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『小さな巨人』最終回を終えて。真犯人は誰だったのか?|感想/考察【ネタバレ】|tonbori堂ドラマ語り

2017年6月19日月曜日

drama

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 真犯人は?香坂は?とうとう最終回を迎えた、警察ドラマ(刑事ドラマでは無かったですね)会社ドラマとかと同じ組織の群像劇である『小さな巨人』が最終回を迎えました。山田が香坂に『あなたは小さな巨人なんです』とかいっちゃって、組織の中の個人は小さいけれど、いろいろな人の想いを背負って、それを抱えて大きく進むというのが主眼だったようです。


小さな巨人/ロゴはイメージです
小さな巨人/ロゴはイメージです

 その、割には結構、小野田一課長の顔芸や、他の登場人物の棒っぷりとか、他にもつっこみたくなる穴とか、それらを含めて半沢メソッドと呼ぶべきものでくるんだ感じのドラマでした。

小さな巨人

 これは山田が香坂に向かってそう言ったから香坂を指す言葉とも取れますが実はそれだけではないかもしれません。最終回のクライマックスは事件の真相がほぼ明らかになり、その事件を解決するために巨大な壁となって立ちはだかって来た小野田と香坂の最後の対決でした。

 事件の鍵になるのは17年前の山田がノンキャリアの刑事を目指したある事件の証拠となるものでした。山田の父がまだ警察庁刑事局長時代に運転担当であった松山警部の自殺事件、これは実は殺人だった事が分かるのですがその切り札を握っているのが小野田一課長ということで事件への突破口を開くためにそれを提出するように小野田に働きかけるというのがクライマックスでの一課長室でのやりとりでした。証拠をボイスレコーダーに録音したりとかいろいろしていましたが結局、金崎玲子理事長は早明学園に潜入捜査していた江口警部の殺害だけを認めるとか、富永専務は無罪放免とか、何故17年前の殺人の切り札が出されたのに江口の殺人を金崎理事長が認めたのか?というのは凄く疑問の残る展開ですよね。しかしラストで香坂があの裏帳簿の1ページの切れ端を未だに握っているというのはこういう意味ではないのかなとちょっと思いました。

真犯人は別にいる。

 実はこういうツイートをしたにも関わらず誰も反応してなかったんでもしかするとこの件は関係ないのかなと思ったんですがやっぱりラストを見ると関係あるだろと。それは山田の父である山田勲官房副長官と金崎玲子理事長の関係です。




 山田の父は最後に体調不良による官房副長官の職を辞するという展開になりましたが、実は官房長官が刑事局長時代の運転担当であった松山警部の自殺事件の捜査隠蔽を指示した事は語られています。その指示を受けたのは当時捜査一課での捜査担当であった香坂の父親でした。金崎理事長が故意か過失かは判然としませんが松山警部を突き落としたというのが香坂たちの推理でした。また再現映像的に見せられてもみ合った際に出来た傷でその切れ端に金崎理事長の血がついていることが語られましたが、その推理も香坂の父親が金崎理事長(旧姓山田)から自首の話を聞いていたにも関わらずという捜査を全うできないからとありました。その山田勲の名前に反応して認知症の進んだ香坂の父親は『山田さんとの絆』とも突然喋ったり、実は手を下していない、または手を下したのは勲本人ではないかという疑惑があるのです。


 となればなぜ金崎理事長が自首しようとしたのかという話になりますが、旧姓山田という事でこういう推理も成り立つはずです。勲と玲子は兄妹で兄をかばうためにという事も考えられます。そういう爆弾があの切れ端に込められているとすると、見え方が一気に変わってきます。つまり香坂と山田の復帰も官房副長官の辞任も警察上層部の意向も真の犯人を隠匿するためとも考えられます。それで山田や香坂は納得したのか?報道陣の囲まれて帰宅する父親を見る山田の姿にあるのではないかと思います。悲しそうなだけど憐みに満ちた目。犯人として裁かれるより、栄達の座から引きずりおろされることを屈辱ととる父親に対して。そう勲にとっては道を断たれることが何よりに屈辱であり罰と言えるでしょう。当然本来の罰とは程遠いものですが、今後何かを起こした時には香坂の持つ爆弾が破裂するかもしれません。


