光ある所には影がある。/『サスケ』より/白土三平(c)赤目プロ/エイケン
これはアニメ『サスケ』のOPナレーションの冒頭です。サスケという少年忍者の成長を通して幕府の支配が確立していくまでを描いた漫画です。白土三平先生は自由人としての忍者と階級に縛られ支配者と被支配者としての忍者を描いた漫画をよく描いています。この「光あるところには影がある。」というのはアニメのOPナレですが非常に白土三平漫画の本質を突いている気がします。
そしてが永野護も影響を受けた作品の中に白土三平先生の『忍者武芸帳』や『カムイ伝』の話が出ているというのは知られている話で、Newtypeの86年付録『THE OFFICIAL ART OF The FiveStarStories』のインタビューでも掲載されています。今回はこの忍者の描写が非常にファイブスター物語の忍者や、それ以上に騎士の戦いにも影響を与えているという話をしてみたいと思います。
ファイブスター物語リブート第3巻|永野護 著|KADOKAWA刊| |忍者トモエが初登場のエピソード「トラフィックス」が収められたリブート3巻 |
一般人ではなく、さりとてファティマを娶る事も出来ない騎士として中途半端な者たちが、その力を活かせるのは忍者というジョブ(職業)であるというのがファイブスター物語での忍者の位置づけです。(※もちろんファティマを娶る能力があってもそれを取らず忍者をしたり娶ってるけど忍者(指揮もするが自らも現場に赴く)という騎士もいるでしょうけどそこまでになると基本、騎士として認識されるのでモブとしての忍者はこの認識かと思います。)
ジョーカー星団で有名な忍者と言えばまずはトモエでしょう。泉興京巴、本名は堀川南桐院亜矢之巴(ほりかわみなみとういんあやのともえ)という平安貴族もかくやという雅な名前でデルタベルンの貴族の出という設定がなされています。初登場時はナイトグルーピーの一人としてカイエンのカステポーでの姿、ヒッター子爵の取り巻きの一人として登場。メヨーヨのイラーと契約してMHの首狩りのサポートとして対戦相手の選定をしたり下準備をしていたりしていました。
何故かファティマを非常に憎み、彼女らを嫌うがあまり捕らえたアレクトーを解放時に脚をスパッドで斬り付けたりしています。ただファティマに対する憎しみは異常なものがありますが部下からは非常に慕われている描写もあります。もっとも忍者ですから人に対しては仮面を被っている可能性もありますが(苦笑)その他はトモエの部下としてモブ的に登場したりバッハトマの追跡部隊として出てくることも。そう言えばジュノーでの対ハグーダ戦では騎士級の力をもつ少数民族ミミバ族っていうのが出てきましたが彼らもそういう雇われの忍者っぽいですよね。
この辺り、忍者って騎士級ではあるんだけど凄い陰影を映している設定だなと連載再開後、アララギ・ハイトが出てきたくらいから凄く思うようになりました。そこからリブートを読み返すと、ダイバー、今はボルテッツなんですが彼らも含めジョーカーの人たちっていうのは一般人とそういう強化された人間と言う階層、そしてその力を持った人々との階層っていうのが明確に線引きされていてそういう部分は白土三平漫画にも通じる部分があるなと感じます。それに主人公は天照だけどそれぞれのエピソード主人公が設定されているのは『忍者武芸帳』『カムイ伝』っぽいと思うのです。(個人の見解ではありますが。)
ここが似ている?「忍者の使う技、武具。」
これも白土三平先生の影響のその一じゃないかと思うんですがトモエがまだ子供のジャコーとラ・シーラと戦った時に使った撤退時に使った術の名が『春花(しゅんか)の術』まあ唐辛子スプレーのような煙幕(スモーク)をつかっての術でしたが、この術は白土三平漫画の忍者もしばしば使う忍術です。基本的に相手の風上に自らの位置を取り、気づかれぬように風にしびれ薬や揮発性の液体を混ぜて流し相手を行動不能に陥らせるという術です。トモエのように如何にも毒ガスみたいな煙幕の術ではありませんが忍者の忍術の中でも知られている術のようで他の忍者漫画でもしばしば使われるからこれをもって白土三平漫画の影響!じゃないかもしれませんけども(苦笑)
