自分がその後ジョニー・トーの映画を幾つか追っかけて観る事になった、きっかけの1本。確か映画秘宝の特集かなんかで銃撃戦特集かな?それで音楽がちょっとプアだけど、銃撃戦がめちゃくちゃカッコいいという風に紹介されていたように思う。
『ザ・ミッション 非情の掟』DVDジャケット/監督ジョニー・トー/主演フランシス・ン/アンソニー・ウォン/Amazonでは現在廃盤。中古のマケプレ品のみが流通。 |
『鎗火』男たちの絆の物語
お話はとてもシンプル。暗黒街のボスが謎の殺し屋達に襲撃される。組織は足を洗ってカタギになったかつての凄腕ヒットマンや組織に繋がる者達から手練れの者を集めボディガードチームを編成する。集められた男達は時にはぶつかり合い絆を深めボスを守り抜くが・・・・。というアクション映画の定型パターン。なんだけれどなにしろ場面のカッティングが素晴らしい。
アバンから暗黒街の掟についてのモノローグからメンバーの日常がインサートされいく小気味よさ。そこからボスの襲撃シーンへ全てがテンポ良く進んでいく。そして今は堅気になっているがボスの信頼する部下グァイ。最近売り出し中のやり手ロイと弟分のシン、普段はクラブの黒服だがプロの銃使いマイク、調達屋フェイの5人が集められてチーム結成。
最初は一度は堅気になったグァイにくってかかるロイにフェイが調達した銃に注文を付けるマイクと不協和音が鳴るチーム、そして謎の襲撃者達の襲撃を経て互いの腕を認め合う、という手際の良いシークエンスが展開される。また必要以上に喋らない男達の演技もまた良い。それが雰囲気を盛り上げているし彼らを印象づけている。例えば仕事に使う銃をフェイが調整し銃を各々に渡すシーンで射撃の名手マイクはオートマチックピストルのスライドを何度か引き耳元でハンマー(撃鉄)をコックし引き金を引くそして片手でスライドを少し引きおもむろにフェイに「スプリングが弱い調整してくれ」と言うシーン。日本の映画ではリアルを謳ってみても銃だけに画が寄ったり、また逆になおざりになったりで、演出が不得手なところだが、このシーンをシンプルかつ効果的メンバーの性格を表すのに使っている。(正確さを言えばスライドを引くだけでスプリングの強弱、それがスライドの動きにかかわるのかトリガープルなのかというのは分からないんだけれど、なんせ雰囲気がいい。リアリティより映画のリアルを優先した好シーン)
武器の選択にみる男たちのこだわり
銃の選択も某映画誌の記事によるとそれぞれのキャラクター分けがちゃんとあってグァイとフェイはタウルス(トーラスとも)オートマチック(ベレッタM92のブラジルでのコピー版)マイクはガバのコピー拳銃スペインのラーマオート(結構レア)。ロイはブローニング・ハイパワー(香港を統治していたイギリスの軍用拳銃)、シンは最新オートのグロックとなっている。
ベレッタM92F(ウェスタンアームズ/エアソフトガン)/tonbori堂所蔵品 |
グァイとフェイは拳銃はあくまで道具であり特にこだわりは無いが、使い慣れたものでなおかつ手に入りやすいものを使うからポピュラーなタウルス(ベレッタM92のブラジルコピー、セフティがグリップ横に付いている)。マイクは射撃について一家言を持ちそのスタイルからIPSC(シューティングマッチ)の経験者で銃の扱いに長けている。だからコルト・ガバメントのスペイン製コピーであるラーマを手に取った時スプリングの調整をフェイに要請する。また襲撃者からの高所からの狙撃を受けた後で用意したのか、その襲撃者のアジトを突き止めたときに使うのはオプチカルダットサイト付きのM1911のカスタムガン(レースガン)を使用するシーンがある。
|マイクが最初に使うラーマ(ラマ)のWikipediaの記述(リンク)
|マイクが狙撃者に対処するために用意した銃と同様の形式のレースガン↓
ロイは軍用拳銃でもあるブローニング・ハイパワーを使うことから元軍人か元警察官を伺わせる。(冒頭で仕切っているディスコでの警官とのやりとりもそれを匂わせる)新人のシンは素人でも扱いやすいグロックということだが、彼らの使う銃にもそれぞれのキャラがのせてあるのである。
