ギークは電気羊の夢を見るか?|『マトリックス』(1999公開|米)|tonbori堂映画語り-Web-tonbori堂アネックス

ギークは電気羊の夢を見るか?|『マトリックス』(1999公開|米)|tonbori堂映画語り

2011年4月16日土曜日

movie SF

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 これぞ、『こんな映画が観たかった!』っていうやつなんだろうなと。ガジェットといい、アクションといいカット割といい。あちらのオタ&ボンクラ、ギークどものの夢が詰まった映画もそうあるまい。『マトリックス』とはそういうおとぎ話だ。頭の中では最強ヒーロー。そしてつまらない日常から連れ出してくれる妖精。そして冒険に連れ出してくれる怪しいが頼れる男。オタク、ギークが夢見るものが全部がそこにある。

The Matrix | 4K Trailer | Warner Bros. Entertainment/YouTube

ギークの夢

 『マトリックス』はおよそアメリカのギーク(オタク)が夢見そうなストーリーである。鬱屈した人生を、それでも自分は何者にもなれないと思っている青年が突如現れた美女と大冒険に乗り出す。そんな話だ。

アクション

 いきなりのっけからヒロインのトリニティの大立ち回り。これがまた彼女のエナメルのライダースーツがフェチっぽく決まっている(笑)そして演出もけれん味たっぷりでかなりオタク心を刺激する。が...しかしなんと言ってもいちばん凄みがあってカッコよかったのは、エージェントスミス!背広にサングラス。この記号性がボンクラ心を刺激する。最高にクールなのに徐々にAIが本性を表すところで、実際AIがそうなるのっておかしいんだけども、既に彼も逸脱しはじめているというのをウィービングは表現してて本当に上手い人を持ってきたなと感心。


 余談だけど未だ未見だがヒューゴ・ウィービングはドラッグクイーンの役で映画に出たこともあるらしい。なんとも印象的な顔立ちの人なんだけどもエージェント・スミスっていうのはどこにでもいる記号的な役割なのに個性があるという、スミスの強敵っぷりがこの作品の成否を決めたといったら言い過ぎか。

サイバーパンク

 今では死語になっているサイバーパンクとディストピアをここまでビジュアル化したのも凄い。全体のトーンは前に主役のネオを演じるキアヌ・リーブスがでた「JM」よりもカラフルで綺麗な感じ。出てくるヴイジュアルは綺麗な所ばかりではないのにそう感じさせるのは画面の情報量やビジュアルの細部に渡って神経が行き届いている証左。


 2時間近くの上映時間が全く気にならないのはその映像の力だと思う。もちろんこの映画より凄い映画はあるけれど、が、しかしこの映画はアメリカのギーク兄弟がそのエッセンスをあますところなくぶち込んだ初めてのハリウッド映画として記録されるべきで、それだけのパワーとエネルギーを感じた映画だった。

最後に、これだけは言っておく。
トリニティはクールだ!

アペンディックス

 で、マトリックスについて書いているわけだがこの映画リピーターが多いと聞く。何故なら一度見ただけではその映像し隠された謎やテーマ、世界観が理解出来ないのでまた繰り返し見て理解を深めるのだという。だがお話自体は最初に書いたように簡単で、おとぎ話がベースになっており、この世を支配する悪者を救世主を探し求めて戦う者たちが、対抗しえる救世主と思われる主人公を見つけ彼に覚醒を促し、そして彼はこの世界を真のあるべき姿に戻すため戦う。


 まるで有名RPG(モーフィアスはさしずめ賢者か?)のようでもある。これだけでもオタク心をくすぐられるが、ザイアスや予言者(彼女自体はネオと会っていない。彼女のデーター化された虚像マトリックスがネオのマトリックスと会っただけだ)は何処にいるとか。コンピュータ群を指揮しているAIはどのぐらいの規模なのか?その他端々に出てくる引用やなどが映画を一度見ただけでは理解出来ないほどの情報量なのだ。

ジャパニーズコミックとジャパニメーション

 モーフィアス役のローレンス・フィシュバーンは日本のアニメが好きで特に「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」が好きと語っていたが、押井守監督よりは、その原作者、士郎正宗が書く漫画に近い感覚がある。彼の書く漫画も欄外の解説やバックボーンに存在する膨大な量のサブテキストの存在等がある。それを何度も読み返すことでその世界に深く浸れるわけだ。また難しい台詞や引用で煙に巻くとまでは言わないが直接語るのではなく言葉に託して考えさせる。ただ同じくレイアウトに情報を詰め込んで感じさせる押井守監督の手法にも通じる。

 監督のウオシャウスキー兄弟は他にも日本のアニメに造詣には深く、『AKIRA』の大友克洋と押井守のアニメからもヒントを得たと語っている。頭の後ろのピンプラグからネットにインするというビジュアルはあきらかに『攻殻機動隊』であるし映像的にも押井守の『攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL』の方に影響を受けたと思われるシーンがある。クライマックスのビルのロビーでの銃撃戦や難解な問い掛けなどにそれは見られる。

功夫アクション

 忘れていけないのはアクション。だれでもブルース・リーの「燃えよドラゴン」は覚えているだろう。この作品によってクンフーアクションはメジャーになった。その後ジャッキーがハリウッドに進出するにあたりアメリカでも人気を得たと言えるがその本家の香港からユエン・ウーピンと言う凄腕アクション監督を連れてきて指導させるなんていままで考えられなかったことだ。

 縦横無尽に空間を飛び回るワイヤーアクションとハリウッドが誇るSFX(マトリックスではVFXと呼んでいる)が作り出した驚異のマシンガン撮影。これら全てが今まではバラバラに存在していた。がここに一つの作品として完成したといえる。まさに1999年を代表する作品になったのだ。あなたがまだ未見なら一度見てみるが良い。それだけの価値はある。

20170802 タイトル改題『オタの夢を映像化した『マトリックス』』→『ギークは電気羊の夢を見るか?『マトリックス』』とともに内容も一部加筆しています。

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