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暴龍アンキロサウルス出現!|『ゴジラの逆襲』(1955公開|東宝)|tonbori堂映画語り【ネタバレ注意!】

2017年8月22日火曜日

GODZILLA movie

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 『ゴジラ』と『キングコング対ゴジラ』について書いたので、その間にあったこの作品にも触れておきたいと思います。


心斎橋PARCOの地下入り口近くに鎮座しているゴジラ像、『ゴジラの逆襲』時の造形になっています。
心斎橋PARCOの地下入り口近くに鎮座しているゴジラ像、『ゴジラの逆襲』時の造形になっています。/tonbori堂撮影

 この作品は『ゴジラ』のヒットをうけて製作された作品で以後、東宝の怪獣路線、空想科学路線の流れを作った初期作品の1本です。初代ゴジラと同じく戦争後に製作されたことが色濃く残り、元軍人が今は自衛隊のパイロットなど時代を反映した設定もありますが、一方とりとめのない話運びなどであまり印象に残っていない印象もあります。

『ゴジラの逆襲』|YouTube|youtubeムービー|(c)東宝

 ただ初めてゴジラを対決した怪獣アンギラスはその後、ゴジラの相方として出演し共闘したこともある人気怪獣となりました。(STORYは結末まで記しているので本論読みたい方は「ゴジラの逆襲!」から目次より入ってください)

怪獣大決闘!/STORY

 太古の眠りを覚まされたのはあのゴジラだけでは無かった!新たなるゴジラと暴龍アンギラスが出現!再び日本を襲う!

ゴジラ出現

 東京湾に潜んだゴジラが芹沢博士の犠牲とオキシジェンデストロイヤーにより海の藻屑として消えた日本に、山根博士が危惧した第2のゴジラが日本近海に再び姿を現しました。海洋漁業に所属する魚群探知機で魚群を追う飛行機のパイロット、月岡(小泉博)は同僚の小林(千秋実)が太平洋の岩戸島に不時着したと連絡を受け急きょ救助に向かいます。不時着していた小林を発見した時、凄まじい轟音と共に2匹の怪獣が争っているのを目撃します。一匹は東京を焼け野原に戻したゴジラ。もう一匹は見慣れない4つ足で背中一面にするどい棘をはやした凶暴な怪獣でした。2匹は激しく戦った後に互いに海に没して姿を消しました。その隙に島を脱出した2人は会社に報告。最近の不漁の件も近くの漁場をこの2匹が荒らしたことによるものではないかということで、急きょ大阪警視庁に対策本部が設置、対策会議が開かれます。


 棘のある怪獣は古生代の恐竜、アンキロサウルスが生き延びたものの、ゴジラ同様に水爆実験の影響で巨大化、凶暴化したものではないかとの見解後、オキシジェンデストロイヤーによる東京に出現したゴジラの最後を見た山根博士(志村喬)はオキシジェンデストロイヤーがない今、ゴジラに対する有効な手段はないとして灯火管制でゴジラを内陸部に呼び込まない事が肝心と説明します。ただし列席した同じ古生物専攻の田所博士(清水将夫)は早晩紀伊水道を伝って近畿圏に上陸の可能性を示唆。対策本部は監視体制を強化する事となりました。

商都燃ゆ

 航空自衛隊によるジェット戦闘機の探査により太平洋上から紀伊水道で察知されたゴジラ。海洋漁業の漁場のある海域のため大阪の本社の皆は気をもみますがゴジラが転進したことに一応に安堵し月岡は、無線係で社長の令嬢である秀美(若山セツ子)とつかのまの休息を楽しみます。そこに急きょ方向を変えたゴジラが出現。阪神地区はパニックとなります。大阪警視庁は水上署に戦力を集結。防衛隊の特科部隊で防衛線を構築し、灯火管制でゴジラをやり過ごす作戦にでました。ゴジラを外海で誘導するべく戦闘機から信号弾を投下、ゆっくりゴジラは外海へ向かうはずでしたが、ゴジラ襲来の中、安全な地域へ護送中の囚人が護送車で暴れ脱走、近くに停車していたタンクローリーを奪いで逃亡を図ります。警察車両の追跡を受けながら逃走中にハンドル操作をあやまりコンビナートに激突、火災が発生。