ハイパワー/Wikipedia/Hi-Power From flickr user handvapensamlingen - Pistols used in Norway.Askild Antonsen - High power Inglis, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=56166253による |
グロック18C(KSCエアソフトガン)tonbori堂所蔵品/劇中でシンが使ったのは17、スライドのセレクターがない。 |
これは昔からよく使われている手法だが(『七人の侍』など各々の得意の得物、槍であったり居合いの達人だったりというやつ)これは何時の時代でも効果的なキャラクター表現法だ。もっとも、拳銃に詳しい一部の人だけが解っているだけの事かもしれないけれど(苦笑)しかしそれを抜きにしてもそういった雰囲気は画面から感じられる。またそういう細やかなシーンがそういうのが好きな人にはたまらないのだ。またリーダー格のグァイがメンバーの一人ロイの表の顔クラブの縄張りをあらすチンピラを呼び出し(ロイはそれでいらだち、仕事に影響があった)あっと言う間に首を切り裂き殺すシーンもいきなりでしかも淡々と描かれる。(これは後のシーンにも生きてくる)
ちなみに襲撃者側もS&Wのオートやベレッタ(のコピーモデルであるタウルス)などを使用するが狙撃シーンでは珍しいシモノフSKSカービンの中国コピーと思われる56式を使用している。このライフルは通常はセミオートマチックなのだが何故かボルトを操作して射撃していた。(ボルトアクションっぽいアクションが欲しかったのかな?)
劇中に登場した56式の後継63式の写真[[File:Rifle Type 63.jpg|thumb |中国製独自改良型の、63式自動歩槍]]SKSカービン|Wikipedia |
短くともギュッと濃い、情感の深い男たちの生き様
81分と短い作品だがこれほど濃度の濃いアクション映画はアクション好きならきっと熱くしてくれる。そんな超オススメの1本。ちなみにリーダーグァイ役のアンソニー・ウォンのサングラス姿はちょっと見で、エースの錠こと宍戸錠さんに似ている。フェイ役のラム・シューは強面のダチョウ倶楽部の上島竜平って感じだが凄みがあって良い感じ。フランシス・ンはインファナル・アフェアⅡなどで活躍。というよりこの映画香港映画のベテラン脇役を結集して作られたそうでなるほど納得である。実際には99年(!)に製作公開された。香港映画やはり恐るべしである。まず香港ノワール好き、アクション映画好きなら絶対観ておかないと間違いなく損をする1本。超オススメ。
トー監督もこの座組が好きなようでこの後2本同じモチーフを似たメンツ(アンソニー・ウォン、ラム・シューは3本ともに出演している)で撮っている。だが最高傑作はこの『ザ・ミッション非情の掟』(鎗火)だと思う。是非再販してほしい名作。
グァイやフェイの使うタウルスは昔マルシンから固定スライドのガスガンが出ていましたが今はもう出てないので東京マルイのステンレスシルバー辺りが雰囲気もってると思います。|Amazon.co.jp: 【90日保証付】東京マルイ ガスブローバック M92Fミリタリー クロームステンレス+マガジン+ハイバレットガス 18歳以上用 : ホビー
マイクの使うIPSCカスタムはWAのレースガンのモデルがAmazonにありました。|Amazon | 【WAスーパーリアルガン】WA SVI スピードコンプHG-S ver. セレンディピティ | ハンドガン 通販
ロイの使うFNブローニング・ハイパワー。|Amazon | マルシン ハイパワー コマーシャル ブラックヘビーウェイト プラグリップ仕様 モデルガン 完成品 発火タイプ | ハンドガン 通販
シンの使うグロック|Amazon | 東京マルイ No.96 グロック17 Gen.4 18歳以上 ガスブローバック ブラック | ハンドガン 通販
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