8月10日はパトレイバーの日だったそうなので『TNGパトレイバー』の事。-Web-tonbori堂アネックス

8月10日はパトレイバーの日だったそうなので『TNGパトレイバー』の事。

2017年8月11日金曜日

drama Gun movie

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THE NEXT GENERATION パトレイバー第一章予告編/YouTubeより

 『THE NEXT GENERATION パトレイバー』は1988年から始まった『機動警察パトレイバー』の続編に位置付けられているものの、正統続編なんだけどそうじゃないというちょっとややこしい作品です。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』(以下『TNG パトレイバー』は『機動警察パトレイバー』の実写化作品として企画され、物語の中心になっているのも漫画、アニメの警視庁警備部特科車両二課パトロールレイバー中隊第二小隊の面々が主な登場人物ですがアニメの主人公たちは初代、そして無気力な二代目を経て無能な三代目が主人公たちと設定されています。


 アニメ、OVAシリーズ、映画からの続編なのは間違いないんですが若干パラレルワールド気味なのは総監督である押井守が、パトレイバーの原作スタッフであるヘッドギアの面々を入れなかったことによります。これは押井さん自身がインタビューなどで散々語っており、当時ヘッドギアのメンバーでも違和感を表明した方もいらっしゃいました。ですがともかくも実写化作品としてTVドラマとして(実際には連続ドラマとして放送されたのはCSのスターチャンネルのみ、特別上映として2週間の限定で劇場公開されていました。)全12話が作られ、そして長編映画『首都決戦』が劇場公開となったのです。

ドラマシリーズとしての『TNG パトレイバー』

 バラエティに富んだ構成で押井監督は総監督として全体のかじ取りをし、それぞれのエピソードは各監督の差配にまかせました。この中には押井監督が関っていた今はもう無い国際出版が発行していた月刊Gunで企画されていた自主映画コンテスト(ガンコン)の出身者、辻本貴則監督や、特撮作品で知られている田口清隆監督。押井監督の実写作品の助監督として現場をよく知る湯浅弘章監督の3人と押井監督がそれぞれエピソードを担当。


 印象的な回を上げてみますと『野良犬たちの午後』『遠距離狙撃2000』『クロコダイルダンジョン』『THE LONG GOODBEY』でしょうか。特にコンビニ籠城のエピソード『野良犬たちの午後』と第二小隊にロシアのFSBから研修でやってきたカーシャのメインエピソード『遠距離狙撃2000』はむちゃくちゃ押井監督の趣味な話なんですが監督は辻本貴則監督。これが結果的にいい効果を産んでいて『TNG パトレイバー』の中でも屈指の名エピソードになっています。さらに押井監督の趣味性が高いのは『大怪獣あらわる』前後篇でしょうか。押井監督の自宅のある熱海で撮影。そして魅力的な女性ゲストキャラなど別な意味での押井監督らしい趣味がほとばしりすぎているエピソードでした。以下そのエピソードの中でも『野良犬たちの午後』『遠距離狙撃2000』のインプレッションを。

第3話『野良犬たちの午後』

 これはかの有名な『狼たちの午後』のオマージュタイトルだと思われます。あちらは銀行強盗から立てこもり犯へ。こちらは指名手配犯が泉野巡査に見咎められたために急きょコンビニを占拠という。


 テロに関わった指名手配犯には波岡一喜。はっきりいって好演しており、ちょっととぼけた感じのテロリストを演じていました。この後『暴走、赤いレイバー』でも再登場しています。こちらはレイバーが登場します。そして動きます!ですが…(笑)押井監督は割とああいうヒーロー然としたロボットデザインは嫌いと公言していますが、いやまあ、でも実際、ミニミやM60のような軽機関銃相手だとレイバーって無力な気はしますよね。それこそアニメに出てきた陸自のレイバー、ハンニバルとかブロッケンのように正面装甲を厚くするとか。まあせめて戦闘ヘリなみかな。20ミリではまったく紙切れ同然ですが…😅こちらもカーシャ大活躍で辻本監督がカーシャ大活躍回を任されたのはやはりガンコンでの活劇の才を見込まれたってことなんでしょうか。こちらは軽い感じで、そしてアニメ版好きな人にも割と受け入れやすいかもしれないと思いますが…どうでしょうか。

第8話『遠距離狙撃2000』

 tonbori堂が特に好きなのはこのカーシャの主役回『遠距離狙撃2000』です。特車二課に訪れる公安の女。高畑警部がもたらした厄介な任務。数日前にロシアの大使が高速道路で走行中に狙撃、暗殺されたため臨時に交代の大使がやってくるが、それを秘密裏に護衛せよという任務でした。そしてこの任務にあたってはロシア側の強い要望で特車二課にロシアのFBSから研修中のカーシャに一任して欲しいという奇妙なものでした。

 実は暗殺を実行した犯人セルゲイはカーシャの狙撃の教官でいわば師匠にあたる人物。ある思いを秘め東京を舞台にカウンタースナイプでの狙撃対決が始まろうとしていた…という話です。


 暗殺者セルゲイの使うアンチマテリアルライフルはリサーチ・アーマメント・インダストリー(R.A.I)のモデル500というライフル銃です。知ってる人は知っているドルフ・ラングレン主演、『ハイランダー』のラッセル・マルケイ監督が撮ったその名も『スナイパー』という映画でドルフが演じたスナイパーが使用していたのがこのライフルです。