 それに引き寄せられるかのようにゴジラは大阪に上陸。水上署の火力では到底ゴジラを上陸を阻止することは出来ず、湾岸から此花区から大阪へ上陸、海洋漁業の本社も倉庫も灰燼と化し、その炎におびき寄せられアンギラスまでもが大阪に、中之島周辺も蹂躙され地下鉄の駅舎を踏み抜き大川の水が浸入の大惨事となりました。その後アンギラスとゴジラは大坂城で激突。2匹の激突で大坂城は全壊、対決はゴジラの勝利に終わりアンギラスは倒され、ゆっくりとゴジラは海へと戻っていきました。

北海の激闘

 ゴジラが姿を消した後、灰燼と化した工場と焼けた本社ビルから、海洋漁業は再建のため北海道の支社に本社機能の一部を移管。本社の復興が成るまで北海道で業務を行う事になりました。そして一足先に北海道にいた小林らと旧交を温め、月岡と秀美の到着を祝い酒宴が催される事に。その料亭では発足間もない航空自衛隊の隊員たちの宴席も催されており旧海軍航空隊の戦友で現在航空自衛隊に所属している田島(土屋嘉男)と寺沢隊長(恩田清二郎)に再会します。そこにゴジラが再度出現、海洋漁業の漁船が沈められたとの報告が。


 月岡は航空自衛隊と協力してゴジラを探索に出動。千島列島方面にゴジラの姿を発見。燃料補給のため小林機と交代し、ゴジラ撃退の作戦を決行。神子島にて上陸部隊による爆弾と航空部隊によるゴジラを爆撃の2面作戦を実行することになりました。ゴジラの監視をつづけていた小林機はゴジラの動きが早いためゴジラの気を引くため低空を飛行、攻撃隊到着までの時間稼ぎをしていましたがゴジラの放射火炎に機体をやられ雪山に激突してしまいます。


 しかしその小林の犠牲が月岡にゴジラ撃退のヒントをくれます。ゴジラは通常攻撃では倒しきれないが雪山を爆撃し雪崩によってゴジラを永久に氷河に閉じ込める事なら出来ると。田島たちの戦闘機隊と協力して雪原を猛爆撃しゴジラを氷河の谷へ閉じ込める事に成功したのでした。

ゴジラの逆襲!

 今回のゴジラは逆襲といっても前回のゴジラが蘇るわけではなく、新しい個体、山根博士の危惧が現実となったものとして描かれています。もっともこの後のゴジラは、ゴジラ対デストロイアまで同一の個体として考えられているというとも聞きますので、昭和から84ゴジラ以降のゴジラvsシリーズのゴジラは同一と見る向きもあります。


 そんなゴジラですが前回はオキシジェンデストロイヤーという禁じ手で倒すことが出来ましたが、今回は通常兵器での力押しでは倒せないため氷河に閉じ込めるという手段が取られています。この手法は『ゴジラ・ファイナルウォーズ』でもOPのアバンで轟天が南極の氷原にゴジラを閉じ込めるというシーンにオマージュされていましたね。倒せない怪獣、魔物を永久氷原などに封じ込めるというのは多くの作品で見られますが、人の手で倒せないものは自然の力で閉じ込めようという事なのかもしれません。

アンギラス

 今回初めて登場したアンギラスは、その後の対怪獣路線の先駆けでありますが冒頭から激しい死闘をゴジラと繰り広げやがては商都大阪で激突します。その正体は古生代の恐竜、アンキロサウルスの生き残りという設定ですが、実際のアンキロサウルスはここまで巨大でもなくまた姿もこんな形ではないそうです。あくまでもこの怪獣はアンギラスという怪獣ということです。


 アンギラスはその後ゴジラと共闘する作品もありましたが、平成になっては殆ど出番も無く金子修介監督の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』にも実は登場がバランとともに護国聖獣として予定されていたものの偉い人からモスラとキングギドラという変更をがあったとか。

ソース|Wikipedia/ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃

 そんなアンギラスですが、未だにゴジラの登場怪獣の中ではギドラ、モスラ、ラドンとともに名前の挙がる人気怪獣ではないでしょうか…もしかして私だけ?

