ということで2018年のスクリーンでの映画初めは『キングスマン:ゴールデン・サークル』からでした。前作の『キングスマン』もめっちゃ面白かったんですが、今回もそれにさらにのっけてきた感じが半端ない量でしたという作品でした。また今回の敵も前回以上にキレキレの敵。さてエグジーどうする?という話です。
キングスマン最大の危機!にあの男が帰ってくる。
ストーリー
大富豪ヴァレンタインの企みを阻止したエグジーはハリーのコードネーム「ガラハッド」を引き継ぎ立派なエージェントとなった。ヴァレンタインの陰謀を叩き潰した時に助けたスウェーデンのティルダ王女との仲も進展し意気揚揚なエグジーだったがキングスマン候補生だったチャーリーが突然現れエグジーを拉致しようとする。チャーリーは片腕を義手となっておりエグジーを苦しめるがなんとか撃退。
激闘の末辛くも逃れたハリーは翌日、スウェーデン王室での晩餐に呼ばれロンドンを留守にするがチャーリーの義手はリモートコントロールされたロボットでキングスマンの情報をハッキング。それを元にミサイル攻撃がキングスマンを襲う。エグジーの代わりに愛犬JBの面倒を見ていたブレンドンやロキシーをはじめとするメンバーの居住地全てがミサイル攻撃を受けキングスマンは壊滅状態に。装備担当のマーリンだけは事務員として重要視されず生き残り、戻ってきたエグジーはこの惨状に呆然とする。
攻撃はチャーリーを助け部下にした麻薬王、ポピー。彼女は人里離れたカンボジアの密林にアジトを構え、自分の好きな50年代風のダイナーやサロン、ボウリング場などを作って世界の麻薬の流通を牛耳っていた。キングスマンは彼女の仕掛ける陰謀の邪魔となる事が予想されたため先手を打って排除されたのだ。そんなエグジーにマーリンは先代より伝えられていた緊急事態への対処『最後の審判の日』プロトコルを実行する時だと告げる。果たして隠し金庫に隠されていたのは…ウィスキーだった。アメリカのバーボンウィスキーが1本。年代物のようだったがそれしか入っていない事に2人は困惑する。しかしウィスキーの製造会社の表記にキングスマンのマークが入ってることに気が付いたエグジーはマーリンとともに製造会社のあるケンタッキーに向かう事にした。
ケンタッキーでステイツマン酒造株式会社の見学ツアーに紛れて辺りを伺う2人。貯蔵庫が厳重なセキュリティに守られている事からここが怪しいと忍び込むが屈強なカウボーイスタイルの男に見咎められる。ライフルを構えた男はテキーラと名乗り2人を圧倒。捕えた2人を尋問し先に捕えた男の仲間かと問う。なんとその男は死んだはずのハリーだった。装備担当のジンジャーエールが彼らはキングスマンのエージェントと判明したとテキーラに告げて2人は解放されハリーと会うが、彼はステイツマンによって救出されたがヴァレンタインに頭を撃たれたときに脳に深刻なダメージを負ったため、応急処置の副作用で記憶喪失になっていた。記憶を取り戻すにはつらい過去がトリガーになるのだが今のハリーはなりたかった鱗翅目学者と思い込んでいた。
ステイツマンはキングスマンの創設者たちが合衆国に作った組織で英国では仕立て屋が表の顔であったがこちらでは酒造株式会社を表の顔として成功を収めているという。リーダーのシャンパン(チャンプ)はエグジーたちの力になると約束してくれた。その頃麻薬常習者のみならず、ちょっとした使用者までにも異変が。
これはポピーの陰謀でコカイン、ヘロイン、大麻まで世界中で多く流通している麻薬に人工ウィルスを混入。感染した人間には青い血管が浮き出て、やがて躁状態に。そして最後は全身が硬直し内臓から出血して死に至るという凶悪なもの。感染者を人質にアメリカ合衆国大統領に自らの帰還と免責、麻薬戦争の終結を宣言するように求める。ステイツマンの問題児テキーラも麻薬を使用したことがあり感染。急遽、ニューヨーク担当の凄腕エージェント、ウィスキーが呼び出され組織との接点であるチャーリーの元カノであるクララと接触することに。野外コンサートで接触に成功するも肉体的接触(しかも粘膜に)ということでティルダに許しを請おうと思ったエグジーだったが、理解されず喧嘩別れをしてしまう。
一方ハリーの回復は見込めず部屋を水没させてキングスマンの訓練時代の死の恐怖をトリガーにしようとしたが効果が無くステイツマンの基地から英国へ帰る事になった。しかし最後に日に写真を見てふと気が付いたエグジーはハリーの記憶を取り戻すことに成功する。ただ記憶を取り戻したがまだ完全に調子が戻っておらずヴァレンタインに撃たれて片目を無くしたため距離感もつかめず本調子ではないがともかく帰還を喜ぶエグジーとマーリンだった。
やがてクララに仕込んだ発信機と盗聴で感染したクララがイタリアのスキー場に隠された解毒剤の保管庫に向かう事を知ったエグジーはウィスキーとハリーとでポピーの解毒剤を手に入れようとするが…、大統領はポピーと取引をするふりをして、この機に麻薬使用者を一掃することを企てる。ティルダも感染しており残された時間はもう僅か。果たしてエグジーはポピーの企みを阻止することが出来るのだろうか?
