近年ここまで叩かれた邦画ってのはなかったんじゃなかろうか?そんだけ観た人間に色々と思わせたという事だし、ある意味では度肝を抜かせたのは間違いない(苦笑)もちろん私もその一人だ。
最初はなんじゃぁぁぁぁ・・・・ありゃ?って言う感じであった。ココからはネタバレになるのでご了承を。
という事でネタバレしますので何卒よしなに。
ディストピアロマン
よろしいですか?ネタバレですよ?
ほんとうによろしいですか?(以下ネタバレ込み)
アバンからのオープニングはかなり好印象。アニメ原作の納谷さんのナレーションの導入部。実際ココでこの物語は違った世界の話ときっちり言われている。そこからパラレルワールドとしてのアジアの大国『大亜細亜連邦共和国』(このネーミングもかなり恣意的)とヨーロッパ連合(ってまんまEUやん!なネーミング)との長い戦いの末に東ユーラシアを支配したというところから始まる。
原作と同じように公害による汚染が広がったというのも○だがここからまるで悲劇にするような悲惨な展開がまっている。そしてCGによる画面がそれを乖離させるほどに絢爛豪華に流れ込む。そして常に流れるBGM。タメもなく延々と状況が流れいく。他で何度か書いたがeiga.comでのガース柳下氏の新作評が殆ど全てを物語っている。
【参考】CASSHERN : 新作映画評論 - 映画のことならeiga.com
エディプスの悲劇
この作品はエディプス悲劇をキャシャーンの登場人物に演じさせた作品であると言えるが登場人物がセリフで語るのである。ここがまず第一に映画ファンから叩かれる要素。監督もここは確信犯的にしているようだが、あまりも過剰に語ることによってドラマが急激に薄っぺらになってしまう。そして2番目はブライのセリフが我々に刺さるところだろう。人間の原罪について突いているからだ。
私は幼少時にお寺(仏教、浄土宗)がしている幼稚園に通っていたため性善説をとる人だった。がいろんな経験を経て人は両面を持つという持論に至った。だからこそこのうようなキリスト教的原罪論というのもさほど意外ではないがこれを語られることにより「青臭い反戦論」とかいうのはあまりにも幼稚な言い合いだと思う。
つまりスルーできないが故に「お前の母ちゃんでべそー」といった奴に「そういうやつのほうがでべそー」というのと同じである。もちろんこの作品にはそこまで何故にという気迫が込められているからこそ嫌悪する者も反論するものもむきになると思われる。そう考えると監督の目論見をある程度は達成されているのではなかろうか。青臭く語ることにより相手をもその土俵に引きずりこむ。
それでも…
映画的に観ると評価は低いがその喧嘩の売りっぷりは見事としか言いようがないし絶望しているがそれを認めてあがこうとしている姿勢も評価は出来る。とはいえこれはやはり映画であり、独白もいいけれどそれでどこまで人を揺り動かせるのかといえばちょっとサービスというかエンタメ的な幼児性が見られるためフッとされてしまうのかなと。その画面的にはツメロボとの樋口コンテシーンは確かに見応えがあり映像的なカタルシスがある。だからこそ余計に幼児性、幼稚性と思われてしまうのかもしれない。そして演技陣に関して演技は無いとは言うが、及川ミッチーとブライ唐沢の対峙シーンや、寺尾聡の静かなるファナティックな迫力。そして助演の大滝、小日向、宮迫の演技は評価できると思う。その存在感は私は感じられた。そしてこの原稿を書く前に入ってきたニュース「三橋達也氏死去」このキャシャーンが遺作となるわけだが、三橋達也氏は短い時間ながら一番印象に残る演技を遺していった。一緒に行ったオタク友人はエヴァとの類似点を指摘(彼は今もこきおろしている)したが、それも確かにあると思うのだがエヴァと違うのはシンジは自ら選択することを放棄したが鉄也は自ら選択したことが大きな違いだろう。
因果地平の果てへ
その代償として最後のシーンも用意されているわけだが。それと当代一の歌姫で奥様の宇多田ヒカルにまんまテーマを歌わせる(いや自ら歌ったのか?)ところも恐れ入る。実際にもっとオブラートにくるんでも良かったはずなのにしなかったのだから。そこまで挑んでいるところはそら恐ろしい(笑)大作ではないし快作でもない、怪作?いや記憶に残る一作、名作とかフェイバリットとかは違うがすくなくとも記憶に残った映画になった。ただ前述の指摘どおり認めたくない者たちにとっては忘れ去りたい作品になるかもしれないだろう。まぁそういうのを『怪作』というらしいけどもそーゆうのでもないなぁ。恐るべき作品とでもしておこう。だが確実に心に残る1本という事は言える。
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元記事より改稿、改題して掲載。
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