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tonbori堂メカ語り|ヘビーメタル(重戦機エルガイム)|#自分を作り上げたメカ4選 其の4

2018年8月31日金曜日

anime FSS ROBOT

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 まいどのTwitterからの大喜利タグネタからの増加捕捉版エントリも4回を重ね、トリを飾るは『重戦機エルガイム』に登場するヘビーメタルについてです。

ソース|ハッシュタグ #自分を作り上げたメカ4選



tonbori堂のツイート。


『重戦機エルガイム』

 前番組ダンバインのオーラバトラーはロボット?というより、パイロットの何か意思を具現化する身体の一部というかジェリルのハイパー化からそういう部分が強調された部分があって、メカとしては好きなんだけど、うーんちょっと違うかなとか(オーラ・ボンバーとかサブメカ含め面白いんですけれど)思っててその次のエルガイムは最初の印象はなんか骸骨みたいなロボットだなっていうのがファーストインプレッションでした(笑)ですが妙に魅力的で、それまでのロボットにないものを感じていました。手は繊細な動きをトレースするものだから関節部を保護するカバーのようなもので覆われており、アーマード・トルーパーのようにアームパンチはしません。腕のサイド、腕部に打突用のアキュートという突起部が設けられているのです。そういった細かい部分がこれは大河原邦男でもスタジオぬえでも無い新しいものが出てきたぞとなった事は凄くよく覚えています。そんなヘビーメタルの魅力についてちょっと語ってみたいと思います。

ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム
バンダイ|ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム/tonbori堂所蔵品/撮影も|(c)サンライズ

L・GAIMアウトライン

 まずはTVアニメ『重戦機エルガイム』について語らないとヘビーメタルは語れないというか、そのあたりを簡単にお話したいと思います。五つの惑星が連なるペンタゴナ星系、その惑星の一つコアムの若者、ダバ・マイロードは幼馴染のミラウー・キャオとともに育ったウーゴル村を後にして、代々伝わる古いヘビーメタル(この世界での戦闘や作業に使われるロボット)を携え、都へ士官するためと幼馴染で婚約者のクワサン・オリビ―を探す旅に出ました。その旅の途中で山賊に追われているファンネリア・アムという少女を助けます。しかし彼女はなんと山賊の仲間。つまり田舎の純朴そうな彼らのもつお宝(ヘビーメタル)を盗むという算段です。しかし予想外に腕の立つダバは山賊を撃退。


 その姿をみてアムはあっさりとダバへと乗り換えました。そして途中でであった同じく立身出世のため田舎を後にした貧乏貴族の御曹司ギャブレット・ギャブレーとはりあったり、この世界を支配しているペンタゴ連合の正規軍のエリート13人衆のガウ・ハ・レッシイに追いかけられながらも何故かダバに惚れて仲間になったり、見世物にされていた、絶滅していたとされる先住民族であるミラリー(身長は僅か30㎝で有翼の人類)のリリス・ファウがそこに加わります。


 やがてこのペンタゴナ星系を支配するポセイダルのペンタゴ連合正規軍から目を付けられる事になり、争いごとを望まぬダバでしたが振りかかる火の粉は払わねばならぬと父の形見のA級ヘビーメタル「エルガイム」で立ち向かう事になります。やがて彼の出自がペンタゴ連合の王であり圧政者であるオルドナ・ポセイダルに滅ぼされたミズンのヤーマン族カモン王家の末裔という事が明るみになりますます反ポセイダルの中心になっていくダバ・マイロード。彼の周りには武器商人でアマン商会の主人であるアマンダラ・カマンダラ。治外法権の星サートスターのフル・フラットなどが関わってきます。そしてとうとうエリート集団である正規軍13人衆も筆頭のギワザ・ロワウをはじめとしてダバたち反乱軍鎮圧に乗り出してきます。そしてクワサンとの再会。彼女はポセイダルに囚われ精神コントロールを受けヤーマン族狩りをしていました。果たしてダバは彼女を救い出しポセイダルの圧政から世界を解放する事は出来るのか?というお話です。

