出撃せよ、レッドバロン!|『BRAVE STORM』|感想【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

出撃せよ、レッドバロン!|『BRAVE STORM』|感想【ネタバレ注意!】

2017年11月27日月曜日

movie ROBOT VFX

X f B! P L

 往年のヒーロー特撮ドラマ『シルバー仮面』と巨大ロボット特撮『レッドバロン』、この作品をモチーフにしたSFロボットアクション映画『BRAVE STORM』が今月(2017.11)いっぱいってことなので観てきました。


YouTube|blast.inc|映画「BraveStorm」 予告編

 CGにより巨大ロボット、戦闘スーツで宇宙人と戦う、ヒーローアクションなどをミックスさせ新しく生まれ変わった作品になっていました。

巨大ロボット東京決戦!/STORY

 2050年、地球は滅亡していた。キルギス星人による侵略ロボット、暗号名ブラックバロンによる大気改造によりほとんどの人間は死に絶え、かろうじて生き延びた人類の運命も風前の灯火だった。そんな中、高名な科学者であった春日博士の遺児、春日兄弟はキルギス星人より盗み出したブラックバロンの設計図を手に春日博士の開発した時間跳躍技術で侵略される以前の過去へ赴く。キルギス星人の侵略が開始される寸前にそれを阻止し未来を変えるために。


 過去にもどった春日兄弟はブラックバロンが地球改造システムを発動する前に叩くためブラックバロンよりさらなる力を持ったスーパーロボットを天才ロボット工学者、紅健一郎に依頼することに。しかし博士は建造に一つ条件を出した。その条件とは、健一郎の弟、健が操縦者となることだった!はたして春日兄弟と紅兄弟はキルギス星人の侵略から地球を守る事は出来るのだろうか?

未来を変えろ!

 地球が滅亡の危機!過去を改変し地球の平和を守るのだというと、『永遠のゼロ』『三丁目の夕日』の山本貴監督の『リターナー』もそうでしたね。あれも敵はエイリアンだったけどこの作品とは対極にある気がします。あらすじを書いてて急に思い出しました。そしてTwitterでこの映画を観た感想をtonbori堂はこう書きました。



 実は『リターナー』もそう思ってたなあと思い出しましたが、趣味の点で言うと、今回の『BRAVE STORM』の方が断然好みかも(笑)監督・脚本の岡部淳也氏は『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』を手がけ、2007年から2009年の間、円谷プロで副社長として務めてらしたとか。そもそもCG制作会社ビルドアップの創立者として活動していたとかでその辺りもCG制作の白組出身の山崎監督とかぶりますよね。


 という事で『BRAVE STORM』なんですが、モチーフとなったシルバー仮面は前作の意匠を汲んだデザインのパワードスーツに。そして主人公が操縦するロボットのレッドバロンとそのデザインに残るラインは両作品に対するリスペクトが感じられます。敵のキャラクター造形に関してもその造詣は今風にリファインされています。(tonbori堂正直に言うとシルバー仮面それほど観てないんですよね、時間がかぶってたかなんかで。慌ててキルギス星人の姿を帰ってから確認しました。

(ソース|キルギス星人 (がんそうぇひひひ)とは【ピクシブ百科事典】

 主にシルバー仮面の敵の造形を現代風にリアレンジしています。特にキルギス星人は、ちょっと『牙狼』に出てくるホラーっぽくアレンジされてんぞと思ったら竹谷隆之さんのデザインでした。(竹谷さんは牙狼にも参加しているデザイナーさんです)とにかくやりたいことははっきりしていて、敵ロボットと対決する天才科学者の兄が建造したロボットに、弟が乗り込んで闘うという『レッドバロン』の基本プロットと、5人の兄妹たちが宇宙人と戦う『シルバー仮面』の基本プロットを繋げたて、そう来たかと思いました。


 元になった『レッドバロン』だけでも多分リブートはできるでしょうし、『シルバー仮面』だけでもそれは可能ですが敢えて両作を使ったのは強大な力を持つロボットの由来とそれに対抗する力の出処を上手く説明する手段として、なるほどねと納得できるものでした。もっともなぜ紅博士の家にピンポイントで時間跳躍出来たのかとかいろいろ整合性のとれていないところもありましたが、基本兄の作った巨大ロボで弟が戦う部分と、宇宙人と戦う兄弟設定をよくぞミックス出来たなと(反則な設定をつかってはいましたが(笑))

CG

 『BRAVE STORM』はCGを多用した作品ですが人物にはそれをつかっていません。だから正確には『不気味の谷』という表現には当たらないんですが、海外の『パシフィックリム』などにくらべるとロボット同士の戦闘シーンでは飛び道具やキメアクションは全く問題ないのですが、ロボ同士の肉弾戦がやはり重量を感じさせないという結果に。いろいろと手を尽くしたりはしているのですが、ここは難しいところです。


 見た目の迫力を重視するのか、ちょっとおかしくても派手にロボットの装甲が傷つくとかアクション重視でいくのか。予算の問題も当然あります。派手にすればするほど、合成などどんどんお金がかかります。そう言った意味では限られた予算でよくやっていたのではないかと。

