M.C.U再見シリーズ。マーベル・シネマティック・ユニバースフェイズ1の締めくくり。『アベンジャーズ』です。アベンジャーズはマーベル・コミックスのそれぞれのヒーローが集まって成立したヒーローチームで、原作は歴史も古く、今現在も新しいメンバーを加え発表、刊行されています。
マーベル・スタジオが自社作品のキャラクターの映像化権を他社に渡しているため登場できないキャラクターもいるものの、アベンジャーズの中核メンバーである『アイアンマン』の映像化を皮切りにフェイズ1の作品は全て『アベンジャーズ』のためにあったといっても過言ではありません。当然成功するかどうかも分からない、ある意味無謀なプロジェクトにも思えたこのマーベル・シネマティック・ユニバースのロード・トゥ・アベンジャーズは『アイアンマン』の成功で道が拓け、前作のキャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』によって道筋がついたと言えるのです。
ストーリー/STORY
ロキの復活
物語は『マイティ・ソー』のヴィラン、ソーの義弟で最後に宇宙の彼方に消え去ったはずのロキが大いなる闇の勢力の尖兵としてミッドガルド(地球)を手に入れ王となる代わりに4次元キューブを手に入れゲートを開きチタウリの軍勢で地球を襲う事を命じられるところから始まります。『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』でハワード・スターク(トニーの父)が回収した4次元キューブは現在S.H.I.E.L.Dが管理し研究中でした。しかし『マイティ・ソー』に登場した天体物理学者、セルヴィグ博士がキューブを研究中にエネルギーが暴走し突如施設にゲートが開かれます。そこから現れたロキは、警備にあたっていたエージェント・バートンことホークアイやセルヴィグを闇の勢力から借り受けた杖(セプター)の力によって操りキューブを奪います。S.H.I.E.L.D長官フューリーは研究施設ごと、ロキを葬り去ろうとしましたが手口を知っているバートンの手引きでロキは脱出、キューブは奪い取られました。しかしそのままではキューブは闇の軍勢チタウリを引き入れることが出来ません。セルヴィグに命じてゲートを開く準備にかかります。
アベンジャーズ・イニシアティブ
世界平和委員会に報告を求められるフューリーは切り札を切る事を宣言。対策としてキューブの行方を捜すためメンバーを招集することにしました。エージェント・コールソンはNYにスターク・インダストリーの新たな拠点として建設したスターク・タワーにトニー・スタークを迎えに行きます。潜入任務中のブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフはインドに潜伏中のハルクことバナー博士を迎えにいき、そして70年ぶりに北極海から生還したキャプテン・ロジャースもフューリーが、眠りから覚めて戸惑うキャップに今も君の力が必要だ、世界を救えと彼を召還します。この緊急事態にS.H.I.E.L.Dはトニーの手によるリパルサー・システムを利用した巨大移動基地、空中空母、ヘリキャリアが始動。行方の分からないロキたちを、バナー博士の提案でキューブの放つガンマ線を各所に設置したセンサーで探知、追う事になりました。
一方ロキは、キューブがゲートを開く際に安定化させるために必要なイリジウムを奪取し、S.H.I.E.L.Dの注意を引き付けるためにドイツのシュトゥットガルトに出現。急きょ、キャプテン、トニー、ナターシャが現地に。然したる抵抗もなく捕らえられたロキに釈然としないものを感じる一同でしたが、そこにロキの義兄ソーがアスガルドからやってきました。ロキが4次元キューブを奪うため地球に現れたことを察知し、ビフロストが破壊されたため通常の光の道をではなく父、オーディンの力を借りてやってきました。ロキに真意をただすソー。しかしロキは皮肉な笑みを浮かべてまともに答えずいらつくソー。そこにトニーたちと接近遭遇したソーはいきり立ちますがキャプテン・ロジャースの一喝でその場は収まり、連行されるロキとともにヘリキャリアへ向かう事になります。この一件、最初から違和感を抱いていたトニーはフューリーに事の真相を正しますがフューリーは語らず、ロキをバナーがハルクとなって暴走した時に使用するはずだった監獄に閉じ込める事にしました。一方スティーブはヘリキャリア内の書庫で秘密文書を探します。
アベンジャーズ・アッセンブル
