どちらが最強だ?|『キングコング対ゴジラ』(1962公開|東宝)|tonbori堂映画語り【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

どちらが最強だ?|『キングコング対ゴジラ』(1962公開|東宝)|tonbori堂映画語り【ネタバレ注意!】

2017年8月21日月曜日

GODZILLA movie

X f B! P L

 日本が誇るキング・オブ・モンスター、ゴジラvsアメリカの産んだキング・オブ・モンスター、キングコング。いったいどちらが強いんでしょうか。そんな時こんなツイートが流れてきました。



Twitter/ComicBook NOW! のツイート

 レジェンダリーピクチャーズで展開している『GODZILLA』をはじめとするモンスターバースのシリーズとして企画されている『GODZILLAvsKong』。東宝でゴジラシリーズとして製作された『キングコング対ゴジラ』では決着はつきませんでしたが、今回は決着をつけるという話を伝えるあちらのコミックムービーニュースサイトのツイートです。東宝の時に決着がつかなったのはアメリカ側に遠慮してという事だそうですが、今回はきっちりと決着を付けるという話だそうです。

 そこで東宝で製作された『キングコング対ゴジラ』ってどういう映画だったのかをちょっと紐解いてみたいと思います。何分記憶も薄いのですが、『シンゴジラ』公開の前段階で日本映画専門チャンネルかはたまた配信サービスで観たのです。ちなみに小さい頃TVの子供映画劇場(昔は休みになるとよくあったのです)で何度も観ているんですが細かいところは記憶違いもあるやもしれませんが平にご容赦を。最初に観たのは映画館(東宝チャンピオン祭りという子供向け映画企画)でしたがそれは短縮されたバージョンだったそうでオリジナルにちかい4K版はTVで初めて観ました。ちなみにタイトルに書いているように【ネタバレ】です。内容を知りたくない方はこの先はご遠慮ください。

『キングコング対ゴジラ』/公開時ポスター
『キングコング対ゴジラ』/Toho Company Ltd. (東宝株式会社, Tōhō Kabushiki-kaisha), © 1962 - scan of movie poster by Toho Company Ltd. (東宝株式会社, Tōhō Kabushiki-kaisha), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=96128594による



2大怪獣最大の激突!/ストーリー

 パシフィック製薬の一社提供の『世界の驚異』は低視聴率をかこっており、ライバル会社の番組にも水をあけられている始末。そこで多胡(たこ)宣伝部長は宣伝部員たちから情報をあつめ南海の孤島に潜んでいるという魔神がいるという話を聞きつけました。そしてスポンサーとして番組プロデューサーの桜井とキャメラマンの古江の2人をその島へいって真偽を確かめて魔神がいるなら日本に連れてくるように命じます。渋々ながらもスポンサーのゆう事には逆らえず島へ向かう桜井。

 同じころ、北極海の水温が上昇。調査に向かった米海軍の原潜が氷山に閉じ込められたゴジラと遭遇。ゴジラは氷山から復活し原潜を沈めて周辺の軍事基地を蹴散らし何処かへ姿を消します。日本ではゴジラ復活の一報で世間は一斉にゴジラの方へ。生物学の権威、繁沢博士がゴジラは帰巣本能により日本に戻ってくる可能性が高いという見解を示すとにわかに世の中が騒がしくなりました。魔神を盛り上げて視聴率アップを狙った多胡部長の機嫌はますます悪くなります。

髑髏島の巨神…ではなくファロ島の魔神を追え!

 そんなこととは露知らず、大型船からボートを乗り継ぎファロ島へ上陸したテレビマン2人は通訳を介して現地の島民と接触。その魔神が棲むという峡谷へ探検に出かけますが、何かがいるということだけでまだ証拠をつかむにはいたっていませんでした。しかし夜に島民の集落を何かが襲います。それは海からあがってきた巨大な蛸でした。その危機に島の奥から魔神、キングコングが現れ蛸を一蹴します。島民はコングを祀る儀式を行い赤い液体を捧げます。それを飲んだコングは儀式の踊りと歌を聞いてその場で眠り込んでしまうのでした。


 その姿を見た桜井はこのままコングを日本へ連れていくことを考え付きます。古江は反対しますが結局桜井に押し切られコングを乗せた木製の大きなイカダを輸送船に曳航することに。その話を聞きつけた多胡部長がヘリから輸送船に乗り移り巷を騒がすゴジラにコングをぶつけることを思いつきます。

2大怪獣、激突す!

