やっと『不死身の血族』まで辿り着きました。ルパン三世映画としては3DCGのTHE FIRSTが2019年にありましたけど2Dアニメでは30年ぶりになるんだとか。そしてこの作品はLUPIN THE IIIRDシリーズの完結作としても位置づけられており、シリーズの集大成でもあります。いちおうそれまでの作品の網羅していなくても冒頭のルパンのモノローグと映像でこれまでの経緯が語られるので特に問題はないと思いますが、それでもシリーズを追っかけてきたものにとっては待ってましたの1本でした。一介の泥棒と自らを定め、盗みたいものがあれば盗む。自由人であるルパンをいつの間にか絡めとろうする何かがとうとう本格的にルパンたちの前に立ちはだかるというこの作品は満足度の高いものでしたが、反面シリーズを知らない人たちやそもそもとっちゃん坊やみたいな最後に出てきた人物は何者?というある程度ルパン三世リテラシーというかそういう知識が必要かもと少し思いました。まあそれについてはまた後で、では今回も簡単なあらすじの後に感想を書いてみたいと思います。
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「これは俺にしか出来ない任務だ」『LUPIN THE IIRD銭形と2人のルパン』感想【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス
地図に無い島/STORY
ルパン三世は手に入れた年代物のシャンパンをあけようと根城に急いでいた。森の中にそびえたつルパンの盗み出したこれまでのコレクションを収めた古城、そこに戻ったとたんに城は爆発炎上する。コレクションは灰燼と化し、焼け残った壁に一枚の地図が残されていた。
ロビエト連邦にいるブローカーにセスナを用意させ島に向かうルパンたち、地図とともに残されたトランプは5枚、まるで島に引き寄せられるようにルパン、次元、五ェ門、不二子、そしてジェット戦闘機で後を追う銭形警部。
嵐に守られているかのような海域を銭形の操るジェット戦闘機を交わしつつ島に近づくセスナ。しかし地上からエンジンを撃ち抜かれてセスナは墜落、脱出した次元、五ェ門、不二子にセスナととともに島に不時着したルパンたちは散り散りになってしまう。そして銭形のジェットも撃墜されパラシュートで島に脱出した。
島は霧がかかっており鬱蒼としたジャングルに覆われている。また川の水は赤く毒々しい。そこにいた人影、首の長い異形の人間がルパンに襲い掛かる。なんとか襲撃を交わすが川岸に浮かぶ死体をゴミ人間と呼び、自らもその一人ではあるがましなほうだと嘯く。一方不二子は銭形に見つかり行動を共にするがその目の前には廃棄された装甲車や戦車、ミサイルなどが打ち捨てられていてた。そしてそこにもゴミ人間たちが現れ不二子は捕らわれる。
浜辺に降り立った次元と五ェ門は砂浜に墓標のように立てられた数多くの小銃を見つけるが、不意に遠方から矢で狙撃される。
襲撃され川に落ちたルパンは鳴動する洞穴に逆流する川をさかのぼり、島の支配者ムオムの城へ侵入する。やっとこの一連の事件の黒幕に辿り着いたルパンだったがムオムに仕える少女サリファからこの島に充満する霧は毒であり24時間以内に島外に逃れないと死ぬと告げられる。ムオムはこの島は世界中のゴミを処理する島であり、自らはこの地球を不老不死にするため選別と排除をしているとルパンに告げる。ワルサーで銃撃するルパンだったが撃たれても蘇るムオム。一方毒にやられて衰弱していくルパン。不死身の身体を持ち強大な力を持つムオムに対して絶体絶命のピンチを迎える。果たしてこの島からルパンたちは生還することが出来るのだろうか?
