今回は深夜アニメ『プリンセス・プリンシパル』で主人公が一風変わったピストルを使ったり、懐かしのSF小説のガジェットの名前がでてきたりしているので、それについて書いてみたいと思います。
『プリンセス・プリンシパル』とは?
ちなみにこのアニメ、スチームパンク+スパイ+女子校生というゲーム仕立てな設定です。飛行石ならぬケイバーライトという物質で浮遊する事が出来る世界でその力をもってして世界を睥睨する王国と不満をもった民衆により打ち立てられた共和国とに分かれた世界に生きる少女たちの物語です。
ヒロイン、アンジェの使うリボルバー/ウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバー
深夜アニメ『プリンセス・プリンシパル』を観始めたのはヒロインがあるピストルを持っていると知ったからです。TwitterのTLに「『プリンセス・プリンシパル』の主人公が見た事が無い自動で撃鉄をコッキングするリボルバー(回転式拳銃)が出ている」という文章があって、ああ、なるほどと、元ガンマニアなのでピンと来ました。(ちなみに上の画像ではちょっと粗いので分かりにくいと思いますが主人公アンジェが構えているのは下の画像のリボルバーです。
By Amendola90 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link 画像はWikipediaよりウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバー |
これ、昔の子供向けの種本(世界の戦車とか、世界の戦闘機みたいな図鑑)で拳銃百科とか拳銃図鑑みたいなのには必ず『変わり種拳銃』みたいな項目で紹介されていた拳銃です。どういう動作をするかはリンク先のYouTube動画をご覧いただければ。
リンク|Firearm Demonstration: Webley-Fosbery Automatic Revolver/Royal Armouries/YouTube
スローで撮影されているのでどういう動作をしているのかよく分かると思います。ハンマーをコック(撃発位置にする)して、トリガー(引き金)を引くと銃弾が発射された反動で銃身とフレームがグリップ側のフレームのレールを介して後退、シリンダー(レンコン型の弾倉)に刻まれた溝がそのレールをなぞり次弾を発射位置へと回転させ、ラッチを押し上げハンマーがコックされるという仕組みになっています。
このリボルバー(回転式拳銃)はイギリスのウェブリー&スコットで製造されたリボルバーで、開発者のフォスベリー中佐の名前が冠されています。日本では残念ながらトイガンとしてモデルアップはされていませんが中折れ式のリボルバーはモデルガンとして発売されています。エンフィールド・リボルバーといわれていますが元はウェブリー&スコットが製作したリボルバーが元になっているので雰囲気が近いリボルバーと言えるでしょう。劇中でも他のキャラクターが使っている拳銃とほぼ同型です。物語は架空のイギリス、ブリテン島、ロンドンで展開されるお話のようですが、東西に分裂しているという設定は旧ドイツを思い出させますし、違った歴史を歩んでいるスチームパンクな世界観には、こういうレトロながら変わった機構を持つリボルバーが似合うということなのでしょう。
an Enfield No. 2 Mk1 in fine condition. from bench rest at 25 yards./Wikipedia/Michael E. Cumpston - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=29027901による |
他にでてくるピストルもワルサーPPKのような小型ピストルから木製ストックをつけた多銃身のマシンガンなど第2次世界大戦前夜のような武器をつかっていることからも明白です。そういえばチームの一人、ドロシーの使う銃はリボルバーですが長銃身でしかも銃身の下に木製のフォアグリップがついている変わった形の銃でした。ラストの方ででてきたのではっきりとは分かりませんでしたが実際の銃にいろいろ混ぜる感じがします。
ケイバーライト
そこで『プリンセス・プリンシパル』の第1話を観たわけですが、いきなりOPでこの世界で強大な王制の軍事国家アルビオン王国が「ケイバ―ライト」と呼ばれる物質を利用した空中艦隊をもって覇権国家として世界を席巻したがやがて革命により東西に分裂、王国と共和国に分裂したとあります。