そうしてメンバーはS.H.I.E.L.Dがソーの出現以降、外敵の存在と人知の及ばない力を広く世界が認識し、そういった外敵から世界を守るために四次元キューブを利用しようとしていたことを知ります。セルヴィグ博士の研究もそのためのもので、秘密を隠し持つフューリーたちと互いの不信感が募り一触即発の空気が漂います。実はそれこそがロキの狙いで、そうなったのも杖(セプター)の力でちょっとした不信感を煽った事も原因でした。
そこに、かねてからの手筈通りバートンたちがクインジェットでヘリキャリアに乗り込み破壊活動を行いヘリキャリア内部は混乱、エンジンが停止。この混乱を収拾すべくトニーとロジャースと共にエンジンの再起動を試みますが爆破の衝撃でバナーがハルクに変身、ヘリキャリア内で暴れまわります。ソーがなんとかハルクをヘリキャリアから叩き落して止めますが、ロキがその間に監獄から逃亡、それを阻止しようとしたエージェント・コールソンがロキの杖で胸を貫かれ死亡。ソーはそのままロキと入れ替わりに監獄に入れられ地上へ投下されてしまいます。ムジョルニアの力で地上と激突寸前に脱出するソー。バートンはナターシャと格闘の末昏倒させられ洗脳が解けました。
エージェント・コールソンの死という大きな代償を払った今、フューリーは頓挫した最後の切り札についてトニーに語らせます。大きな困難、危機に陥ったとき地球を守るために力を持つ者たちが結集して危機を救うアベンジャーズ・イニシアティブ、今こそその時だと。
コールソンの死を無駄にしないためメンバーが結束することになったのです。
ニューヨーク決戦
四次元キューブはスターク・タワーのアークリアクターよりエネルギーを供給されNYにワームホールゲートを開け、そこからチタウリの軍勢が現れました。NYが決戦の地となりトニー。ロジャース、ソー、ナターシャ、バートンたちはNYに急行、ロキを倒しゲートを閉じるためにチタウリの軍勢に挑みます。ハルクも合流し次々と現れるチタウリを撃破。ロキはハルクに振り回され完膚なきまでに叩きのめされました。
しかしこのままでは世界が宇宙からの侵略者に侵略されると思った世界安全保障委員会は核ミサイルの発射を命令。フューリーから指揮権を取り上げ発射させます。チタウリの攻撃は無限に続きNYは非常に危険な状態に、スターク・タワーにたどり着いたナターシャは正気に戻ったセルヴィグからある部分を止めればゲートを閉じれると教えられロキの杖でそれを突くように言われます。その時、トニーが閉じる寸前に核ミサイルをゲート外に放り出せば核爆発による被害も無くチタウリの攻撃も止めれるとミサイルをアーマーのフルパワーでゲート内に放り込みチタウリ母艦にぶつけました。地球上のチタウリは活動を止めゲートが閉じる寸前トニーは地球に戻ってこれましたがアーマーのパワーは切れ危うく地面に激突しそうなところを救ったのはハルクでした。
地球は寸前のところで救われたのです。そしてロキとソーは4次元キューブは地球に今おいておくのは危険としてアスガルドに持ち帰ることになり、それぞれが元の居場所に戻っていきました。
奇跡のアンサンブルはこうして産みだされた
監督ジョス・ウェドン
まずはこの映画を監督しマーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ1の総まとめとも言える『アベンジャーズ』のかじ取りを任されたジョス・ウェドンについて。最近ではマーベルからライバルDC作品のアベンジャーズともいえる『ジャスティス・リーグ』の監督を事情があって降板するザック・スナイダーからバトンタッチされたことでも注目の監督ですが、この時はウェドンという名前を知っているのは相当なマニアだけでした。
By Gage Skidmore, CC BY-SA 3.0, Link写真はWikipediaより 2010年コミコンでの質疑応答 |
ウェドンは『バフィー~恋する十字架』『ファイヤーフライ』というTVドラマをショーランナーとしてディレクションしていた人です。ショーランナーとはシナリオライターとして全体を構成し物語のかじ取りを決める重要なポジションです。そこで名を売りましたが『ファイヤーフライ』は人気作品とは言え1シーズンで打ち切られたカルト作品でありました。
しかしそんなジョス・ウェドンの力量を見抜いたマーベル・スタジオに『アベンジャーズ』の監督として抜擢され一躍時の人となったのです。ファブローの『アイアンマン』やブラナーの『マイティ・ソー』、ジョンストンの『キャプテン・アメリカ』をそれぞれの持ち味を殺さずに、さらに深みを引き出すという前代未聞の仕事をやってのけたのです。
