LUPIN THE IIIRDシリーズ第2作目はルパン一家が揃いますが何時ものように、つるむのでもなくまさに1stシリーズの1エピソードのように話が進みます。今回の敵役はバミューダの亡霊という異名を持つホーク、2千人の兵士を屠った伝説の兵士ですがバミューダ諸島での特殊作戦中に戦死が確認されたのに何故かあちこちに出没し各国の諜報機関にマークされている大男。片手持ちの手斧を武器に圧倒的なタフネスぶりと強靭な肉体、そして常人離れした反射神経の持ち主です。そんなホークに手も足も出ずに一敗地に塗れる五ェ門という構図は1stシリーズの十三代石川五得ェ門登場の頃の五ェ門を思い出させます。自らの剣力に微塵の疑いもなく、相手を倒してきた五ェ門を完膚なきまでにねじ伏せたホークとの対決が今回の物語のメインです。では簡単なあらすじの後に感想にいってみたいと思います。
前作次元大介の墓標の感想はこちら
「美味い煙草が吸いてぇだけだ ...」/『LUPIN THE IIIRD次元大介の墓標』感想【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス
未熟なり、五ェ門…!/STORY
どこともしれない屋敷の庭園で木を斧で割っている大男ホークにサリファと呼ばれる少女が「あの方」からの依頼を持ち込んだ。ホークは「お安い御用です」と屋敷を後にする。
居合の達人十三代石川五エ門は鉄竜会の稲庭会長にその腕を見込まれ用心棒として鉄竜会の運営する賭博が行われる客船に乗船していた。敵対組織のカチコミは五ェ門を敵視する鉄竜会用心棒の稲庭四天王の西郷兄弟らがなんなく撃退したがその際にも打ち漏らした一人をあっさり斬鉄の技で倒す五ェ門。それを賞賛する稲庭を不満気に見る西郷兄弟。その時船が不意に揺れた。原因を探るべく五ェ門は機関室に向かう。
その頃、賭博船の莫大なあがりを盗み出すために乗船していたルパンは金庫室へ向かうが既に金庫には不二子がいた。ここはあがりを山分けという事で船から脱出するルパンたち。その頃機関室ではホークが機関部を斧で破壊しようとしていた。見とがめる五ェ門だったがホークは意に介さず破壊を続ける。そのまま船上に上がるホークを追う五ェ門だったが、船外で脱出するルパンたちを見つけると五ェ門を無視してそのまま脱出艇でルパンを追った。
稲庭組長は船内火災の崩落に巻き込まれ、五ェ門贔屓が面白くない西郷兄弟たちに見捨てられ、それを五ェ門のせいだとなすりつけた。葬儀に現れた五ェ門に組長の息子は3日間のうちに仇を討てと命令される。
一方、公安の銭形警部は賭博船での火災事故にホークの影とルパンの存在をかぎつけ、上層部の制止を無視してその足取りを追っていた。
アジトに使っている別荘で寛ぐルパンたち、不二子は船で見た五ェ門と戦う大男の事を思い出し別名バミューダの亡霊と言われる凄腕の兵士だったホークの事をルパンに教える。その時にバイクでアジトに飛び込んできた。次元の.357マグナムもまったくきかないルパンたちは這う這うの体で車で逃走する。バイクで追いかけるホークに割って入ったのは組長の仇をとるためホークを狙う五ェ門だった。
ルパンたちに手を出すなと言い放ちホークと対峙する五ェ門、しかし五ェ門の居合を指でつまんで止めたホークは五ェ門を吹き飛ばす。劣勢と見て取ったルパンたちは現場に到着した銭形の介入を利用して逃走した。自慢の居合が見切られた五ェ門は己を鍛えなおすため海、火、滝、岩壁に向かっていくがそれはルパンたちの目には心を折られた五エ門が立てなせないほどのダメージを受けているように見える。
ホークは睡魔に勝てぬとおとなしく銭形に拘束されるが、上層部はホークはいないはずの人物として釈放するようにと再び厳命される。しかし当のホークは一晩ぐっすり眠ると牢から脱獄しルパンたちを追うのであった。果たして五エ門は再び剣をふるえるのか?ホークに狙われたルパンたちの運命は?