首都ロンドンは壁で東西に分割され、その王国領(東側)にある名門校クイーンズ・メイフェア校に通う5人の生徒、実は共和国の情報組織コントロールに所属するスパイが繰り広げるスパイアクションなのですが、空中艦隊を浮遊させる動力源に用いられるケイバ―ライトなる物質は小さい頃にSF小説に触れた頃がある人ならなんとなく聞いたことがあると思ったのでは?私もケイバ―ライトってなんか聞いたことがあるぞ、『宇宙のスカイラーク』だっけ?いや『キャプテン・フューチャー』?いやいやもっと古いと、記憶だけではなんともあやふやなため検索してみました。
答えはSFの父H・G・ウェルズの『月世界最初の人間』に出てくる重力遮断物質の名前です。『プリンセス・プリンシパル』でもこの物質のおかげで大きなものが宙に浮き、アルビオン王国はそれで鋼鉄の空中戦艦を作り世界の覇権を握ったのです。ウェルズの小説ではケイバ―ライトは開発者のケイバーからとられているのですが『プリンセス・プリンシパル』の世界ではどうなのかは劇中でははっきりとあかされていません。分かっているのは重力を制御できる物質である事。ある程度の大きさが必要であるとされている事。(例外としてアンジェが持つ小型の装置Cボールがありますが、それゆえに1話のゲストキャラクターである亡命を希望する研究者エリックはケイバ―ライトの小型装置Cボールを見て驚いていました。)劇中での描写を見るにあちこちで使われているものの連続使用で高温を発したり、事故もあるようで、被曝?描写もあることから取り扱いには慎重を期する物質のようです。
物語から分かるケイバ―ライトに関する情報この程度ですが、もうちょっと詳しい情報は公式サイトにあります。それによるとケイバー博士によって発見された物質でアルビオン王国で産出され、熱によってコントロールできるとか。そのため熱を効率的に利用できる蒸気機関の活用が進みまさにスチームパンクな世界になったようです。
そして王国で革命を起こしてアルビオン共和国となった西側でもその技術は保持されケイバ―ライトを産出でき、王国よりも若干技術開発は進んでいるとのこと。アンジェの使ったCボールという個人用ケイバ―ライト機関で非常に希少な装置だとかこの事からも彼女が歳若くしてそうとうの優秀な工作員ということがうかがい知れます。ここに記した説明は『プリンセス・プリンシパル』公式サイトのWORLDに用語解説がありました。興味のある方は一読されることをおすすめします。とは言えこの辺りも徐々に作中で言及される、もしくは示されるとは思います。
飛行戦艦
ケイバ―ライトを使用し空中に浮遊する戦闘艦。海軍が運用しているのか?空軍なのか。いや空中戦艦なので海軍の気がしますが、それは細かいところが気になる私の悪い癖です(苦笑)でどうだっけと初回のナレはどういってたかなと思ったんですが調べてみると「王立航空軍」とか、そう聞くと「王立宇宙軍」を思い出しますね。
飛行戦艦というと、宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』に出てくるゴリアテが思い出されます。飛行船のように浮遊性のガス(ヘリウムなど)をつかった従来の飛行船に重武装で軽金属ではなく装甲版で居住区域やガス嚢を覆い、重量増加には各部に配したプロペラで浮力、そして速力を得る、まさに空飛ぶ戦艦といった威容を誇っています。第1次世界大戦時には、飛行船も軍事用に使われることが多かった時代です。もっとも装甲は薄く、艦艇よりは速力はあるものの、飛行機より絶対的に遅い飛行船は輸送任務か偵察任務が関の山でした。ただ巨大なものが空中にあるという威圧効果をかわれて爆撃任務にも利用されたことがあるそうです。
ソース ツェッペリンーWikipedia より
アルビオン王国の空中艦隊のケイバ―ライト飛行戦艦はケイバ―ライト機関を利用しているので多分、海に浮かぶ船をそのままというわけではないでしょうが、駆逐艦なみの装甲と(重量が重いと足が遅くなるので)駆逐艦なみの火力をもったものではないかと推察されます。第1話のアバンのナレーションの止め画で観ただけですがゴリアテに近い感じでした。それでも対抗する勢力にとっては悪夢のようなものです。特にこの世界で飛行機の技術がそれほど発達していなければ空中艦隊はほぼ無敵といってもいいでしょう。戦争というものは制空権を握ったものが勝利するというのは今も昔も変わりません。
総じてスタイルはずんぐりむっくりとした超巨大爆撃機(装甲はけっこうありそうです、何せガトリング砲で艦体を射撃していましたから)昔のSF、ウェルズ作品の今の挿絵感ありましたね。今後の展開如何によってはこのケイバ―ライト飛行戦艦も出てくるかもしれませんね。