それには数多くのキャラクターを捌くTVドラマでの経験もあったのだろうと推察できますし、ウェドン自身もアメコミファンで、しかもDCやマーベルの原作を手掛けたこともある事がプラスに働きました。ファンの目線で、数多くのキャラクターを動かしそれぞれに見せ場を立てストーリーの展開させていったのです。ハルクはノートンからマーク・ラファロにキャスト変更がありましたが、主役級のキャストだけでも6人、それに絡む準主役級も多くよくぞここまで作り上げたと各界から絶賛の的でしたが、それだけにウェドンへのプレッシャーも高く、次作の『エイジ・オブ・ウルトロン』後には暫くマーベルとは距離を置いていたようです。ですがジョス・ウェドンこそが『アベンジャーズ』を成功に導いた立役者というのは間違いないでしょう。
ハルクを演じたラファロ
そしてキャラクターとしてのこの作品の肝はハルクとロキ、そしてエージェント・コールソンだと思います。ハルクはM.C.Uで製作された『インクレディブル・ハルク』の主演エドワード・ノートンからマーク・ラファロにキャスト変更になりました。そのため若干不安視されていた部分もあったのではないかと思いますが、ラファロ自身はそれまで演技派俳優として名を売っており、アカデミー賞にもノミネートされた実力派です。
By Tony Felgueiras from Toronto, Canada derivative work: MyCanon (talk) - File:Mark Ruffalo at the Toronto premiere of The Avengers.jpg, CC 表示-継承 2.0, Link写真はWikipediaより マーク・ラファロ 2010年 |
あまりこういったブロックバスターのヒーロー映画に縁のある俳優ではありませんでしたが、近年ではヒーロー映画でも実力派の俳優をあてるのは当たり前になっており、『アイアンマン』でキャリア復活を遂げたロバート・ダウニーJrもそもそも演技を高く評価されていた俳優でした。果たしてノートンによってリイマジされた悩める超人ハルクはラファロによってさらに深みを与えられることになりました。数多くのアンサンブルキャストの前で多くない出番を、苦悩をもった天才科学者にして怒れる緑の巨人を滋味深く演じきったのです。アベンジャーズが結束したのはコールソンの死でしたが、アベンジャーズがアベンジャーズたり得たのはバナー=ハルク=ラファロのおかげであったといっても過言ではありません。
愛されるヴィラン、ロキ
そしてヴィランとしてのロキです。『マイティ・ソー』で義兄ソーに対して複雑な思いを抱き、自身の出生を知り、悪への道を辿る事になったロキ。『マイティ・ソー』の最後で宇宙の彼方へ姿を消したものの、『キャプテン・アメリカ』のポストクレジットシーンでセルヴィグの精神に干渉していたことから再登場するだろうと思われていたのですが、今回も自らの支配への欲望、そして兄に対する捻じれた思いがこの事態を引き起こしたことを示唆しています。
By Benjamin Ellis - http://www.flickr.com/photos/jamin2/10554208936/, CC 表示-継承 2.0, Link写真はWikipediaより トム・ヒドルストン。2013年 |
傲慢で、残酷、だが一方で兄に対する複雑な思いと自らを善き者として置きたいという複雑さは愛すべきヴィランとして絶大な人気を誇り、『マイティ・ソー』のヴィランとしても『アベンジャーズ』のヴィランとしてもまことに的を得た配剤です。原作コミックでもアベンジャーズの結成のきっかけはロキが得意の幻を見せる力を使い、ハルクとソーを争わせ、アイアンマンやアントマンがその争いを止めロキの陰謀を暴きというような筋だったそうです。つまり最初期結成の原作リスペクトでもあるわけです。
エージェント・コールソン
エージェント・コールソンはS.H.I.E.L.Dのメンバーとしていわばその他大勢として最初は設定されていました。監督のファブローの知己でもあるコールソンを演じるクラーク・グレッグは大のアメコミファンとしても知られていますが、ファブローから小さい役なんだけど『アイアンマン』に出ないかと言われた時、是非やりたいと答えたそうです。その他大勢のエージェント・コールソンは次作『アイアンマン2』でも出演。『マイティ・ソー』にも登場し、フューリーの手足となって働く現場のS.H.I.E.L.Dエージェントとして認知度を上げていきました。アイアンマンにせよソーにせよハルクにせよ、彼らはコミックが元型としてあるキャラクターですが、コールソンは映画発のキャラクターとしてファンに愛されるようになっていきました。
