『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』について気になる2,3の事柄【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』について気になる2,3の事柄【ネタバレ】

2022年11月24日木曜日

MARVEL movie

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 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』先に感想を書きましたが気になるところも多々あり、そもそも映画としてちょっとそれは無いんじゃないかという点もありました。それだけチャドウィック・ボーズマンが演じたティ・チャラというキャラクターが大きかったという事でもあるんですが映画としてかなり特異な作品であったなと思います。

※Marvel Studios’ Black Panther: Wakanda Forever | In Theaters Tonight/YouTube/Marvel Entertainment

 元々ティ・チャラが主人公として考えられた話を一旦、ご破算にしても全てをやり直すには時間が無くてその時に考えられたであろう要素は幾つかこの作品に残っておりそれはインタビューで製作陣も語っています。それぞれの要素が上手く言っていたかどうかと言えばええっ?その展開はって事は確かにありました。それとM.C.Uならではの展開がノイズになってたという点もあります。その辺りを少し考えてみたいと思います。

ワカンダと国際社会

 今回まずティ・チャラが亡くなるというショッキングなシーンから始まったのも驚いたんですがその後のシーンが国連でワカンダの代表としてラモンダが発言するシーンでした。前作のラストの展開から考えるとワカンダと国際社会はもっといい関係を結んでいても良さそうなんですが『ファルコン&ウィンターソルジャー』の展開も込みで考えると実はそうでもなく、ラモンダ女王は国連で仏や米から手を差し伸べようとティ・チャラが言ったのにワカンダのみに産出されるという希少金属ヴィブラニウムを独占しているのは国際社会の協調を乱し平和を脅かしていると指弾されました。しかしラモンダは逆にあなた方にはまだ早すぎると言うのは理解できるんですよね。金属探知機では検出出来ずエネルギーを溜める事が出来、相当な硬度を有する金属。軍事的にも戦略物資として手に入れたいのは当然でしょう。というかヴィブラニウム製のアイアンマンアーマーあったら世界征服も(ヲイヲイ)と、これはまた後で書きますけどそういう危険性も見えてきた。それはサノスの指パッチン後の混乱した世界をさらに不安定にする要因です。実際世界各国も力は欲しているでしょうからヴィブラニウムはそのための重要物資と言ってもいい。だから独占させるのではなくという話もまた分かるけどどうしても抜け駆けしたくなるのもこれまた人の世の常。


 もちろんワカンダがヴィブラニウムの門番だとしたら「誰が門番を見張るのか?」って話になってくるかもしれませんが今回はそういう話ではないんですよ。ティ・チャラの喪失の物語なんです。なので導入部の掴みとしてはアクションもあるしワカンダの置かれた状況は大変なんだなと思うんですが今のところ世界としてはヤバいんじゃないかと思ってると思うんですよね。ワカンダとしてはそういう軍事的野心からは現状遠いところにあると描写されているのだけどここでエリック・スティーブンスakaキルモンガーのような人物が出てきたら?ティ・チャラがそうさせないための外との繋がりを持とうとした。彼が言った「危機に瀕した時、賢者は橋をかけ、愚者は壁を作ります。他者を受け入れ、慈しみ合いましょう」でもそれはティ・チャラの物語であり。インフィニティウォーの5年の空白が混乱を呼び世界がワカンダは「壁」を築いている。世界はそういう目で見ているように思いました。

 問題なのはそれが冒頭のみでしか指し示されなかった事。この作品は特異な映画でチャドウィック=ティ・チャラの追悼という部分と彼の魂が継承されていく事が主眼になっているのでこの「賢者は橋をかけ、愚か者は壁を築く」という部分は少し二の次になっているように感じられます。ですがM.C.Uのユニバースでの世界の関係性を考えていくのにこのシーンは必要であり、前作とのつながりをも考えると今作のヴィランがネイモアであるというのはティ・チャラが主人公であった時から既に構想されていたことから本来なら真の開国を果たしたワカンダを率いるティ・チャラがサノスのブリップ(指パッチン)で消えていた5年間と向き合う事になるとされていたので、そこにヴィブラニウムの扱いで悩むティ・チャラの前に海底の王国タロカンを率いるネイモアが立ちふさがる事になっていたのではないかなと思うのです。そこのつながりがもう少し上手くつながれば賛否両論ではなく傑作へ突き抜けたかも?と思いました。

アイアンハート=リリ・ウィリアムズ

 今回初登場でディズニープラスでの配信ドラマ制作も決まっているキャラクター、「アイアンハート」リリ・ウィリアムズ。コミックでは比較的最近に登場したキャラクターであり言わば「新参者」なんですがトニー・スタークに憧れMITへ飛び級で入学しアーマーを作った天才です。M.C.U版では年齢は少し引き上げられ19歳となっていますがその天才っぷりは変わらず学生の課題を引き受ける何でも屋をしつつ自らの根城を持ってアーマーをこつこつと作っているという様子が提示されました。そのリリが事件に巻き込まれていくのは、MITでヴィブラニウムの探知機は作れないと教授に言われた事からです。リリは持ち前の反骨精神で課題レポート代わりに制作。それをCIAが徴用し海底探査で使用したことからネイモアに狙われる事になりました。課題代わりに作った話も凄いけどそれをCIAがキャッチアップしているというのは国際謀略小説ではよくあるシチュエーションですね。


