックスしてるのだとか。そう言えばオブシディアン・フューリーの設定、ギレルモ・デル・トロがまだ監督するといってたころにそのものズバリではないですがそういう話があったように思います。

前作ファンのツボを外した?

特に前作ファンからの眼は厳しいようで、かなりキツイ物言いの方もいらっしゃいます。前作ではイェーガーはブレイン・ハンド・シェイクという神経接続システムによって人間がダイレクトに操縦するという設定になっていました。つまりパイロットは2名。相性が重要視されるので、パイロットは兄弟、肉親、または夫婦や恋人同士であることが望ましいとされていました。いわゆるイェーガーの操縦の目玉というべき設定。

前作ではこの設定は主人公が兄弟パイロットであった事、その後ペントコスト司令官の養女である森マコと組むことになる部分も最初は恋人同士ではないものの、それぞれ搭乗する理由を抱え死線をくぐり抜けたことにより絆が深まる描写があり効果的に使われていました。

今回10年の歳月で(それは怪獣を通じて異星人、今回はプリカーサーという名称が与えられています)とブレイン・ハンド・シェイクしたニュートとゴッドリープのおかげでその部分が進んだのでしょう。必ずしもそういう仲でなくてもまたは血縁関係でなくとも、相性が合えば(いわゆるシンクロ率みたいなもの?)OKになっているようです。それが気に入らないというのは分かります。あの関係性があるから互いに深く入り込むということがどういう事かという事を思い至るわけですから。

第2にデナイトもデル・トロのような特撮オタク、ギークなんですがデル・トロとはまったく違う部分を見ている人というところ。デル・トロは怪獣に一種の畏敬の念を抱くような神秘的なものとして描写しました。最後に彼らはエイリアン(プリカーサー)の生物兵器としても、子どもを産み落とすこともできる。ただの兵器ではない生物として扱っていたのですが、今回のアップライジングではそういう部分はそぎ落とされ完全に兵器としての側面、またはプリカーサーのエージェントっぽさが強調されていたように思います。デナイトはマジンガーやそっちの作品が好きだというようなことを言っていたように思いますが、ようするにドクター・ヘルの機械獣ってわけですよね。

tonbori堂はブレイン・ハンド・シェイクがそういう関係性がなくとも波長が合えばOKというのは10年という年月とプリカーサーにアクセスしたニュートとゴッドリープのおかげでいろいろテクノロジーが捗ったんじゃないと思っていたんですが。それよりも小型のイェーガー、スクラッパーが小さいからというだけで一人操縦OKなのがびっくりしました。(ジェイクも驚いていましたけどね、ただ負荷は大きそうです。)

もっとも小さいイェーガーなどサポートでしか使用できないのでまともに開発が進まなかったんでしょうが、よくよく考えるとマンパワーむちゃくちゃ上げる方法でもあるんでパワードスーツみたくうじゃうじゃいてもおかしくはないですよね。第3弾がもしかしてあるとするリトル・イェーガーの兵団が母艦から宇宙空間に放出されるような別の映画になるかもしれないです。

ロボットvs怪獣という部分ならそこでOKなんですけども、ブレイン・ハンド・シェイクやデル・トロ映画の物語のトーン、重厚感にあふれた油まみれのねっとり感、今回も油まみれではあるんだけどちょっとサラサラっぽいと言えば分かってもらえるでしょうか。それをいろいろなものを重ねてみていると、全然観たかったものじゃないってなる人も多かったのかなと思っています。

ジェイク・ペントコスト

偉大な父親の背中を追って結局失敗し、傷心のまま父親は英雄に祭り上げられという、彼をじっくり描くだけでも凄い話になりそうなんですが、そこはあっさり。まあここらへんは前作も、割とあっさりなんでそこは引き継いでいると思います。

ただ語らずとも語らせる体ではなかったところがまた旧作ファンからは攻撃の的になっている気がしないでもないですが、そこはそれボイエガもちゃんとやってるし、菊池凛子がマコとして出てきてああいう形で退場するのもある意味織り込み済みな気はします。

越えられない父への想いと、ダメな自分を見捨てずに手を差し伸べてくれた姉のため、ダメ人間(ルーザー)だったジェイクが、困難な状況に仲間たちと共にやがて真のヒーローになるという部分はストーリーの定石です。そこはちゃんとしていると思いました。

ニュート&ゴッドリープ

前作で異次元知性体プリカーサーの意図を怪獣の脳にブレイン・ハンド・シェイクをしてアクセスし彼らの意図を読み取ったPPDCの科学者コンビ。今回はゴッドリープはPPDCに残留していますがニュートは新興兵器メーカー、シャオ産業に移籍していました。

そしてあろうことかあの怪獣の脳をいつの間にか持ち出して未だに繋がっていたのです。前作では危うい橋を渡っていたニュートは10年の間にプリカーサーに人格を乗っ取られていたわけです。こういうストーリーってありがちではありますけれど、前作の名コンビがこんなことでという、旧キャラを大事にしていない問題ってのは確かにありました。

tonbori堂も、彼の部屋でアリスと呼ぶところで「いやな予感がする」とハン・ソロのように思ったら…チーンって感じでしたよ。でもこういうのもまた定石なんですよね。ただ惜しむらくは最後正気に戻るかなと思ったんですが…さらに続編に色気を見せたのかなと。

マコ

彼女もジェイクのところで書きましたが、前半で退場するキャラでした。主人公はジェイクなのです、それを強調するためという感じもありましたけどあの司令官と役割逆転させても良かったような。あとネイトもヤバいんじゃないかと思いましたが生き残りましたね。でも彼女がああいう形で退場したのは悲しいけれど、それはジェイクを立てるためという事で一応は納得できます。(追記:デナイト監督によるとこれでマコの物語は終わったわけではないとのこと。ソースはTwitterより)
【ネタバレあり】デナイト監督のパシリム裏話|上から4つめのツイートです。【ネタバレ注意!】