お次は最近のデザインズでトモエのイラストで彼女が手に持っている鋭い大きな針状のものです。解説には千本と書いてありましたが、これもまた忍者の使う武具の一つで白土三平漫画でも『カムイ外伝』で女忍者スガルが好んで使っていた武具です。『サスケ』ではこれを影縫いという術に使用していた忍者もいました。影縫いはトモエがジャコーに対しても行っていましたが白土三平漫画では影縫いとは暗示を利用した瞬間催眠のようなものでしたが、対ジャコーでは多くの手裏剣を投げつけその場に釘付けにするという物理的なものでした(笑)
|ファイブスター物語リブート第6巻|永野護 著|KADOKAWA刊 |ジャコーとトモエの戦いが収められている『ザ・シバレース』が収められている。 |
また、騎士の動きは姿が見えないということで人の動いた効果線、動いた残像を表す流線での表現は『花の詩女ゴティックメード』ではアニメーションで表現されましたが、『サスケ』や『カムイ外伝』の漫画での動きも常人よりも早い動きで目に捕らえられないということでしばしばそういった表現がなされることがあります。
そして白土三平作品の代表作『サスケ』といえば分身の術が有名ですが『ファイブスター物語』でも分身攻撃(パラレルアタック)としてよく使われますよね。『サスケ』の分身の術は素早く移動して自らを多く見せる技ですが、騎士(忍者)はさらに高速スピードで分身八つ身どころか剣聖デイモス・ハイアラキは十六分身やってましたね。ちなみに『サスケ』では基本が四つ身で八つ身ならば相当の手練れだったと思います。
『サスケ』や『忍者武芸帳』に出てきた風車手裏剣は騎士の武器、バルバラの元ネタでしょう。GTMの武装としてツラック隊で出てきた投擲用のバルバラ・ガットブロウは『サスケ』に出てきた円月手裏剣っぽくもあります(つまりはブーメランなんですが)(これは先に書いた付録のインタビューの欄外カットにも指摘がありました)
実はシーンやカットにも
追跡シーンでは度々白土三平漫画っぽい画がでてくるのですが特にコーラス・サードがラルゴに斬られる前にウリクルと追っかけっこしたところなんかは殆ど白土三平漫画っぽかったですね。そして、あのすえ(当時まだL.E.Dドラゴンの幼生、現在はセントリーライブ)の命の水争奪戦での対シーブル(ハイドパイパー)戦でテロル・ミラージュ初登場時の画はまさに風車手裏剣をもって荒野に立つ影丸っぽいよなあって今にして思えばそう見えてきます。またすえぞうとアトロポスを追うブラフォードが子供に術をかけるシーンもまた『サスケ』によく似たシーンがあったように記憶しています。(幻術使いなどが催眠状態にして相手を操ったり情報を聞き出す)
ストーリーの根幹にも「光あるところには影がある」だけじゃないけど階級の部分などちょいちょいそういう部分が入り込んでくるなどその影響は小さく無いかもしれません。もしご興味があれば白土三平漫画は『サスケ』あたりからお読みになるのをおすすめいたします。サスケという少年忍者が主人公ですが非常にハードなストーリーが展開される全編「トラフィックス」な忍者漫画です。前半と後半があり前半部がややまだ読みやすいかもしれませんが、なかなか厳しい描写も多いのでその点はご注意ください。ですが忍者マンガの金字塔として今も読み継がれる傑作です。
|サスケ (全10巻) Kindle版※2021年10月8日、白土三平先生はこの世を去りました。数々の名作を残し後進に多大な影響を与えた先生のご冥福をお祈りいたします。
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