M.C.U再見シリーズ3本目は『マイティ・ソー』です。正直なところ今考えるとアベンジャーズではその破天荒キャラが、おちゃらけてるけど何かと繊細なスタークと、ガチ真面目なキャプテン・アメリカ、悩み事の多いバナーのいい緩衝材になってる得難いポジションを確立しているんですが、単独主演作となると、浮世離れしているため、なんかもう地に足のついた感じが全くしないヒーローなんですよね。まあモデルが神様(北欧神話)なんでしょうがないのかもしれませんが(苦笑)ということで物語の結末にも触れておりますので、なに?ネタバレしてるのかという人はここで閉じて、まずは観るもよし、または別のところへお願い致します。ともかく物語の結末に触れておりますのでよしなに。
暴れん坊神様の大冒険/STORY(※結末まで記されています)
アバンタイトルで宇宙の異常現象を観測中のジェーン・フォスター達の前にいきなり空からとしか思えない現れ方をした男は、ユグドラシル(世界樹)でつながった別時空の世界、アスガルドの王子、ソーでした。ムジョルニアという無敵のハンマーを持つ勇者である彼は、今まさに父である王、オーディンから戴冠しアスガルドの王になるところでした。
しかしはるか古代にミッドガルド(地球)に侵攻し本拠ヨトゥンヘイムすむ氷の巨人たちが宝物殿に忍び込み彼らの宝物で古代の決戦時にオーディンが持ち帰った氷の巨人のエネルギー源を取り戻しに来たのです。宝物殿の番人デストロイヤーのおかげで事なきを得ましたが、戴冠を汚され憤るソーはオーディンの忠告も聞かずヨトゥンヘイムへ直談判という名の殴り込みへ、仲間の戦の女神、シフ、頼もしき戦友、ウォーリアーズ・スリー(ヴォルスタッグ、ホーガン、ファンドラルの3人。ホーガンを演じるのは浅野忠信です!)と弟ロキを加えて向かいます。
ヨトゥンヘイムの王、ラウフェイはまともに取り合わず事態は一触即発。寸前でロキの一言でアスガルドに戻ろうとした一行ですが、氷の巨人たちから侮辱の言葉を投げつけられたソーは激昂し、ムジョルニアをふるいます。ラウフェイはそれを宣戦布告とみなし、まずは6人を血祭りにあげようと門番の怪物をけしかけますが、ソーはムジョルニアでそれを撃破、しかし多勢に無勢、断崖に追い詰められ何故かビフロストは開いていない絶体絶命の窮地にオーディンが現れ、ラウフェイと休戦を提案しその場を収めました。アスガルドに戻ったオーディンはソーの無思慮さに嘆き悲しみ、彼からムジョルニアと力を取り上げ、地球へ放逐しました。そしてムジョルニアに、『ふさわしき者が現れた時、その者を主とせよ』と呪文をかけました。
力を無くした神様ソーとジェーン
アスガルドから放逐されたソーは状況を呑み込めないまま、ジェーンたちと出会いますが、突如として現れたソーに驚いたジェーンの助手ダーシーがテイザーガン(小さなワイヤー付きダーツを対象に打ち込み電撃で相手を無力化するスタンガン)で彼を気絶させてしまいます。病院に連れ込まれたソーは検査のための採血を拒み大暴れ。ベットに縛り付けられますが、拘束を解いて病院を抜け出し、彼の様子を伺いに来ていたジェーンたちと再開、ジェーンたちの仮設研究施設に。ジェーンはソーが現れた時、記録されたデータの磁気、電磁波の異常が起こっていたことを知り、そこに現れたソーが何かを知っているのではないかと睨んだからです。
一方、ムジョルニアは近くの砂漠に落下しており周辺の住民が集まって引き抜こうとしてもびくともしません。とうとうクルマで引っ張る者が出てきましたが、チェーンを繋いだバンパーが外れてしまい歯が立ちません。そこにS.H.I.E.L.Dのエージェント・コールソンが現れ付近を封鎖しました。そのころジェーンたちは腹が減ったというソーとともに街のダイナーへ。ソーの話は荒唐無稽でジェーンの良き理解者セルヴィグはその話は北欧神話のおとぎ話として彼の話を信用しません。その時砂漠に落着した物体の話を聞き、それがムジョルニアと気が付いたソーは落下地点へ。セルヴィグは止めますが、時を同じくしてS.H.I.E.L.Dが現れ研究データの一切を持ち去りジェーンはソーと共に封鎖された落下地点に向かいます。エージェントたちが警備している落下地点に忍び込んだソーはムジョルニアを持ち上げようとしますが、力と資格を失ったソーにムジョルニアは持ち上げられず落胆するソー。S.H.I.E.L.Dに捕らえられたソーの元にロキが現れ、オーディンは死んだと告げます。悲嘆にくれるソー。
セルヴィグが嘘の経歴とジェーンの元カレの名前で身分証をでっち上げソーを連れ出しジェーンの元に戻るソー。ジェーンに取り返した研究ノートを渡してこの世界は9つに分かれており、地球(ミッドガルド)とアスガルドは世界樹(ユグドラシル)の枝によってつながっていると語ります。
青い王子|悪戯の神/ロキ