 いわゆる「青年よ大志を抱け」なストーリーなんですが、人の欲得など冨野さんのダークな部分が出たり脚本シリーズ構成の渡邊由自さんの重厚な大河指向もあったり、恋の三角関係などまあいろいろブレていました(笑)それでもこのアニメを支持するきっかけになったのは言うまでもなく、この作品のキャラクターデザイン、メカデザインを全て任された永野護という異才に惹かれたからです。この辺りはファイブスター物語のエントリでも散々お話しているので割愛しますけど、ヘビーメタルというロボットが登場していなかったら…でもやっぱり観てたかな(笑)なんせ富野監督の作品ですからね(笑)

ヘビーメタル(重戦機)とは。

 ペンタゴナで使用されるロボット兵器の名称で、A級、B級があります。正規軍でも一般兵はB級をつかっていたりするぐらいA級とB級では性能差がある設定となっています。特にA級は、これはデザイナーの永野護の設定になりますが本来は1機しかなくて後はレプリカであるという設定や、A級でもB級でもないオリジナルヘビーメタルというものが存在し、エルガイムの元になったガイラムやポセイダルのオリジナル・オージがポセイダルとの最終決戦で出てきたりしました。


 動力源はソーラージェネレータ、太陽発電で、外部装甲に施されたツイメリット・コーティング(ドイツ軍の戦車に使われた非磁性体コーティングとよく似た感じの名前ですが、これはデザイナーの趣味です。)によって行い、一旦始動すれば後は半永久的に活動できるという設定です。この設定もMH、GTMになっても健在で動き出すと回生エネルギーシステムで半永久的に稼働できるけれどそれ以上のエネルギーを消費すると稼働不能に陥る(例えば瞬間移動など)といった部分が今も同じく永野護の手による『ファイブスター物語/FSS』に受け継がれています。

ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム
バンダイ|ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム/tonbori堂所蔵品|(c)サンライズ


 主人公ダバ・マイロードのA級ヘビーメタル、エルガイムそれまでのアニメのロボットとは違い、いろいろな新機軸が盛り込まれていました。その一つは関節部です。よく知られている話ですがファーストガンダムのガンダムはそのままではTVで見せたポージングは難しいし、『太陽の牙ダグラム』では冒頭に出てくる朽ちたダグラムのようなポージングは出来ないのでモデラーはデフォルメしつつ関節部を独自解釈したり、または可動部分を切り込んだりしてそのポーズを製作していました。そういった絵の嘘を極力減らそう(当時は本当にそういうのを無くそうという熱量がありました)として関節部の処理に内部の骨格に装甲版を纏っているというロボットを産みだしました。これがムーバル・フレームというもので、後にZガンダムでもセミモノコックボディからムーバル・フレームへとなったぐらいにこの設定は画期的でした。

ムーバル・フレーム

 A級とB級を隔てているのは使用されているセンサーやコントロール系だけの話ではありません。面白いのは初期設定でそのムーバル・フレームは開発年度によって性能性激しく多くは外部のアーマー(セラミック装甲)のバリエーションによって差をつけているという事。これは『ファイブスター物語』でも受け継がれており、基本性能はフレームが決定するというコンセプトはゴティックメードになっても存在します。これは自動車のシャシーが外装によってワゴンになったりクーペになったり。そして積むエンジンにより馬力が変わるけれど基本性能を決定するのはそのシャシー(車台)が決定することを連想します。


 ムーバル・フレーム(MORVAL FLAME)には三つのサイズがあり主人公であるダバの搭乗するエルガイムがM型、ライバルのギャブレーがよく駆ったバッシュもM型、アシュラ・テンプルを始めとするテンプル・シリーズがL型。グルーンがS型と設定されているのもやはり今のゴティックメードがライオン・フレーム、パンター・フレームなどに分類されているのにつながっています。

A級ヘビーメタル

 物語では、主人公機体、エルガイムやポセイダル軍が使用するバッシュ、アシュラ・テンプルなどがA級に分類されています。実はこのA級、B級ってアンプの事ではないかと密かにtonbori堂は思っているのですがクリス(永野護)はセミプロはだしのミュージシャンでもありました。という事はオーディオに詳しくても不思議はありません。とは言えこのオーディオのA級、B級って知ってる人は相当なオーディオマニアではありますが(笑)もっともここでのA級は意味合いが違ってきていますが、基本的にムーバル・フレームで構成され外装アーマーを纏うものがA級と呼ばれます。だから初期の設定画の説明でバッシュのアーマーをエルガイムに換装することは可能であるとされています。