アメリカのいとこ(カズン)/ステイツマン
スパイ映画でよく出てくる言い回しにCIAはMI6の従兄弟ってのがあります。どっちが上かみたいは話なんかでも出てきますが、今回キングスマンに最大の危機が迫っているなか、独立情報機関としてキングスマンの創設者たちが合衆国に作り出したステイツマンを頼るという形になっています。ステイツマンは表向きの商売に酒造メーカーを選んでいるのですが、これが大当たりで社内見学ツアーが催されているほどの有名メーカー。実際に右肩上がりの成長とかいろいろ突っ込めそうなんだけど、まあなんだかんだでお酒って無くなりませんもんね。ちなみにイギリスでお酒と言えばスコッチウィスキーが有名ですが(マーリンもそんなことをいってましたね)バーボンウイスキーってのも面白いチョイス。しかも密造酒の時代もあって(ローリング・トウェンティーズ1920年代『アンタッチャブル』など禁酒法があった頃です。)というバックボーンは今回の麻薬組織ゴールデンサークルとも根底ではつながっているというのがマシューらしい設定です。
機関員のコードネームはお酒関係でトップがシャンパン(チャンプ)、テキーラ、組織のニューヨーク担当エージェントでトップエージェントがウィスキー、そして装備担当がジンジャーエール…ってシャンパンってフランスのお酒だし(フランスはシャンパーニュ地方の発泡酒)、テキーラはメキシコのお酒。まあそれをいっちゃうとウィスキーも元々はイギリスが発祥とかなるのでそこはようするにマシュー・ヴォーンの厨二設定ですよね(笑)嫌いじゃないですそういうのは。
でもステイツマンは実は敵じゃないかと最初は疑っていました。なんせ前作ではアーサー(マイケル・ケイン)が敵と通じていたりしていましたからね。だいたい行き来のあまりなかった従兄弟が現れたらそれは大概敵設定(厨二設定では)リアルなスパイ映画では互いに裏をかきあうなんてのはよくある事です。最近でも『アトミックブロンド』を観た人なら頷けるでしょう。それに英国人MI6は割と米国人CIAを侮りがちなんですが、CIAはそんなMI6を気位ばかり高くて何もできないぼんくらどもと思っているというのもこれまたスパイ映画の定番です。007でもCIAって都合のいい情報屋扱いだったりするのはそういうのの名残りではないかな?なのでこの突然降ってわいたステイツマン設定。観ていてハラハラしっぱなしでした。実際途中でハリーがとった行動などいいアクセントになってたし上手い設定を思いついたなと思います。
ハリーの復活
マシュー・ヴォーンがいろいろ頭を悩ませたと思うであろうハリーの復活。やっぱりエグジーとハリーの子弟アクション観たかったよなってのはtonbori堂も思ってたんですけどマシューもそう思っていたようで。割と早い段階でハリーは帰ってくるみたいなことを匂わしていました。とは言えやっぱりあれがあったからエグジーは成長できたわけだし、頭撃たれてるしこれどうすんの?と思ったんですが結構力技で来ましたね。あんなんありかよ…ありなんです(笑)みたいなね。でもあの時近くに人がいて緊急にハリーを回収して処置をしましたってうのを思いついたからこそ実は合衆国の従兄弟設定で来たんじゃないですかね?(笑)
いやマシュー・ヴォーンに聞いた訳でもないしパンフレットにもそんなことは「一言も」書いていませんけどね(笑)キングスマンが壊滅して残った者が『最後の審判の日』(ラスト・ジャッジメント・デイってのはターミネーターでも度々でてくる審判の日のことでもあるし宗教的にも世界最後に神の審判が降る日でもあります。映画ではよく使われてますよね。)を実行するとバーボンウイスキーの瓶が入っててというのはハリーを救い出すために浮かんだ方便なのかなと。
でもそうなってくると彼らもまたキングスマンのように独立した機関として世界平和のために活動しているスパイ組織として活動しているとすると、じゃあキングスマンは壊滅状態にすれば大きなピンチを作れるぜってなったのかな?って少し観ていて思いました。でもハリーの存在ってやっぱり大きくてコリン・ファースのような英国紳士が華麗にアクションをこなすというのが既にこの映画の大きな見どころ。だから復活から暫くは調子が出てないんだけど後半になるに従って何時ものハリーになっていくのはやっぱりぐっとくるんですよね。
