『MAMORU MANIA Reprinted Edition』(星海社)買いました。といってももうお盆挟んで前の話ですが私事ながら実は体調不良となりましてちょっと積読になっておりました。そこから徐々に読んでいるところで未だ先に刊行された『MAMORU MANIA』(トイズプレス刊)との読み合わせみたいなことはしていませんけど、したところで精緻に分析している方がいらっしゃる?かもしれません。でも当ブログではデーターアーカイヴとしてやっている訳ではなく(たまにそういうデータ系エントリもあるけれど)オーラルヒストリー系アーカイヴを目指しているので、素直に読んだ感じと今思った事を昔の想い出とともにつらつらと書いておこうかと思います。とはいえ読んだ最初に思ったのは『ロバが旅に出ても馬になって帰ってくるわけじゃねえ』by『イノセンス』のバトーさんよろしく、うん前の通りだなって感じです。ただ序文と永野護による文章が足されている事でロバはロバでも解像度が高くなったロバ(何のこっちゃ?)になっているなと思いました。ただこの本、本当にあの時に井上さんが思った事(永野護という人について)をまとめたまさにタイムカプセルのような本だったなということで何卒よしなに。では行ってみましょうか。
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| MAMORU MANIA Reprinted Edition/井上伸一郎・永野護著/星海社刊 |
MAMORU MANIA Reprinted Edition
前に元角川社長井上伸一郎氏が出された著書『メディアミックスの悪魔』という新書が出た時にいわゆる編集人生と、そこから見たアニメ業界、編集、出版業界の話を書かれてて、ああこれなら今にアップデートされた『MAMORU MANIA』が出ないものかと思いましたが、そもそも前の『MAMORU MANIA』が現在入手困難ということでそれこそ全国の古本屋さんに出ているものを買い求めないと手に入りずらいという状況でした。ということも含めてこの機に『MAMORU MANIA』の重版できないものかと思ったんですがトイズプレスという特殊なところから出ている出版物ゆえ難しいかなと思いきや、まさかの『メディアミックスの悪魔』を出版した星海社さんから同じ形態で出るというニュースが流れました。
KADOKAWAではなく星海社というのは、これが『メディアミックスの悪魔』と同じく井上さんの手記みたいなもので、かつて籍を置いていたところから出すより外部より出した方が良いだろうというビジネス上の判断だと思います。どうしたってKADOKAWAから出したら私物化とまでは言われなくとも微妙な空気になるでしょうし。とは言え令和の世にこの『MAMORU MANIA Reprinted Edition』が出た意義はちょっと大きいかなと思っています。この手の自伝手記的なエッセイは著者の思い入れも大きくともすれば夜郎自大になりかねません。というより対象である永野護という才能に惚れ込んでいってしまって、対象を美化していき偶像化してしまうところも危惧されます。実際読んでみるとそういった雰囲気も感じられるのですがとは言えあの時代と永野護のエルガイムのデザイナーとしての才能を世に問いたいという欲望がストレートに書かれており(当時井上さんはニュータイプから外れ女性誌の編集部に異動していた)一種井上氏のオーラルヒストリー的なエッセイは大変貴重であると思うのです。出来ればそれを外部から眺めていた『OUTLINE MAMORU MANIA』やら『OUTSIDE MAMORU MANIA』みたいな証言集があればさらに完璧でしょうけど(この『MAMORU MANIA Reprinted Edition』には井上さんの次の編集長である太田さん、三代目の重信さんの証言も入っていますが、担当編集である榎本氏やそれ以外の外から眺めていた人の証言とかもあればあの当時のアニメ、ゲーム関係の歴史が浮かび上がるかもしれません。