2017/07/24追記:
思ったより早く第3話にて飛行戦艦でてきましたね。機体の各所にケイバ―ライト機関?ともいうべき球体が設置されそれで船体を浮遊させ、推進力は艦から左右に伸びたナセルにプロペラを配した格好です。各所に砲を配置し主に下方への攻撃を主にしているのは空中から地上を制圧するためのものでしょう。バルカン砲ではなくガトリング砲(クランクを回して銃身を回転させ装填と排莢を行う銃火器)というのも19世紀という感じですが兵士の武装である小型ガトリングガンの機構が若干気になります(笑)
2017/11/04追記:
『プリンセス・プリンシパル』のメカデザインをされてる方があのガトリング小銃?はゼンマイ仕掛けとつぶやいておられました。ゼンマイを巻いておいてトリガーを引いたら撃てるようになっている?のでしょうね。いろいろつぶやかれておられますので是非ご覧になってください。
(プリプリ豆知識)モーメントにまとめました。#priprihttps://t.co/2YL0Edd1yw— 片貝文洋 KatagaiFumihilo (@fumihilo) 2017年8月30日
スパイ
『プリンセス・プリンシパル』は美少女が出てくる深夜アニメではありますが、スパイに関しての描写はかなり玄人はだしです。いやこんなことを言うのも変な話ですが。スチームパンクな世界観と、外連味あふれるアクションがありながらも、モール(もぐら)やアンジェたちが所属する共和国の情報機関がコントロールと呼ばれていたり、王国側のスパイ機関も保安部などスパイ小説が好きな人にはたまらない単語がたくさんでてきます。そしてそれを並べているだけではなく、ちゃんとした血肉を与えているのも見どころの一つではないでしょうか。
モール(もぐら)というのは潜入捜査をしているエージェントやスパイを指す言葉、コントロールはイギリスのスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの作品に出てくるイギリス情報部(MI6)の指揮官の呼び名です。共和国コントロールの長がLというコードネームなのはMI6の長官がMと呼ばれているという007を思い出させます。そういったくすぐりもちゃんと入っているのも面白いですよね。
リンク/Amazonより/007/カジノ・ロワイヤル【井上一夫訳】 <ジェームズ・ボンド・シリーズ> (創元推理文庫)
リンク/Amazonより/ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 ジョン ル カレ (著), 村上 博基 (訳)早川書房
『私たちは何?』
『スパイ、噓をつく生き物だ』
騙し合いの始まりというわけです。実際一話目からなかなかハードな出足でした。そして1話目はCase13、そして2話目がCase1、7/23深夜に放送される3話目がCase2と1話目は完全にキャラクターの紹介回ながら既にチームが機能しているところを描いています。今後はCase13に向かっていくのか、それとも?そこも注目したい点ですね。脚本は『コードギアス 反逆のルルーシュ』『プラネテス』や最近ではゾンビに覆われた日本とよく似た国の話、そしてこれもスチームパンクな世界観と和の世界観が融合した物語だった『甲鉄城のカバネリ』の大河内一楼氏。今後の展開にどういったストーリーが待ち受けているのか非常に楽しみです。
2017/07/24追記:
第2話でアンジェたちの最初のミッションが描かれ、その後王女とアンジェは実は過去(子供時代)につながりがあることが判明。3話のアバンでもその続きがあり、アンジェは王女に会うためにスパイになり壁を越えたと。革命時に2人が離れ離れになったことが示唆され、アンジェはカサブランカに逃げようと王女に告げますが王女は女王になりたいとアンジェに。そして腹を決めたアンジェはコントロールも王国にも嘘をついて騙しきることを宣言しましたが2人の過去、そして似ている事の謎も今後きになるところです。
ちなみに『カサブランカ』っていうのはモロッコの地名ですが、ハンフリー・ボガード、イングリット・バーグマン出演のラブロマンスの映画のタイトルでもあります。悲恋の映画で、そしてこれは調べれば分かるんですが第2次世界大戦前夜のきな臭い時代の映画でもあり、さらにはプロバガンダの国策映画でもあるのです。時代を映す映画としてクラシックな名作として興味のある方はご覧になってはいかかでしょうか。
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