商都大阪が舞台に

 主人公の月岡が所属する海洋漁業の本社が大阪にあることから、前回は首都東京が火の海となりましたが今回は商都である大阪が火の海となりました。昭和30年当時の大阪の実景や大坂城のミニチュア、地下鉄淀屋橋駅の構内のミニチュアなど珍しいシーンがたくさんあります。もっとも大坂城のアンギラスとの激闘シーンはちょっと不思議な感じで、後で聞いた話によると撮影スピードをスローモーション撮影にするとところが何故か早回しになったそうです。ここはちょっとコミカル?な動きで可笑しなシーンとなっています。また大阪市が炎上しているシーンは白黒らしいシーンとなっており戦争当時を思い出す人もいたのではないでしょうか。


 大阪を舞台にしたゴジラ映画は他に『ゴジラvsビオランテ』で大坂城の北東にあるOBPでの激闘があります。こちらは『薬は口から』の名言を残した権藤さんの活躍が有名です。他はシン・ゴジラの後でユニバーサルスタジオジャパンのアトラクションが大阪でゴジラ出現という風の映像アトラクションがつくられていたとか、こちらは残念ながら体験していないのですが次のゴジラ映画は是非大阪を舞台して欲しいものですね。

パイロット

 主人公の月岡(後年、モスラ対ゴジラにもご出演の小泉博さんが演じた)は元日本帝国海軍飛行隊のパイロットで同期の桜が発足間もない航空自衛隊にいるという設定。しかも元上司まで。実は航空自衛隊って旧軍の軍人が割と入り込んでいるんですよね。陸上自衛隊は発足当時の警察予備隊の頃から旧軍の関係者を排除する方向で進んでいましたが、やはり戦車等の正面装備の拡充につれ経験者が求められる状況になり、旧軍出身者も採用された経緯があります。ましてや飛行機はレシプロからジェットは天と地ほどの差があっても航空機を扱うという点では経験者が必要ということでそうなったのでしょう。

 特に航空自衛隊には海軍航空隊のエースだった源田実大佐が入隊し空自の育ての親とも言われるほどになったことは有名です。

ソース|Wikipedia/航空自衛隊

 実はメカゴジラやスーパーX3のパイロットとして登場した人物はいますが、実際の飛行機のパイロットとして登場した主人公は月岡以外にはいないのではないかと。そういう点も実はtonbori堂が気に入ってる点で、いつかファイターパイロットが主人公のゴジラが作られないかなあと夢想したこともあります。現実的には空を飛ぶモンスター、怪獣がらみでないと難しいと思いますが。例えば対ラドンのような…。

最後に

 実はこの『ゴジラの逆襲』ちゃんと観たのは小さいころにTVで1回?くらい観たきりで、アンギラスもどちらかというと別作品で登場した時に知ったという感じでした。TVのカラー化にともない白黒作品は回数が減ってしまったというのもあるのでしょう。(歳がばれてしまいますね。)それでも後年にビデオやCS時代になってからの特撮映画特集での放送で観直して、多々粗も見えるものの嫌いになれないのは舞台が大阪で有ること。そして飛行機パイロットが主人公であること、そしてアンギラスの造形が優れている点です。当時ゴジラのヒットを受けて喫緊の課題として次回作をつくるということになり、田中プロデューサー以下の士気は高かったなれど、準備時間が短かったというようなことがWikipediaに書いてありました。


 実際に公開年度は1954年の翌年1955年のしかも4月。ゴジラの公開が11月でしたからほぼ3か月ちょっとで撮影から編集までというスケジュール。いやプログラムピクチャー時代はそれぐらいは当然あった話でありますが、特撮映画はしっかりとした下準備や脚本を練る時間が必要になります。それだけにスタッフ間ではもっとやれたという感じがあったとあります。

ソース|Wikipedia/ゴジラの逆襲

 そのためかどうかは知りませんが、この作品をちゃんと論評している文章はあまりお目にかからないし見かけても、大坂城の対決や物語の部分が中途半端な感じでという事であまり評価されていないように思います。それは前作のように放射能の恐怖や、戦う事に対してのエクスキューズがあまり感じられなかったという事もあるのでしょう。ただこの作品、怪獣は海からやってきますし、しかも漁業に影響を与え、なおかつ最終的には北海道、そして千島列島が最終地となるのも当時の世相がギリギリ反映されていると見るのはどうでしょうか。


 また、主人公が元海軍航空隊というのも暗示的です。ただそれらが明確にドラマにつながっていないという部分では如何にも急に仕立てた感じは拭えませんし、そういったところで評価をさげているのだろうなというのも事実でしょう。ですが対決シリーズの端緒でもあり、怪獣同士が戦うという新機軸を打ち立てたなど功績もある映画ではないかと思います。何度も観る作品という訳にはいかないでしょうがゴジラの歴史を振り返るときなくてはならない作品。それがこの『ゴジラの逆襲』だと思います。

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