MJマテリアル/HEAVY METAL L-GAIMより/A級ヘビーメタル
MJマテリアル/HEAVY METAL L-GAIMより/A級ヘビーメタル/バンダイ刊




 これは自動車でもレーシングカーに近いコンセプトですよね。チューブフレームで組み上げたクルマで外装はFRPで成形されたボディを纏う。寸法が合えば日産のマシンにトヨタの外装をつけることだって出来る。フェラーリのマシンにメルセデスの外装はやりませんけど不可能ではない。まあそういう事はミリタリーマニアでもあるけれどクルマ好きでもあるクリスの趣味がよく出ていると思います。というか、そういう発想を上手くあてはめているというか。ミリタリーな味付けをしたり現実のコンセプトを落とし込むのはそれまでスタジオぬえの独壇場でしたが、ここに来て新たなニューカマーが来た!そう感じましたね。

B級ヘビーメタル

 これは作中に出てきたアローン、グライアなどがそれにあたります。基本的に民間にも出回っているアローンが最初期のB級ヘビーメタルとして設定され、それまで量産が難しかった人型兵器が量産できるようになったのにはケイ素系伝導システムを使用することに成功したからとあります。

MJマテリアル/HEAVY METAL L-GAIMより/B級ヘビーメタル
MJマテリアル/HEAVY METAL L-GAIMより/B級ヘビーメタル/バンダイ刊




 このケイ素系伝導システムってなんだよって当時は思いましたけど、今回資料にあたってもやっぱりなんだよってなりました(笑)もっともA級との違いはそれだけではありません。骨格であるムーバル・フレームを持たずフレームの一部がアーマーを兼ねていたり、精度の落ちる部品を使っているB品という意味合いもあるのがB級ヘビーメタルです。もっとも雑魚メカにしてはシンプルかつ印象的なシルエットを持ち、アローンの二つ目はモーターヘッド、デヴォンシャとバルンシャに引き継がれているのではないかと密かに思っています。グライアは…一つ目がやがてアトールになり、A・TOOLになりバーガ・ハリBSコブラの一つ目になったんじゃないかと(結構強引?)ですがミズン・アローンという両肩にパワーランチャー(レーザーキャノン)を装備したアローンは実はエンパー・テンプルを基にしたという話をどこかで…ということはファイブスター物語/FSSのJ型駆逐兵器に繋がる?まあそれは言い過ぎですが(苦笑)


 またグライアには仮面をつけたようなグライア・ノーダ。そしてA級のパーツを使っているバルブド。エルガイムのデッドコピー、ディザードなども変わり種もあります。この辺りB級といいながらも使用するパーツ次第では上も喰える実力を発揮する部分は軽排気量のクルマがチューンと状況次第では上の排気量を倒すことも出来るそんな事を想起させます。そしてB級は人型だけではありません。一番の変わり種はB級ヘビーメタル、ベアズ。宇宙戦用に特化し脚がなく大きな尻尾のようなスタビライザーを持つその姿はまるで蛇のように見えます。宇宙戦闘ではエルガイムをも圧倒する力を見せつけていました。そう足などは必要ないのです、あんなのは飾りです(笑)


 同じく宇宙戦闘用に特化したB級HMには形状がマシンナリィ(この世界での汎用マシン、ゼッタやリスタという種類があり武装を施したものはB級ヘビーメタルよりもしばしば強力だったりします)ににているためスペース・リスタという名前のB級ヘビーメタル、デルマーグがあります。これは角川のムックL・GAIMで明かされた設定ですが人型ではない分特化したというのもこれまたクルマの話で申し訳ないですが記録を狙うためのレコードブレイカーやゼロヨン仕様のマシンのようでこれまたメカ好きを刺激します。

 実はこのB級群があるからこそA級の凄さが際立っており雑魚メカとして十分役割を果たしているんですが、それ以上にA級にはない魅力にあふれています。A級は記号としてのムーバル・フレームに縛られたシルエットが要求されますがB級はベアズやスペース・リスタのように人型に縛られない。そういった自由度があります。