この世には信じちゃならねえものが三つある。
一つは酒の記憶、もう一つは女の誘惑、そして最後は「世界地図」。バミューダ海域にある「地図に無い島」そこには不死の怪物が住んでいる。なんとも怪奇冒険譚な展開ですが、『ルパン三世』では度々島が舞台になりますよね。まあ島は逃げ場もないし、そうなってくるとどうやって敵を倒し、島から脱出するのかというので一つのストーリーが作れるんですが、さすがに不死の身体を持つ相手には分が悪い。銃で撃っても、車で轢いても、ガソリンで燃やしても蘇る。もちろんそれには空想ではあるけれど理屈がある。
ルパン三世の、いやこのLUPIN THE IIIRDシリーズは思えばそういうミステリーを解く楽しみもあるんですが、このムオム、不死の存在ということは、どうしてもあの男を思い出しますよね。『次元大介の墓標』の最後に登場した「複製人間/マモー」を。
実は世界の権力者たちとマモーがつながっていることも今回分かったんですが、それ以上にムオムはマモーの右腕とでも呼べる存在だったことが明かされます。しかし彼の不死性はクローンのそれではなく別の叡智を得るに至ったものでした。これは劇場で確認してほしいところなんですが、そう来たか!と種明かしで唸りましたね。当然徒手空拳になってしまったルパンの反撃にもしびれました。これまでも武器が無くなっても近くにあるものでなんとかしちゃうのがルパン流、今回もそれがしっかりありました。
またこのLUPIN THE IIIRDシリーズはルパンたちがまだ仲間になっていない(もっとも不二子はずっと敵か味方か分からないんですけれど)状況ではあるんですが、シリーズを通してみるとなるほどちゃんと仲間になっているというのが良くわかるし、銭形も『VS複製人間』で骨に戒名を刻んでやるぞーってなるのが分かります(笑)
不死身の存在ムオム
なぜ不死を得たのかというより、彼はマモーからある意味叡智を授かり、それを以てして最強になり、やがては一つの島で己を育て上げたという、ある種のマッドサイエンティストであり、求道者であり、支配者です。そして人類を選別しやがて不死にするという野望をもっています。多分遅かれ早かれルパンとは激突する思想の持ち主、ルパンは誰にも縛られない自由な男、そして易々と軛を抜け出す男だからです。
ムオムは全てをコントロールし、島に全てを集めゴミは自ら処分する。そんな支配欲の化け物と自由なルパンが相容れる訳が無いですからね。とは言えまさかムオムの不死の源泉がそういう事かというのは彼を導いたマモーの事を思えば、そう来たか!となります。ここは是非スクリーンで観て驚いてほしいんですけどね。(ネタバレ/まさか島全体がムオムであったとは、幾つか示唆はされていましたが驚きました、だけどマモーの本体を知っているとああなるほどそうなってくるかとも)。
サリファとは?
サリファはムオムのアシスタントのようであり、また自らを通訳としています。そして最後のシーンでは不二子の前にサリファが5人も現れました。全てが明かされることはなかったのですがやはりマモーの不死者の実験の一環で作られた個体なのでしょう。『銭形と2人のルパン』に続き、最後ルパンの墓石(ルパンが死んだと思い銭形が作ったもの)が壊された時に駆けつけてきたICPOの男が銭形にルパンと名乗る男が逮捕されたと告げるところもあり、マモー自らもムオムの実験は残念ながらうまくいかなかったがと判断しているようですから、この後に『VS複製人間』を観るとまた味わい深いのではないでしょうか。
やつはまたとんでもないものを盗もうとしている
これは予告編の最後に出てくるコピーですが、2人のルパンでも取り返せなかった「自分」ではないでしょうか。ルパンは『VS複製人間』で夢を見ない、虚無の領域が深奥にありマモーに断じられそれは白痴のあるいは神の領域と恐れられました。ムオムも思えば神のような存在に自らを高めようとしていた(それがマモーの不死の実験の一つだとしても)のですが、ルパンにそのペテンを見破られ倒されましたが、彼が神になろうとした過程で抹殺する人物の歴史を手に入れていました。それを取り戻した。盗み出したというのは言えるかもしれません。それはある意味過去も未来も今があってこそというルパン三世らしさとともにその歴史を自らの手で葬るのも自由人らしいルパンだと思いましたね。少女の無垢なハートを盗むのもルパンなら粋に自ら決着を付ける。最後に笑う男らしい
LUPIN THE IIIRD
この『不死身の血族』でシリーズ完結編なんですが、鑑賞後に改めて『ルパン三世VS複製人間』を観たんですよね。これはこれで今でも大好きな作品なんでやっぱり面白かったんですが、『不死身の血族』を観た後だとLUPIN THE IIIRDシリーズを踏まえた『LUPIN THE IIIRDVS複製人間』観たいかなと少し思いました。例えばまだ明かされていないサリファの謎や両腕生えてたホーク(『峰不二子の嘘』でサリファとともに殺し屋製造工場のくだりでちらりと出てきます。『不死身の血族』では片腕の無い五ェ門と戦ったホークでした。つまりクローンも作ってるって事ですよね。)の事とか。今回はヤエル奥崎がいいところを持っていきましたけど、そういう部分も含めてまだLUPIN THE IIIRDシリーズは余白あると思うんですよね。このハードなシリーズ、小池監督はやり切ったとおっしゃっていましたが(パンフレットのインタビューにて)、いやこれだけの味を出せるのはやはり小池監督しかいないのではと。なのでマモーでなくとも今後も新しいLUPIN THE IIIRDは新作観たいですね。そういう完結編でした。
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