犯人を無力化する。一口に犯人を無力化するといっても、相手の抵抗能力を奪うだけなのか、拘束するのか、状況によっては致命傷を与える事もとかいろいろ難しい。それをこの事件でちょっと思い出さされたので書いてみたいと思う。
秋葉原通り魔事件のニュースより
最初はJ-CASTニュースもネット野次馬的にはネタにしていたが最近は痛いのが多い。
ソース|J-CASTニュース : こんな凶悪犯相手でも 日本の警官は銃を使えないのか
基本的に銃の使用範囲が拡大されたといっても銃を撃つのは最期の手段だ。忍者部隊月光じゃないが、街中でそうそう撃っても良いという指導はされていないと思うのだが。常識で考えてあくまでも執行者の命が危険に晒されたときか、または無辜の一般市民に命にかかわる危険が迫っているときくらいだろう。(実際の指導はどうなされているかは知らないが)
ソース|秋葉原の警官 「ミスした」のか「よくやった」のか: スッキリ!! :J-CAST テレビウォッチ
このワイドショーで日テレの局員さんと子会社の人も犯人と対峙した警官に「足を撃て」という叫び声を聞いたそうだ。そして彼らも撃たないだろうなと思いながらも同じように『足を撃て』と声を掛けたという。確かに犯人の抵抗を封じながら移動能力を奪うには足を撃つのはいいアイデアのように思えるが動く物体のしかも足の太さのようなものに当てるのはかなり難しい。それは警官と犯人の距離がざっと2メートルあたりだったろうか、その距離でも当てる事は非常に困難だ。そもそも動いている的に当てるという事がどれだけ難しい事か。ましてやこれはゲームではない。外しても問題が無いという事にはならないのだ。世の中絶対は無いし、これは一度海外で拳銃を撃ったときに思ったことだが、拳銃はそんなに当たるもんじゃない。もちろん固定された標的なら練習すればある程度、標的に集めれれるが、あの状態では難しいと思う。また街中での発砲は外れた時の跳弾も気を付けなければならない。
一発必中はフィクション
西部警察の大門団長のようにショットガンで一発必中というのはドラマだけの話だ。それに人は実は撃たれただけでは突進が止まらない事もある。銭形警部が使っているコルト・ガバメントは.45口径であるが、それまで米軍の制式拳銃はコルトやS&Wのリボルバーで.38口径だった。しかしアメリカとスペインの戦争のさ中、スペインの支配地であったフィリピンでモロ族の蜂起が発生し対処したアメリカの兵士たちの拳銃弾では彼らを止められなかった。これは100年近くも前の話なのではあるが今でも当たり所やアドレナリンが出ている時ならすぐに対象を止めるにいたらないこともある。そんなわけでマンストッピングパワーとして日本の警察が採用している.38口径、.38スペシャルが適当かという話もでてくる。一概に対象を無力化するといってもクリアするべきハードルはいろいろあるのだ。
ソース|.45ACP弾 - Wikipedia|.38スペシャル弾 - Wikipedia|
ノンリーサル(非殺傷)
野次馬から撃てなんていう発言が出るということは、早晩同じような状況が出たときに容易く『撃ち殺せ』という発言が出そうでちょっとうすら寒いものを感じる。もちろん正当性のある状況での銃撃で犯人が死亡するのは行動の検証があって適性であれば問題は無いのではあるが。(追記:撃った人間がPTSDなどを精神に重荷を感じるなどのことは置いておく。決して殺人を正当化するものではないが緊急避難的行動というのは認められるものだろう)個人的にはこういう場合テイザー(スタンガンの発展系で針を射出し相手に電撃を与えて行動不能に陥らせ無力化するノンリーサルウェポン)を配備したらどうかと思う。テイザーならば目標に対しても照準が付けやすいし命を奪わず制圧できるのだが。
テイザー銃|画像はWikipediaより |
追記:参考エントリ、法規他
玄倉川さんの玄倉川の岸辺のエントリ
ではその筋(ガンマニア)なら有名なKTW代表和智さんとフォトグラファーでコンバットシューターのイチロー・ナガタ氏の会話を載録引用されている。動くものに当てるのはそれだけ難しいということがよく分かるエピソード。
追記:08/06/13 20:03
Machidaさんのはてなダイアリー『火薬と鋼』のエントリでテイザーの件を挙げていただいている。
リンク|ニューヨーク市警の命中率から - 火薬と鋼NY市警の距離別命中率の話などソースを示されているので(テイザーに関しても)ためになる。
追記:17/07/10
テイザーの危険性についてはWikipediaに記述があります。各タイプのスタンガンの項目を参照してください。
それと警察の拳銃(けん銃)の使用規則に関しては以下のページを見つけたので参考までに。
リンク|警察官等けん銃使用及び取扱い規範
これを読むと第八条に以下の文言が
第八条 警察官は、法第七条 ただし書に規定する場合には、相手に向けてけん銃を撃つことができる。
2 前項の規定によりけん銃を撃つときは、相手以外の者に危害を及ぼし、又は損害を与えないよう、事態の急迫の程度、周囲の状況その他の事情に応じ、必要な注意を払わなければならない。
この法第七条とは索引検索結果画面に掲載されている警察官職務執行法である。
これを読んでもやはり先に書いたように、確かに状況は急迫していたが、周囲の状況を考えるに流れ弾での2次被害や不測の事態を考えるとまずは撃つ前に(威嚇射撃も含め)銃を抜いて威嚇するというのは正解だったように思う。でも拡大解釈は出来るような文言にはなっているなとも少し感じる(元々法律自体がそういう側面をもっているのかもしれないが)拳銃は最後の武器と言えば『忍者部隊 月光』「(リンクはAmazon.co.jp): 忍者部隊月光を観る | Prime Video 」を思い出す。
日本ではスタンガンはそういうグッズを売っている店で購入することが出来たりするけれど、さすがにテイザーを所持するのは要らぬ誤解を生みそうな感じなので護身用ならば防犯スプレーあたりがよろしいかと。あくまでセルフディフェンスの範疇でお願いいたします。
追記:旧Web-tonbori堂アネックスにて2008年6月に公開したエントリ。少しだけ追記しています。
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