 輸送船が日本の領海の手前まで来た時に停船を命じられます。ゴジラが東北に上陸、そのまま南下をしており、この上キングコングまでとはもってのほか。混乱を避けたい政府からの命令でした。この停船におかんむりの多胡部長でしたが、なぜかコングが突然目覚めイカダの上で暴れます。このままでは輸送船も一緒に横転沈没することになるので桜井たちはあらかじめ仕掛けておいた爆弾を爆破してイカダごとコングを海に沈めようとしますが、スポンサー権限で多胡部長がそれを許しません。しかしすったもんだの末揺られた船上で多胡部長が偶然に爆発のレバー押してイカダは木端微塵に爆破されました。


 しかしコングは爆破をものともせず、そのままイカダの拘束から抜け出して日本を目指して海から上陸。北上してゴジラを目指します。この事態に自衛隊も苦慮しましたが南下してきたゴジラに対して巨大な落とし穴をつくり、そこに毒ガスを充満させるという2段構えの作戦を結構。しかしゴジラにはまったく効果なしで首都圏での高圧線での防衛作戦に切り替えます。そこに北上を続けたコングは中禅寺湖で激突しますが腕力では互角なものの、放射能火炎を吐くゴジラが若干有利に戦い、コングはいったん引き下がります。


 障害物が無くなったゴジラは東京に近づきますが高圧線作戦が功を奏し、首都圏からコースがずれゴジラは首都圏から侵攻方向を変えました。しかし思わぬ事態が発生。コングもその高圧線に触れその電流により帯電体質になってしまったのです。コングは東京へ侵入、電車をわしづかみにして中から女性を一人つまみだします。それは桜井の妹、ふみ子でした。コングはふみ子を手握ったまま散々暴れまわり国会議事堂へよじのぼります。このままだと被害も甚大ですが人質がいる以上手出しができません。


 そこで桜井がファロ島で見た魔神をおとなしくさせる赤い液体を思い出し多胡部長がサンプルとしてとっておいた薬を急きょ精製。ふみ子のボーイフレンドで技術者の藤田が開発していた特殊繊維でコングを拘束する作戦を防衛隊に献策する事に。作戦は直ちに実行され、ふみ子は無事救出。自衛隊は富士山麓に再度出現したゴジラに、コングをぶつける事にします。このまま2匹が暴れると被害がひどくなる一方のため両者の共倒れを狙い富士山麓にゴジラを急きょ空輸。気球でコングを浮上させ、ヘリで曳航することに。ここに富士山ろくを舞台に2大怪獣の決戦の火ぶたが切られることになったのです。

コングvsゴジラその結末は?

 べたにいっちゃうと両雄並び立たずではありますが、どっちかが勝つとなるとそこはってなるという配慮が働いたのか、富士の裾野から徐々に東へ戦場が移り熱海城を破壊して海中に没します。その後コングは海中から浮上してファロ島へ向かって泳ぐシーンがありますがゴジラは沈んだまま。一見、ゴジラの負けのように見えますが、ゴジラは水中でも問題ない怪獣です。なので再び深海にもどっていったとも。つまり勝者なしのような形となったわけですが、それには当時いろいろ議論があったようです。ものの本とか又聞きならば、ハリウッドに遠慮したとか、権利の関係でそうなってたとか。実際のところは手元にしっかりとしたソースが無いのでわかりませんが、コングの強さは本物でしょう。


 最近観なおした『キングコング対ゴジラ』4K版の感じではボクシングでいうところのゴジラのTKOではないかなと。しかもコング、決して優勢ではなかったけれど、もつれこましてからのラッキーパンチが当たったような感じです(笑)、ここで(笑)が出てくるのはこの映画、実に陽性な作品で、昔の子供向け冒険小説という趣があるからなのです。