カリフォルニア州ロサンゼルスで開催された 2016 WonderCon で講演するクラーク グレッグ。/Gage Skidmore, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=48627999による |
そのコールソンが死亡というのはファンにとっても衝撃的で、だからこそ(劇中フューリーも言っていましたが)彼らアベンジャーズの結束を促す契機になったわけです。これはアメリカのドラマでも大きく物語を展開させる場合やきっかけを作るのに重要なキャラクターが死んでしまうというイベントはよくある手法でドラマを作っていたウェドンらしいやり方でもあります。ちなみに彼がキャプテン・アメリカのファンでトレーディングカードを集めているという設定を加えたのも(コスチュームデザインもした)ウェドンだそうです。
こうしてエージェント・コールソンはM.C.Uから姿を消しましたが、ドラマ『エージェント・オブ・シールド』で復活を遂げました。それにはファンの声があった事はネットでは有名です。『#Coulson Lives』Twitterなどで映画公開後ハッシュタグがついてじわりと拡がっていったこのファンの動きが再び彼をM.C.Uに呼び戻しました。映画には復帰はしていないものの、映画発からコミックにも逆輸入され、そしてドラマの主役として帰って来た男。コールソンがまた銀幕のマーベル・ユニバースに戻る時が楽しみです。
アッセンブル!
これだけのキャストが集まり、1本の映画になるということはまったくもって前代未聞の出来事で、例えるならばダーティハリーとダイ・ハードとスピードの主人公が空前絶後の犯罪とその犯人を追いかけるようなものです。ですが、そういう映画を想像したら、「いやそれは大味じゃないか」とほとんどの人が思う事でしょう。ですがマーベル・スタジオを率いるケヴィン・ファイギは『アイアンマン』から着実に実績を積み上げて、作品世界としてM.C.Uを認知させ、フェイズ1のクライマックスとしてこの作品を送り出しました。そして一つの作品世界の中で多くのヒーローたちが活躍するストーリーは今も拡大していってます。
この後にM.C.Uはフェイズ2に入り『アイアンマン3』を皮切りに『アントマン』までが製作されました。そしてさらに拡大したM.C.Uは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で宇宙まで飛び出しています。そして地球のヒーローたちはさらに深く掘り下げられ、ニューフェイスも現れました。
また活躍の場をドラマにも拡げ、死んだと思われたコールソンは甦り、『エージェント・オブ・シールド』として『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』や『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』の裏で何が起こっていたのかを、そして目に触れないM.C.Uの世界を押し広げています。
その流れはネットVODサービスのNetflixでのオリジナルシリーズ、『デアデビル』『ジェシカ・ジョーンズ』『ルーク・ケイジ』『アイアン・フィスト』として『アベンジャーズ』後のNYで街角にヒーロー達の活躍が描かれることになりました。こちらは『ディフェンダーズ』としてNYを守るストリートのアベンジャーズとして待機しています。
今もなお新しいヒーローを加えながら拡大し続けているM.C.Uの一つの集大成が『アベンジャーズ』であり、それは奇跡のアンサンブルによって成し遂げられたといっても過言ではありません。同一の世界観を持つと言っても、性格も、劇中のカラーもまるで違う作品が一堂に会したのですから。そして劇中で最後にフューリーが言ったように世界は『アベンジャーズ』を知ったのです。そう世界はもう『アベンジャーズ』のいる世界になったのです。そしてM.C.Uに来年にはいよいよ『アベンジャーズ』の時にチタウリとそれを操っていたジ・アザ―の後ろにいた男、サノスが自ら乗り出してくることが決まっています。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』です。そこがM.C.Uの一つの到達点となりさらに拡大、拡散していくことでしょう。まだまだお楽しみは終わりません。
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