お姫さま、見つけた。｜『監獄のお姫さま』【ネタバレ】｜tonbori堂ドラマ語り

　2017年度秋クールのドラマで視聴していたのは『奥様は、取り扱い注意』、『刑事ゆがみ』そして『監獄のお姫さま』でした。その『監獄のお姫さま』は2017.12.19に最終回の放送を終え、大団円を迎えました。

監獄のお姫さま/ロゴはイメージです

　まさに大団円というにふさわしい〆方で、『奥様は、取り扱い注意』と『刑事ゆがみ』が後を引くような感じに対し、きっちりと決着をつけた感じです。まあこのおばちゃんたちが集まって『オーシャンズ１１』の如く更生するぞーって言って、悪党を（ちょっぴり非合法な手段で）懲らしめるってのはありかもしれませんけど(笑)、あ、そう言えば本家『オーシャンズ１１』に対して女性が主人公の『オーシャンズ８』ってのが来年公開だそうです(笑)

更生するぞー！

　おばさんたちがわちゃわちゃしながらイケメン社長が悪夢のような一夜を過ごすというドラマ。10話までそれで引っ張ったというのがなんとも凄い。本当にそれだけで10話やりきりましたからね。実は宮藤官九郎作品は立ち上がりに難があるというイメージがあって実は初回と2回目で何回か視聴止めようかなと思った事もありました。でも視聴を続けたのはこういう事です。

いやとことんワチャワチャさせて最後にいい感じになんかオチつけるんだろ。知ってる、クドカンやもん。 #監獄のお姫さま

— tonbori堂＠この世界の片隅に (@tonbori) 2017年10月17日

　誘拐で引っ張るのかと思ったら誘拐は誘拐でもイケメン社長を捕えて、彼が罪をなすりつけた姫を助けるために白状させようとする、おばさんたちのわちゃわちゃがなんと3か月に渡って繰り広げられたわけです。その間には、通称「冷静に」の旧姓、馬場かよ（榎本かよ）財テクこと勝田千夏、姐御こと足立明美、女優こと大門洋子、このメンツを統率する先生こと元看守の若井ふたばとの「自立と再生の女子刑務所」でのエピソードが差しはさまれ彼女たちが何故罪を犯したのか、どういう人となりなのかを描き出していくという構成になっており、初回で切らないで良かったなといや本当にそう思いましたよ(笑)

爆笑ヨーグルト姫事件から微笑チビ社長事件

　実は第2回の馬場かよエピソードも若干くどいなと思ってたんですが、これは場をあっためるためのクドカン作品の常とう手段、徐々に場があったまってきたらドライブがかかりだし、どんどんグルーヴが増していく。そういうライヴ感がクドカン作品の真骨頂なわけですが、たまにはずすこともあるし、作品の内容や扱うストーリーによっては、ええええ？ってなることも。未だにクドカン作品の『大帝の剣』は酷かったなと思うし（それは三池さんとのマッチングというより題材があまり親和性なかったと思ってます）木更津キャッツも面白いんだけどそこまでのめり込めなかったんですが今回は、おばさんたちがキュートすぎて、それにやられちゃいましたね(笑)

　検事の、のぶりんこと長谷川が部下の今池くんに馬場かよに惚れた事を語る時に、誰もが誰かのお姫さまなんだよっていってましたけど、あれはけだし名言だと思います。クドカン作品って時にそういう名言をどっかにちりばめてくるんですよねえ。一話完結のドラマが多い中、連続で引っ張る技と最後まで観たからこそ味わえる感動をありがとうございますというドラマでした。

女優たちのわちゃわちゃ

　出演者もなんでしょう、めちゃくちゃのびのびやってますよね。特に若井みどり役の満島ひかり、tonbori堂は観ていませんが先のクールの『カルテット』でも今引っ張りだこの高橋一生と共演してがっつり魅せたかと思うと、こんどはクドカン作品で遊び心もたっぷりにと思えばフルドライブな感じで感情を叩きつけてくる。いや彼女『愛のむきだし』からこっち女優としてぐんぐん伸ばしていますけど伸びしろがまだまだあるという感じで…「ひかり…なんて恐ろしい子…」ってなもんです(笑)

　小泉今日子、いやキョンキョンは…そうですね、これのぶりんも言ってて、ああそうかと腑に落ちましたけど、元々共働きで旦那より出来る銀行員だったわけです。つまりキャリアウーマン。なのに刑務所でも、おばさんグループでも何時でもおたおたして腰が定まらないそこが最初なんでやねんと思ったけど、そういう部分がクドカンの思うチャームポイントで、そこをそう見えるように誘導されたって感じです。だからこそキョンキョンだったのかと。だってそんなおばさんを演じれるのってキョンキョンしかいませんよ、ええ(笑)

