令和の踊る大捜査線なのか?/『ラストマイル』雑感/考察その2【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

令和の踊る大捜査線なのか?/『ラストマイル』雑感/考察その2【ネタバレ】

2024年9月7日土曜日

crime movie

X f B! P L

 『ラストマイル』おかわりしてきました。で、感想とかではなくこれはほぼタイトルのままなんですが指摘する人も多いこの話をしてみようかと思います。最初にこの言葉を聞いたのはYouTubeで映画ジャーナリストの宇野惟正さんがリアルサウンドのYouTubeチャンネルでやっている映画時評番組『宇野惟正のMOVIE DRIVER』ラストマイル回でした。その後Twitter(X)の感想ふせったーツイートやYouTubeの映画系時評チャンネルでも『踊る大捜査線』みたいだというのを見かけました。それにはtonbori堂も同意します。主役の廻りの幾つかの集団がある事件に対処するというフォーマットは疑似群像劇的な『踊る大捜査線』っぽいし、また主役が色々な意味で目立つ人というのも『踊る大捜査線』っぽい。雰囲気としてもドラマのような印象的なBGMの使い方とか、キャラクターの配置とか挙げればきりがありません。もちろん『踊る大捜査線』っぽいからヒットするわけじゃないし『アンナチュラル』『MIU404』を観ていた時に踊るっぽいとはあまり思っていなかったしというのもありますが、『踊る大捜査線』っぽいんだけど全面同意するにはなんかもやもやするなというのもあります。ということでちょっとその辺りを『踊る大捜査線』ともう1作『機動警察パトレイバー』も絡めて書いてみようかと思います。ちなみに『ラストマイル』の物語の重要部分のネタバレになる部分に言及しているので『機動警察パトレイバー』を観た人には分かってしまうのでご注意ください。(出来れば観てからお読みいただけると幸いです。)

ラストマイル × アンナチュラル × MIU404 シェアード・ユニバースヒストリーPV/YouTube/



※宇野惟正さんのYouTube番組。賛も否も含めての宇野さんの評は的確だなと思いました。もちろん感想としてはtonbori堂は面白かった勢ですが、それはドラマ勢でもある感想なので冷静に観ればというところではネタバレ無しでさすがという内容でした。

『ラストマイル』は令和の『踊る大捜査線』? その達成と課題を解説【宇野維正のMOVIE DRIVER】/YouTube/Real Sound Movie

『ラストマイル』と『踊る大捜査線』

 ドラマの映画化という流れで言えば『踊る大捜査線』は完全に成功した事例です。邦画ナンバー1ヒットは未だ破られず(『踊る大捜査線THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!』は150億円?だったかな?と調べてみると173.5億円でした。(Googleで検索すると数字だけがバーンと出るのでソースはトップにあるWikipediaから引いてました。一応データは映画ランキングドットコムから引いてるようですが興行通信社のサイトからデータを引いておきます。実写洋画はタイタニックの277.7億、全体トップは鬼滅の無限列車404.3億です)

ソースリンク|歴代ランキング - CINEMAランキング通信 


 今現在、『レインボーブリッジを封鎖せよ!』の実績を『ラストマイル』が越えられるのかというとこれも宇野惟正さんが分析されてたように疑問ではありますが、公開2週連続での興収1位で今年の邦画のエンタメ大作枠では『キングダム』に迫るヒットは狙えそうな成績を残せそうです。そういう意味では『踊る大捜査線』の映画1作目(もっとも1作目も興収は100億越えですが、先のソース元リンクによるとランキング45位なれど101億円とあります。)を感じさせるし、またドラマ発でキャストも豪華となれば確かに『踊る大捜査線』感はあります。でも『踊る大捜査線』と違う点があります。一つは『ラストマイル』が映画オリジナル脚本作であるという事。『踊る大捜査線』のようにドラマの映画化ではなく2本のドラマと同じ世界観を有してはいますが主役は違うという事です。『踊る大捜査線』はあくまでドラマの主役である青島が主役です。ただ主演の織田裕二が暫く青島から離れた期間中に2本のスピンオフが「踊るレジェンド」という体で作られたのでどちらかというと『ラストマイル』は「踊るレジェンド」的とも言えます。でも『ラストマイル』が『交渉人 真下正義』や『容疑者 室井慎次』なのかというとそれもちょっと違う感じがあります。それは『ラストマイル』がスピンオフという体裁ではないから。どちらかと言えばM.C.U的な展開をしていると思います。