 当然、香坂も父の遺した負の遺産を引き継ぐ事で警察組織で生き残りをかけていく、そこには数多くの部下の想いも引き受けるという覚悟もあるのでしょう。だから青臭い理想論ではなく実利をとったという事と理解できます。とは言え小野田一課長が澱のように溜めて込んでいた組織の暗部が香坂を蝕む危険性もあるかもしれません。最後に見せた香坂の笑みを闇落ちと捉える事もまた容易だからです。

警察組織あれこれ

 そう言えば群像劇ではありますが、対立軸をはっきりさせるため香坂と小野田一課長に直接かかわってくる警察上層部の描写が凄く薄いのが気になりました。柳沢監察官は警務部の人間で警察の中の警察という立ち位置ですが、それでも警察上層部の意向は無視できない立場にいます。同じく捜査一課長が大きな存在、いや主人公の『捜査一課長』では大岩捜査一課長の後ろ盾ともいえるのが笹川刑事部長。大岩を見守り、時には叱咤激励し、行き詰った時にはヒントを与えたり上からの圧力を受けた時はそれとなくこういう状況だという事を伝えながらもケツはもってくれる、ある意味理想の上司です。

 小野田にとって富永がそういう人物であればよかったのですが…そういう上司ではなかったわけで。香坂の父も、家族のために無念を呑むなどそれぞれの上司がダメすぎるというのも割と対象的でしたがそういう刑事部長の描写が全くなかったのは気になりました。前述のとおり対立項をはっきりさせるための処置ですが刑事部のもめ事に刑事部の親玉である刑事部長が出てこないのはどうにもすっきりしない気がします。ちなみに各都道府県のノンキャリア警察官はその都道府県警察の刑事部長に就任することが出来ますが、警視庁はキャリアのポストだそうです。ぐぐっただけなので正確かどうかは分かりませんが横山秀夫さんの『64』でもD県警刑事部長のポストをめぐっての警察庁との綱引きがありました。これは本線の横にある伏線としてお話に大きく関わってきています。


 今回はノンキャリアとキャリアの戦いというものが薄かったので(山田の父はキャリアでしたが)もしシーズン2があればそこがクローズアップされるかもしれません。

刑事局長

 山田の父親は官房副長官でしたが、その前は警察庁刑事局長。そう言えば『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』や『コードネームミラージュ』でも刑事局長が登場していましたね。刑事局長は全国の刑事を指導監督する部署、刑事局のトップです。実際の実働部隊はもっていませんが、刑事警察のトップでありその権力は計り知れません。またドラマでも度々取り上げられる役職です。有名なところでは浅見光彦シリーズの主人公、浅見光彦の兄がこの役職についています。これもシーズン2があればキャリア側の壁として登場することがあるかもしれませんね。

ノンキャリアvsキャリア

 もっともノンキャリアvsキャリアという図式でいくかどうかは分かりません。それは『踊る大捜査線』の十八番でしたからね。とは言え全然ないのも不自然。捜査二課がドラマでも出てきましたが課長はキャリアが付くそうです。今度は敵に回るかも?

公安

 公安と言えば同じTBSの『クロコーチ』では3億円事件に関わり、OBを含めて桜吹雪会という非公然組織を作り事件の隠ぺいとその金を使って運用し殉職者やその他に資金を充てていたという描写がありました。

 『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』は公安と言っても局長直轄部隊で公安の中でも番外部隊でしたが拙ブログでも度々取り上げているNHK『外事警察』では公安の防諜活動を描写していましたが、国内外のスパイ活動は公安担当。隠ぺいなどはお手の物というイメージがあります。『CRISIS』でもそういった警察の暗部が描かれましたが、小さな巨人シーズン2があるのなら刑事部の怪物対公安部の魔物の対決というのも面白いかもしれません。

最後に

 なんだかんだと、つっこみたくなる部分も数多くありましたが半沢メソッド(ドラマ半沢直樹で使われているドアップと芝居がかったリアクション。そしてキメに決めた台詞回しという事で自分の中で使っている言葉ですが、今回の『小さな巨人』もそのメソッドに沿って作られたドラマでした。一見リアリティ重視に見えますが、その実は案外古典的なドラマなんですよね。半沢直樹や下町ロケットでは、勧善懲悪的に終始しましたが時代劇でもイヤミスほどではないけれど、悪いお殿様がうやむやで逃れちゃうってのはあります、そういうラインも取り入れてきたかと(笑)これがどういう風になるかは分かりませんが主人公たちは捜査一課に戻り、小野田は豊津署の署長になりました。続編は十分にあり得る展開でしょう。今後の続報を待ちたいと思います。

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