 また人型も如何にも軽自動車感のあるシルエットが、A級とは違いますという感じを醸しだしていてこれまた好ましい。ファイブスター物語/FSSではそういう厳密にはB級メカってのは登場していないんですが、例えばデヴォンシャ、バルンシャ、そしてハグーダのマグロウ。この辺りはヤラレメカなんですけどいい味を出していてB級の血を引いているなあと感じます。

ヘビーメタル(重戦機)の魅力

 それはもう、永野護の全てが詰まっているということではないでしょうか。デビューアルバムにそのアーティストの最初の要素が全部詰まっている。だからそのシンガーの事を知りたければまずはデビューアルバムをあたれというのに近いと思います。


ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム最終決戦仕様付属品、バスター・ランチャー
ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム最終決戦仕様付属品、バスター・ランチャー|バンダイ
|このバスター・ランチャーもコンセプトはファイブスター物語で今も使用されている。
ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム最終決戦仕様
バンダイ|ROBOT魂[SIDE HM]エルガイム/バスター・ランチャー/ランドブースター
/tonbori堂所蔵品|(c)サンライズ

 それまでの大河原邦男ライン、そしてスタジオぬえライン。永井豪ライン(ゲッター、マジンガー)、手塚治虫ライン(アトムなど)言ってしまうと横山先生の鉄人ライン、どれとも違う。でもどれもある。見てきたもの。感じたものが圧縮され、発酵し熟成した。それが永野護のラインです。(ちょっと褒め過ぎ?)関節やエネルギー源、そして顔、フェイスマスクなどアニメだけではない広範囲からの知識の蓄積があればこその設定もまた魅力に繋がっているように思います。一例を挙げれば先ほど紹介したツィメリット・コーティングは明らかにWW2のドイツ軍が戦車に施した防護コーティングから来ている話ですし、ロボットの脚部、碗部がいわゆるギアではなくダンパーの組み合わせやボディを柔らかい素材で覆う事で捻りやねじれを自然に表現出来るようにしたなど、先人が分かっていても取り入れなかった事を大胆にやってのけた。


 そういう一種の反逆のようなところもクリスのロック魂が息づいているし、そこに魅力を感じたのもあります。でも大きな理由の一つは以前にもファイブスター物語の時に少し語ったようにリアルロボットモノの記号(ガンダムからの)を持ちながらスーパーロボットの則で作られた作品にこのヘビーメタルはマッチしていたし、なによりこの「エルガイム」が「なんて美しい…ロボット…」って思った事でしょうか…いや詩女様がいうと決まる台詞でもおっさんが言うとキモイだけかもしれませんが(苦笑)でも冗談抜きに美しいロボットだなと。対するバッシュは強そうだなと。(ちなみに先にも書いたようにこの両方はアーマーの付け替えができるのです。設定上)今までのロボットには感じなかったカッコよさがあった。だから今も永野護のラインを、『ファイブスター物語』を追っかけているのかもしれません。

最後に

 長々と4選を書いてみましたが、いや楽しくも苦しい作業でした。特にアーマードトルーパーとヘビーメタルは苦労しました。アーマードトルーパーは先にエントリを書いてたことがネタを急きょ用意しなくちゃならなくなったこと。まあベルゼルガや他にも資料本があったのでなんとかなりましたが。そしてヘビーメタルはもっと簡単に出来るかなと思ったら現在進行形の『ファイブスター物語』もGTM、HL1が六代目夜露死苦とか、Mk2の変形がン十年越しに完全変形でとか(笑)何時もプリマクラッセを目指しているけど、ついて来てくれているファンにもしっかりサービスする、この老練なミュージシャンのようなデザイナーの筆から産み出されるラインに未だやらっれっぱなしなため、かなり引っ張られたテキストになってしまいました(笑)今度はそこを中心にがっつり書いてみるのもいいかもしれませんねということで今回はここまでと致します<(_ _)>

参考文献:角川書店 L・GAIM1L・GAIM2、ラポート 重戦機エルガイム大事典 バンダイ MJマテリアル HEAVY METAL L-GAIMスーパーメカニックガイド(リンク先はAmazonです)


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バンダイ刊|MJマテリアル HEAVY METAL L-GAIMスーパーメカニックガイド表紙|tonbori堂所蔵/撮影

追記:20180912 オリジナル・ヘビーメタルについて少し書き足しました。

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