8月に観たい映画として第二次世界大戦を題材にした邦画(日本映画)をご紹介しましたが、続いて洋画で第二次世界大戦を描いた映画を2本ご紹介したいと思います。
洋画から見た第二次世界大戦
実はtonbori堂、この前に公開されていたメル・ギブソンの『ハクソー・リッジ』を見逃してしまったのです。この『ハクソー・リッジ』は沖縄が舞台となった映画ですが日本側の描写はそれほどでもない事と宣伝に沖縄上陸戦ということがあまり入っていなかった事。そして沖縄のハクソー・リッジと呼ばれた前田高地がある浦添市がサイトを作って歴史的背景などを紹介しているなど話題になりました。
その事に関しては忸怩たるものがあるのですが、『ハクソー・リッジ』以外にも米軍と日本軍の戦闘を描いた映画はまだまだあります。その中でクリント・イーストウッド監督の2本をピックアップしたいと思います。
この2つの作品は第二次世界大戦、太平洋戦争で米軍が日本への侵攻への足掛かりにするため南はサイパン、グアムを落とし、沖縄へ侵攻しました。こちらの激戦が描かれたのが『ハクソー・リッジ』とすれば、こちらは太平洋側から日本への絶対防衛線、硫黄島を落とす作戦を展開するためやってきた米軍海兵隊と日本軍側の守備隊の激戦を双方の視点から描かれた映画を日米双方の目線で描いた作品となっています。
『父親たちの星条旗』
『父親たちの星条旗』は戦場から帰って来ても心が硫黄島に残ったまま、そこで死んだとも言えるお話で、有名な写真の裏にまつわる秘話というべきものでした。その写っている6人のうち生き残ったのは3人。帰還後、戦費調達のための戦時国債キャンペーンに駆り出されていったものの戦争中の体験とのギャップに苦しむ兵士たちの苦悩を描き出しています。
1枚の写真で有名で英雄となった兵士たち、ですが実際には写っていない兵士が写真に写っている事として召喚され国債のキャンペーンに参加したり、地獄の戦場で受けた心の傷は予想以上に深いもので英雄と言われる事によりますます、現実と解離していくそれぞれ生き残った兵士たちのその後を描き出す作品でした。このエントリを書くに当たって思い出したのですが主人公ジョン・”ドク”・ブラッドリーは海軍の衛生兵、『ハクソー・リッジ』の主人公デズモンド・ドスは陸軍の衛生兵と衛生兵が中心人物というのも何かの奇縁を感じます。
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『硫黄島からの手紙』
『父親たちの星条旗』は米軍側からの硫黄島の激戦を描いた映画でしたが、『硫黄島からの手紙』は日本側からの視点で描く作品です。イーストウッド監督は当初この作品は日本人監督に撮って欲しいと考えていたそうですが結局、本人がメガホンをとることになったそうです。
作品自体もクリント・イーストウッド監督らしい、静謐ですが心に喰い込む激しいシーンで構成され、戦争映画としても一級品ですが、邦画としても遜色ないちゃんと日本人が描いてある映画でした。もう手元にパンフレットが無いのですが確かイーストウッド監督は、栗林中将がアメリカに駐在武官として駐在していた頃に米の政府関係、軍関係者とも知己を得ていた事を知り、映画の冒頭でも赴任していたアメリカから離任時に真珠のグリップ付きM1911A1を送られたことを映画でも描いています。それほどの聡明な人間が何故と言う興味を湧いたそうでかなりリサーチをしたということも併せて書いてありました。実際に無意味な特攻は厳禁し、硫黄島での戦闘を少しでも長引かせ本土防衛までの時間稼ぎをするため、堅固な要塞化としたのは栗林中将の発案だったそうです。ちなみに硫黄島の読みは「いおうじま」ではなく「いおうとう」ですがこの映画のローマ字表記では「いおうじま」です。アメリカでは長らくそう言いまわされていたからだそうです。
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それぞれの群像劇
『父親たちの星条旗』も『硫黄島からの手紙』も、どちらも群像劇です。物語の語り部、狂言回し、生き残った者としての役割を『父親たちの星条旗』ではドク・ブラッドリー(ライアン・フィリップ)、『硫黄島からの手紙』では西郷(二宮和也)が引き受けていましたが主人公は、アイラでありレイニーであり、栗林でありバロン西であり、清水憲兵であるのです。『父親たちの星条旗』にはいわゆるビッグスターは配されていません。中心人物でもあるドク・ブラッドリーにはライアン・フィリップ、ドラマ『ザ・シューター』などに出演しており映画やドラマなどで活躍している俳優です。アイラには『LAW&ORDER:性犯罪特捜班』、『ウィンドトーカーズ』に出演したアダム・ビーチ。イーストウッド監督はドラマ出身俳優を起用する事が多いですが、それは彼が『ローハイド』というドラマ出身だからかもしれません。
『硫黄島からの手紙』には栗林中将には渡辺謙。『ラストサムライ』でアメリカでも認知度が高い俳優です。その他はオーディションにて決定したそうですが西郷一等兵にはV6の二宮和也、バロン西として馬術選手として高名であった西中佐には伊原剛志。憲兵の清水には加瀬亮、伊藤大尉は中村獅童という面々があつめられました。この中でもやはり栗林中将を演じた渡辺謙は貫禄を見せていましたが、伊原剛志、二宮和也もよい演技で、時にこれは邦画ではないのかという感覚は、彼らが日本語で演じていたからでしょう。それはイーストウッド監督が日本からの視点なので日本語で演技してもらうのが当然という考えだったからだようです。それぞれが戦争という極限状態でどうふるまったのか?人の生き様が映し出される。この2本はそこを活写した優れた映画だと思います。硫黄島という小さな島で繰り広げられた激戦の中でも人は生きていたという証があったという事に気づかされる作品でした。
最後に
またもや2本だけですがクラシックな名作といえばクワイ河マーチが有名な『戦場にかける橋』があります。これは日本軍が泰緬鉄道のためにタイとビルマの国境近くにあるクワイ河に橋を架けるため捕虜に過酷な労役を科した事実を基につくられた映画で、日本軍の捕虜収容所責任者の大佐と捕虜のまとめ役である高級士官との対立を軸に人間性のギリギリの部分と戦争の非情さを描き出した傑作です。
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ただ随分前に観たきりなので記憶が薄いのです…。ラストシーンと捕虜を並ばせるシーンが印象的でした。捕虜を虐待すると言うとアンジェリーナ・ジョリーが監督した『アンブロークン』という映画もありましたね。こちらは日本軍が悪者っぽく描かれているという理由であまり話題にもならず埋もれてしまいましたが、困難な状況に置かれても人としての尊厳を捨てずに生きる事を選ぶ主人公を描いた映画と聞いています。ですがこちらは未見なためなんとも言えないのが残念です。
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第二次世界大戦の記憶はどんどん過去のもになっていくでしょうがクリストファー・ノーランがダンケルクの撤退戦を描いた『ダンケルク』がつくられたように、まだまだ伝える事が伝えたいことがある限り第二次世界大戦の映画は作られることと思います。その中でまた『父親たちの星条旗』や『硫黄島からの手紙』のような心に残る作品と出会いたいと思います。
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