『ダンケルク』を観た人へのおススメ映画。|tonbori堂映画語り-Web-tonbori堂アネックス

『ダンケルク』を観た人へのおススメ映画。|tonbori堂映画語り

2017年10月1日日曜日

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 『ダンケルク』以後を観たい人、他のも観たい人へ。『ダンケルク』自体が賛否両論で、物足りないよという人、凄く満足した、でもこの後どうなるの?って人いらっしゃると思います。実は『ダンケルク』公開前にもある事はあったんですが公開後にとみに増えたのが『太平洋奇跡の作戦 キスカ』のツイートです。その他にも『ダンケルク』にはマイケル・ケインが声のみのカメオ出演をしていることで、『空軍大戦略』というダンケルク撤退後に起こったドイツのイギリスへの戦略爆撃を阻止しようとする英空軍の活躍、いわいゆるバトル・オブ・ブリテンを描いた映画に登場したケインを思い起こさせるようになっています。




マイケル・ケインのカメオ出演についての映画ナタリー公式アカウントのツイート

 『ダンケルク』はtonbori堂としても凄く満足できた良い映画だと思うのですが、今回はそういう『ダンケルク』後におススメしてみたい映画をご紹介してみたいと思います。

『太平洋奇跡の作戦 キスカ』


画像はAmazonより(リンクも)|『太平洋奇跡の作戦 キスカ』|(C)1965 東宝|
画像はAmazonより(リンクも)|『太平洋奇跡の作戦 キスカ』|(C)1965 東宝|

 まず最初は先にも触れたこの作品です。撤退作戦としては規模がまったく違うのですが厳しさで言えば、ある意味それ以上な撤退作が戦時中の日本でもありその太平洋戦争秘話の実写化という作品です。

 時は太平洋戦争で日本の戦況も苦しくなりつつある頃、ミッドウェー海戦前に戦局を優位に運ぶためアリューシャン列島に進出した日本軍でしたが、体制を整え反攻に出た米軍により包囲され、近傍のアッツ島の守備隊は玉砕。このためキスカよりの撤退が提案され、海軍軍令部でも意見が対立したものの、キスカ島に孤立した日本軍守備隊5千名余を救出作戦が決定されました。救出するために派遣された帝国海軍の水雷戦隊が米軍艦隊の包囲網の隙間を縫って一発の砲火を交わすことなく全兵員を島から撤退させたという作戦を映画化したのがこの『太平洋奇跡の作戦 キスカ』です。


 公開前に映画評論家の町山智浩さんがラジオで語った事が映画ファンの間で回ったり、以前に観ていた映画ファンが『ダンケルク』も凄いけど日本にもずっと前にこういうのがあったんだゼとつぶやくことでじわじわとこの作品を知らなかった映画ファンにも拡がっているようです。この映画は東宝オールスターキャストで製作されており、東宝映画になじみの深いキャストが集められました。しかも女性は一人も出演していません。史実を基にしているためそれぞれの名前こそは変えられていたり、その役割を変更されたりはあっても女性が関っていないので出演すらしていないのです。


 当時の状況でもこれは相当に冒険だったのではないかと推察しますが、今リメイクしようとすると多分女性が登場するシーンなどを挿入しようとするのではないでしょうか。それをしなかった当時のスタッフの真摯さが伺えます。物語は多分に架空の部分もありますが、大きく逸脱せぬように当時の生き残りの方を迎えて考証を行っているそうです。内容の方も重厚かつ、手に汗握る展開で飽きさせないつくりになっています。特に日本の戦争映画といえば一部の例外を除いて、特に最近の作品だとヒロイックかつ泣かせる作品や壮絶な玉砕、どうしても戦後の思想で作られたものになっていきます。


 ですがこの作品はまだ戦争を記憶している層も多く、負け戦だったけれど、悲惨な事もいっぱいあったけど、その中でもこういう事があったんだという事を伝えたいという気持ちがにじみ出ている気がします。戦争美化ではなく、こういう事もあったという。助かった命もあったという事を伝えたかったのだと思います。重厚な配役陣によって細部の相違はあっても迫力のある画がつくられており手に汗握るシーンも用意された一大戦争スペクタクル巨編にふさわしい作品です。海軍兵学校をドンケツ(最下位)で卒業したたたき上げの大村司令官(史実は木村昌福少将)に三船敏郎、彼にキスカ救出作戦を任せる兵学校同期の第五艦隊司令官川島中将(史実では河瀬中将)を山村聡。以下、志村喬、中丸忠雄、稲葉義男、田崎潤、平田昭彦、佐藤允、西村晃。短いシーンながらも天候を予測する気象予測担当員として児玉清が出演。これほどの名優が一度に会する作品はもうありません。一度でいいから是非ご覧いただきたい映画です。