ローリー&テンドー&ハーク

そういえばこの3人出てないんですが、いちおうローリーは触れられるけどどうなっているのか。イェーガー廃棄所の件ではジェイクが香港のチャウを騙したみたいな話が出ましたが、それってハンニバル・チャウの事ですよね。セリフだけでも触れられて良かったなって感じですが、テンドーとかPPDCの管制官としてまだいると思ってたし、ハークは別のシャッタードームの司令官しててもおかしくないですかねというのは、観終わってしばらくしてから思いました。ここは残念ポイントですね。

アマーニ

彼女はもう一人のマコなんですよね。ジェイクはマコが亡くなった後でブレイン・ハンド・シェイクで彼女につながり彼女の事を知るわけです。前作からのこの設定はグダグダ言うよりつながってるんだから全部分かるっていう非常に便利システムで、デナイト監督、かなりザクザクテンポよく進めてるんですが、それは彼らは互いに分かり合ってるんだよという。だからくどくど説明はせず進めているのかなって思いました。

だからジェイクは彼女の事を気にかけるわけです。追い出されそうになったときも自分の過去の話をしたり、(当然見破られてしまうけれど)そこらへんはなぞってきてるなって感じがあります。

シャオ博士

今回のニューキャラクターで無人イェーガーを推進している兵器産業の社長で科学者、アイアンマンかよっていう設定の人です。演じるはレジェンダリーモンスターバース他御用達な感のあるジン・ティエン(景甜)です。

レジェンダリーも中国の大連万達グループに買収されたことと前作が中国で大ヒットを受けたことによるものと見る向きの方も多いでしょうし、事実そうかもしれませんが悪くはなかったと思います。いやむしろいいミスディレクションを誘っていたし良い立ち回りでしたよね。ただそのためニュートが正気に戻る線が無くなったのかなとは思いましたが。

それでも怪獣、特撮、ロボット愛に溢れている。

というのはトランスフォーマーではトランスフォーマーを出しにマイケル・ベイがスペクタクル戦争映画を作りたいだけっていうのがあるんですが(だと思いませんか?)『アップライジング』ではしっかりとロボットの見せ場がある。まあ残りのイェーガーたちは割とかませ犬っぽさもあるけども、それを言ったら前作だってそうでしたよね。

謎のイェーガー、そして乗っ取られる無人機。乗っ取られる無人機はちょっとエヴァの量産型めいているし、最終決戦では4機が揃い踏みというのは前作では観られなかった光景。まさに待ち望んでいたともいえるシーン。しかも昼間の戦いってのが痺れるじゃないですか。

画像はAmazonより|ROBOT魂 パシフィック・リム [SIDE JAEGER] オブシディアン・フューリー|バンダイ
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そしてその4機が束になっても敵わない超巨大怪獣に変貌するとか、まるで変化する怪獣、シンゴジラ?いやいやここはビオランテじゃないだろうかと。ゴジラの細胞と植物の細胞を併せ持った怪獣は、その体躯を変化させゴジラを苦しめた強敵です。

そういうところもちゃんと東宝特撮のラインを引き継いでいるし、怪獣が富士山頂に向かうシーンは、ああこれは『キングコング対ゴジラ』だ!って思ったら、パンフレットでも映画評論家の尾崎一男さんがちゃんと指摘なさっておられる。やっぱりこれは年代的なものだと思うけど60年代、70年代特撮の産湯に浸かっていると、そこはすぐに分かります。

動画はYouTubeより|『キングコング対ゴジラ』予告編|Godzilla Channel ゴジラ(東宝特撮)チャンネル

まんまあのイメージ(積雪はあるけど)の富士山すぎてちょっと笑いがこみあげたくらい。そもそも怪獣が向かうのは(今回付加された設定で10年前からも)日本の富士山だったっていうのが熱いですよね。
映画『パシフィック・リム』第2弾で、東京は壊滅する──デナイト監督、「KAIJU愛」を大いに語る|WIRED.jp

ただロケットを持って飛ぶってのはマジンガーだとは思い出せなかったどっちかというと鋼鉄ジークとかマグネロボ ガ・キーンかな?って思ったんだけどスクランダーが正式装備になるまえにロケットを両手にもって飛行するの確かにありました。Twitterで見かけて思い出しました。
Twitterより|清水 節さんのツイート: "パシリム2に思うところはいろいろあるが、1973年に観た『マジンガーZ』の第32話「恐怖の三つ首機械獣」はよく覚えていたので、思わずのけぞった。… "


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もっともジークも、ガ・キーンもけっこうイェーガーのデザインに影響は与えてると思うんですが(笑)あと何故かUCガンダムが出てくるんですよね(彫像)あれはガンダムラブなのか、次は宇宙だという意味なんでしょうか(笑)そしてフライングボディアタックというか、全質量を乗せて大気圏からのアタック。これは燃えますよ(文字通り摩擦熱で燃えている)ああいうけれんのあるクライマックスは正しく怪獣VSイェーガーって感じだと思いました。

1日たってちょっと冷静になるといろいろ粗もあるし、納得できないところも確かにあったけど、怪獣とイェーガーのガチンコ勝負という点においてはしっかり前作を凌駕してきたと思います。なんせ大気圏からのマッハロケットパンチですよ。こんなん拝めただけで眼福ですよって話です(笑)そういう意味では『パシフィック・リム:アップライジング』良い怪獣vsイェーガー映画でした。かなり気に入っています。


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