縁の下の力持ちマーリン
マーリンは前回に引き続きエグジーにとっては心強い味方です。ハリーを除けばエグジーを見守ってきた最大の擁護者であるといってもいいでしょう。前回も彼の事を信じてヴァレンタインのアジトに侵入しましたしマーリンなくして今回のエグジーはあり得ませんでしたが…まさか1作目の冒頭のアレからひっぱってきてああなるとは…。あのシーンはぐっときましたね。またちょっと前に「私はカントリー・ロードが好きなんだ」って歌うところ。マシューお得意のおとぼけシーンかと思ったら…そんな泣けるオチにするとは…。あれはやられましたね。マーク・ストロングはマシュー・ヴォーンとも何度も組んでいる俳優さんですがいや今回ほんと泣かされましたよ。ちなみに『キングスマン』ではハリー(ガラハッド)とマーリンは同僚で無二の親友な2人なんですが『裏切りのサーカス』でも英国秘密情報部の同僚で親友で…。これ多分知っててやってると思うんですがそういう視点から見てもやっぱりぐっと来ますね。
動画はYouTubeより|『キングスマン:ゴールデン・サークル』予告編|20thFOXjp
ゴールデンサークルの麻薬王ポピー
カンボジアの奥地で麻薬王として君臨って黄金の三角地帯をすぐに思い出しますがポピーもかの地で麻薬流通の大元を握り天才的な頭脳で生産から流通を一手に握るという大犯罪者。だけど故郷に対する郷愁からアジトをポピーランドとして50年代のアメリカを思い出させる建物を作っているという設定。パンフレットによるとマシューはポピーのことを「間違ったアメリカのスウィートハート(恋人)」と呼んでいるそうですが、さもありなん。裏切った者に対しては容赦ない処罰を。そしてそれを命じたときにはニコニコしてるサイコパスなのですから。ただマシューはこのポピーのしたことに対しては論議を呼んでほしいと思っているそうです。
過激に議論を巻き起こす!『キングスマン2』制作秘話~コリン・ファース&監督インタビュー - シネマトゥデイ
前回のサミュエル・L・ジャクソンが演じたヴァレンタインは地球環境がこれ以上悪くならないように人類を間引こうと考えました。それは環境問題にいくら投資しても環境が改善されないから。人が多すぎて環境が破壊されるなら人を減らそうというかなり短絡的思考ですけれど。ポピーは故郷に帰りたい、郷愁ってのもあるんですがドラッグに関して違法ではなく合法にせよというものです。実のところドラッグを違法にするのではなく合法にして国が管理するというやり方はここ数年来議論されており、最近日本でもいわれる大麻の完全自由化とはまた違った中毒者を出さないように流通する総量を国がコントロールするやり方でそれ以外は認めないという方法です。当然問題もありますが国として合法化したところもあります。有名なのはオランダの大麻の合法化ですよね。最近アメリカでもカリフォルニア州が大麻を合法化したとか。
とは言えポピーはいささかやり過ぎるともいえる使用者を人工ウィルスに感染させ人質にとるという恐ろしいものでした。不特定多数を人質にとるやり方ってのは無差別攻撃(爆弾、銃撃)ってのがありますがウィルスに感染させるとは。しかもこれは麻薬使用者のみ。コカイン、ヘロインの常習者だけではなく、ちょっとした好奇心やパーティでハイになるために使用した者や大麻まで無差別というのが議論を巻き起こすところでしょう。
でもやっぱりポピーの行動はサイコパス。裏切り者には凄惨な死を。そして暫くハンバーガーが食べにくくなるおまけつき(^^;(といってもtonbori堂2日後の夕飯にミンチカツを食しておりました(ヲイヲイ)
キャスト