『空軍大戦略』


画像はAmazonより(リンクも)|『空軍大戦略』|提供 MGMPLUS
画像はAmazonより(リンクも)|『空軍大戦略』|提供 MGMPLUS

 ダンケルクからの撤退後、ドイツはイギリス上陸作戦、ゼーレーヴェ作戦を発動。前段階としてイギリスへの制空権確保のためドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)は総力をもってドーバー海峡を越えイギリスの空に殺到しました。ダンケルクでも兵士を苦しめたハインケル、スツーカなどがイギリスの空にやってきた時、それを撃退したのはRAF(英国空軍)でした。この戦いは「バトル・オブ・ブリテン」と後に呼ばれる戦いとなり、ドイツの猛攻を凌いで上陸作戦をあきらめさせ、ノルマンディー上陸作戦へとやがてつながる遠因を作ったのです。


 『空軍大戦略』はこの「バトル・オブ・ブリテン(原題名もこのバトル・オブ・ブリテン)」の出来事を映画化したもので監督は初期の007シリーズの監督を務めたガイ・ハミルトン。後にイギリスの特殊部隊がユーゴスラヴィアの奥地のパルチザンを助けるためにドイツ軍の侵攻を食い止めるべく橋を爆破する任務につく「ナバロンの要塞」の続編『ナバロンの嵐』の監督も務めたアクションの名匠です。この映画は明確なストーリーが無く、攻めるドイツ軍、護るイギリス軍という構図で進む群像劇となっています。その部分もちょっと『ダンケルク』と近いといえば近いのですがあの話はかなりの短い時間、1週間、1日、1時間を交錯させた作りに対し、この映画は時系列的にそれぞれ登場人物の点描を行っている印象です。


 そのためイギリス側の描写が中心ですがパイロットや後方支援の指令室要員など多くの登場人物が登場します。特徴的なのはダンケルクの撤退は当初の見立てより成功を収めたとはいえ人員の窮乏が激しく、男は前線へ、後方任務には女性を登用ということで婦人支援部隊として指令室の無線指令はいうにおよばず作戦ボードの操作など多岐多数の女性が基地で勤務する事になりました。そういったことで第2次世界大戦の映画では珍しく軍人の女性が出演している映画でも有ります。


 キャストは英国を代表する俳優が集まっており、ざっと上げるだけでもローレンス・オリヴィエ、クリストファー・プラマー、トレヴァー・ハワード。『ダンケルク』にも声のカメオ出演を果たしたマイケル・ケイン、この映画の事が念頭にあったというのは先にも書きました。『ジョン・ウィック』にも出演しているイアン・マクシェーン。『ジャッカルの日』のエドワード・フォックスなど。


 レシプロ戦闘機などの飛行機も重要な部分で『ダンケルク』でも本物のスピットファイアが撮影に使用されましたがこちらも本物のスピットファイアが使用され迫力の空中戦を再現しています。相手はメッサーシュミットBf109のスペインのノックダウン生産されたイスパノHA1112とこちらも『ダンケルク』と同じ布陣をひいています。『ダンケルク』での製作がニュースになったときに『空軍大戦略』を思い出した古くからの映画ファンも多かったのではないでしょうか。ちなみに『ダンケルク』では出なかったハリケーンも出ていますのでそちらも見どころかと。ちなみに余談ですが飛行シーンはイスパノHA1112がハリケーンのカラーリングでハリケーンとして登場しているそうです。『ダンケルク』の飛行機ネタの時にも書きましたがロールスロイス・マーリンエンジンを使用しているのでカラーリングを変更すると…ハリケーンに見えなくもないのですね。それでも本物の飛行機を飛ばした迫力は本物です。ハインケルも(これもスペインでのノックダウン生産された機体)ロンドンの空を飛ばしたそうで大きな話題になったそうです。

 『ダンケルク』後のイギリスの苦闘の時代を知るのにこの映画を観るのはいいかもしれません。時間は長めの151分(オリジナル上映版は133分)ですが長い戦いを収めているのでこれでも短いくらいかも。レシプロ飛行機好きには特におすすめな映画です。