 リリの才能は自らも天才的な技術者であるシュリも舌を巻くほどで彼女を保護するため出向いた先でも今後良いケミストリーが産まれそうな予感がありましたがこの作品はあくまでワカンダの物語なのでそこまで深掘りされていませんでした。そのためそこは別の人でも良いのではないか?という話もあちこちで感想を読んでいると幾つか見かけました。確かにそう思いますが、tonbori堂はリリという明るいキャラクター(表面上)が出てきたおかげで重苦しい雰囲気が緩和されている部分と今後のM.C.Uにおいてのシュリとのケミストリーだけでなく彼女自身の物語が紐解かれるところが楽しみになったので好感を持って観ていました。もっともアイアンハートアーマー(ワカンダ製)は置いていく事になりましたけどね。それともう一つ、彼女の反骨精神は今後も厄介の種になるかもしれないという事も重要です。望むとも望まなくとも彼女の才能は既にCIAが察知している訳でワカンダという強力な庇護があっても利用しようとする勢力は出てくるだろうし彼女が厄介事を招き寄せる可能性も高い。ドラマ『アイアンハート』は科学と魔術の対決と言われていますが「進んだ科学は魔法と区別がつかない」とも言います。今後リリがトニーのナノテクまでに到達することもあり得るでしょうから彼女が「アイアンハート」になる物語はこれからだという事でドラマの方も楽しみにしています。

エムバク

 吹替が『ドラえもん』のジャイアン役木村昴だから今回のエムバクはドラえもん映画のジャイアンだとかいう人をTwitterで見かけました。確かに最初に出てきた時は敵対的だったけどティ・チャラが瀕死の時に手を貸してくれたし『インフィニティ・ウォー』や『エンドゲーム』では並んでサノスを共に迎え撃った仲。死に際してもシュリの事を頼み賢者のような台詞を言う彼は原典のコミックスではヴィランなんですがM.C.Uでは最初こそヴィランのような登場をしながらもその後はワカンダを支えるリーダーの一人になっています。こういうキャラは美味しいですよね。またM.C.Uはキャラクターの使い方がコミックに寄せるだけではなく別の役割を持たせたり柔軟だけど原典のリスペクトは忘れず脇のキャラクターを使ってくるところがいいですよね。エムバクなんかはその最たるキャラクターになったと思います。

ラモンダ

 今回一番驚いたのはラモンダですね。ティ・チャラを見守るお母様だったのがいきなり国連でピシャリと大国相手に要求を跳ね除け力を見せる事も厭わない。『WHAT IF…?」では元ドーラ・ミラージュの将軍だったという話もありましたけどやっぱりこのバースのラモンダ女王も元ドーラ・ミラージュの将軍だったのかな?烈火の如くシュリを護りきれなかったオコエを解任したり些かやり過ぎですお母様という点がありました。そのシークエンスは観てて大丈夫か?と思うぐらいに鬼気迫る迫力でやり過ぎではないかというくらいでしたね。そこにはシュリを失いたくないという強烈な母としての想いがあったように思います。だからそのシュリが護ろうとしたリリを助けようとしたのも。【ここから超核心をネタバレするので白文字にしています。文字選択で反転して下さい】でもまさかあのような事になるとは…正直思ってもみなかったです。どちらかというとエムバクがヤバいんじゃないかとか最初は敵対してたキャラが味方になるとあっさり退場するみたいな事を思っていたので(実際ネイモアにボコられましたからね。といってもワンパンでしたが。)それと今後の展開を考えるとラモンダの退場はやっぱり今後シュリに影を落としそうなんですよね。彼女がいないからエムバクやオコエは彼女を助けてくれる人だしそういう人を大事にするべきなんだけどそれをまず諭せるのは一番身近な人から言葉なんだけどそれがシュリに届く前に彼女は逝ってしまった。作劇的には分るんだけど…いやそれはどうなんだよクーグラー監督とは思ってしまいました。【ここまでネタバレ】それはこの後の展開も絡んでいるのだとは思いますが。