<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Iver_Johnson_AMAC-1500" target="_blank">画像はWikipedia(米)より|Iver Jhonson AMAC-1500</a>
画像はWikipedia(米)より|Iver Jhonson AMAC-1500

 このライフル銃は一発づつ弾を装填し発射する単発ボルトアクションライフル銃ですが、一風変わっていて普通はボルトを引いて薬室をオープン。そこに弾を込めます。ですがこのモデル500はボルトをそのまま引き抜いて弾丸をボルトに噛ませてそのまま装填するという方式を採用しています。見た目にも派手で映像好みなアンチマテリアルライフルですが、メンテナンスが比較的容易で部品数も少なく故障がしにくいという利点もあります。欠点は連射が出来ないということですが習熟した射手ならそれなりのスピードで射撃することが可能です。


 このR.A.Iモデル500は先に上げた辻本監督も入選しその事で参加した『KILLERS』という殺し屋と銃が出てくるオムニバス映画の一篇で押井監督の『.50ウーマン』(ハーフウーマン)で使用されたものです。女殺し屋がひたすら狙撃ポイントで食べ物を食べながら標的があらわれるの待つという押井監督のフェティッシュな部分を煮詰めた映画でした。ちなみにこのR.A.Iモデル500は米軍でも使用されていたことがあるとか。現在はアイバージョンソン社から販売されているようです。


 対するカーシャはチョウ・ユンファが『狼/男たちの挽歌-最終章-』(ちなみにこの作品『男たちの挽歌』シリーズとは主演のユンファが同じだけでまったく関連のない殺し屋の映画です。)で狙撃につかった、ドラグノフ狙撃銃という旧東側の狙撃専用ライフル銃で今も旧東側のみならず世界中で使われている狙撃用ライフルです。


<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%8E%E3%83%95%E7%8B%99%E6%92%83%E9%8A%83" target="_blank">画像はWikipediaより|ドラグノフ狙撃銃(SVDドラグノフ)</a>
画像はWikipediaより|ドラグノフ狙撃銃(SVDドラグノフ)

 セルゲイの対抗するため、カーシャがロシアより取り寄せたこのライフル銃。ドラグノフは人物の名前でこのライフルの設計者です。ソビエト連邦時代に設計生産され同じころにカラシニコフが設計したAK47などと見た目が似ていることからAKの上位狙撃バージョンと思われがちですが、内部機構は参考にしているものの部品の互換性はありません。スコープには簡易な赤外線装置が取り付けられ夜間の作戦でも特別な追加装備をしなくとも使用することができ、長期間に渡る任務に対応できるライフルです。特に速射性が重要視されたためボルトアクションを採用せずガスオペレーションを採用したことにより中距離での狙撃戦闘に有利なライフルですが、劇中のような遠距離狙撃にはどちらかという向いていません。ですがスタイルはご覧の通りカッコいいので、ようするに映像映えするということと、押井監督が好きという2点で選ばれたものだと思います(笑)

 特にこの『遠距離狙撃2000』はレイバーが殆ど出てきません。というか動きません(えっ?)そのため人によってはレイバーの動かないパトレイバーなんて!ってなるかもしれませんが狙撃、ゴルゴ、というワードが好きな方向けだと思います(笑)

最後に

 映画版『首都決戦』に関してはちょっと製作委員会のオーダーとは言え名作の誉れ高い劇場版2の焼き直しなんですよね。押井監督ご本人も最初は敵をどうすればいいのか分からないといっていましたが、けっきょく幻に終わった実写パトレイバー(CGだけが習作として公開された)の敵役であった見えないヘリとその搭乗者を持ち込んで再戦してみたという感じなのですがまたもう一度、ディレクターズカット版を観て再度レビューを書いてみたいと思っている作品です。

追記*

 『首都決戦』はあまり評判も良くなく、レイバー大活躍したけど…って感じでしたがディレクターズカット版は押井監督ファンから納得の声が多く、まあtonbori堂もそうなんですけど満足はした作品でした。ですがやっぱり2の焼き直しちゃうの?という思いはぬぐえない複雑な1本なんですよね。この『TNG パトレイバー』のシリーズ作品に関してはなかなかのクオリティと動かせないを逆手に取った(予算的に大変)作劇は面白かったけど、ちょっと悪ノリもあったりとか完全肯定的な判断は下せません。だけど好きなエピソードは大好きな作品です。


 『新世紀エヴァンゲリオン』、『シンゴジラ』庵野監督が主催している日本アニメ(ーター)見本市でアニメの新作『パトレイバー』が作られた(ヘッドギア全面協力で新スタッフにより)というのもあって、あの後動きが無いですが多分水面下で動いている事と思います。で、あちらが動き出せば多分『TNG パトレイバー』って鬼子扱いになりそうなんですが…やっぱり愛すべきパトレイバーの一つとしてこれからも応援していきたいなと思っているところで今回はここまでとさしていただきます。次のパトレイバーのエントリは来年の8月10日かなぁ…。(予定は未定です。すみません)

※20170812 辻本監督のお名前を間違えておりました、謹んでお詫び申し上げるとともに訂正いたします。

※AmazonPrimeビデオでも配信があります。ファミリー劇場Chに加入すれば見放題。

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