最強の会計士|『ザ・コンサルタント』(2017|米)|tonbori堂映画語り【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

最強の会計士|『ザ・コンサルタント』(2017|米)|tonbori堂映画語り【ネタバレ注意】

2017年10月27日金曜日

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 ベン・アフレック主演のアクション映画なのですが、これまでのアクション映画の系譜からはちょっと変わった部分に分類されると思います。舐めた相手が実は凄腕っていう部分もあるのですが、どちらかというと『チョコレート・ファイター』に近い作品です。これも公開時に観たかったんですけどあいにくNETFLIXで鑑賞する事になってしまったのですが…いやこれなかなか面白いですよと。

YouTube|ワーナー公式チャンネル|『ザ・コンサルタント』予告編|

 tonbori堂が思い出したのはタイの映画『チョコレート・ファイター』です。この作品では発達障害の少女がサヴァン症候群で見たものを完全にコピーできる能力を持ち、TVなどで格闘技を習得し、敵と戦うというお話でした。こちらも面白い映画なのですが今回は『ザ・コンサルタント』のお話なのでまたあらためて。主人公のウルフは高機能自閉症であり、物事を完遂することに強い執着を持ち天才的な頭脳をもっていました。しかし軍人である父親の教育方針により彼は、格闘技や、やられたらやり返すという教育を受けて育ったために人には言えない秘密を持つ事になります。

クリスチャン・ウルフ。職業/会計士(コンサルタント)/STORY

 クリスチャン・ウルフは片田舎で小さな会計事務所を開いている会計士。質素な生活をし、趣味は射撃。しかし彼の本当の仕事は裏社会の資金洗浄。世界各国に顧客がいる裏社会の会計士だった。ある日、ロボット技術で財を成したリビング・ロボティクスより財務調査の依頼が。彼が以前に関わった表の仕事の依頼人からの推薦だった。経理の人間により財務調査に不正の疑いがあるとわかったため会計監査をして欲しいという依頼だった。15年分の経理資料は複雑を極め難しいものと思われたが、高機能自閉症であるウルフにとっては、彼の能力で簡単ではないものの難しくもない普通の仕事だった。しかしこの一件には裏があり、CFO(最高財務責任者)が謎の自殺を遂げ、ウルフも襲撃を受けた。


 襲撃者を一掃したウルフは不正を発見した社員デイナを助け出し真相究明に乗り出す。しかし何故彼はこのようなスキルを身に着けたのか?彼が危機の時、助けてくれるハッカーの女性、彼の協力者は誰なのか?謎が謎を呼び、財務省の捜査官もウルフの影を追い始めた。彼の正体とは?クリスチャン・ウルフとは何者なのか?予測不能なクライマックスが待ち受ける。

クリスチャン・ウルフとは何者か?

 その主人公のウルフ(偽名ですが)数字に強く、理路整然と物事を進めたいタイプ。片田舎の会計士として細々と営んでいましたが実は裏社会の会計士。しかも荒事に巻き込まれる事も多いので身に付けたスキルで偽名や武器を揃えて備えているという用心深さ。何故彼がそういう技を身に付けていったのか?、何故裏社会の会計士(マネーロンダリング)をしているのか。そして彼には重大な秘密があります。これネタバレとはタイトルに書いちゃっていますけど、実際にネタバレすると妙味が失われてしまうかもしれません。この後に書くことは…映画を観てからにして頂くことをおすすめします。それでも良い方はお読みください。



よろしいですか?



ほんとうによろしいですか?



いいですね?書きますよ?



※ここからネタバレです。

 まず出だしが、ある少年と両親、そしてどこかの小屋?別荘のようなところで両親が一人の男から説明を受けているところから始まります。少年は高機能自閉症で、非常に知能が発達していますが、興味とこだわりがあることを完遂するまでやめられません。彼とコミュニケーションが普通にとれるのは弟だけ。母親は彼の行く末を非常に心配しています。男は医師のようで、娘のためにこの施設を開設し他人とコミュニケーションがうまくとれない自閉症スペクトラム障害やそういった人を助ける仕事をしています。医師は彼を預ける事を提案しますが父親がそれを拒否します。彼は少年が自分で生きていく術を教え込むと言い放ちます。彼の父親は軍人で心理戦の専門家でした。少年に格闘技を教え、やられたらやり返す。他人は異質なものを恐れる、それを跳ね返す舐められない強い人間として育てました。


 つまり、なにか困難が降りかかっても、それをはねのける「力」を付けさせたのです。それが彼の常人ならざる格闘と戦闘スキルの元になっています。しかしそれは彼のもとから母親を去らせる事になってしまいました。ある事で父親を失った彼は刑務所に入れられてしまう事になってしまいましたが、高度警備を誇る軍刑務所にある目的をもって送り込まれました。暗黒街の会計士に接触し暗黒街の金の流れと情報を収集を命じられていました。作戦は無事に終了していましたが、会計士は何故か釈放され雇い主だったボスにより拷問されて殺されてしまいました。それを聞いたウルフは脱走。手を下したマフィアを皆殺しにしました。