一方、先のヨトゥンヘイム行きで自分の出生に疑問を持ったロキ。直接オーディンを問い詰めると、先の氷の巨人との戦いの後に打ち捨てられた赤子見つけ、父であるラウフェイから捨てられたその赤子を連れ帰り自らの子として育てることにしたと告げます。幼いころから周囲との違いを感じていたロキは、歪んだ愛情を抱きつつ成長しましたが、その事実に激昂。時を同じくしてオーディンは眠りの時間に入ってしまい、ロキは策謀を巡らします。ラウフェイと単独で会見し、彼らを引き入れオーディンの暗殺を持ち掛けます。またシフとウォーリアーズ・スリーがロキに無断でビフロストを渡りソーを探しに地球へ向かったことを知るとソーを抹殺するために宝物殿のデストロイヤーを地球へ遣わしました。
包囲したS.H.I.E.L.Dのエージェントを軽く一蹴するデストロイヤー。ソーと合流したシフとウォーリアーズ・スリーですがソーは既に己の罪を認め受け入れるとしてこの地に残る事を決断していました。しかしデストロイヤーが襲ってきたことにより、ロキの歪んだ思いも受け止め、自らを犠牲にすることにより事態を収拾しようと図ります。デストロイヤーに吹き飛ばされ絶体絶命のソー。その時ムジョルニアがソーを再び高潔な主と認め飛来しソーは復活。デストロイヤーを撃退します。
そしてジェーンとの再会を約束しロキと対決にアスガルドへ!ラウフェイにオーディンを殺させようとしてラウフェイを倒すロキ。ロキの動機は嫉妬から来たもので、真の後継者としてオーディンに認めてほしいというものでした。ビフロストを兵器として転用しヨトゥンヘイムを真っ二つにしようとするロキ、ソーはビフロストを破壊してそれを止めますが戦いの衝撃で虹の架け橋から落ちようとするのを救ったのは眠りから目を覚ましたオーディンでした。ですがロキは手を離し、宇宙の彼方へ落ちていきました。ビフロストは落ちてしまい、地球へ戻る手段を失ったソーでしたが、ジェーンとの再会を感じさせ物語は幕を閉じます。
アスガルドとは?ユグドラシルとは?
アスガルドっていったいなんやねんという方も多いでしょう。冒頭でもちょっと触れましたが『マイティ・ソー』はベースが北欧神話です。ソーの父、オーディンは北欧神話の主神で、虹の架け橋ビフレスト、ヨトゥンヘイム、ミッドガルドなどは全部そこから出てきているキーワードです。物語の中盤でその単語を聞いたセルヴィグが子供のおとぎ話というのも彼が北欧出身だからでしょう(演じるステラン・スカルスガルドはスウェーデン出身)。ソーはオーディンの息子として日本ではトール(Thor)という名前でも知られています。ムジョルニアはトールハンマー、もしくはミョルニルとも言われ古代のノルド語で『打ち砕くもの』という意味だそうです。その力は全てのものを打ち壊し、投擲しても的を外さず持ち主の元へもどってくるという、まさに映画でのムジョルニアそのものな力を発揮したとか。ソーの力の源と言ってもいいでしょう。
ソーのムジョルニア|「マーベル・スタジオ/ヒーローたちの世界へ」大丸梅田店にて撮影 |
アスガルドはソー達の暮らす世界で、世界を支える大きな樹木ユグドラシルの九つの世界の内の一つです。アスガルドに入るには虹の架け橋ビフロストを通らねばならず、そこには門番のヘイムダルが常に見張りをしています。ヘイムダルは全てを見張っており、遠くのヨトゥンヘイムやミッドガルド(地球)の出来事も見張っています。
By Oluf Bagge - From Northern Antiquities, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=576714" 出典元:Wikipediaより/ユグドラシル、アスガルドの図版 |
画像はWikipediaの北欧神話の項目にあるユグドラシルの古い図版ですが、映画に出てくるアズガルドがこのイメージを引き継いでいることが分かります。ロキはソー(トール)の友人にして敵対者として北欧神話で描かれていますし、アスガルドの登場人物はほぼ北欧神話のままです。つまりマイティ・ソーの世界観は北欧神話の世界は実際にあって古よりミッドガルド(地球)を守護しているという物語なのです。
S.H.I.E.L.D
『アイアンマン』、『アイアンマン2』にも登場したエージェント・コールソンが『アイアンマン2』のポストクレジットシーンがこの『マイティ・ソー』のシーンでしたが、地球上で起こった不可思議現象はどうやらS.H.I.E.L.Dの管轄という事が分かります。大掛かりな組織で戦闘訓練を受けたエージェントを擁した組織というのは、チラチラとこれまでも見えてきましたが、今回はちゃんとした台詞のあるエージェントがコールソンとブラック・ウィドウ以外にも出てきました。バートンというエージェントとシットウェルの二人です。