エグジーには前作のタロン・エドガートンが続投。まあ当然でしょう。マシュー・ヴォーンは続編に前作のキャストが揃わないとかそういう無粋な事はやりません。エグジーはこの作品で成長していくキャラとして設定されてて前作が映画デビューだったタロンとシンクロしているわけです。そんなエグジーの導師(メンター)がハリー。コリン・ファース。タロンとの仲も良好でこの師弟関係あればこその『キングスマン』とも言えます。コリンはこういったアクション系の人じゃないという印象が強いんですが、イギリス人俳優ってシュッとしながらも華麗な身のこなしをするので、ショーン・コネリーからこっちそんな感じが強いのです。コリンがハリーをさっそうと演じた事によりその印象がますます強くなりました(笑)マーリン役マーク・ストロングはマシューとは何本かの作品で組んでいますけど『キックアス』では盛大にロケット弾でぶっ飛ばされてましたね。それを思うとマシュー、あんたって人はってちょっとなりました。詳しく知りたい方は『キックアス』をご覧ください。癖のある映画ですが、『キングスマン』を観てる人なら大丈夫です(笑)
ポピーにはジュリアン・ムーア。オスカー女優が敵役ってのは最近の流行なんでしょうか(笑)でも敵役にこそ達者な人を充てる。これ面白いアクション映画の常套手段です。だから1作目はサミュエル・L・ジャクソンをあてたわけだし、いよいよ3作目には誰をあてるのか気になる所ですね。(マシュー本人はザ・ロックことドゥエイン・ジョンソンを希望しているとか)
ステイツマンのメンバーにはシャンパンにはジェフ・ブリッジス、テキーラにはチャニング・テイタム、ジンジャーエールにはハル・ベリー。そういえばハル姐さんは007シリーズの『ダイ・アナザー・デイ』でボンドガールを務めました。CIAのジンクスって役でスピンオフがという話も出てたけど立ち消えになっちゃって当時残念だなあって思ったもんです。そしてステイツマントップエージェント、ウィスキー役にはペドロ・パスカル。ネットフリックスオリジナルドラマの『ナルコス』に出演している彼を観た時にマシューが惚れ込んで起用したとか。ワイルドな風貌にテンガロンハットが似合う伊達男で、なんでも監督往年のバート・レイノルズを求めてたとか。確かに似ています…髭が(ヲイ)
そして前作でスウェーデンの王女、ティルデを演じたハンナ・アルストロムとロキシー役ソフィ・クックソン。そしてキングスマン候補生ながら落第してしまったチャーリー役エドワード・ホルクロフトも続投。で、気になったのキャストは新しいアーサーにマイケル・ガンボン。ポッターシリーズのダンブルドア先生(二代目)でああ今回もっていや別に役者が交代したわけではないんですけども。そして大統領(ブルース・グリーンウッド)の首席補佐官フォックスにエミリー・ワトソン。『リベリオン』観た人なら知ってるかもしれないけどクラリックのプレストンが体制を裏切るきっかけになったエミリーを演じてる人です。観た時にあー、どっかで観たってったんですが今回も…。そしてこれが一番大物キャストかも。本人役でエルトン・ジョンが出演。ポピーに誘拐されて彼女為だけに演奏させられるエルトン本人役(笑)、いや以外に登場シーン多いです。これは是非劇場で確認してほしいですね。
最後に
既に3作目は決定路線でステイツマンのスピンオフも計画されているそうですが、このシリーズ、世界を股にかけて活躍するスパイ物を007が今シリアスになってる分、アメリカのワイスピシリーズ(これはもともとそういうのじゃなかったけれど)やミッションインポッシブルにお株を奪われた格好になってます。それをアメリカに対する皮肉を混ぜてキッチュだけどスピーディーに。そして風刺を利かせた粋なアクションとして復活させたキングスマン。一応の3部作みたいなようですがこれからも続けて欲しいシリーズですよねえ。マシューが3部作を作り終えたらクオリティコントロールはやるようにして別の監督さんにとか(笑)ダメかな。
実際今回の大統領のあのやり方も露骨ではないけどトランプ揶揄っぽさを感じたので、英国ならではでしょ、そういうのが今出来るのは。是非お願いしたいですね。という事で今回もたっぷりと楽しませてもらいました。前作観たなら是非是非。今回からの人も気になったら前作も是非是非。
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