アクション

 紅健はボクサーという設定ですが敵は宇宙人、そしてその尖兵たるロボット兵士にはまったく歯が立つはずもなく光二が纏うパワードスーツが、唯一それに対抗できます。しかし敵のロボット兵は強力で、人間の500倍(!)のパワーを引き出すスーツでも歯が立ちません。序盤、相手が強くて後半、乾坤一擲、もしくはパワーアップっていうのは定番なんですが、500倍って盛り過ぎなような(笑)しかもその割にはってのがありましたし、見た目にそれがわかりづらかった。説明入れるなら常人より強力な力を発揮できるで良かったのでは?ただブラックバロンに単身挑む、人間サイズのシルバー仮面も画的には面白かったんで、そういったシーンをもう少し絡めても良かった気がします。あと、山本千尋が演じるはるかは彼女がアクション出来るからこそ、最後のそこまで取っておいてか!と、非常に美味しい感じでそれを出すっていうのは良かったですね。それがまたカッコよく決まっていました。

キャスト

 シルバースーツを着用し、先頭にたつ春日光二には大東駿介。大阪は堺出身の俳優で、千原ジュニアが竹内力の当たり役でもある萬田銀次郎を演じた「ナニワの帝王」のドラマ『新ナニワの帝王』に舎弟の坂上竜一役で出演していました。今回荒廃した未来から父と兄の約束を守るために過去にやって来た戦士を好演しています。レッドバロンを操縦する紅健には仮面ライダーオーズの映司こと渡部秀。今回は映司のような飄々としてどこか達観していた青年ではなく、ボクサーとして少しギラついた、非合法な地下ファイトをやるようなちょっとアウトサイダーぶってる青年を演じていました。彼は他にも『科捜研の女』では空気の読めないマイペースすぎる研究員役を演じており今回はまた違った役に挑戦していることで今後も楽しみです。


 光二とともに未来からやってくる春日はるか役には山本千尋。彼女、『ウルトラマンジード』でヒロインの鳥羽ライハ役を演じており、そこでも華麗なアクションを披露しています。なんでも中国武術を3歳からやっており、数々の表彰を受けたとかで型がきれいに決まります。今後の活躍も期待です。他に仮面ライダーフォーゼでキャンサーゾディアーツ役のタモト晴嵐、紅健一郎に吉沢悠、そして泉谷しげる、寺脇康文がチョイ役ですが出演。春日兄弟の長姉には壇蜜などキャストも面白いメンバーでした。

スタッフ

 公開前の宣伝費用が足りないのでクラウドファウンディングしますという話の時に予告編を観て、おっ、なんか頑張ってるやんと思ってはいたんですがそのままになってて、公開のニュースが流れてきたときに、無事公開か良かったなあとなってよく見ると、脚本協力、北村龍平ってなってて?へっ?そうなの?と。そこはちょっとびっくりしましたね。他にメカデザインはシンガポール在住でマーベルとも仕事をしているというSkan Srisuwan氏。webで検索するとこういったページがヒットしました。

ArtStation - Skan Srisuwan

 そして音楽がかなり凝った音楽だなと思ってたんですが、なんでも岡部監督とウルトラギャラクシーで組んでいたMike Verta氏という方だとか。関係ないんですがOPシークエンスは少し「STAR WARS」のリスペクトが感じられたのがおっさんにはツボでしたね。

最後に

 いろいろ気になる点もあるし、ああ予算が無いんだなってのも確かにありました。予算が無くて当然ならば身の丈にあったものにしろという話もあるかもしれませんが、巨大ロボット戦を東京でという部分ではしっかりと描いて見せたと思うし、少なくともその挑戦は受け止めるべきものだと思います。またこれが他方に刺激となってウチならもっとすげーの出来るとなればいいんですが。実際『シン・ゴジラ』地上波のエントリの時にも書きましたけどもっと他方で盛り上がってくれるといいんだけどなって思うんですが、今のところは日本ではこんなところなのかもしれませんね。


 ただこの企画も宣弘社の映像権を有していたフィギュアメーカー・アルバトロスジャパンから岡部監督に持ち込まれたものだとか。その時には何故か『BRAVE STORM』というレッドバロンもシルバー仮面にも関係ないタイトルがついていたとかで、確かに両作品へのリスペクトあるもののタイトルがなんだかスーパーロボット大戦みたいなのに「A.C.E」みたいな感じありますよね(ゲームが例えで分かりにくいかもしれませんけど)その時は『アイアンキング』も入れて3本を併せたものにするという話を、さすがにテイストが混ぜにくいということで『シルバー仮面』『レッドバロン』の2本にしたとか。もっともその『アイアンキング』のテイストも全てを捨てたわけじゃないのですが、それは最後まで観てのお楽しみです。

ソース|【インタビュー】『シルバー仮面』『レッドバロン』を知らない人こそ見てほしい! 『ブレイブストーム』タイトルは監督も由来「わかりません」 | マイナビニュース

 この記事を読むと成り行きとは言え完全に自分一人でコントロールできたのもかえっていい結果を産んだのかなとも思います。まあ実際にはいろんな人に協力も仰ぎつつここまでのものに仕上げたのですが、勢いにのるという作風は嫌いじゃありません。その辺り脚本協力にクレジットされている北村龍平監督に通じるものがありますよね。そんな岡部監督の次なる一手は続編なるか?はたまたというところで今後も動きを注視していきたいと思います。

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※悲しいお知らせが。監督がTwitterでつぶやいてらっしゃったんですが権利関係のトラブルでBlu-rayは廃盤、配信も終了になってしまっています。現在も塩漬け状態でもったいない話です。

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