2大俳優激突演技合戦!|『交渉人』(1999公開|米)|tonbori堂映画語り-Web-tonbori堂アネックス

2大俳優激突演技合戦!|『交渉人』(1999公開|米)|tonbori堂映画語り

2011年4月20日水曜日

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 公開当初はまだこういう技能をもった要員が世に知られていなかった時代だがアメリカではハイジャックなどの強行突入での人質への危険や犯人逮捕の観点から積極的に導入されハイジャックや誘拐犯のみならず強盗からの籠城犯に自殺志願者まで多彩なシーンで活躍することになった交渉人、ネゴシエイターをクローズアップしているアクションサスペンス。


By The Negotiator, distributed by Warner Bros. Pictures. - http://www.impawards.com/1998/negotiator.html, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=74107439
By The Negotiator, distributed by Warner Bros. Pictures. - http://www.impawards.com/1998/negotiator.html, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=74107439

 ネゴシエーター(交渉人)とは主にアメリカで立てこもりなどの事案が起こった場合、SWATともに現場に出動、犯人を説得、投降や突入の場合でも相手の気を逸らしたりする事で確保しやすいように状況をコントロールする役職である。

2人の交渉人

交渉人ダニー・マローン


サミュエル・L・ジャクソン
画像はWikipediaより リンク サミュエル・L・ジャクソン

 この映画、導入部分が上手くて、最初のシーンからもう緊張感がみなぎっている。サミュエル・L・ジャクソン演じる交渉人マローンが犯人相手に交渉しているシーンなのだが、強硬に突入を主張するSWAT隊長に対し、ちょっとでも時間を稼ぎ、どうしても強行突入が決定になったときに、自ら犯人に体をさらし人質の少女に危害が及ばぬようそしてスナイパーが狙撃しやすいように通り側の窓に誘導する。これを観た時に本物だと思った。実際にはそういうことは無いかもしれないし、もっと説得に時間をかけるかもしれない。ただつかみとしては非常によく出来ていてマローンは交渉人としてプロフェッショナルでしかも警察官としての意識も高いということだ。


 そんじょそこらのアクションものなら、主人公が犯人の隙をついて倒す、そして突入してきたSWAT隊員たちに、銃を渡してというシーンになっていただろう。もちろんそこに多少の経過の違いがあっても大きくは変わらないはずだ。だがこのシーンは結果的にマローンは犯人が肩を撃たれた瞬間に犯人が放り投げたショットガンを拾い上げ構えるが、その前に犯人を撃ち倒したのはSWATのスナイパーで、チーム戦術として仲間を信頼したマローンの性格が伺える。そしてマローンはアドレナリンが出ている状態で興奮しているがトリガーは引かなかった。警察官は犯人の射殺だけが仕事じゃない逮捕するのが警察官なのだ。当然グリーンライト(ゴーサイン)が出てもよっぽどの事が無い限り射殺は無い。


 またこのシーンのSWATの射撃シーンは元傭兵の作家さんがリアルだと言っていた位に随所にリアリティが感じられそれがこの映画のドラマに深みをもたらしている。もちろん細かいところでおかしい所もあるが、(例えば連邦ビルに立て籠もったマローンを窓から急襲するSWATが2人だけとか、通常ならバックアップに別方向の窓からさらに何人かが待機突入しているはず。)出来る部分でのリアリティを高めてドラマを作っている。そういう部分がこの作品の良さを引き立てている。

交渉人クリス・セイビアン

画像はWikipediaより リンク ケヴィン・スペイシー

 本作品はマローンの相棒がつかんだ警察内部の横領疑惑が発端で、その相棒が何者かに射殺されその濡れ衣をきせられ、自らの潔白を証明するため内務監査室が入っている連邦ビルに立て籠もり自分との交渉人に西地区のNo1(マローンは東のNo1)クリス・セイビアン(これがスペイシー)を指名するという序盤から2人の交渉人の知恵比べ、そして警察内部の裏切り者の暗躍がというストーリーが展開される。


 ここから物語はラストまで目が離せない内容になっているのだが、なんといっても演技力には定評のある二人の共演これはすざまじく素晴らしかった。ウラ読みをする心理戦や自らの仕事にプライドと命をかけている二人の男を見事にに演じきっている。

 こんなシーンがある。セイビアンが呼び出されるシーンだが彼は家でくつろいでいるのだが、娘の一言で妻がへそを曲げてしまいバスルームに籠城している。これから家族水入らずでスキーに行こうとしているのだがなかなか妻が機嫌を直してくれない。犯人は説得できても家族は難しいと嘆くシーン。これは数少ない登場人物のプライベートな描写だが、ここだけでケヴィンはセイビアンという人物を観客に印象つけるのである。家では良き家庭人だが仕事には一切私事を持ち込まず全力であたる男と。

キャスティング

 このようにオスカー級の男優2人ががっぷり組んだこの映画面白くないはずが無い。脇を固めるキャストも映画やアメリカのTVドラマの出演が多い渋いところを配しており、あちらの役者層の厚さを感じさせる。強行突入でけりをつけたがるSWATのベック隊長にはデヴィット・モース。これまで数々の作品で脇を固めてきた実力派。敵役から人のいいおじさん役まで幅広い役を演じている。tonbori堂が印象的なのは『ザ・ロック』で反乱部隊の指揮官ハメル准将の片腕バクスター少佐。敵役なんだけど、自らの掲げる正義と意にそぐわないテロに悩む役柄を演じた事ですごく印象に残った。


 トラヴィス署長にはジョン・スペンサー。『ザ・ホワイトハウス』のマクギャリー首席補佐官役でお馴染み。この方早くに亡くられてしまってもう活躍が観れないのは残念。『ザ・ロック』でもFBI長官役で出演。ショーン・コネリー演じる元MI6スパイと因縁のある役柄で味方だけと嫌味な役をしていた。現場指揮官のフロストにはロン・リフキン。この人もいい人から意表を突いた悪い人まで多くの役を演じている。『LAコンフィデンシャル』でも地方検事役でちょっとだけ出演してた。マーロウに人質にされてしまう内務監査部のニーバウムにはJ・T・ウォルシュ。この人も早逝してしまったんだけど、善悪を柔軟に演じてきた人でその死は多くの人に悼まれた。同じく人質にされてしまうケチな情報屋をポール・ジアマッティ、警察内部の横領をつかんで殺されてしまうマーロウの相棒を『CSI:科学捜査班』のブラス警部でお馴染みポール・ギルフォイルが演じている。芸達者かつ誰が悪い奴なのかさっぱり分からないこのキャスティングもお見事というしかない。

最後に

 警察内部の裏切りのサスペンスであり、2人の役者による演技合戦の趣も有り、SWATの活躍などポリスアクションの要素にそれぞれのキャラクターもしっかり描かれた群像劇な部分もある非常によく出来た作品。監督はF・ゲイリー・グレイ。期待の若手として監督したが、いやなかなかどうしてしっかりとした作品に仕上げている。ベテランの風格さえも感じる。時間は139分とちょっと長めだが時間を感じさせないストーリー展開でヘビーローテーション的に何度も繰り返し観れる作品として超オススメな1本。

20170802追記:タイトルを『ネゴシエーターとは?「交渉人」』から『ネゴシエーター対決!『交渉人』』に変更。それにともない加筆修正いたしました。

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