殺し屋映画列伝【邦画篇】|tonbori堂映画語り-Web-tonbori堂アネックス

殺し屋映画列伝【邦画篇】|tonbori堂映画語り

2017年11月26日日曜日

Gun movie

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 Twitterでは時々ハッシュタグで映画を10本あげようぜとかそういうのがありまして、『#名刺代わりの映画10選』とか、実はtonbori堂もよくやったりするわけですが、漫画家の平野耕太さんが上げた10選に『ある殺し屋』があげられていました。


フィクションの殺し屋

 で「殺し屋」を題材にした作品やキャラクターって多いよなあって思いまして。漫画のみならず、アニメ、ゲーム、映画などなど。殺し屋が主人公の作品とかそらもう綺羅星のごとくあるわけです。実際のところ殺し屋って影の存在ですし、よく分からない世界でもありますが、例えばヤクザのヒットマン(殺し屋)などはその末路まで悲惨なものも多く、とかくいろんなドラマがあるっていうことでスタイリッシュから考えさせられる結末まで何かと想像力を書き立てられるのかもしれません。

画像はイメージです。


 殺し屋というと『暗殺教室』の殺せんせーとか、『家庭教師ヒットマンREBOEN』のリボーンを挙げる人も多そうなんですが…どちらもそれほど読んでない事もあり、映画という縛りなんで両作品とも今回は見送りです<(_ _)>とはいえこの両人、戦闘力も高く特に殺せんせーなんかは元の死神時代も凄腕ですが殺せんせー形態になったら既にゴジラクラスとか…それは殺し屋といっていいのかというレベルではありますね(苦笑)あっ殺せんせーってそう言えば映画になってましたね(^^;てなわけで今回は殺し屋の出てくる映画を何本か挙げてみたいと思います。最近のものから大御所?まで。とにかく枚挙にいとまがないのが殺し屋(フィクション)ですが基本、tonbori堂の印象に残っているもので上げてみました。さすがに10選だと長くなり過ぎなので半分の5本です(笑)

ある殺し屋

 市川雷蔵が普段は小料理屋の店主、ですがその実態は凄腕の殺し屋を演じた映画ですが、この主人公、塩沢(これも本名かどうか怪しい)。暗殺のターゲットの行動を徹底的に調べ上げ、そして鮮やかに殺しを完遂するいわば、必殺仕事人です。もっともドラマのような虐げられた人のためではなく淡々と金のために仕事をするプロフェッショナルです。当時、『眠狂四郎』シリーズで大人気俳優だった市川雷蔵が現代劇でも淡々としたニヒルな殺し屋を演じ人気を集め続編も作られました。殺しの技は主に畳針を急所に一突きというものですが、音のする拳銃やドスなどの目立つ刃物ではなく隠し持ちやすい針というのは当時衝撃でした。市川雷蔵のニヒルで淡々としたところがまたこの主人公にぴったりで、共演の成田三樹夫や野川由美子もいい演技でそれを引き立てます。殺し屋映画といえばとまず浮かんでくるのが実はこれだったりします。続編の『ある殺し屋の鍵』もありますがやはりこちらが直ぐに浮かびますね。

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狙撃

 ビルの上でライフル銃を構え一瞬あらわれる発進したてて徐行運転の新幹線の車窓に見える標的である人物を一発で仕留める男。映画『狙撃』のオープニングシーンです。主演は加山雄三。若大将シリーズでお馴染みの加山雄三がイメージチェンジを狙って主演した東宝のアクション映画シリーズの1本です。この他に『弾痕』『豹(ジャガー)は走った』『薔薇の標的』がありますが、やはりこの『狙撃』が一番でしょう。あきらかに大藪春彦あたりの影響を受けたシナリオ。寄る辺なき男、孤高の殺し屋松下。依頼された仕事を確実にこなす腕を持ち、射撃しかない男を加山雄三がそれまでの陽性な演技から切り替えた硬派な演技で演じています。


 そして敵から送り込まれた凄腕の殺し屋との対決では、敵の殺し屋がモーゼルC96というこれまた邦画ではめったにお目にかからない大型の軍用拳銃を使い、それに対抗するため必殺を込めて特殊な単発銃、ルガー・ホークアイシングルショットを使うなどガンマニア的にもこんな映画が日本にあったのかと驚くほどの作品です。岸田森が演じる松下の友人で銃砲店の店主が使う武器を調達してくる設定ですが、米軍の横流し品ルートからベトナム戦争での鹵獲品であるAK47に暗視スコープなど銃へのこだわりは本当に当時の映画としてもかなり凝っていたように思います。ライフル銃での狙撃、そして拳銃を使った浜辺での勝負などハードボイルドを意識したこの映画は今ではカルト的人気を誇っています。

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拳銃(コルト)は俺のパスポート

 エースのジョーさんこと宍戸錠の主演作品です。拳銃にコルトとルビが振られていますが、ライフルも使えばショットガンも使う、殺しのプロを鮮やかに演じており、『殺しの烙印』につぐ殺し屋映画の傑作です。いやtonbori堂は『殺しの烙印』よりもこっちが好きなんですよね。この作品も実はニヒルで寡黙。無駄口は叩かず目的に向かって一心不乱に邁進する男を描いており、なんとなくtonbori堂の中では殺し屋=寡黙な男。と相場が決まっている感があります。オープニングシークエンスの組み立て式のライフルで狙撃するシーンも台詞は無く、全体的にこの作品台詞は少なめです。


