ルックは満点…なれど物足りない|『リターナー』(2002公開|リターナー・フィルムパートナーズ)|tonbori堂映画語り-Web-tonbori堂アネックス

ルックは満点…なれど物足りない|『リターナー』(2002公開|リターナー・フィルムパートナーズ)|tonbori堂映画語り

2011年5月27日金曜日

movie SF

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 『リターナー帰還者』というタイトルのこの映画。日本映画もここまで来たかと感慨深く見させていただた。前作「ジュヴナイル」は少年、少女の夢とSFのテイストががっちり入り込んだ作品だったが果たしてこういうアクションの演出はどうだろうかと実は心配していたが、いやまずまずの出来映えだったかな。

リターナー/公開時ポスター
リターナー/公開時ポスター/「リターナー」フィルムパートナーズ

 とはいえやはり優しい人の作る作品は、酷薄な連中が出ていても、それがビンビンと伝わらない。ここらへんは山崎監督の素養の問題もあるんだろうけど、ちょっと優しいというか、スイートというか(苦笑)

未来からの挑戦

ストーリー

 冒頭いきなりの銃撃戦。鈴木杏扮するミリを初めとする人達が何かと戦っている。そして発光している機械へ身を躍らせるミリ。そしてタイトルバック。時代は現代2002年10月19日。横浜の埠頭に停泊している貨物船の中で人身売買が行われようとしていた。突然響く銃声。倒れる人身売買業者。組織の男溝口は取引を邪魔した謎の男を追うように指示する。男は流れるような動作で追っ手を倒すと首尾良く取引の金を奪取。そこに不意に表れた子供を撃ってしまう。それはミリだった。そこから話は運命の日に向かって動き始める。


 取引現場に来ていた溝口はミヤモトにとって大陸でのマンホール生活時代の相棒だったシーファンを殺した憎むべき敵だった。かれは溝口を殺すためにテクニックを磨きリターナー、裏取引に潜入し足のつかないブラックマネーを奪還しクライアントに戻すという仕事をしていた。溝口に対する復讐に燃えるミヤモトだったが彼が撃った子供は未来から来た私に手を貸してという。頭から信じないミヤモトだったが首に高性能爆薬を付けられ渋々ミリの力になることに。まずは揖宿山へ向かった2人は大きく抉られた山肌を発見する。


 帰り道に混乱するミヤモトにミリは目的を告げる。「未来はダグラというインベーダーに侵略され壊滅寸前。最初のダグラがやってきた日本でダグラを抹殺するためにやってきた」とハナから信用していなかったミヤモトだが信じるふりをして爆弾を剥がさせるがソニックムーバーという未来の器機(装着者の体感速度を20倍に引き上げる装置)でまた付けられてしまう。彼女を連れて自身の情報、取引の仲介をする謝の元へ向かった。ここ数日動きのあった宇宙関係の研究所、施設の情報を得るためだ。どうやら国立宇宙開発研究所2研に異変があったようだ。


 早速2人は潜入するがそこに武装兵士を連れた溝口が迫っていた。2研の女研究員が溝口の所属する犯罪組織「劉グループ」に情報を流し、前日にそれを確認に来た溝口が最初のダグラに手をかけたとき、同じ場所で調査されていた宇宙船が突然反応し光線を放ったことによって研究所は火災を起こし10km離れた山の尾根が吹き飛んだのだ。宇宙人のテクノロジーをこの手に握るため溝口は乗り込んできたのだ。一方ダグラの入る部屋へ踏み込んだ二人。しかしミリの聞かされていた侵略者としてのダグラとはどうも様子が違う。その時ミヤモトの口を借りてダグラはこういった「帰りたい」と。そこに溝口が表れて一挙に銃撃戦が始まってしまう。ボロボロになりながらもその場を脱出した2人は謝の元へ向かった。


 謝はその異星人はもしかすると迷子になっただけで地球人が殺したことによって戦争が始まってしまったのではないかと語る。「人間ってのは、嘘をつく生き物なんだよ」。意を決したミリをミヤモトは劉グループが根城にしているオイルリグ(海底油田の海上精油施設)に向かった。タイムリミットは刻一刻と迫る。果たして地球の運命は?というあらすじ。

雑感

 いきなりオープニングで激しい銃撃戦を見せて置いて混乱を誘うようにしている。そして現代の横浜へ。貨物船でのアクションシーンもスマートかつテンポはまずまず。ここでミヤモトはかなりの手練れということと対する溝口はかなり危ないしかも頭の切れるいわゆる「レオン」のゲイリー・オールドマンタイプというのがよく解るシークエンスになっていた。


 また美術も良くミヤモトの部屋や謝の店などかなり雰囲気があった。今回の撮影は広範囲で撮られたらしいがなかでもオイルリグのシーンでは神戸、姫路のフィルムコミッションが大きな役割を果たしたという。このフィルムコミッション、各自治体で映画の撮影協力が、円滑にかつロケーションを提供するため設置されているが、この話を聞いてうまく機能してきているなと嬉しくなった。


 またソニックムーバーを使ったシーンでの撮影は大変だったそうだがそれだけに凄いシーンが撮れている。もちろん「マトリックス」に対するオマージュとしてミヤモトが黒い皮コートを着ているとか銃弾をかわすシーンとかがあるが、基本的にこれは監督も明言しているが相棒モノ、バディムービーなのである。そこらへんも最初は衝突を繰り返し、やがて信頼するという「リーサルウェポン」や「48時間」の定石はちゃんと踏んでいる。日本でもようやっとちゃんとしたSF系アクションムービーが見れる、それもメジャーでと思うと感慨もひとしおだったんだけれど、なんだろうかすこし軽い感じがする。

 それは、いろいろ考えたけどやはり要所、要所で人の生き死にがかなり酷薄な事とか、冒頭のダグラの襲撃シーンとかは絶望的なシークエンスにもかかわらず悲壮さとか悲惨さが描かれているのに伝わりにくいというか。これは一重に監督の素養でやはり前作『ジュブナイル』のような世界観や空気感がぴったりなんじゃないのかなと思う。(これは本広監督にも言えるけど)巷で言われる金城くんのセリフ読みがどうのこうのではありません。って言うか顔がいいんだよね。表情が特にいい役者さんです彼は。それと鈴木杏はこの先ちゃんと育っていって欲しい女優さん。可愛いけどかなり達者な子みたいなんでうまくいけば次世代を背負って立てる女優さんになるかも。

 小物の使い方も面白い。時間をゆっくりにする小道具を未来の武器として登場させたのは面白いアイデアで「マトリックス」風アクションにどうやって持っていくのかな?と思ったけどうまく処理しているなと感心した。ともかく監督の山崎さんは次はどんなの撮るのか楽しみ。思いっきりラブロマンスか、それとも??とにかく合った題材を撮って欲しいモノだと思う。あとVFXマンとして別作品に参加して欲しい。とりあえずCGはかなりスゴイので(笑)

※2024.02.03:Amazonアソシエイトのリンク貼り替え作業のため色々調べたらBlu-rayも出てないしプライムビデオどころかU-NEXTでも配信されていないようで。この作品フジテレビが関わってから一度地上波のプライムタイムで放送されたとは思うけど(劇場にもいったしTVも観た)山崎監督ゴジラ-1.0で爆上げの今こそチャンスではないかなと思うんですが。もちろん初期の『ジュブナイル』なんかも含めて4KUHD化と。日テレ三丁目がブレーキになってるとか邪推される前に。

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