 シェアード・ユニバース作品を今世界中で一番上手くやっているのは(最近は色々ガタガタしているとかヒットしてないとか言われていますけど)マーベル・スタジオのマーベル・シネマティック・ユニバース(M.C.U)です。それぞれの独立した作品の主人公たちが同じ世界観を有する中で活躍する作品群、時に別作品のキャラクターが客演したり、またはそれぞれの作品の主役がアッセンブル(集合)したのが『アベンジャーズ』でした。この『ラストマイル』、アベンジャーズ的なという事をプロデューサーの新井さんがおっしゃった事もあったようですが、それぞれのドラマのキャラクターの登場はどちらかと言えば『マイティ・ソー』でのSHIELD(MCUでのFBIよりも上部の地球防衛秘密組織)のニック・フューリー、フィル・コールソンぐらいで、カメオでホークアイが登場というそのぐらいの体ではないかと思いました。それは公開前に星野源が自身のラジオ番組で言ってたのもあるけれど、絡むとしても本当に少ないのではないかと思いました。実際『ラストマイル』の主人公エレナや孔と『アンナチュラル』のミコトや『MIU404』の伊吹と志摩は絡みません。ですが観てみるとバランスがよく考えられているなと思いました。少なくとも物語の中でおかしな出番は無かった。必然のある登場の仕方をしていてキャラクターを書き分けた野木さんは大変だっただろうなと思いましたとちょっと脱線(;^ω^)


 ただ雰囲気、ルックは『踊る大捜査線』的であるというのには異を唱えるものではなく、そう考えると『踊る大捜査線』が影響を受けていると思われる『機動警察パトレイバー』的でもあると言うのも言えるのではないかとも少し思いました。その中でこれは奇妙な暗合ではあるんですが犯人について観ている時に『機動警察パトレイバー』を思い出しまして、ちょっと『機動警察パトレイバー』と『ラストマイル』についても書いておこうと思います。

『ラストマイル』と『機動警察パトレイバー』

 『ラストマイル』が『踊る大捜査線』と似通っているとすればそれは遡って『機動警察パトレイバー』と似通っていると思うのです。(強引?)『踊る大捜査線』に影響を(というより主に監督だった本広克行に)与えていたことから吹っ飛ばされたレインボーブリッジを封鎖しようとしたり、謎の列車ジャック犯弾丸ライナー(正体が最後まで分からない)とかスピンオフの主人公が射撃が下手だったりとかいうのは置いといてもお仕事ものの側面を持っていて、なおかつ組織の独立愚連隊が事件を解決する(組織の良い面悪い面を描きつつ)というフォーマットは実は『機動警察パトレイバー』から始まったといっても過言ではないというのは言い過ぎでしょうか。


 『アンナチュラル』は独立愚連隊ではないけれど組織からある意味はみ出した、けれど仕事人としての矜持を持つ人たちの集まりであるUDIラボ、『MIU404』の実際には存在しない第4機捜も独立愚連隊っぽさがあります(分駐所が芝浦署の裏にある元飲食店というのも離れ小島感あり、埋め立て地に分駐所を構えていた特車二課っぽい)、『ラストマイル』はそもそも事件に大きく関わるのが番外地からやってきたセンター長とやる気のなさそうなチームマネージャーというのも独立愚連隊感ありますよね(ちょっと強引?)でも元々組織のはみ出し者や番外地の者が中央の手を借りないで、または上から妨害されながらというのは時代劇でもお馴染みのフォーマットでそもそも『独立愚連隊』というのは映画の題名から来てるというところから考えても員数外の者たちが奮闘するというだけでストーリーになるんですよね。とは言え『ラストマイル』の主人公エレナは外資の言わばエリートだし、孔も大手外資に勤めている正社員。でも徐々に2人とも思うところがあって人となりが分かれば組織からのはみ出し感が出てくる辺りは上手いなと思いました。そういう意味では独立愚連隊→特車二課→湾岸署→UDIラボ→4機捜→エレナと孔という流れは少しはあるかもしれないですね(笑)


