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巨悪は眠らせない|特捜9|最終回を終えて【ネタバレ】|tonbori堂ドラマ語り

2018年6月17日日曜日

drama

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 『特捜9』は『警視庁捜査一課9係』が加納倫太郎役渡瀬恒彦の逝去により加納係長が出演出来なくなった9係の仕切り直しとも言えるドラマです。新しい係長を迎える。または作品を打ち止めにする。いろいろ選択肢のある中から渡瀬恒彦を中心としたチームワークをこのまま終わらせるのではなく、青年こと井ノ原快彦演じる浅輪を中心に再度仕切り直してきた作品です。

特捜9/ロゴはイメージです
特捜9/ロゴはイメージです



安定の水9『9係から特捜9へ』

 9係のチームワークそのままに、『特捜9』の魅力が9係時代からあるスタンドプレーから生じるチームワークというものを活かしたリニューアル。いや実際には3つのバディがいて、それぞれが動くことにより結果チームワークに繋がる。そこが魅力になっています。9係時代と同じく、いや浅輪はこれまでの係長とのコンビではなく年下の後輩との、しかも未熟で猪突猛進、視野も狭いバディを導いていく。これまでの9係時代の経験が活きてくるそういうシーンには9係ファンも納得の展開でした。


 また『特捜9』への衣替えにあたり一度9係はある事件により解散。バラバラの部署にという導入も心機一転という意味合いではちょうどよかったと思いました。面子も本当に安定していて安心できますが、青柳、矢島コンビは今回さらにフリーダムになっている感じがまた良かったですね。「あ、うん」の呼吸というかこのコンビはスピンオフも作られていますが余程水が合うのか何時見ても面白い。それが他のコンビにも影響していて村瀬、小宮山ペアも微妙な距離感に艶が増しました(笑)もちろん青柳との意地の張り合いや空回り具合などこちらもますます円熟味を増してきたというか。


 そして今回は主任となった浅輪に部下が付きましたが、新メンバーの新藤は今時の青年っぽさを初期の浅輪でももうちょっと落ち着いていたぞと思いましたが、そこは倫子と結婚してどっしりとしてきた浅輪が時に厳しく、時に男気を見せて背中を見せる辺り、やはり9係の時代を経て成長したのだな感じさせてくれました。

ストーリー

 基本的には9係時代と変わらない一話完結。但し9係時代は内容によってはまたぐ場合もありましたが今回は基本的に一話完結で進みました。ですが班長である宗方の過去と現法務大臣である高森との因縁。そして9係の解散も何か裏のある様子を初回にふっておいて、時々宗方の過去と宗方が育てている少女、琴美とは血縁関係がないことなど、それが最終回のスペシャルできれいに解決する様は上手くオチをつけていったなと感心せざるを得ませんでした。


 また回を追うごとに新藤が図々しくなったり、今時の若者感を醸したり。背伸びして空回り感などいい刺激になっていましたね。青柳と妙子、矢沢と早苗という部分も挟まれて9係時代からのファンにも納得の出来でした。ここら辺毎回絡むのではなくバックボーンとしてあるし、時々事件に関わったりなど出し方のタイミングなどシーズンが進んだことによる上手さが生きてきています。

班長・宗方

 寺尾聡演じる宗方は、『特捜9』のキーパーソンでありながら倫太郎と同じく捜査が行き詰った時にヒントを与え視点をチェンジする役回りです。また時には9時から5時刑事だけど自らも動いて隠された真相に迫るという役どころ。そこを若い頃にはマグナム片手に悪党をまさに退治する『西部警察』に出演してきた寺尾聡が演じるとは。


 今の演技派でありいぶし銀な役どころを得意としている寺尾聡しかしらない人たちには以外かもしれませんが寺尾聡も昔はそういう役をやっていたのです。それは加納係長だった渡瀬恒彦もそうで『大激闘』というアクションドラマではジャパン・マフィアという日本中のヤクザが一つにまとまった巨大犯罪組織に立ち向かう警察庁の特捜チームのキャップとしてジャパン・マフィア相手に銃撃戦を繰り広げていたのです。


 スタッフが狙ってそういうキャスティングをしたのではないのでしょうが、2人とも最初は活きのいいアクションを得意とし、年齢を重ねて円熟味を増して演技派として重厚な役や軽妙洒脱な役をこなすようになっていった2人のつながりを想起してしまうこのキャスティングには思うところが多々ありました。

最終回は

 第1話スペシャルで言及されていた高森法務大臣との宗方の因縁。そして1年前の9係解散の真相。そしてそれぞれ2つは自殺と考えられていた3つの殺人事件の真相がつながり、全ての裏にいた高森によって事件が闇に葬られようとする中、如何にして特捜班が立ち向かうのか?というあらすじで、特捜班解散の危機というピンチもラストはしっかりとオチをつけてくれたラストはまさに「巨悪は眠らせない」なエンディングでした。


 『シグナル 長期未解決事件捜査班』とは設定もカラーも違い過ぎるので単純比較が出来ないしそういうものではないと分かっていても、『シグナル』最終回直後で浮かんだモヤモヤがすっきりする、やはりそこは定型の安心感というものがありました。時代劇な悪党、狡猾に計画を進め窮地に陥る特捜班。しかし最後は裁きを受ける悪党たち(ふてぶてしく捨て台詞まで吐きますが)そこをぴしゃりと一喝まで。やはり留飲は下がりますよね。


 当然、昨今の風潮として高森だけが巨悪ではない、見えない「組織」としての澱もあるけれど加納倫太郎の志を胸に抱いた特捜班の面々がいる限り希望はあるという、本当にありがとうございましたという最終回でした。当然Season2もよろしくお願いしますという感じの(笑)


 そして加納倫太郎はこの世界で生き続けているという事も重要です。初回、そして今回、里見浩太朗演じる神田川警視総監が加納を思って空に語りかけるシーンや青年浅輪が倫子との会話で加納倫太郎の事を話す。最終回も放送終了後の父の日に絡めて台詞がありました。渡瀬恒彦の残したスピリットは継承されていく。心の座長と言うべきでしょうか。渡瀬恒彦の存在の大きさを改めて感じる『特捜9』最終回でした。


 あと望むのは公式でほのめかされてる9係から特捜班になっても番外メンバーである早瀬川先生の過去にかかわる事件を本編で取り上げていただきたいという事でしょうか(笑)早瀬川先生の過去話はちょっと『アンナチュラル』っぽさがあるんですが先にあっちにされてしまいました感あるんであくまで『特捜9』のカラーで決着を付けて欲しいんですよね。これは期待しています。

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