『史上最大の作戦』

画像はAmazonより(リンクも)|『史上最大の作戦』|Blu-ray
画像はAmazonより(リンクも)|『史上最大の作戦』|Blu-ray

 ダンケルク撤退から4年、欧州での戦線が膠着しはじめたころ、連合軍が計画した欧州解放のために計画された一大反抗作戦、ノルマンディー上陸を描いた映画です。オーバーロード作戦、Dデイとも言われるこの作戦はまさに史上最大のスケールのもので、空挺部隊とノルマンディーに多数の艦艇が集結、激戦となったオマハやジュノー、ソードなど5か所から同時に上陸を開始しました。原題は『ザ・ロンゲストデイ』長い1日です。『ダンケルク』は時間軸を操って1週間、1日、1時間を交錯させましたが、こちらは作戦開始前の描写もありますが本編は上陸戦の1日を中心に描かれています。


 原作となる戦記を記したのはコーネリアス・ライアン。元々従軍記者だった彼は戦後にノルマンディー上陸作戦に関する戦史を上梓しました。それがこの『史上最大の作戦』です。エピソードは作品に記述されたことを取り入れて描かれ、米英独仏の4か国合作となった超大作です。監督はイギリス側、アメリカ側、ドイツ側と3人体制で行われイギリス側の監督には名匠ケン・アナキン、米側はアンドリュー・マートン、独側はベルンハルト・ヴィッキが務めました。キャストもそれに合わせて超豪華でジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、ロバート・ライアン・リチャード・バートン、ロバート・ミッチャム、ショーン・コネリー、クルト・ユルゲンス、ゲルト・フレーベ、ヴォルフガング・プライスなど。


 綺羅星の如くスターが集結していますが、それ以外にも多数の兵士役で多くの人間が関わっているまさに超大作にふさわしい作品です。特に後半のオマハビーチでの激闘ではロバート・ミッチャム演じる指揮官、コータ准将が危険な地域で兵士たちを鼓舞しながら死地に向かわすシーンは印象深く残っています。また犠牲者を数多く出しながら防護壁の爆破に成功後、突入を開始する時に副官(演じるは『華麗な探偵ピート&マック』のエディ・アルバート)が狙撃され戦死してしまうなど戦場の無情さも印象に残っています。連合軍より視点と思われがちですが、ドイツ軍も普通の人間として描かれており、その日、連合軍の総力を挙げた作戦に、受けて立つドイツ軍は何故か全ての歯車が悪い方に転がっているという描写や一部を除いて彼らも普通の軍人として描かれています。ドイツ軍側ではトーチカの指揮官プルースカット少佐が霧のかかった海が徐々に晴れていくと海が連合軍の艦艇に埋め尽くされ驚愕するシーンが一番印象深いですね。


 その上で戦争のむなしさを感じさせる(これは原作にはありません。思わせるエピソードはありますが)挿話が差し込まれてエンドロールを迎えます。『ダンケルク』の後に観るともっさりした感じがありますが『太平洋奇跡の作戦キスカ』と同じくモノクロのためモノクロならではの迫力を産んでいます。時間は178分、長尺ですがそれに足る作品です。これも本当は70mmのかかる劇場で観るのが一番いいのですが(tonbori堂もリバイバルで鑑賞したためは70mmのスクリーンでは鑑賞できていません。初見は日曜洋画劇場のノーカット2週放送の時です。)それでも迫力の片鱗が感じ取れる作品ですので是非ご覧いただきたい作品の一つです。

その他にも

 上げればきりが無いのですが『バルジ大作戦』(ガルパンが好きな人はパンツァーリートの元ネタとして知ってる方も多いのでは)『遠すぎた橋』(ノルマンディー上陸作戦後に実施された連合軍の侵攻作戦。しかし空挺部隊の確保した最終地点に到達できず橋頭堡を確保に失敗した)『大脱走』(捕虜となった連合軍の軍人が収容所から脱走する話でこれも実話を元にしている)最近の作品では実話モノではないですが本物のティーガー戦車が使用された『フューリー』また過去には名匠サム・ペキンパーがドイツ軍兵士を主人公した異色作『戦争のはらわた』もあります。そして先の『史上最大の作戦』のDdayの描き方のみならず、戦争映画の描写をも変えてしまった『プライベート・ライアン』それぞれ勇ましいだけではなく、戦う事の意味や、不屈の精神など観るべきところの多い映画ですのでどれかをご覧いただけるきっかけにこのエントリがなれば幸いです。

 そういえばゲイリー・オールドマンが特殊メイクでウィンストン・チャーチルを演じる映画も第2次世界大戦初期から『ダンケルク撤退のダイナモ作戦を決断、作戦後の演説までを扱ったものになると伝え聞いています。こちらもどんな映画になるのか気になる所ですね。



映画秘宝公式アカウントよりゲイリー・オールドマン主演『DarkestHour』の最新トレーラーを伝えるツイート

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