既に『アベンジャーズ』をご覧の方ならご存知のホークアイ、エージェント・バートン(クリント・バートン)はソーが初出です。カメオ的な出演でしたが短い時間で不敵な狙撃手、いや弓矢(コンパウンド・ボウ)を構えていましたから射手として印象を残しました。シットウェルは禿頭に眼鏡のインテリ然としたエージェントで現場ではコールソンの補佐的な立ち位置でしたが正直この時は印象が薄い感じでした(頭髪がではありませんよ)。ですがこの後も彼はM.C.U作品に関わる事になります。コールソンはソーから『コールの息子』と呼ばれます。これも印象的で『アベンジャーズ』でもそう呼ばれていました。綴は『Coulson』英語のsonは息子の意味があります。にしてもなんでかなと思っていましたが、Yahoo!知恵袋にこういう回答を見つけました。
ソース|マーベルアスガルド人にコールソンがコールの息子と言われていますが、コールソ- Yahoo!知恵袋
これによると北欧神話では子どもの名前に父の息子という名字をつけていたとか。なるほどソーは劇中、冒頭の説明で『ソー・オーディンソン』と言われていました。つまりオーディンの息子ってことですね。となるとソーの息子はソーソンになるってことでしょうか?(笑)他には地球に降り立ったシフとウォーリアーズ・スリーがソーのいる町に入ったときに見張りをしていたエージェントたちが、ゼナ、ジャッキー・チェン、ロビンフッドと形容しましたが、ジャッキーとかロビンフッドはウォーリアーズ・スリーの事だと分かりますがゼナってなに?と調べてみると海外ドラマの『ジーナ(xena)』のタイトルロールのヒロインだとか。シフの画像とジーナの画像を検索でググってみてください。ああなるほどとなります。
ジェーンたちの研究資料がS.H.I.E.L.Dに持ち去られた後にセルヴィグが「やつら」の仕事をしている知人がいるといっていましたが、この部分、コールの息子ことコールソンが主役であるドラマ『エージェント・オブ・シールド』を観るとつながるシーンがあります。というか今回、マイティ・ソーを再見して当時もテキストでは知ってはいましたがやはりこうやって台詞を拾っていくと面白いものですね。
トリビア
マーベル原作の映画にはカメオ出演で出ている人がいます。M.C.Uでは必ずこの方が出るのがお約束になっています。その方こそマーベルのコミック原作者であるスタン・リーです。『マイティ・ソー』では地球に落ちたムジョルニアをトラックで引っ張ろうとしたお爺さんです。
By Edward Liu - Stan "The Man" Lee, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3479609"出典元:Wikipedia |
またソーに男性用の服を貸したジェーン。元の持ち主は『ドナルド・ブレイク』これは原作コミックではソーはオーディンからアスガルドを追放された時に地球の男性に転生しました。その人物の名前がドナルド・ブレイク。セルヴィグが偽りの身分証をコールソンに差し出した時もその名前を使っていました。
ラブロマンスなんだけれども
なんというか、実はこの物語、壮大です。なんといっても北欧神話をベースにしていますから異次元の世界をまたにかけた話でM.C.Uでのソーのオリジン・ストーリーであり、ジェーンとのラブロマンスでもあるのですが、ちょっとどっちつかずな部分も散見されました。監督のケネス・ブラナーはシェイクスピアの演出、出演でも有名な人です。そのためオーディンの間のシーンやアスガルドのシーンではまさに壮麗で重厚なお芝居な分、地球でのお芝居が若干どうかなと。とは言えロマンチックなシーンも用意されておりソーの御目見えはまずまずではないかと思いました。ただクライマックスシーンはもっとこう敵の軍団を蹴散らす体でも良かったかな(笑)
そしてソー、単体での攻撃力はボチボチのように思えますが、ムジョルニアをもっている彼は、ハルク級のパワーを持っています。神様でもあるので通常世界ではチートな力を持っているといっていいでしょう。そのため彼の真価は『アベンジャーズ』での強大な敵に対する時に非常に映えます。今後もアベンジャーズの中核として外せないメンバーというのが分かりました。さて『マイティ・ソー』はこの後第2作『ダーク・ワールド』が作られ、そして第3作目『ラグナロク』が待機。この『ラグナロク』は『バトルロイヤル』という邦題サブタイトルになりちょっと波紋を起こしましたが、いったいどういう風になるのか?原題名のラグナロクは北欧神話の神々の世界の最後を指し世界が終わるようなワードでもありますが、作品自体はコメディ色が強いとか。それまでヒロイックファンタジーとロマンスなストーリーだったのでこの変化どうなるか楽しみにしたいと思います。
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