南海の孤島へ!冒険小説タッチと怪獣映画タッチの融合。

 後半も陽性なタッチが残っていますが、前半は完全にコメディタッチで出演者の小気味いい会話が続き、南海の孤島への冒険も、おどろおどろしいものでなく何処か脳天気な感じです。TVマンの2人、桜井(高島忠夫)古江(藤木悠)共にちょっと軽薄なでも仕事のためなら(いやいやだけど)南の孤島に乗り込むなどまさに子供向け冒険小説といった感があります。2人のサファリルックにライフル銃を構えた様はまさにちょっとした冒険家のようないでたちです。


サファリルック|画像はイメージです。|イラストACより
IllustACより|画像はイメージです

 また2人を孤島に差し向けるちょっと横暴なスポンサー、パシフィック製薬の多胡宣伝部長(演じるは有島一郎、喜劇俳優としてならした方です。)が途中で輸送船に乗り込むのですが、その多胡部長の出で立ちもサファリルック。探検=熱帯&ジャングルというイメージが強かった時代を感じます。怪獣を対峙する部分も大事ですが、世界の2大怪獣大激突を娯楽大作として成立させるには、前作までののしかかっている暗さではなく明るさが求められたのでしょう。それは決して世情と無関係ではなかったと思います。公開年度は1962年。オリンピックを2年後に控え高度経済成長期真っただ中であったこと。そしてTVの普及が急速に進んでいる事も影響していると思います。(なにせ事の発端がTV番組制作ですから)


 自衛隊の決行する対ゴジラ作戦の一つ、落とし穴作戦は話としてはええっ?ってなりますが、実際に侵攻スピードが遅い生物に対しては有効そうですし。ただそこに有毒ガス散布っていうのは有害生物の駆除殺処分としても穏やかではない話です。首都圏防衛のため自衛隊もけっこう真面目に作戦をとったり初代ゴジラからの伝統の高圧電線作戦などを立案したりと、作戦自体は子供向け空想科学の域ではありますが面白い画だったと思いました。それにあらすじでははぶきましたが桜井の妹、ふみ子(浜美枝)やその隣人で友人のたみ江(若林映子)のやりとり、桜井の出発前夜、藤田が桜井の家でかわすやりとりや、彼の船が難破するなどの部分も後半に生きてくるところもきっちり入れて、その上でふみ子は実はゴジラに襲われ、その後コングにも襲われるというシーンも入っているまさに怪獣映画で必要な部分もしっかりとはいっているのはさすが本多猪四郎監督のお仕事です。そこだけトーンがまさに怪獣映画でした。


 その融合が上手く行ってたのかと言うとそのトーンはそこで終わらせる感じで実は無理やり融合させてはいない感じです。場面が変わったらサクッとかわるみたいな。ですが一度だけ交わるとところがあります。そこは国会議事堂のシーンです。コングを眠らせる作戦の部分はその作戦など空想科学の趣がもっとも強い部分で『ウルトラQ』の主演でウルトラシリーズにも深くかかわる佐原健二さんが藤田を演じているのはやはり感慨深いものがありました。

最後に

 レジェンダリー版は『ゴジラvsキングコング』となっているし監督が決着をつけたいとかまあいっておられるようではありますが日本が生んだ怪獣王に花を持たしてくれるのか?今から楽しみですが髑髏島のコングはそれこそ巨神、神がかっていましたからあるいは?ただ気になるツイートもありましたので東宝版『キングコング対ゴジラ』のような陽性な話ではない気がします。その前にゴジラは『GODZILLA:King of Monsters』もありますし、そこで分かる事も多いでしょう。




『GODZILLA:King of Monsters』の監督を務めるマイケル・ドハティのツイート。写っているのはあの…

 東宝の『キングコング対ゴジラ』は娯楽映画としては非常に面白い映画でした。最近のメモリアルイヤーの再上映やTVでの4K版リマスタリングやシンゴジラでの関連で何度か観なおしたのですが、やはりこの映画も時代を強く感じる事になりました。子供のころにこれを観て怪獣モノにはまった人も数知れずというのも頷ける娯楽大作です。レジェンダリーのモンスターバース版ゴジラvsキングコングは果たしてそういうものになるのか?それとも?楽しみです。良ければ時代を感じるという意味でも、また東西怪獣対決としても『キングコング対ゴジラ』この作品は一見の価値ありだと思います。よければ一度ご覧になっていただきたい作品ということでこのエントリをしめたいと思います。

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