 それと今回の事件の犯人もある意味で『機動警察パトレイバーTHE MOVIE』っぽさもある。犯人は実はという展開はちょっと『機動警察パトレイバーTHE MOVIE』の帆場を思い出しました。でも彼のような得体の知れなさというものは無いのですが、そこにいたった経緯は全く違っててそこも『ラストマイル』とパトレイバーの帆場との類似点を強く意識しました。帆場はその動機はっきりと明言されておらず、ただ壊されていきスクラップ&ビルドされていく東京を見せた上で、そのビルドされたものを破壊するという愉快犯というにはあまりにもふんわりとした動機をもった人物です。まるで神の視座から全てを見下ろしているかののように野放図に世界を作り変えていく我々に対してその先に何があるのか?と問いを発しているかのようです。『ラストマイル』の爆弾犯は物語世界で、個人的なきっかけでこの事件を起こした部分では帆場とは違いますが。世界に対して贖うこと求めるというのは、結果それにより我々にどうするのかの問いを発しているところで一致している。それで生きている特車二課やエレナと孔が奔走するという構図は似ているし、最後にビルドされたものが一旦は崩れていくところも共通点があるなと思ってみていました。【核心的ネタバレですので反転しています】この犯人は、実はもうこの世におらず帆場の様に世界から退場しているけれど、出来れば2の犯人である柘植の様に最後までこの世界がどうなっていくのかを見て欲しかったとも思いました。【反転ここまで/読むときは文字を選択してハイライトしてお読みください】

シェアード・ユニバース

 同じ世界での別のお話がクロスオーバーするという、こういった試みは例えば『相棒』に『科捜研の女』のマリコさんが京都から警視庁に出向いたりとか、反対に右京さんと薫ちゃんが京都で事件の捜査を土門さんとマリコさんに協力してもらうとか、あったら面白いなと(なんかそういう気運も一時あったけど結局実現はしてないですね)思った事もありますが、人気ドラマをクロスオーバーさせるには殆どの場合は出ている出演者のスケジュールが一番の問題となってくるかと思います。今回でも『アンナチュラル』UDIラボ組や『MIU404』4機捜組の撮影期間は短かったと聞いていますし、俳優陣のスケジュール調整は一番のネックになるかと思います。数年先までスケジュールが詰まっている売れっ子ばかりを集めるとそういう事になるのは致し方ないかなという気もありますが、クロスオーバー作品もいいけれどドラマの2作のシーズン2はいつかは観たいかなと思います。もっともそれが難しいなら同じ世界線での新しい物語が紡がれる事があればいいのですが。


 そう言えば今回お題に上がった『踊る大捜査線』も再起動かと思われたんですが蓋を開けると室井さんの映画が2本作られるそうで。こちらも青島リターンを願っている人多そうだけど、噂ではテレ朝(!)で織田裕二の新作ドラマ企画が進行中とか(実際にはWOWOWで北方版水滸伝で宋江やるとか。これはこれで長丁場なプロジェクトになりそうです。)。実際スケジュール問題一つとってもシェアード・ユニバースな作品を作るのって難しいですよね。そう言えばTBSではクロスオーバーしつつも前作の主演級は出ない作品がありました。『ケイゾク』『SPEC』『SICK'S 』の『SPECサーガ』です。『SICK'S 』はParavi(TBSの配信サービス、今はU-NEXTのコンテンツになっています)でアマプラで第1シーズンだけ観れたけど全シリーズは追っていなのでなんとも言えないけど外連味の高いSPECシリーズとは違い、現実ベースの『アンナチュラル』『MIU404』『ラストマイル』の世界は地に足が着いているところがあるのでこちらも末永く続いて欲しい世界観だと思います。実現は大変そうですけれど新井P、塚原監督、野木脚本での座組でまた地続きの世界でのお話を期待したいですね。

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ドラマシリーズ|踊る大捜査線を観る|Prime Video

※劇場版は1作目の方が好きです。ファンムービーとしてよく出来ている。2はテーマは面白いもののあまり好きではないのです(そこらへんは昔ホームページに書きました|リンク/Web-tonbori堂アネックス/MOVIE-tonbori堂Vol.13踊る大捜査線THE MOVIE2)。なのでこちらをおすすめ。/Amazonプライムビデオ

踊る大捜査線THE MOVIEを観る | Prime Video 

※機動警察パトレイバーはやはり劇場版第1作を。でも手触りでいうと2っぽさもあったかも?ということでどちらもAmazonプライムビデオで観れます。(他の配信サービスでも観れるところあります。)

Amazon.co.jp: 機動警察パトレイバー 劇場版を観る/アニメタイムズ(チャンネル) | Prime Video

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