We got a Blackhawk down|『ブラックホーク・ダウン』(2002公開|米)|tonbori堂映画語り【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

We got a Blackhawk down|『ブラックホーク・ダウン』(2002公開|米)|tonbori堂映画語り【ネタバレ】

2011年5月26日木曜日

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 タイトルにつけた『We got a Blackhawk down』は『ブラックホーク、墜落を確認』でソマリアの民兵が発射したRPGにより墜落した時に無線で発せられた交信。作中でも再現されておりこの交信後、米軍は地獄のつるぼに叩きこまれていくことになる。この作品は『モガディシュの戦闘』と呼ばれるものをフィクションを交えながら再現した作品である。

Black Hawk Down
forWikipedia/By Can be obtained from the following website: IMP Awards, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=12136904

戦場再現。

 一般に『モガディシュの戦闘』または『ブラック・シーの戦い』と呼ばれる米軍統合作戦部隊による重要人物の逮捕を取材したノンフィクション『ブラックホーク・ダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』を『エイリアン』、『ブレードランナー』『グラディエーター』のリドリー・スコットが映像化したのが本作品だ。

ストーリー

 1993年10月3日ソマリアの首都モガディシオのダウンタウンにおいて米軍によって実施されたソマリアの一部族の独裁的権力を持つアイディード将軍の副官2名を拉致する作戦が予想を上回る反撃にあい1時間足らずで終わる作戦がその後約15時間もにも及ぶ戦闘となる。それを時間軸の通り追った作品で特定の主人公はいない。あえて主人公らしい人物を上げるなら作戦に参加した米陸軍レンジャー、チョーク4班長エヴァーズマン2等軍曹とデルタフォース所属”フート”・ギブソン一等軍曹、レンジャー部隊付事務士官だが急遽負傷した下士官の変わりに出動することになったグライムズ特技下士官と彼と行動を共にすることになったデルタのサンダース軍曹になるだろうか。


 車両隊を指揮するレンジャーのマクナイト中佐と現地司令部の指揮官ウィリアム・ガリソン少将などがそれぞれの持ち場で経験する修羅場が映画が始まってから約30分後あと2時間足らず延々と繰り返されることになる。襲撃を察知したアイディード派の民兵がRPGロケット砲で1機めのブラックホークを撃墜したところから作戦の歯車が狂い始め部隊は寸断され車両隊のハンヴィーは迷路のようなモガディシオの市街地を迷走する。負傷者と死者が徐々に増えそれ以上に死者を出しているソマリア民兵は怒りに支配されどんどん膨れ上がる。


 2機目のブラックホーク”スーパー64”が撃墜され救援の車両隊は何時になるか解らない状態。援護のために降り立ったデルタの狙撃兵シュガート一等軍曹とゴードン軍曹は民兵に虐殺された。深夜になって膠着する事態にガリソンは国連軍を動かし部隊を現地に派遣。リトルバートへりが1機目のヘリの周辺を掃射しソマリア人を虐殺する。そして15時間後国連支配下のスポーツスタジアムに部隊が辿り着き作戦は終了する。

戦意高揚映画なのか?

 この作品は一般にどう思われているのか?少々気になってネットでの評判を覗いてみた。賛否両論があったが大体は醒めた意見とアメリカ万歳な内容はいかがなものか?そしてソマリアの現状と事実も知らずに凄いというのはやはりどうでしょう?とかが目立った。多分他の戦争映画でも人の愚かさを描いた作品や戦争は空しいという描写のある映画の方がこの映画より評価が高いんだろうなと思うし、そういっている人もいるだろう。だけど人間の行動を端的に描いている事にはそれほどの違いが無いと自分は思っている。日本人は多分DNAに刻まれた恨みと後悔がより戦争をそう理解させているのではと思う。


 これには思いっきり反論する人もいるだろう。でも自分の考えとして戦争はその力を有している組織がある組織に対して勝利を勝ち得て権利を得るために起こす行為である。だから戦争が嫌なら全ての戦いを放棄しなければならない。しかし未だかつてそれに成功した組織はドコにもないはずだ。インドのガンジーの無抵抗主義もそれを行うという行為はそれを通じて戦っている事に他ならない。これをレトリックといって非難する人は言葉喋ることをやめた方がいいだろう。何故ならコミニュケーションは言葉を通じて行われるからだ。

その後

 結局第2次大戦のような損益換算表を計算するだけの戦闘ならこの作戦は成功したと言える。なにせ米軍の犠牲者は負傷者は100名に対し73名に昇ったが戦死者は僅か19名。対するソマリア、アイディード派民兵は1000名以上の死傷者を出した。しかし純粋な軍事作戦として見れば作戦は失敗と言える。部隊の損耗率や2機のブラックホークが墜落したこと。隠密作戦が結果的に台無しになってしまったこと。これらは作戦としてはイーグルクロウ(イランの米大使館救出作戦失敗に終わった)と同じ類である。それだけの事でそれ以上でもないしそれ以下でもない。

観終えての雑感

 感想の一つに仲間を見捨てない必ず助けるといったスローガンに近いお題目に嫌悪感を示していた人がいたが、そういう人は目の前で死にかけた人を見ても放っておけるのかとも思う。それは古今東西の組織では行われていたことで、さらに言えば味方を見殺しにすることも軍隊には必要だったりする。軍隊というシステムで同じ釜のメシを食った仲間を見捨てるというのは普通考えにくいのだが。それを揚げ足のようにとってソマリアの人を殺した大悪党のように書くのも変な話だ。この話はあくまでもアメリカ人から見た作戦の内容であるのだから。だからソマリア人からの視点が無くて当然なのである。


 ソマリア人は正直アメリカの干渉(国連全てと言い換えても良い)には辟易していた事も事実だし決してアメリカも善意だけでソマリアに行ったわけでもない。実際、この戦闘で1000人もの死傷者がモガディシュの民兵と市民に出たという米軍の報告もある。

モガディシュの戦闘 - Wikipedia

 ただ我々はこの作戦があったその意味と何故そうなったのかとをよく考える事で、結局人は、全てを話し合いで解決することは難しいということを指し示しているのではないかと思うのだ。そしてそれは他者より話し合いを出来るものが優位に立っているという事とそれは不公平だと感じている者がおり。彼らは勝ち取ることでそれは公平になると思っている事を学ぶことが必要だ。単純に左右の対立軸ではないし、結局は持てる者と持たざる者がいる限り同じ事は世界のどこかで繰り返されるだろう。


 この映画を見てくれとは言わない。正直映画としてはつまらない。戦闘シーンが大半を占め、徹頭徹尾アメリカ人視点でありソマリアの事情でさえもアメリカ人から見たという事が、ことさらにエクスキューズされている。それは反対いえばリドリーの愚直さかもしれない。彼らは分からなかった、だから分かったように書くのは止めようと。ただシナリオどおりに描いてみようと。元々描きたかったのは戦場のリアルなんだしという。そういうことじゃないか?どうこうということは、観た人だけが考えれば良いことだ。ただ平和とは勝ち取るものと思っている限り戦いは無くならないということを感じた。


 何があったのか?興味があるならハヤカワ文庫の原作を一読することをオススメする。テキストデータとしてこちらで咀嚼した方が全体像をつかみ易い。またアメリカがどう思っていたのかなどが分かりやすい。原作者(脚本にもかかわっている)ボウデンは実際にソマリアでも取材している。

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