煩悩は心を乱す
今回は五ェ門メインのお話ですが、最大の敵ホークのターゲットは明らかにルパンたちでした。それは『次元大介の墓標』の最後に登場したあの男が関係しているのは明らかで、サリファという少女はその男のと思いましたがさらに捻った展開が『不死身の血族』で明かされたというのは余談です(;^ω^)それよりもホーク、大きな体で緩慢そうな、しかし馬鹿力のと思いきやタフネスやパワー以外にも反射神経も高いまさに常人離れした戦闘能力の持ち主で二千人の兵士を屠ったというのも納得の男です。
五ェ門は1stシリーズの初期の十三代五ェ門登場の頃のような殺しのチャンピオンにこだわる若き日の感じがあります。しかも腕が立つので西郷兄弟でなくても少しやな感じですが、その天狗の鼻っ柱をホークは微塵もなく打ち砕き前篇の終わりでは心ここに有らずという感じでした。そこから自らを痛めつける苦行を行う修行僧のように海で巨大な鮫と対峙し、大きな焚き木の炎に巻かれ、滝から落ちる大木に跳ね除けられ、動かず動じない巨石の前で一心不乱に構え続け、果てに開眼した最速の感覚、「仏の境地」に至り、襲い掛かる西郷以下鉄竜会を斬り伏せ、稲庭Jrをその凄みで屈服させるなど、一皮むけた五ェ門に生まれ変わったのは、小池監督が1stの自信過剰な若き剣豪がその後修行僧のような求道者のような五ェ門になったのを描きたいという狙いだったそうです。
それは狙い通りにピタリとはまっています。その後の鉄竜会との決着やホークとの再戦を見るに、またつまらぬものを斬ってしまったの五ェ門になっています。
恐れるのは己自身か
今回の敵ホークは凄腕の特殊部隊の兵士であり2000人の敵を葬ったという経歴を持ちバミューダ諸島での特殊作戦で戦死したと言われています。死んだ人物が何故生きているのか、という謎は今回は残ったままですが、一筋縄ではいかぬ強力な力を持つ人物で銃弾を撃ち込まれても恐るべき反射神経で手斧で受け止め銃弾をはじき返し、五ェ門の居合を易々と受け止める膂力は既に人とは思えないです。そして『次元大介の墓標』のヤエル奥崎は仕事の終わった後にステーキをたいらげていましたが、ホークは仕事の前にスペアリブを10枚を仕事の前にぺろりといってしまう、この健啖ぶり。なんとも不思議な共通点があります。それが何故かはLUPIN THE IIIRD最新作『不死身の血族』で分かるのですが。
ルパンに何故狙うと問われても「しいて言えば伐採だ」とか「いい肥料になれ」とかまるで話が通じない感じなのですが、五ェ門にホーク自らの煩悩は殺戮の欲望と言われるあたり業の深い人物でもあります。まさに泰然自若な殺し屋ですが痛いところをつかれて初めて見せる怒りの形相。そしてその刹那にみた自らの首が斬り落とされるイメージを見せられ恐怖する時、五ェ門に言われた台詞が「案ずるな恐怖を感じてこそ人が人である所以」というのも五ェ門の成長が感じられます。ホークのそのあと完敗を認めルパンたちに「いい用心棒を持ったな」と声をかける辺りも達人同士のやりとりのようで痺れますね。
追う男、銭形
今回、銭形警部も物語に関わりホークの背景が大きなものであるということを見せるのに人役買っていたのと、他のシリーズとは違う硬派な刑事でした。どちらかというと「峰不二子という女」に出てきた銭形っぽく、また原作よりとも言われています。1stでも時折見せていた鋭さのみで出来ていますという感じの銭形が絡むことで作品のハードボイルドさが上がっていました。もちろんコメディタッチで漢(おとこ)な銭形も嫌いじゃないというか好きなんですけど、LUPIN THE IIIRDシリーズでは作品に合わせた硬派な銭形で良かったと思います。
血煙の石川五ェ門
LUPIN THE IIIRDシリーズでは『次元大介の墓標』が一番好きなんですけど、この『血煙の石川五ェ門』も好きですね。特に五ェ門が最速の感覚に目覚める50人切り(最初は100人切りを企画していたとか、もろもろ50人に落ち着いたそうですが)とホークの再戦は本当にしびれます。コンマ何秒を縮めるのではなく、その先へというのを視覚的にやってもそれは嘘なんですけれど妙な説得力があるこの作画力はアニメーター出身の小池監督ならではのアクションシーンとしてこれからも推したいと思います。
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