ワインスタイン・スキャンダルの影響：補足｜tonbori堂四方山話

性犯罪は重罪である。

In the criminal justice system, sexually based offenses are considered especially heinous. In New York City, the dedicated detectives who investigate these vicious felonies are members of an elite squad known as the Special Victims Unit. These are their stories.

（訳）「刑事司法制度では　性犯罪を特に重罪とみなす　ニューヨークには　この悪しき犯罪と闘うエリート集団がいる　性犯罪特捜班（S.V.U）の刑事たちだ　これは彼らの物語である」

　アメリカではレイプは重大犯罪です。もっとも非親告罪（日本も法改正でそうなったようですが）といえど裁判での証言や、合意の上かそうではないかという部分で争い、決して平たんな道ではないということはこのドラマを観ている方ならお分かりかもしれません。そう言えば本家の『LAW＆ORDER』やこちらの『L＆O：性犯罪特捜班』でも力をもった権力者がもみ消そうとしたりする事案が度々取り上げられています。町山さんもいっていましたがビル・コスビーが50人もの女性に対して起こしたレイプ事件も結審せずに審理無効になったとおっしゃっているぐらい厳しいものです。（実際にはすべての被害者ではなく証拠を固めた事件で行われているようです）

米俳優ビル・コスビーの性的暴行裁判、11月に再審決定 

　また、こういった事案が大した事のないように扱われる事も、例えば「枕営業」というやつです。これは日本でもドラマのネタとしてもありますよね。でも本人の意に沿わないのは営業ではないし、強制になり管理売春として扱われるべきものでそれはやはり犯罪です。

また日本のワイドショーではこういう取り上げられ方も。

ソース｜ワインスタインの性的暴行を「女優が誘う枕営業もあるのに」と軽んじる『バイキング』の異常と、バラエティ番組のエンタメ的売春消費について - wezzy｜ウェジー

　ご本人たちは深く考えていない発言でしょうけど、あっちが悪いんだっていう発言は無神経すぎますしどうかなと思います。最近でも勇気をもってデートレイプを告発した女性ジャーナリストがいらっしゃいましたが、事件の被疑者が現政権に近いジャーナリストだったため、政治問題として結び付けられました。過度の反応する昨今のネットではすべてを結び付けて断罪したがる人が多いようですが（それは告発する側に付く者、そうでなく擁護する者どちら側にもです。）『相棒』の右京さん風に言えば、罪を犯した者は裁かれるべきなのです。その単純な理屈が分かっていない人がどちら側にも多くて、上のワイドショーでの発言につながっているのではないかなと思います。

最後に

　タランティーノやデイモン。アフレックが今後どうなるかは分かりません。謝罪し嵐を過ぎるのを待つだけかもしれないし、このまま没落していくかも。それに事件の被害者にローズ・マッゴーワンがいるとすれば、ロバート・ロドリゲスにも話が行くかもしれません。彼はキャメロンから引き継いだ『銃夢』の実写化プロジェクトに取り組んでいますがそちらにも影響が出てくるかもしれません。いやまだ分かりませんが。

追記：20171110：ロドリゲスはこの件をマッゴーワンから話を聞いて『グラインドハウス』の企画を考えたそうです。タランティーノがマッゴーワンをレイプしようとするプロデューサー役なのも全て分かった上でのいわばリベンジだったそうです。示談にしていたので彼女に火の粉がかからないように周到に計画したとか。

ソース｜Robert Rodriguez Says Casting Rose McGowan in ‘Grindhouse’ Was an F-U to Harvey Weinstein (EXCLUSIVE) – Variety

　それにどうしたって彼らの関わった作品を観る時にそれを思い出してしまうのはもう避けられないかもしれない。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というやつです。「罪を憎んで人を憎まず」とは言いますが、その人格が起こしたような犯罪を人が見て見ぬふりをしたわけで、これは責められてもというのもあります。事実タランティーノは言い訳をしていないそうですが、だからといってそれでいいとも言えません。

　グゥイネス・パルトロウがワインスタインに襲われた時、相談された当時の恋人ブラッド・ピットは男を上げた事例もあるように（彼だってアンジェリーナ・ジョリーとの結婚には付き合っている恋人のジェニファー・アニストンを捨てたりとかそのジョリーとの離婚時には暴力とかいう話も出てちょっとゴシップ誌をにぎわせました）その時の行動がオールインするような状況ではどうしてもワインスタインに与するような発言をすると彼の側か！となるのも否めないのです。またそういうネットやメディアがワインスタインを裁くのはどうかと思うと発言したのが『プラトーン』のオリバー・ストーン監督です。

ソース｜米大物プロデューサーのセクハラ疑惑に、ストーン監督「自警団的に裁くべきではない」

　その後ストーンにもセクハラ疑惑が浮上。ハリウッド全体で常態化していたのではないかという疑惑さえも。

ソース｜今度はオリバー・ストーン監督にセクハラ疑惑が浮上 - ハリウッド : 日刊スポーツ 

　事件はアメリカの司法当局も動き出している今、彼らの手に委ねるしかない状態ですが（かといっても有罪に出来るかどうかは分からない状況です。）ただワインスタインとハリウッドはこの一件が明るみに出たことで絶縁状をつきつけた状態にはなりました。ですがワインスタインの付けた傷はまだまだハリウッドを苦しめそうです。