ナキア

 ナキアは何故かワカンダから離れていてハイチで学校の教師をして過ごしていてタロカンからのシュリの奪還という任務をラモンダから直々に依頼されます。ナキアはエンドゲーム以前にワカンダを離れていたのですがティ・チャラが死んだ後暫くしてからナキアからシュリへ連絡があった事が冒頭部分で示されラモンダもそれに出るように促すシーンがありましたがシュリはそれに出ようとはしませんでした。【ここから超核心をネタバレするので白文字にしています。文字選択で反転して下さい】それがポストクレジットへの伏線になっており、ミッドシーンクレジットでシュリがハイチのナキアの家に出向き浜辺で一人、葬儀の服を焼くという儀式をします。そしてその後にナキアとともに彼女の子が現れるのですがこれがあくまでもtonbori堂の観た範囲内だけで言うとかなり賛否両論なのですよね。最初に言うとtonbori堂は、ああティ・チャラはナキアと結ばれていたのかという事とその子がハイチで名乗っているトゥーサンという名前とは別に自分はティ・チャラの息子でティ・チャラ王子という名乗るのです。この事はワカンダの次の王子は外を見てきた王としてやがてワカンダに戻るのだなというぐらいにしか思わなかったのです。そこまでこれはダメだとは思わなかった。いやむしろティ・チャラはナキアを妻として女王にはしなかったのはナキアがそれを拒否をした。ウォードッグというスパイであり戻ればリバー族の長老(リーダー)にはなれたであろうがやはり国を割る可能性もある。それはティ・チャラが国を開国したからというのもある。ならば外を見た上で物事や民の事を考えられ王道を歩めるようにしたいという事では無かったか?ぐらいの理解だったんですがこのティ・チャラ王子問題多くはまずシュリへのブラックパンサーの継承はなんだったん?という事。確かに第一王子が出てきたら王位継承者はトゥーサン=ティ・チャラ王子ですよね。(以下ややこしいのでトゥーサンとします。)それまでブラックパンサーへの継承でハーブを人工的に生成したりなどあれこれやって母の仇とばかりにネイモアを殺す寸前でラモンダの声でブラックパンサーとしてなすべきことをしたのにぶち壊しではないかと。でもトゥーサンが先に明かされていたとしても彼はまだ6歳かそこらの子どもで何も出来ません。つまり先に登場したとしても「意味がない」んですよね。これは彼がミッドシーンクレジットで出てきてお弔いが済んだのに、そこで「彼の忘れ形見よ」って言われる間の悪さというかこれはどう反応していいのやらという事だと思います。その上でトゥーサンが家長制の悪しき伝統までも体現しているかのようなタイミングなのもそれに拍車をかけてしまっているのではないかと思うのです。元々ティ・チャラの子どもが出るアイデアはチャドウィックが主演するとされていた時からあったアイデアでしたし、クーグラー監督としてはシュリがブラックパンサーを引き継いだ後、ラモンダ女王がおらずまた闇に飲まれそうな困難があってもナキアとトゥーサンという家族がいますという意味合いだったのかもしれませんがトゥーサンが男子であった事とタイミングが事後のためとシュリが闇落ちしかかったところから寸前で踏みとどまる流れもそれはなんだとなってしまったのかも。ですがtonbori堂は先に書いた通りに思ったし、冒頭のシーンの流れから言えばそういう事かと納得できたしそのシーンでつっかえることはありませんでした。【ここまで】

オコエとミッドナイト・エンジェル

 オコエがアーマーを纏う日が来るとは…。ですかねえ(ヲイヲイ)オコエは今回は『ブラックパンサー』の時のような見せ場があまりないもののタロカンの武将アットゥマと刃を交えるところはやはり決まっていますよね。それと最初はアーマーを着込むのを渋っていたのに結局着てるし(ヲイ)またワカンダに戻ったナキアとの会話シーンはちょっと良かったです。ただラモンダ女王にめちゃくちゃ詰められたり(オコエの事は分っていてもやはり息子を失い今また娘までという親心が完全に暴走していた上、ラモンダに注進できる重鎮がいなかったのも不幸でした。)今回いいところが少なすぎたのでブラックパンサー3か噂されてるディズニープラスのワカンダでのスペシャルプレゼンテーションかドラマでミッドナイト・エンジェルの話してほしいですね。


 ドーラ・ミラージュも新顔としてアネカが出てきました。副隊長のアヨ(オコエの解職後は隊長に就任したようです。)と恋人同士なんですがことさら強調していないのは良かったですね。自然にそうなんですという。そして周りも認めているのも自然に描写していて良かった。不自然にされると浮いてしまうので。アネカはオコエとともにミッドナイト・エンジェルとして最後ともにアーマーを装着していたので今後の再登場も期待出来そうです。

ワカンダ・フォーエバー

 こうやって気になる部分を幾つか思い直すとあるにはあるんですがそれでもこの作品がエモーショナルな作品だったという事は揺るがないしそれで良かったとも思うんですが『ブラックパンサー』というヒーローの話になってたのかというと必ずしもそうはなってないかなとも思います。だからこそトリロジーの計画はあるけれども今は考えられないという製作陣ですがしっかりとヒーロー映画としてシュリがブラックパンサーとして何を成すか?その事で本当の『ワカンダ・フォーエバー』になるのではないかと思っています。正式なアナウンスは全くありませんがそう信じて今後もM.C.Uを追っかけていきたいと思います。

※サントラ、主題歌、挿入歌含め音楽は今回も良いです。(Linkde by Spotify)

前作「ブラックパンサー」を振り返ってみるのも良いかもしれません。(Amazonより) 

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