 クライマックスの埋め立て地の攻防は何度見ても渋いアクションシーンでこういったアクションシーンはなかなかお目にかかれません。派手なものは最近でもあるし、凝ったものも増えたのですが、こういった渋さというのは本当に数えるほどしか。殺し屋映画としてもかなり良くできた、日活無国籍アクションの末期に量産されたプログラムピクチャーながら異彩を放っている作品です。

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最も危険な遊戯

 いわずとしれた松田優作演じる殺し屋の鳴海昌平が主人公の遊戯シリーズ。その第1作。『最も危険な遊戯』。後の『探偵物語』工藤にも通じるコミカルさと、ニヒルでシリアス、角川映画『蘇る金狼』の朝倉で見せた野獣のような顔の両方がこの作品の魅力です。なんといっても長身の松田優作が構えるM29、8.375インチ銃身モデルはダーティハリーに次いでM29が映えるといっても過言ではありません。プロの殺し屋である鳴海昌平がトラブルに巻き込まれるというフォーマットで3作が作られていますがだいたいそこに女が絡むというのもお約束になっています。


 鳴海昌平は普段はドテラを着て長身を折り曲げもっさりとしていますが、いざ仕事になると皮のジャケットとドライバーズグローブというスマートな身のこなしで敵を鮮やかに撃ち倒していくというある意味、フィクションの殺し屋像を打ち立てたキャラクターではないかなと思っているのですが、どうでしょう。『太陽にほえろ』のジーパン刑事で人気を博した松田優作が拳銃を撃てない刑事から一転、拳銃をスマートに扱い、レザージャケットにレザーパンツ、サングラスという出で立ちは真似した人も多かったとか。若者の当時のファッションアイコンにもなったように思います。この作品でのイメージが『探偵物語』につながっていったのは間違いないと思いますがその後、『野獣死すべし』で振り切った方向に舵を切り、『家族ゲーム』などで新境地を開拓したりしていたのですが…早過ぎる死が本当に惜しまれる俳優でしたね。遺作となったハリウッド進出作『ブラックレイン』ではヤクザのヒットマン(殺し屋)を凄みたっぷりに演じ切り高倉健、マイケル・ダグラスとも互角に渡り合った松田優作の新しい役が観れないのは残念ですが、殺し屋鳴海昌平は永遠に心に残り続けると思います。

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紅の拳銃

 戦争で右手を失った射撃の名手石岡が、鋭い目をもつ若い男、中田をスカウトし殺し屋へ育てるというストーリーで当時人気絶頂だった日活のスタア、トニーこと赤木圭一郎主演の作品です。赤木圭一郎といえば拳銃使い「抜き撃ちの竜」が活躍する拳銃無頼帖が有名ですがこちらも彼の最後の作品として、またそれまでの快活な青年や悩める若者と違った少し影のある男を演じており、これから先のキャリアも楽しみであったところが急に途絶えてしまったのが松田優作と同じく悔やまれる早逝のスタアでした。この作品で殺し屋なんざ商売にならないと石岡(垂水吾郎)が嘯きますが、彼が拳銃の扱いを中田に教え込んでいくシーンは師弟モノとしても面白く、銃の扱いもよく描き込まれています。ラストのオチといい、さすがは日活アクション映画だなと思わせる一本です。

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まだまだある殺し屋映画

 今回は5本を上げてみましたが、他にも『殺し屋1』(同名漫画を実写化)や日活でエースのジョーさん主演作『殺しの烙印』もありますし、Vシネマで上に上げた加山雄三の『狙撃』をベースにリメイクした仲村トオルの『狙撃 THE SHOOTIST』。原田眞人監督がVシネマで作った『タフ』シリーズからアメリカで撮影された『ペインテッド・デザート』。加藤雅也主演の『よるべなき男の仕事・殺し』も渋い映画でした。また時代劇に目を伸ばせばそれこそ『竜馬暗殺』『十三人の刺客』『必殺』など枚挙にいとまがありません。そうそう、ガンアクション主体の殺し屋の短編オムニバス、『KILLERS』もあります。

以前に書いたエントリ|5発の弾丸が奏でる銃声のシンフォニー『KILLERS』(キラーズ)|Web-tonbori堂アネックス

 殺人というのはある意味禁忌でもあるので、現実との接点がなさそうですが、その行為そのものが何かのメタファーになったり、置き換えられたりすることもあり、また莫大なエネルギーをようする行為そのものを描いたりすることによってドラマが生まれます。一人殺せば殺人ですが、1000人殺せば英雄。これはチャップリンの『独裁者』という映画の台詞ですが、殺しというのを生業にしている人間はヒーローにはなれません。しかし人の闇の部分を映したダークヒーローとして今後も殺し屋を主人公にしたりフィーチャーした作品はまだまだ作られていく事と思います。


 洋画篇もやってみたいですがそれこそ沢山あるので選びきれないかもしれないのでジョン・ウィックシリーズの新作が出た頃にでもやりたいと思います。ですが『ジャッカルの日』『殺し屋ハリーの華麗なる挑戦』辺りはtonbori堂おすすめですので気になったら是非チェックしていただければ幸いです。

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