　菅野美穂が演じたのは勝田千夏。これネーミングに遊び心ありますよね。そういうのは好きです。外では脱税で躓いたけど刑務所でも上手く立ち回り特別待遇を手にいれているけど、孤高の女に見えて実は寂しい、馬場かよに関わる事で壁が崩れてくるというこのエピソードがあったからこそ実はその後視聴できたかなと思っています。吾郎とベットインしちゃうっていうのもあって、したたかなんだけどかわいらしい。まさに菅野美穂にあてがきされたかのようなキャラでした(笑)

　坂井真紀演じる女優こと大門洋子は2.5次元に入れ込んだあげく主演俳優のストーカーとかし、さらにはグッズやおっかけのため結婚詐欺をしてしまうといういわば、イっちゃってる人。でも刑務所での規則正しい生活、そしてわちゃわちゃが何時しか若干コミュニケーション障害気味な洋子を現実に立ち返らせた？いやあんまりそうでもないか（ヲイ！でも少なくともストーカーという部分からは脱却出来たってのは面白い設定でしたね。ちなみに坂井真紀、TBCのCMで「絶対きれいになってやる」ってカーテン相手にシャドーボクシングするCMでめっちゃ人気あったんですが（TBCのCMは他のバージョンでも出演）いや相変わらずのチャーミングさは凄いですよね。でも途中ではすごくくたびれた感を出してたんですよ、でも最後にいい顔をするんだこれが(笑)

　姐御こと足立明美役森下愛子。吉田拓郎の奥様。いや最初の頃はちょっと影のある女の役も多かったり、体当たり演技も多い方ですがクドカン作品の常連でその辺りからなんか印象的にコミカルな感じを受けます（実際には他作品でもコミカルな演技も多いんですけども）でもやはりベテランの風格ありますよね。姐御役は森下愛子でないと難しいだろうし、他の人では及びもつかない。これはクドカンの信頼の証じゃないかな。実際刑務所の雑居房シーンでも合いの手いれつつ、どっしりとっていう感じが安定感を産んでいました。女優との凸凹コンビっぷりと姐さんが交互にはいってもしっかりとしてるし。最後の還暦シーンいやがっていらっしゃったけど可愛い感じでした（実際にはまだ還暦じゃないけど）寝てるのか起きてるのか分からないとこも妙に可愛いのもツボでしたね(笑)

　姫こと江戸川しのぶ役夏帆ちゃんは、いや最近のお仕事あまり追えてないないんですが、最初は本当に箱入り娘で、でも刑務所に入れられ、どんどん濃いおばちゃんたちに揉まれて、たくましくなっていって、最後に泣かせて。で〆にチビ社長オチと2段落ち。お見事でした。タイトルロールのお姫さまっていうのも良かった。でも最後のチビ社長は…反則です(笑)板橋吾郎役伊勢谷友介は3か月椅子に座りっぱなしでまあ大変でしたでしょう(笑)。ですが男のいやなところを煮詰めたそういうキャラを熱演。裁判での独白から、最後の微笑をしのぶにばっさり斬られるところまで、これは熱演と言っていいと思います。いせやんだからこそ（あえていせやんと言わせていただきます）説得力もあったし、間違いなく彼が（過去シーンでのそれぞれの再現俳優としても）引っ張ったと思います。にしてもひどい目にあったけど(笑)、これも吾郎の自業自得(笑)

　奥様である晴海役乙葉は存外にキーとなる台詞を放ったりして最後に向かって存在感を増しましたね。みどりにはバカ（若）奥様扱いでしたが、裁判後に彼女に吾郎が罪を認めた事を告げに行った時は両者ともにいいお芝居していました。そしてのぶりんこと検事の長谷川。なんともはや、お気楽検事すぎですがトリックスターとしていいアクセントになってたし最後の展開には無くてはならないキャラでしたね。これまたクドカン作品常連の塚本高史が上手く演じてました。ちょっと残念な子でしたけど、でも見せ場しっかり作りましたよね(笑)

おばさんいやお姫さまフォーエバー

　いや本当にわちゃわちゃしてたけど最後はいいところにオチをつけれくれました。姫の冤罪は晴らされ、勇介としのぶはまた会えることが出来ました。おばさんたちも本懐を遂げ真の更生に。先生も一旦は職を辞しましたけど、民間人としてまた刑務所に務める事に。本当に大団円ですよね。本当にありがとうって感じです。通しで観たクドカン作品としては久しぶりな事もあって大丈夫かなと思っていましたが、いい大団円を迎えれたかなと。続編はなくてもいいけど、でもこのメンツでまた別の作品はありだと思うんでそこでもまたクドカン節を流してほしいもんですね。あ、でも次は再来年の大河か…どうなんでしょ、それまでにもう1本民放いけるかな？(笑)

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