 彼は親というワードに反応し自らのルールに則って動いています。ただだからといって機械のようなものではなく理由があります。誰かが犯罪を起こすと財務省の金融犯罪捜査局局長であるキングの元に謎の電話が入り、その情報を元に彼が逮捕するのですが、その情報は前触れもなく電話で通報されます。そしてウルフのサポートをする謎の女性。ウルフは彼女とは電話のみで会う事は一切ありませんがあらゆるコンピューターにハッキングし記録を改ざんする事も出来るウィザード級ハッカーであることが、やりとりで分かります。それらは実は全てつながっており、映画を最初から最後まで観ると、そこにつながるのかとはっきりするのです。その流れをある種の狂言回しとして説明する役割がキング局長とキングが後継者として目をかけている(しかし彼女も過去があるところが捻りが効いています)メディナ分析官となるのです。ウルフの足跡を追いながら彼のベールを剥がしていくのです。

ベン・アフレック

 クリスチャン・ウルフを演じたのはベン・アフレック。表情が乏しいだの割とボロクソに言われる彼ですがガタイもいいし、イケメン。そして実は才人であるというのは有名なところです。アカデミー賞にノミネートされた『アルゴ』や『ザ・タウン』そもそも盟友であるマット・デイモンと組んで脚本を書いた作品でブレイクの端緒を掴んだという才能の持ち主ですが、その表情の乏しさで何かと揶揄されることも。ですがそれを逆手にとった『ゴーンガール』では逆にあの何も考えてないぼやっとした夫感が良く出ていると評判でした。(酷い話ではありますが)今回のウルフも表情が乏しく、物事に熱中したらそれを終わらせる強い執着を持つ、そういった自閉症の人間をまさにはまり役という感じで演じていました。

キャスト&スタッフ&トリビア

 主人公ウルフのベン・アフレックの脇を固めるのは、不正を見つけた経理課のデイナにアナ・ケンドリック。『ピッチ・パーフェクト』や『マイ・レージ マイ・ライフ』で人気の女優さんです。いわゆるタイプキャスト(主人公の枷)としているんですが、不思議な魅力のある人で声音が豊かなんですよね。鉄面皮のベンに対していいアクセントになっていました。


 財務省の金融犯罪捜査局(実際には金融犯罪執行ネットワーク【Financial Crimes Enforcement Network】というそうです)作中ではそういう名称では一切出てこず財務省としか出てきません。ちなみにシークレット・サービスも現在は国土安全保障省隷下になっていますが元々は財務省の管轄で、偽札などの金融犯罪は財務省管轄です。その局長には名優J・K・シモンズ。如何にも老獪な彼がというところがまたいいのです。そういえば彼はジャスティス・リーグでゴードン市警本部長役としてバットマン=ベン・アフレックと共演しています。メディナ分析官にはシンシア・アダイ・ロビンソン。どっかで観たな?なんの映画だっけ?と思ってましたが…アメドラの『ARROW』でARGUSという秘密諜報組織の 指揮官、アマンダ・ウォラー役でした。このウォラー、スーサイド・スクワッドの組織した人で、映画では別の人がやっていましたね。


 民間軍事会社のトラブルシューター(始末屋)ブラクストンには、ジョン・バーンサル。『ボーダーライン』『ベイビードライバー』にも出演していた彼ですが、ネットフリックスのマーベルシリーズ『デアデビル』2ndシーズンではパニッシャー役で出演。第4のシリーズとして『パニッシャー』のタイトルロールを務める事が決定しています。


 そしてベン・アフレックはアメコミファンとしても有名ですが『ジャスティス・リーグ』のバットマンの前にはなんと『デアデビル』映画版でデアデビルを演じていたのです。これも何かの因縁かもしれませんね(笑)ちなみにブラクストンも謎がある役なので最後までお楽しみに。でもアメコミ映画出演者がやたらと多いのでそういう視点でも楽しめますね(笑)事件の発端になるリビング・ロボティクスの社長には怪優ジョン・リスゴー。いや基本tonbori堂はこの人出てきたら犯人やん!って言ってしまう、2時間ドラマで、キャストバレという人です(ヲイ)もっともいい人役もしているんですが悪い役が強烈で覚えてしまうんですね。『リコシェ』『レイジングケイン』『クリフハンガー』、ですがtonbori堂は実は未見なんですけど『ガープの世界』ではアカデミー賞のノミネートされたほどの人。上手い人ほど悪人をしたがるといいますけれど(笑)、そういえばJ・K・シモンズもそういうところありますよね(笑)


 監督はジョエル・エドガートンとトム・ハーディの総合格闘技を扱った『ウォーリアー』のギャヴィン・オコナー。残念ながらtonbori堂はこの作品を未鑑賞なんですが、この作品などで注目されている人だそうです。他にナタリー・ポートマン主演の西部劇『ジェーン』があるそうですが、こちらも未鑑賞です。どちらかをちょっと観てみたいですね。

最後に

 今回ネットフリックスのラインナップに加わったのでやっと観れたのですが、時系列がシャッフルしたり、過去の出来事カットがすっと挿入されたり分かりにくいとおっしゃる人がいるかもしれません。ですが『パズル』のように組み上がった時に腑に落ちるタイプの映画です。アクション映画ではありますが、人とのつながりの話でもあるし家族の話でもある、なかなか滋味深い映画でした。じっくり鑑賞される事をおすすめします。

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