しかしながら井上さんのこの手記的な内容だけでも非常に興味深いものがあり、当時のニュータイプの状況や空気感(あくまでも井上さんが感じたものではありますが)を知りたい人にはこの1冊はおすすめできるものだと思います。永野護の傍にいた人間として友人としてまた仕事として長らく付き合ってきた人物のあの当時の想いというものをこうやって書き留められたのは当時トイズプレスという会社から永野護ファンマガジンとでも言うべき『キャラクターズプラス』『パブリッシャーズ』『テールズ・オブ・ジョーカー』が発刊されそのコラムの中の一つとして書かれたという事実も大きかったと思います。(もっとも『パブリッシャーズ』はそれこそムービングピクチャーマガジンというニュータイプの宣伝文句をさらに推し進めたものとして記憶しています)そういったものを含めてもこの『MAMORU MANIA Reprinted Edition』はまさにタイムカプセルではないかと思います。今回、新しくなってもまたそれを掘り起こしそれを開封する気持ちになりました(笑)
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| カバーを外したMAMORU MANIA Reprinted EditionはほぼMAMORU MANIAです(裏で判別できます。) |
「僕はファティマを嫌悪する」
富野由悠季監督が『MAMORU MANIA』発刊時に寄稿したこの文章もそのまま掲載されています。何故エルガイムにファティマを採用しなかったのか?何故エルガイムに永野護を起用したのか?ということが書かれており、富野監督がある種、エッジのたった才能をぬるま湯のようなルーティンをこなすだけの現場に投入し刺激を与えようとしたことが語られています。
その一方で富野監督曰く、「スノビズム的なネクロフィリア、フェティシズム、ナルシズム的フリークスな感覚を凝縮させたもの」(これは本文中に井上さんが書いた富野監督の発言ですがご本人が「補足する必要もない」と書き記されているので間違いないと思います。かなりの部分でご立腹であろうという感じではありますがそれがアートの枠内で表現されるのであればやぶさかでないと言いながらマスメディアに触れてしまうのはいけないと考えているのが富野監督の立場。とは言いながらも前述の停滞した(と、富野監督は思っている)当時の空気に新しい才能を投入せねばという先見性を持っていたのもまた富野監督という方というのが分かります。永野護本人も弟子を自認しており、師弟といっても過言ではなく全体的に鋭い点を指摘しつつ、お前にはまだ負けないぞと言いつつエールを送る富野監督らしい寄稿でした。
これは『ニュータイプクロニクルファイブスター物語』にも掲載されているDESIGNS永野護デザイン展への富野監督のインタビューや『ファイブスター物語アウトライン』の師弟対談を読むとさらに2人の関係性が浮き上がってくると思います。
MAMORU MANIA復刊にあたって/永野護
最後に今回の復刊にあたって永野護本人の寄稿が入りました。長い年月の間に色々な事があったし友人でもあるけれど、作家と編集者(会社)としてのお付き合いとして前提としてビジネスがあったと書いてあります。(ギブアンドテイクと言ってます)それは当然で実入りがなければ映画は続編は作られず雑誌は休刊(という名の廃刊)、漫画は打ち切りな訳です。井上伸一郎と永野護の仲は業界では知られたところでありますが、長い休刊、それに続くアニメ制作(『花の詩女 ゴティックメード』)などもビジネスとしての計算があるのでこれを通せたという話は分かっているけど当事者から出た言葉として、これもまたオーラルヒストリーの一つとして重要な証言になりました。まだまだドラマはあって話せない事の方が多いと言いますが、これから先どこかでオーラルヒストリーとして残してほしいものです。
今、井上センムは
井上伸一郎氏をセンムというのは社長にも就任され今はKADOKAWA顧問的ですが何故かtonbori堂的には海洋堂の宮脇専務とともにおたく界の2大センムであると井上氏が角川書店の専務時代に思っていて、自分の中での井上伸一郎氏は永遠に井上センムなのです。まあ「まもしん」のしんの字でもあるんですが(笑)
今は個人の事務所でもあるENJYUを設立、ZEN大学においてコンテンツ産業史アーカイブ研究センター 副所長をされておりコンテンツ業界(アニメのオーラルヒストリーの収集保存活動をされています。自らもかつては第一線で業界の推移を見つめてきた井上センムが今後どういう活動をしていくか?その活動にも興味がありますが、今後ビジネスライクな「まもしん」が何かまたしてくれないかなと少し期待しつつ、出来れば今に至る空白期間の『MAMORU MANIA2』をお願いしたいですね(もちろん話せないマル秘話満載で(ヲイヲイ)






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